- 更新日 : 2025年10月21日
契約解除通知書とは?無料テンプレートをもとに書き方・文例をわかりやすく解説
契約解除通知書は、一度結んだ契約を解除する意思を相手方に正式に伝えるための重要な書面です。口頭での通知は「言った・言わない」という争いに発展しやすく、書面による通知が望ましいとされています。
この記事では、契約解除通知書の法的な役割から、トラブルを未然に防ぐための正しい書き方まで、具体的な文例を交えて分かりやすく解説します。各種契約ごとの注意点や、通知書が届いた場合の対処法も解説しているため、送る側も受け取る側も、この記事を読めば適切な対応が分かります。
目次
契約解除通知書とは?
契約解除通知書とは、当事者の一方が、取り交わした契約を特定の理由で解除したい場合に、その意思を相手方へ明確に示すための文書です。
民法第540条は、契約または法律の規定によって解除権があるとき、その解除は相手方への意思表示によって行うと定めています。口頭での通知も不可能ではありませんが、契約書を交わすような重要な契約では、後々の紛争を避けるためにも、書面で通知するのが一般的です。
契約解除と類似用語の違い
契約を終了させる際には、似た言葉が使われますが、法的な意味合いは異なります。
- 契約解除
当事者の一方に契約違反(債務不履行など)があった場合に、もう一方が一方的な意思表示によって契約を遡って消滅させることです。 - 解約
賃貸借契約やサービスの継続的な契約などにおいて、将来に向かって契約を終了させることです。契約違反がなくても、契約書の規定に基づいて一方的に、または双方の合意によって行われます。 - 合意解除
契約違反の有無にかかわらず、当事者双方が話し合い、合意の上で契約関係を終了させることです。この場合、「契約解除通知書」ではなく「
契約解除合意書」を取り交わします。
一方的な通知で解除できるケース
契約解除は、主に以下の根拠によって行われます。これらのケースでは、相手方の同意がなくても一方的な通知による解除が可能です。
- 法定解除
相手方の債務不履行(家賃滞納、商品の未納など)を理由に、民法などの法律の規定に基づいて解除するケースです。 - 約定解除
契約書にあらかじめ定められた解除事由(例:「甲が〇〇した場合、乙は本契約を解除できる」)に基づいて解除するケースです。 - 手付解除
不動産売買などで手付金を交付した場合、相手方が契約の履行に着手するまでであれば、買主は手付金を放棄し、売主は手付金の倍額を返還することで一方的に契約を解除できます。 - クーリングオフ
訪問販売など特定の取引において、消費者が一定期間内に無条件で契約を解除できる制度です。
これらのケースに当てはまらない理由で契約を円満に終了させたい場合は、相手方との話し合いによる合意解除を目指すのが一般的です。
契約解除通知書の書き方
契約解除通知書に法律で定められた厳格な書式はありません。しかし、後々のトラブルを防ぐため、以下の項目は最低限記載しましょう。内容証明郵便で送付する場合、1枚に書ける文字数に制限があるため、要点を簡潔にまとめる必要があります。
- タイトル
契約解除通知書であることが明確に分かるように記載します。 - 日付
通知書を作成した日付を記載します。 - 宛名
相手方(通知を受け取る側)の氏名・名称と住所を正確に記載します。 - 差出人
自分(通知を送る側)の氏名・名称、住所、連絡先を記載し、押印します。 - 契約の特定
いつ、どのような内容の契約だったかを具体的に記載します。(例:令和〇年〇月〇日付締結の〇〇売買契約) - 解除の意思表示
契約を解除するという意思を明確に記載します。 - 解除理由
契約不履行やクーリングオフなど、解除の根拠を具体的に記載します。債務不履行の場合は、どの契約条項に違反しているのかを明記すると、より明確になります。 - 催告事項(必要な場合)
家賃滞納など、事前に支払いを要求する必要がある場合は、相当の期間(例:本書面到着後1週間以内)を定めて支払いを催告し、期間内に支払いがない場合に契約を解除する旨を記載します。
契約解除通知書を作成する主なケースと文例
契約を解除するケースはさまざまですが、契約解除通知書を作成する主なケースは以下のとおりです。
家賃滞納による賃貸借契約の解除
賃貸住宅の家賃滞納は、貸主が賃貸借契約を解除できる典型的な理由です。ただし、1ヶ月の滞納では直ちに契約解除するのは難しく、通常は相当な期間を定めて催告を行い、それでも履行がない場合に解除が認められるケースが多いです。判例上は、滞納期間が3ヶ月を超えると、信頼関係が破壊されたと見なされ、解除が認められやすくなります。
私は、貴殿に対し、下記物件を賃貸しておりますが(以下、本件契約といいます)、貴殿は令和〇年〇月分から令和〇年〇月分までの賃料の支払いを怠っており、本日時点で合計〇〇円が未払いとなっております。これは、本件契約第〇条に違反するものです。
つきましては、本書面到着後10日以内に、滞納賃料全額をお支払いくださるよう催告いたします。
万一、上記期間内にお支払いがない場合は、改めて通知することなく、本件契約を解除いたしますので、ご承知おきください。
記
物件の表示
所 在:〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇-〇
建物名:〇〇ハイツ〇〇号室
以上
クーリングオフによる契約解除
クーリングオフは、訪問販売などで契約した後、消費者が一定期間内に無条件で契約を解除できる制度です。クーリングオフの期間は、訪問販売や電話勧誘販売などは8日間、連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引は20日間など、取引形態ごとに法律で定められています。期間内に通知書を発送することで効力が生じます。
私は、貴社との間で締結した下記の契約を、特定商取引法第〇条に基づき解除いたします。
