• 更新日 : 2026年3月27日

契約書の甲乙表記とは?優劣はある?使わないほうがいい理由も解説!

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Point契約書の「甲」「乙」とは?優劣はある?

甲乙表記は当事者を簡潔に示すための実務慣行です。

  • 法律上の義務はない
  • 原則として優劣なし
  • 丙など十干で拡張可

どちらを自社にすべきかについて法的な決まりはありませんが、“お客様を甲、自社を乙”とするのが無難とされています。

契約を締結する際、契約書の「甲」「乙」といった表記を見たことがある方は多いでしょう。中には、日常的にこれらを使いこなして契約書を作成されている方もいらっしゃるかもしれません。

そもそも、「甲」「乙」とはいったい何なのでしょうか。甲と乙でなければいけないのでしょうか。今回は意外と奥深い、契約書の甲乙表記について解説します。

目次

契約書の甲乙表記とは?

契約書では、当事者の正式名称をそのまま繰り返すと文章が長くなり、読みにくくなることがあります。そこで用いられるのが「甲」「乙」という表記です。これは当事者名を簡潔な記号に置き換える方法であり、契約条文を分かりやすく整理するための工夫です。

甲乙表記は、契約当事者を簡潔な記号に置き換える方法

「甲」や「乙」は、契約の当事者である会社名や氏名を置き換える記号のような役割を果たします。例えば、「株式会社鈴木商事は株式会社山田製作所と契約を締結する」といった正式名称を何度も記載すると、条文が長く煩雑になります。そこで、「株式会社鈴木商事(以下『甲』という)、株式会社山田製作所(以下『乙』という)」と最初に定義し、その後は「乙は甲に対し義務を負う」といった形で表記します。これにより、文章が簡潔になり、作成や修正の効率も高まります。

甲乙表記は必須ではなく、他の表記方法でも差し支えない

なお、契約書で必ず甲乙表記を用いなければならないという決まりはありません。正式名称のまま記載しても問題はなく、「A」「B」といったアルファベット表記を用いることも可能です。重要なのは、当事者が明確に特定され、誤解が生じないことです。そのため、契約内容や作成方針に応じて適切な表記方法を選択すればよいといえます。

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契約書の甲乙はどっちが上?優劣はある?

契約書を作成する際に迷うのが、甲乙の使い分けです。特に契約時は、相手方に失礼がないよう細心の注意を払わなければなりません。せっかく契約に結びついたのに、書類で不快感や不信感を与えて関係が悪化したり、契約がキャンセルになったりするのは非常にもったいないことです。

甲と乙に優劣はあるのでしょうか。甲と乙のどちらを自社にして、どちらを相手方にすればよいのでしょうか。ここからは、甲乙のマナーについて見ていきましょう。

基本的に甲乙には序列がない

結論からいうと、甲と乙に優劣はありません。

ただし、そもそも甲乙の由来は十干の「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」であり、その順番のとおり甲には「第一の」、乙には「第二の」という意味もあります。したがって、甲のほうが乙よりも上位であると捉えられるケースもあります。

しかし、前述のとおり契約書上では甲乙は記号に過ぎず、どちらが上位(下位)ということはありません。

お客様を甲、事業者を乙とするのが一般的

「お客様を甲にしなければならない」といった決まりはありません。自分あるいは自社がどちらで表記されていたとしても、目くじらを立てる人はあまりいないでしょう。しかし、前述のとおり「甲は乙よりも優れている」という意味合いもあるため、相手方が気にすることもあるかもしれません。

そのため、お客様を甲、自社あるいは自分を乙としておいたほうが無難です。

契約書に甲乙表記を使うメリットは?

甲乙表記は法律で義務づけられているものではなく、実務上の慣行として広く用いられている表記方法です。それにもかかわらず多くの契約書で採用されているのは、作成・管理・読解の各場面で利点があるためです。ここでは、契約書に甲乙表記を使う主なメリットを三つに分けて解説します。

契約書作成の手間を削減できる

契約書では当事者名が何度も登場しますが、そのたびに「株式会社〇〇」などの正式名称を記載すると文章が長くなり、入力や修正の負担も増えます。そこで冒頭に「株式会社〇〇(以下『甲』という)」と定義すれば、その後は「甲」と簡潔に表記できます。同じフォーマットを複数の取引先に利用する場合も、冒頭の名称部分だけを差し替えればよいため、実務上の効率が大きく向上します。

