• 作成日 : 2025年5月14日

義務とは?意味や例文、権利との違い、国民の三大義務などをわかりやすく解説

義務とは、人がある行為をしなければならないとされる法的・道徳的な責任や決まりごとです。義務が課される対象は、個人と法人に関わらずその内容によってさまざまですが、特に企業活動において、義務を正しく理解し守ることは、取引相手や顧客から信頼を獲得する第一歩となります。

本記事では、義務の基本的な意味から、法律・契約・社会的観点での具体例、国民の三大義務、そして義務と権利との関係まで、詳しく解説します。

義務とは

義務は、端的にいえば「しなければならないこと」です。

各個人の自由な意思によらず、法的あるいは道義的に「そうするべき」とされるものを義務といいます。これは、社会的規範や道徳、法律、個別に結ばれる契約などに応じて生じるものであり、「責任」や「役割」といった言葉にも近い意味合いがあります。

ここでは、広義の「義務」について解説していきます。

義務の意味

義務という言葉は、日常的にも法律の文脈でも頻繁に用いられ、その意味や範囲については広く解されます。

一般的に義務とは、ある立場や関係性に基づいて果たすべきとされる行動や責任のことを示し、言い換えれば「なすべきこと」や「求められる責任」と表現することもできます。

義務は、必ずしも法律や契約上の義務に限られるものではなく、明文化されていない倫理観や道徳規範も含みます。

義務の例文

義務にはさまざまな種類や使われ方があります。例えば以下のようなものです。

  • 車を運転するときには信号や道路標識などに従って通行する義務がある
  • 企業が従業員を雇用する際には、労働契約を締結し、契約の範囲内の労働をさせる義務を負う
  • 企業活動においては、利益の追求だけでなく、社会貢献にも取り組まなければならない義務が課される
  • 成人は選挙の投票に参加する義務がある(努力義務)

このように義務は、法律に定められるものだけにとどまらず、契約関係や社会的な慣習など、さまざまな場面や条件において守るべき事項や求められる行動を含みます。また、義務が課される対象も、一部の個人、国民全体、さらには企業単位など、場面や内容に応じて幅広く設定されることがあります。

さらに、法律などで明文化され、違反すると罰則が科される義務もあれば、社会の規範として浸透しており、罰則はないものの守ることが当然とされるような潜在的なものまでが、義務という言葉に内包されます。

義務と権利の違い

義務とは、果たさなければならない責任や役割であり、権利とは自分が正当にもつ自由や利益を受ける資格です。

義務と権利は表裏一体の関係にあるとされ、どちらが先に発生するかについて、明確な順序はありませんが、基本的人権などの一部の権利は、義務を果たしているか否かに関わらず、すべての人が生まれながらにしてもつものとされます。

権利とは

権利とは、個人や法人が正当に有している資格や利益のことを指し、他者によって不当に侵害されることがないよう、法律や社会制度、契約によって保護されるものです。

すべての人が必ずもっている権利には、生命・身体・表現の自由などの基本的人権があり、その他にも所有権や債権などの財産権、さらには契約上の権利などがあります。

一方で、法人がもつ権利は、法律や契約に基づいて発生する権利が重要視されます。具体的には、義務の履行に対する代金請求権や、成果物の納入請求権、使用許諾に関する権利などがあります。これらの権利は明文化して定義づけることにより法的拘束力をもち、金銭的に保証されることがあります。

権利と義務はどちらが先か

権利と義務はどちらが先かは議論が分かれるところにあります。一般的にはこの問いに明確な答えはなく、その内容によってさまざまな考え方があるとされています。

例えば、人は生まれながらにして基本的人権をもつという起点に立てば、権利が先にあったうえで各種義務が課されていると考えられます。一方で、契約上合意したルールに基づき義務を果たした結果、その対価を請求できるという場面では、義務が先にあると考えることもできます。

実際には、権利と義務はお互いに支え合う関係にあり、どちらか一方だけでは成り立ちません。どちらが先かよりも、両方をバランスよく実行することが大切です。

義務と努力義務の違い

努力義務とは、法令等により「守るよう努めなければならない」と定められた行為を指し、強制力や罰則は伴わずに、推奨のみされている行動です。

企業活動において努力義務違反は、法的リスクを負う可能性は低いものの、社会的責任や信頼性の観点から対応が求められる場面も多くあります。また、努力義務は将来的に義務化される可能性もあるため、早期に対応することで企業価値の向上やリスク回避につながるといえます。