契約年月日:令和〇年〇月〇日
商品名(またはサービス名):〇〇〇〇
契約金額:〇〇〇〇円
つきましては、支払済みの代金〇〇〇〇円を、速やかに下記口座へ返金してください。また、受け取り済みの商品がある場合は、速やかにお引き取りください。
(銀行名)銀行 (支店名)支店
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇
口座名義:〇〇 〇〇
以上
債務不履行による業務委託契約の解除
システム開発やコンサルティングなどの業務委託契約を解除する場合、契約書の内容が重要になります。相手方に契約内容の違反(債務不履行)がある場合は、残金の支払いや損害賠償をせずに解除できる可能性があります。そのため、業務委託契約解除通知書では、契約書のどの条項に違反しているのか、具体的な事実を明確に記載することが求められます。
私は、貴社との間で令和〇年〇月〇日に締結した「〇〇システム開発業務委託契約」(以下、本件契約といいます)について、本書面にて通知いたします。
貴社は、本件契約第〇条において定められた納期(令和〇年〇月〇日)を過ぎた現在においても、システムを未だ完成させておりません。これは本件契約第〇条に違反する債務不履行にあたります。
つきましては、本書面到着後14日以内に本件契約の履行を完了するよう催告いたします。
万一、上記期間内に履行がなされない場合は、改めて通知することなく、本件契約を解除いたしますので、ご承知おきください。
以上
契約解除通知書のひな形・テンプレート
賃貸借契約における家賃滞納による契約解除の場合の契約解除通知書のテンプレートを紹介します。書式を内容証明郵便用にしていますので、「1枚で収めるために必要事項をどのように記載するか」についても参考にしてください。
賃貸借契約解除通知書のテンプレートは下記のリンクからダウンロードできます。
契約解除通知書の送付方法
契約解除通知書を送っても、相手方が「そんな通知は受け取っていない」と言い張る事態を防ぐために、配達証明付き内容証明郵便を利用するのが最も確実です。
配達証明付き内容証明郵便とは
- 内容証明
いつ、どのような内容の文書を、誰が誰に送ったのかを、第三者である日本郵便が証明してくれるサービスです。 - 配達証明
相手がその郵便物を受け取った日付を証明してくれます。クーリングオフのように通知期間が定められている契約では、この日付が非常に重要になります。
内容証明郵便の送り方
- 通知書を3通準備する
相手方送付用、郵便局保管用、自分用の3通を作成します。手書きの場合は複写、PC作成の場合は3部印刷します。 - 封筒を準備する
相手方と差出人の住所・氏名を記載した封筒を1通準備します。 - 郵便局の窓口へ
準備した通知書3通と封筒、印鑑(訂正時に使用)を持って、集配郵便局など内容証明を扱っている郵便局の窓口へ行きます。 - 手続きと支払い
窓口で内容証明郵便で、配達証明を付けて送りたい旨を伝えます。職員が内容を確認し、問題がなければ料金を支払い、手続きは完了です。
契約解除通知書が届いた場合の対処法
もし、あなたが契約解除通知書を受け取った場合、決して無視してはいけません。冷静に以下のステップで対応しましょう。
1. まずは内容を冷静に確認する
最初に、誰から、どのような契約について、なぜ解除する旨が書かれているのかを正確に把握します。特に、金銭の支払いを求める催告が含まれている場合は、支払期限を必ず確認してください。
2. 事実関係を確認する
通知書に書かれている解除理由(家賃の滞納、契約違反など)が事実かどうかを確認します。自分の認識と違う点や、身に覚えがない点がないか、契約書と照らし合わせてチェックしましょう。
3. 専門家に相談する
内容に納得できない場合や、どう対応すればよいか分からない場合は、安易に相手に連絡する前に、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。法的な観点から、通知書の有効性や最適な対応方法についてアドバイスをもらえます。
内容が事実であり、要求に応じるしかない場合でも、今後の手続きについて専門家に相談しておくと安心です。
契約解除通知書についてよくある質問
最後に、契約解除通知書についてよくある質問とその回答をまとめました。
契約解除通知書は自分で作成できますか?
はい、作成できます。この記事で紹介したテンプレートや文例を参考に、ご自身の状況に合わせて作成してください。ただし、事案が複雑な場合や、高額な契約の場合は、弁護士などの専門家に作成を依頼する方が安全です。
相手に無視されたらどうなりますか?
内容証明郵便で送付していれば、相手が受け取っていなくても、意思表示は相手方に到達したとみなされる場合があります。その後、契約の履行を求める、あるいは損害賠償を請求するなど、法的な手続き(支払督促、民事調停、訴訟など)に進むことを検討します。
契約解除すると損害賠償を請求されますか?
契約解除の理由によります。相手の契約違反が原因で解除する場合は、逆にこちらから損害賠償を請求できることがあります。しかし、自己都合で契約を解除する場合(業務委託契約で仕事の完成前に解除するなど)は、相手に生じた損害を賠償する義務が発生することがあります。
契約解除通知書を正しく作成しましょう
契約解除の意思表示は、後のトラブルを避けるために、書面で明確に行うことが重要です。重要な契約解除の通知は、配達証明付き内容証明郵便を利用し、法的に証明できる形で証拠を残しておきましょう。
通知書の作成方法や、受け取った際の対応に少しでも不安を感じたら、一人で抱え込まずに、早めに弁護士などの専門家へ相談してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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