- 作成日 : 2025年7月18日
契約書レビューシステムの導入メリットは?主な機能や選び方を解説
契約書のレビューは、企業活動において欠かせない重要な業務ですが、これまでの方法では膨大な時間と専門知識を要し、属人化や見落としによるリスクも抱えていました。近年、こうした課題を解決する手段として注目されているのが、AIを活用した契約書レビューシステムです。本記事では、契約書レビューの基本から、レビューシステムの概要、導入のメリット、主要機能、選び方までを解説し、法務業務の効率化と質の向上に向けたヒントを提供します。
目次
契約書レビューとは
契約書レビューは、契約書の内容を精査し、当事者間の合意が正確に反映されているか、法的に問題がないかを確認する作業です。条項の適切性や不明確な表現、偏った内容がないかを検討し、必要であれば修正案を提示します。通常は法務担当者や弁護士が担当し、契約締結前に不備やリスクを洗い出すことでトラブルを防止する役割を担います。
レビューの手順としては、まず契約の背景や内容を把握し、問題となり得る条文を抽出します。次に、修正案の検討や関連法令の確認、類似契約書や自社ひな形との比較などを行い、最終的に契約内容を整えるという流れです。これにより、契約書のリスクを低減し、より安全な契約締結を目指します。
契約書レビューの従来の課題
従来の手作業中心の契約書レビューには、主に三つの課題がありました。
一つ目は、時間と労力の負担です。契約書を一文ずつ精査し、必要に応じて調査や修正を重ねるには膨大な工数がかかり、締結までに時間を要します。そのため法務担当者の業務が逼迫し、他の業務に支障が出ることもあります。
二つ目は、業務の属人化です。契約書レビューには高度な専門知識が求められるため、特定の担当者に業務が集中しやすく、組織内に知識が蓄積されにくいという問題が生じます。担当者の退職や不在によって業務が停滞するリスクも否めません。
三つ目は、法的リスクの見落としです。人手によるチェックでは、知識の限界や確認漏れにより重要なリスクが見逃される可能性があります。また、法令の変化に追随しきれず、最新の基準に合致しない契約書を用いてしまうケースもあります。これらの課題により、企業は想定外のトラブルやコンプライアンス上の問題に直面する可能性が高くなります。
契約書レビューシステムとは
契約書レビューシステムは、AI技術を活用して契約書の内容を自動でチェックし、法的なリスクを可視化するリーガルテックの一種です。従来の手作業に比べて効率性と正確性を高め、契約書業務全体の改善を支援します。
システムでできること
契約書ファイルをアップロードするだけで、AIが内容を解析し、リスクのある条文や不足している項目、曖昧な表現などを自動で検出します。システムによっては、リスクの重要度を段階的に表示したり、トラブル事例を提示してリスクの背景を示してくれたりするものもあります。これにより、レビュー作業の時間短縮に加え、経験が浅い担当者でも適切な確認が行えるようになります。また、AIによる指摘と法務担当者の確認を組み合わせることで、チェック漏れのリスクも低減します。
契約書レビューシステムはチェックだけに留まらず、修正案の提示、テンプレートとの比較、修正履歴の保存、社内共有など、契約業務全般を支援する機能を備えています。中にはドラフト作成や契約書の管理機能まで含む包括的なサービスもあります。
導入が進む背景と業界動向
契約書レビューシステムの導入が進んでいる背景には、働き方改革とAI技術の進化があります。法務部門でも効率化が求められる中、人手不足や属人化の解消を目的にIT導入が加速しました。また、コロナ禍によるリモートワークの普及が、電子契約やクラウド型レビューの需要を一気に高めました。加えて、自然言語処理技術の進歩により、日本語契約書の高度な解析が可能となり、2019年以降AIレビューサービスが実用化されています。LegalOn TechnologiesやGVA TECHなどが市場を牽引し、大手企業を中心に導入が広がっており、法務分野におけるDXの動きが活発化しています。
契約書レビューシステムのメリット