契約書が簡潔になり読みやすくなる

長い正式名称が繰り返されないことで条文がすっきりし、文章構造が明確になります。特に権利義務が複雑に定められている契約では、「甲は」「乙は」と整理されている方が関係性を把握しやすく、誤読の防止にもつながります。作成者だけでなく、確認・審査を行う担当者にとっても理解しやすい文書となります。

契約管理や修正作業が容易になる

契約締結後に当事者名の変更や修正が生じた場合でも、定義部分を変更すれば本文全体の修正を最小限に抑えられることがあります。また、社内で契約書をデータ管理する際にも、定型化された構造のほうがチェックやレビューがしやすくなります。このように、甲乙表記は作成時だけでなく、運用・管理の面でも実務的な利点を有しています。

契約書に甲乙表記を使うデメリットは?

甲乙表記は契約書を簡潔にする便利な方法ですが、すべての場面で最適とは限りません。ここでは、契約書に甲乙表記を用いるデメリットを解説します。

当事者の立場が誤解されやすい

「甲」が上位、「乙」が下位といった印象を与える場合があり、特に交渉過程において心理的な抵抗感を生むことがあります。法律上は単なる記号にすぎませんが、契約慣行に不慣れな相手方にとっては上下関係を示すものと誤解されることもあります。対等性を強調したい契約や海外取引では、正式名称や「当事者A・B」などの表記が選ばれることもあります。

当事者が多い契約では分かりにくくなる

当事者が三者以上に及ぶ契約では、「丙」「丁」と増えていき、かえって読みにくくなる場合があります。また、複数の役割が交錯する契約では、単純な記号だけでは実際の立場や責任範囲が直感的に把握しづらいこともあります。そのため、共同事業契約や複雑な取引では、役割名を用いた表記のほうが適している場合もあります。

英文契約書では甲乙表記を使わない?

日本の契約書では「甲」「乙」という表記が一般的に用いられますが、英文契約書では同様の方法は採用されていません。ここでは、英文契約書における当事者表記の特徴について解説します。

英文契約書では、当事者を定義し、以後は定義語で表記するのが一般的

海外では、日本のように「甲」「乙」といった漢字の記号で当事者を置き換える慣行はありません。契約書の冒頭で当事者の正式名称を明示し、その後は、「the Company」「the Contractor」などと定義して使用することが一般的です。日本の甲乙表記に近い形で「Company A」「Company B」といった表記は、説明用のサンプルとしては一般的ですが、後述するような立場や役割がわかりにくくなるため、実際の契約書で用いられるケースは稀なようです。

英文契約書では、立場や役割を示す用語で当事者を表記することが多い

契約内容に応じて、「Buyer(買主)」「Seller(売主)」、「Lessor(貸主)」「Lessee(借主)」、「Employer(雇用主)」「Employee(被雇用者)」など、当事者の役割を示す語を用いることがよくあります。この方法は、条文を読む際に当事者の立場が直感的に理解しやすいという利点があります。海外企業との取引では、誤解を避けるためにも当事者の正式名称や役割を明確に記載することが無難といえます。

契約書で使われる甲乙以外の略称は?

契約書では当事者を簡潔に示すために「甲」「乙」という表記がよく用いられますが、当事者が三者以上となる場合には別の略称も使用されます。これらは一定の法的義務に基づくものではなく、実務上の慣行として用いられている表記方法です。ここでは、甲乙以外に使われる略称について解説します。

甲乙以外の略称は、十干に基づき丙・丁・戊などが順に用いられる

甲乙の由来は、古くから順序を示す際に用いられてきた十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)です。契約当事者が三者以上いる場合には、「丙」「丁」「戊」などを順番に割り当てていきます。例えば三者間契約では、「株式会社△△商事(以下『甲』という)、株式会社〇〇製作所(以下『乙』という)、□□貿易株式会社(以下『丙』という)」と定義し、「甲は乙および丙に対し…」という形で条文を構成します。このように順に付していくことで、多数当事者間の関係も簡潔に整理できます。

略称の付け方に法的な決まりはなく、分かりやすさが重視される

十干以外の表記を用いることも可能であり、「A」「B」「C」や役割名で整理する方法もあります。重要なのは、当事者が明確に特定され、条文の解釈に誤りが生じないことです。当事者が増えるほど丙・丁などは直感的に分かりにくくなる場合もあるため、契約内容や関係性に応じて最適な略称方法を選ぶことが実務上重要といえます。