以下、義務と努力義務の違いに着目して解説します。

義務は強制力がある

義務は守らなければならないルールであり、強制力があります。

法的に定められた責任という意味での義務の場合、守らなければ罰則が科されることもあります。例えば、税金を納める義務や子どもに教育を受けさせる保護者の義務などがこれにあたります。

このような義務には法律上の強い拘束力があり、個人が勝手に無視することはできません。

努力義務は強制力がない

一方、努力義務は可能な限り取り組むべき目標のようなものであり、強制力がありません。

努力義務とは、その名の通り「努力することが求められる義務」です。これは法律で「~~するよう努めなければならない」と定められているもので、実際にそれをしなかったとしても基本的には罰則はありません。

例えば、企業に対する女性の活躍推進や、自治体に対する環境対策の強化などが努力義務として定められることがあります。

努力義務の詳細については、以下の記事も参考にしてください。

義務の種類

ビジネスや日常生活において、私たちはさまざまな義務を負う場面があります。これらの義務は、その性質や法的拘束力の強さによって分類され、対応の仕方も異なります。

ここでは、代表的な義務の種類について、それぞれの特徴や違いをわかりやすく解説します。

法律上の義務

法律上の義務とは、各種法令によって定められた守るべきルールのことです。

一例として、以下のようなものがあります。

  • 憲法に定められた納税の義務
  • 道路交通法に定められた交通ルールを守る義務
  • 労働基準法に定められた労働基準を守る義務

これらの義務に違反した場合には、罰金や刑罰などの法的制裁を受けることがあります。それほど法律上の義務は、社会の秩序と安全を保つために必要不可欠なものであり、すべての人が平等に従うことが求められています。

契約上の義務

契約上の義務とは、契約書や合意などによって当事者間で定められるルールのことです。

具体例としては、売買契約における支払義務、雇用契約における労働義務、業務委託契約における業務完遂の義務などがあります。これらの義務は、当該契約が成立した時点で法的効力をもち、履行されなかった場合には追完請求権や損害賠償責任などが生じます。

契約上の義務の重要度は、すべての人に一定であることが原則である法律上の義務に比べて個別的ですが、当事者間の信頼と公平を守るうえでは非常に重要なものです。

社会的義務

社会的義務とは、法律などで定められてはいないものの、社会の一員として期待される行動や責任のことです。

具体例としては、以下のような行動が挙げられます。

  • 高齢者や困っている人に対して親切にする
  • ごみを分別して捨てる
  • 列に並ぶときは順番を守る

社会的義務を守らなかった場合に法的な罰則や賠償の責任はないものの、特に企業においては社会的な信頼を失い、ブランドイメージを失墜するなどの影響を受け、間接的に経済的損失を被る恐れがあります。

政治的義務

政治的義務は、国民として国家や社会の政治活動に関わる義務を指します。

代表的なものには、「国民が選挙で投票する義務」「公務員が公共の利益を考えて職務を遂行する義務」などがあります。

なお、日本において投票の義務は努力義務にとどまります。投票の義務などといった努力義務は民主主義を支える土台であり、個々の市民が自覚的に果たすことが求められます。

これに対して政治的責任とは、政治家や公務員などが、自らの行動の結果に対して負うべき責任のことをいい、政治のために果たすべき行動を指す政治的義務とは異なります。

日本国憲法における国民の三大義務とは

日本国憲法では、国民が果たすべき三大義務が定められています。

国民の三大義務は「教育の義務」「勤労の義務」「納税の義務」の3つです。これらは、国民として、また社会の一員としての役割を果たすために求められる基本的な責任であり、社会の維持と発展に欠かせないものとされています。

ここでは、国民の三大義務をそれぞれ解説します。

勤労の義務

勤労の義務は憲法第27条に定められており、すべての国民は、働く権利をもつと同時に、勤労の義務も課されています。この義務は、社会や国家の発展に貢献するための勤労を義務付けるものです。また、国民が各自の力で生活を支えるという自立の精神を育むものでもあります。

さらに憲法では勤労を権利としても位置づけており、この権利を保障するために法令による労働環境の整備や適正な賃金の保障も重要視されています。

納税の義務

納税の義務は憲法第30条に定められており、国民が自分の所得や財産に応じて税金を納める義務のことです。税金は、道路や学校、警察、福祉などの公共サービスを維持するための財源となります。この義務を通じて、国民は社会全体の運営に参加し、互いに支え合う仕組みに貢献しています。

納税の具体的な金額や納税方法は、各種法令で定められており、正しく申告し期日までに支払う必要があります。

教育を受けさせる義務

子どもに普通教育を受けさせる義務は、憲法第26条に定められています。これは子どもを育てる保護者に課せられた義務であり、子どもが社会で自立し、基本的な知識や技能を身につけるために重要なものです。

義務教育は、小学校から中学校までの9年間とされ、納められた税金によって提供されます。この義務を通じて、すべての子どもが平等に学ぶ機会を得ることができ、社会全体の知的水準や公正な機会が保たれます。

義務を守らないとどうなる?