契約書レビューシステムを導入することで得られる利点は多岐にわたります。AIの活用により、レビューの品質向上、業務効率化、属人化の解消、そしてコンプライアンス強化が実現できます。
レビュー品質の向上
AIが契約書の条文を網羅的にチェックし、不足や曖昧な表現、自社に不利な条項を検出します。人では見落としやすいリスクも拾い上げるため、レビューの精度が向上します。システムによる一貫した基準により、担当者ごとの品質差が減り、一定の水準が保たれます。経験の浅い担当者もガイダンスに沿ってチェックでき、教育コストをかけずにチーム全体の底上げが可能です。AIと人のダブルチェック体制によって、抜けや漏れのない精度の高いレビューが実現できます。
業務効率の大幅改善
AIが調査や確認作業を代行することで、レビューにかかる時間を大幅に削減できます。判例検索や過去の契約書との照合も自動化され、契約締結までの期間が短縮されます。社外の弁護士に依頼していた場合は、回答を待つ時間が省かれ、スピードが格段に向上します。また、外部委託費の削減や残業削減にもつながり、コスト面でも効果があります。新人も即戦力として活用でき、人材育成の負担も軽くなります。
法務部門の属人化解消
システム上に条文例や修正履歴、コメントが蓄積されるため、知見が組織全体で共有されます。担当者の異動や退職があっても、ナレッジが継承され、品質が維持されます。複数人でのレビューもスムーズに行え、「属人的な業務」から「チームでの対応」へと変化します。操作性も高いため、新任の担当者も早期に戦力となり、全体の業務体制を安定させる助けになります。
コンプライアンス強化・リスク削減
AIは契約書全体をチェックし、法令との整合性や不足条項を自動で検出します。頻繁に変わる法規制にも対応可能で、常に最新基準でレビューが行えます。弁護士が監修したAIモデルを採用するサービスも多く、実務に即した質の高い指摘が可能です。加えて、リスクの背景や修正例まで提示する機能により、実践的な対応が可能となります。これによりリスクの早期発見と是正が可能となり、法的トラブルを未然に防ぐ体制づくりに役立ちます。
契約書レビューシステムの主な機能
契約書レビューシステムには、レビュー業務を効率化・高度化する多様な機能が備わっています。ここでは重要な機能を項目ごとに紹介します。
条文の自動チェック・リスク検出
契約書をアップロードするだけで、AIが全体を解析し、法的リスクや不明確な条項、不足項目などを自動で抽出します。検出内容はリストやハイライトで視覚的に示され、重要度別の色分けや具体的なリスク説明も提供されます。日本語契約書はもちろん、英文契約書に対応しているシステムも多く、英語が不得意な担当者でも対応可能です。この機能は、レビューの初期段階で問題点を迅速に洗い出す上で中核を担います。
契約テンプレートの管理
自社の契約書テンプレート(ひな形)をシステムに登録し、レビュー対象の契約書と条項単位で比較できます。相手方からの契約案と自社基準との差異を即座に確認でき、修正ポイントが明確になります。また、実績あるテンプレート集を搭載しているサービスでは、新規契約書の作成も効率化され、抜け漏れの少ない文書作成が可能になります。
レビュー履歴・ログ管理
契約書ごとのレビュー履歴や操作ログが自動で保存され、いつ誰が何を修正したかが明確に記録されます。バージョン間の差分確認や進捗管理も容易になり、チームの業務分担や全体の可視化に役立ちます。過去の対応履歴はナレッジとして蓄積され、新たな案件への応用が可能です。
コメント・社内共有機能
契約書の特定条項にコメントを残し、社内の関係者と情報共有できる機能です。複数人での同時レビューや部門横断的なフィードバックのやり取りがスムーズに行え、チーム全体の認識を揃えながらレビューを進められます。アクセス権限の管理により、機密性の高い内容でも安全に共有できます。
クラウド対応・セキュリティ対策
クラウド型システムでは、インターネット経由でどこからでもアクセスでき、リモート環境でも契約業務が可能です。契約書データはクラウド上で暗号化されて保管され、通信の安全性も確保されています。提供各社はアクセス制限や監査ログ管理を徹底しており、多くが外部のセキュリティ認証を取得しています。利用企業も自社ポリシーに沿った運用を行うことで、安全かつ効率的な契約管理が実現できます。