甲乙丙を使わない場合はどうする?【日本の契約書の場合】

契約書では必ずしも「甲・乙・丙」といった十干表記を使う必要はありません。特に当事者が多い場合などでは、より直感的で分かりやすい表記方法が選ばれることがあります。ここでは、甲乙丙を使わない場合の例とポイントを解説します。

正式名称・アルファベット・役割名で整理できる

甲乙丙を使わない場合、複数の整理方法があります。まず、正式名称をそのまま略称として用いる方法です。例えば、「株式会社山田商事(以下『山田商事』という)および株式会社鈴木製作所(以下『鈴木製作所』という)は、本契約を締結する。」と定義し、その後は社名で統一します。この方法は直感的で、当事者が誰かを把握しやすい点が特徴です。

次に、「A社」「B社」といったアルファベットで定義する方法もあります。当事者が三者以上に及ぶ場合には、「A社・B社・C社」と整理したほうが、丙・丁よりも分かりやすいと感じるケースもあります。

さらに、契約内容に応じて「買主」「売主」「委託者」「受託者」などの役割名で定義する方法も一般的です。

立場が直感的に分かる表記を選ぶことがポイント

十干表記は日本の慣行に慣れていない相手には分かりにくい場合があります。特に三者以上の契約では、役割名を用いるほうが当事者の関係性が明確になります。重要なのは、冒頭で正式名称と略称を明確に定義し、その後は一貫した表記を用いることです。読み手が当事者の立場を瞬時に理解できる構成にすることがポイントです。

契約書の甲乙表記を含めた自社の標準雛形整備の重要性

契約書を作成する際、一から文章を作成するのではなく、あらかじめ用意された雛形(テンプレート)を利用して当事者名などを埋めていく方法が一般的です。

株式会社マネーフォワードでは、業務委託契約に関与する方を対象に、契約に関する調査を実施しました。契約書作成時に使用する雛形の入手元を尋ねたところ、最も多いのは自社で管理・運用している標準雛形を使用することで、39.5%でした。次いで相手方が提示してきた雛形をベースにすることが29.8%、インターネットで検索し、テンプレートをダウンロードして使用することが17.9%と続いています。

雛形作成時の表記統一が実務をスムーズにする

調査データから、約4割の人が自社で用意した標準雛形をベースに契約業務を進めていることが読み取れます。自社用の雛形を整備する際や、相手方から提示された契約書を確認する際、甲乙表記がもたらす作成・管理上のメリットと、相手に与える印象などのデメリットの双方を理解しておくことが大切です。あらかじめ自社としての甲乙表記のルールを定めて標準雛形に反映させておくことで、迷うことなく契約業務をよりスムーズに進めることができるでしょう。

出典:マネーフォワード クラウド、調査② 業務委託契約書の雛形(テンプレート)の用意方法(Q3)【業務委託契約書に関する調査データ】(回答者:業務委託契約に関与する605名、集計期間:2026年1月実施)

契約書の甲乙表記は慣行であり、目的に応じて使い分けよう

契約書における「甲」「乙」は、当事者名を簡潔に置き換えるための実務上の慣行であり、法律で義務づけられているものではありません。基本的に優劣はなく、記号にすぎませんが、相手方への配慮としてお客様を甲にするなどの慣習も存在します。作成効率や読みやすさといったメリットがある一方、当事者が多い場合や上下関係の誤解を招くおそれがある点には注意が必要です。正式名称やアルファベット、役割名など他の表記方法も選択肢に含め、契約内容や当事者関係に応じて最も分かりやすい方法を選ぶことが大切です。

マネーフォワード クラウド契約では弁護士監修の契約書テンプレートを用意しています。無料で利用可能ですので、以下のページからダウンロードしてご利用ください。

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よくある質問

契約書の甲乙とは何ですか?

当事者の会社名や氏名を置き換える記号のようなものです。甲乙表記を使うことで、文中で正式名称を書く手間を省くことができます。詳しくはこちらをご覧ください。

契約書には甲乙表記を使うよう法律で決まっているのですか?

いいえ。あくまで商習慣です。「A」「B」というように置き換えても、あるいは「甲」「乙」に置き換えなくても問題はありません。詳しくはこちらをご覧ください。

契約書に甲乙表記は使うべき?

必ずしも使う必要はありません。わかりやすさを重視するのであれば、むしろ甲乙に置き換えないほうがよいケースもあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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