- 作成日 : 2025年7月9日
契約書の数え方は?枚、通、部の使い分けを解説
契約書を数えるとき、『1枚』『1通』『1部』、どれを使えばいいか迷ったことはありませんか? 日常業務で頻繁に扱う契約書ですが、その数え方となると自信がない方もいらっしゃるかもしれません。
実は、これらの単位にはそれぞれニュアンスの違いがあり、状況に応じて使い分けるのが一般的です。この記事では、そんな契約書の数え方「枚」「通」「部」の正しい使い分けを、分かりやすく解説していきます。
目次
契約書の数え方
契約書をはじめとするビジネス文書を数える際には、主に「枚(まい)」「通(つう)」「部(ぶ)」という3つの単位が用いられます。これらの単位は、それぞれ指し示す対象や状況が異なるため、適切に使い分けることが重要です。
枚(まい)
「枚」は、物理的な紙の枚数を指す最も基本的な単位です。契約書が1ページで完結するようなシンプルな場合、例えば簡単な領収書を兼ねた契約書や、一定の申込書などでは、「1枚の契約書」と表現することがあります。しかし、「枚」はあくまで物理的な紙の存在を前提とした単位であり、契約内容の完全性や独立性を示すものではありません。
通(つう)
「通」は、主に相手方に送付・交付する書簡や通知、証明書などを数える際に用いられる単位です。契約書を郵送で送る場合や、電子メールで送信する電子契約書の場合には、「契約書を1通送付する」といった形で使用されます。この「通」という単位は、契約書が単に保管されている状態ではなく、「伝達される」という動的な状態を示唆します。印紙税法との関連でも「通」は重要な意味を持ち、契約の成立を証明する目的で作成された文書は、それぞれが「1通」として課税対象となり得ます。
部(ぶ)
「部」は、複数枚で構成される一組の文書や、同じ内容の文書を複数作成した場合の各組を数える単位です。契約書は通常、複数ページにわたり、かつ契約の当事者の数だけ作成・保管されるため、「契約書2部を作成し、各自1部を保有する」というように「部」で数えるのが最も一般的です。「部」という単位は、契約内容の完全な一揃い(セット)を指し、契約当事者がそれぞれ保有する契約書の単位として最も適切です。
「枚」「通」「部」の使い分け早見表
単位 | 主な対象・状況 | 特徴・数え方のポイント |
---|---|---|
枚 | 1枚で完成する書類、複数ページの書類の一部分 | 物理的な紙の枚数を指します。契約書全体を指す場合は、それが1枚で完結している特殊なケースに限られます。 |
通 | 相手方への送付・交付、通知、証明書、電子メールでの送信 | 伝達される文書の単位です。契約書が当事者間で移動する際や、特定の相手への意思表示として機能する際に用いられます。印紙税法上、契約の証拠となる独立した文書単位としても解釈されます。 |
部 | 複数ページで構成される一組の契約書、当事者保有分 | 契約内容の一揃い(セット)を指します。契約当事者の数だけ作成・保管するのが一般的です。電子契約書も同様に「部」で数えるのが通例です。 |
「式(しき)」を使うケース
「式」は、複数の異なる種類の書類をひとまとめにして一括りとして扱う場合に用いる単位です。例えば、契約書本体に加えて、覚書、仕様書、図面など、契約に関連する複数の文書群全体を指して「契約書類一式」と表現するような場合です。「式」は個々の契約書を数える際に通常使用される単位ではなく、関連文書の集合体としての「パッケージ」を示す際に用いられます。
状況別・種類別 契約書の数え方
契約書の数え方は、文書の状態や種類によって使い分けが必要です。
電子契約書の数え方
電子契約書も一般的には「1部、2部」と「部」で数えます。ただし、電子メールなどで相手方に送信する際には、「1通、2通」と「通」で数えるのがより適切です。電子契約書を印刷した場合は「枚」で数えることもあります。最も大きな違いは印紙税の取り扱いで、電子契約書は物理的な「紙」の文書ではないため、一般的に印紙税が不要とされています。
契約書は何部作成する?
契約書は契約当事者の数だけ作成するのが基本です。2社間契約であれば2部、3社間契約であれば3部作成し、各当事者がそれぞれ1部ずつ保管します。これは、各当事者が契約内容の証拠となる文書を確実に保有するためです。
- 原本・正本:最初に作成され、当事者全員が署名または記名押印した、契約の成立を直接証明する文書。
- 副本:原本(正本)と同一の内容で、控えとして作成された文書。
- 写し・謄本:原本を複製したもの。単なるコピーは通常印紙税の対象外ですが、契約の成立を証明する目的で作成され、当事者の署名押印などがあれば課税対象となることがあります。
覚書・合意書の数え方
覚書や合意書も契約書の一形態であり、数え方は基本的に他の契約書と同様です。通常、契約当事者の数だけ「部」で作成され、各当事者がそれぞれ1部を保管します。これらの文書も、記載内容によっては印紙税の課税対象となる場合があります。
契約書の「別紙」や「添付書類」の数え方
別紙や添付書類は、契約書本体と一体のものとして扱われ、契約書の一部を構成します。契約書本体を「1部」と数える場合、それに付随する別紙や添付書類もその「1部」の中に含まれると解釈するのが一般的です。印紙税の観点からも、別紙の内容も契約書本体と一体として評価されます。
印紙税法から見た契約書の「通」
契約書の数え方において、特に注意が必要なのが印紙税法との関連です。
印紙税法における「課税文書」と「作成」の定義
印紙税は、印紙税法で定められた「課税文書」に該当する文書の「作成」に対して課税されます。「作成」とは、単に調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することを指します。つまり、契約書が相手方に交付されたり利用されたりする時点で「作成」が完了し、課税義務が発生します。
契約書における「1通」の解釈
印紙税法上、契約書は通常「通」を単位として課税されます。「1通」とは、契約の成立を証明しうる独立した文書単位を指します。したがって、当事者間で同じ内容の契約書を複数作成し、それぞれが署名押印して契約の証とする場合、その作成された契約書の数だけ「通」が存在し、それぞれに印紙税が課税されるのが原則です。
2通以上作成された契約書の印紙税の扱い
一つの契約について契約の成立を証明する目的で2通以上の文書が作成された場合、その全ての文書がそれぞれ課税対象となります。例えば、売主と買主が双方の控えとして同一内容の契約書を2通作成し、それぞれが署名押印した場合、その2通ともに収入印紙の貼付が必要となります。
電子契約なら印紙税は不要?
電子契約においては、一般的に収入印紙の貼付は不要とされています。これは、印紙税法が「課税文書の作成」を物理的な「紙媒体」の作成と解釈しているためです。電子データは印紙税法上の「用紙」に該当せず、電子データの交換は物理的な「文書の交付」とは見なされないため、印紙税が発生しないという考え方が基本です。ただし、電子契約書を印刷して契約当事者双方が署名押印するなどして使用した場合には、その印刷物が課税文書に該当し、印紙税が必要となる可能性があります。
契約書の正しい数え方で契約業務の信頼性を高めよう
契約書の数え方は、業務の正確性、効率性、法務・税務上のコンプライアンスといった重要な要素に関わっています。「枚」「通」「部」の正しい使い分け、電子契約書や覚書などの状況に応じた数え方の実践は、日々の業務をスムーズに進めるための第一歩です。
特に印紙税法との関連では、契約書の「通」の解釈が納税義務に直結するため、正確な理解が不可欠です。契約書作成時の管理番号や枝番の活用、社内ルールの整備といった工夫は、組織全体の契約書管理体制の質を向上させ、潜在的なリスクを低減させる効果も期待できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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