契約書レビューシステムの選び方
契約書レビューシステムを導入する際は、自社のニーズに合ったサービスを見極めることが大切です。特に重視すべきは、対応契約書との相性、AIの精度、料金体系、そしてセキュリティやサポート体制です。
まず、自社で頻繁に扱う契約類型に対応しているかを確認しましょう。NDAや業務委託契約は多くのシステムで対応していますが、専門性の高い契約は精度に差が出る場合があります。日本語だけでなく英文契約を扱うなら、多言語対応の有無も確認が必要です。また、自社独自の条文を登録・比較できる機能も実用性の鍵となります。トライアルで実際の契約書をレビューさせ、リスクの抽出精度を事前に確かめるのが望ましいでしょう。
AIの精度も重要です。指摘の過不足や、法改正への追随力はサービスによって異なります。ユーザーがAIに自社ポリシーを学習させる機能があるかどうかも確認しましょう。AIの継続学習が可能であれば、より自社に適したレビュー結果が得られるようになります。
料金は、ユーザー数や機能内容によって変動します。多くのサービスが月額制ですが、従量課金やオプション追加で費用が増える場合もあります。外注費や工数削減の見込みと比較し、費用対効果を試算しましょう。
最後に、情報管理の観点からセキュリティ体制は必須チェック項目です。通信の暗号化、データの保管場所、認証取得状況などを確認し、自社ポリシーに適合するかを見極めましょう。加えて、初期設定支援や問合せ対応、アップデート頻度などサポートの充実度も比較し、長期的に安心して使える体制を整えているかがポイントになります。
おすすめ契約書レビューシステム3選
ここでは、企業規模を問わず利用されている代表的な3サービスをご紹介します。
LegalForce(リーガルフォース)
LegalForceは、株式会社LegalOn Technologiesが提供するAI契約書レビューシステムです。条文の自動チェック、修正案の提案、契約ひな型検索など多機能で、国内導入社数は1,000社を超えます。契約種類の対応範囲が広く、英文契約や法改正への対応も可能です。料金は非公開ですが、ユーザー数や契約種類、機能の範囲によって変動し、一般的に中堅〜大企業向けの価格帯とされています。詳細は個別見積もりでの対応となっています。
OLGA(旧GVA assist)
GVA TECH株式会社が開発したOLGAは、AIによる条文チェックに加えて、自社独自のレビュー基準を反映できる柔軟性が特徴です。過去の契約書をナレッジ化して社内で共有できるため、法務の属人化を防ぎやすい設計となっています。料金は公開されておらず、モジュール構成やユーザー数により異なります。比較的中小企業でも導入しやすい価格構成が用意されており、コストパフォーマンスを重視する企業に支持されています。
LAWGUE(ローグー)
FRAIM株式会社が提供するLAWGUEは、文書の種類を問わず契約書のレビュー・作成ができるクラウドドキュメントエディタです。ナレッジAIレビュー機能により、自社特有の契約パターンをAIに学習させてチェック精度を高めることができます。料金は要問い合わせですが、中小〜大手企業向けに段階的なプランが用意されており、無料トライアルでの精度確認も可能です。
契約書レビューシステムを活用して業務の質と効率を高めよう
契約書レビューシステムは、AIを活用して条文のチェックやリスク抽出を自動化し、レビュー品質の向上と業務効率化を実現します。属人化の解消やコンプライアンス強化にもつながり、法務業務の高度化を支援します。導入にあたっては、自社の契約内容や業務体制に合った機能・AI精度・料金体系を比較し、セキュリティとサポート体制にも十分配慮することが重要です。適切なシステム選定により、契約業務の生産性と安全性を大きく高めることができるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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