義務にはそれぞれ必要性があり、守らなかった場合には内容に応じた影響や責任が生じます。

ここでは義務を守らないとどうなるのかについて解説します。

罰則や経済的負担が生じる

各種法令や契約で定められた義務を守らない場合、罰則や経済的な負担が発生します。

例えば、税金を納めなければ延滞金や罰則が科されますし、交通ルールを破れば反則金や免許停止の対象になります。また、契約上の義務に違反すれば、違約金や損害賠償の対象になることがあります。

法律に違反することで経済的な負担だけでなく、刑事罰を受ける恐れもあり、これは日常生活に大きな影響を及ぼします。さらに法人が法律に違反した際には行政処分の対象になることもあり、違反者として社名が公表されるなど、ブランドイメージを損なう結果につながりかねません。

これらのペナルティは義務の重要性を示すものであり、社会秩序を守るために設けられています。

社会的信用が低下する

義務を果たさない人は、社会からの信用を失うリスクを負います。

例えば、過去に税金や保険料の未納、契約違反などがあると、企業や役所、金融機関などから「信用できない人」と見なされることがあります。その結果、ローンを組むことが難しくなったり、就職や転職で不利になったりするなどの影響が生じることもあります。

また、前述の通り義務を果たさずに行政処分を受けた法人は、既存の取引先からの信用を失う恐れがあります。さらに新規の取引先からも信用を得られず、事業活動に大きな影響を及ぼすことも考慮しなければなりません。

社会的信用を失うと後から取り戻すことは難しく、長期にわたり不利益を被る恐れがあります。社会の一員として信頼を保つには、義務を誠実に果たすことが大切です。

人間関係や生活に影響を与える

義務を果たさないことで、周囲との人間関係や生活環境に影響を与えることがあります。

例えば、「地域のごみ出しルールを守らない」「地域活動に協力しない」など、社会的義務を怠ると、近隣住民や職場での人間関係が悪化する原因になります。

義務を守らないことで、生活圏内における孤立や対人トラブルを招くことがあり、生活の質が下がることにもつながります。

義務を守るためのポイント

義務に違反すると、金銭的損失だけでなく、社会的な信用の喪失といった深刻なリスクを伴います。安定した事業活動や日常生活を継続していくためには、義務に違反しないよう次のようなポイントに注意する必要があります。

関連法令の把握

1つめは、関連法令の定期的な把握とアップデートです。義務を守るためには、まず自身が守るべき義務の内容を知らなければなりません。

そのためには最新の法令情報や判例、ガイドラインに基づいた運用を知ることが不可欠です。自社の業種に関係する主要法令など、自分が関わる可能性のある「義務」を定期的に確認し、社内規程や業務フローに反映させる体制を整える必要があります。

ルールづくりと教育

2つめはルールづくりと教育です。自分が関連法令などの義務を把握しているだけでは、周りの人がなんらかの義務違反を犯す可能性が生じます。

例えば企業の場合は、社内ルールの整備と従業員教育が必要です。義務の履行には各個人の意識と行動を指導、管理することが課題となります。

就業規則コンプライアンスマニュアルを明確に定め、研修などを通じて従業員に周知・徹底を図ることが重要です。特に個人情報や労務管理の分野では、現場の理解度が直接リスクに結びつきます。

義務を守ることは個人や企業の信頼を守ることであり、リスクマネジメントにおいて重要な観点です。ポイントを押さえて義務違反のないよう気をつけましょう。

義務の理解は信頼される組織と人をつくる第一歩

義務とは、社会や組織の中で個人や企業が果たすべき責任であり、信頼と秩序の土台となる重要な要素です。

法的な義務、契約上の義務、社会的義務など、いずれの義務においても、それを誠実に守ることは、ビジネスや人間関係、社会生活における信用の維持・向上に直結します。また、国民の三大義務も、企業活動の一部として無関係ではありません。企業活動は、従業員一人ひとりの行動によって成立するものだからです。

社内外から信頼される組織づくりや持続可能な経営のためにも、義務を理解し遵守することが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事