- 作成日 : 2022年2月9日
電子承認とは?メリットや注意点を解説
契約書や稟議書、各種届出書など、社内には上席の承認を必要とする文書がたくさんあります。これらをすべてプリントアウトし、上司に内容を説明して渡し、承認用の捺印をもらって書庫の適切な場所に保管し……と、文書の承認や保管には数多くの業務プロセスがあり、生産性を下げる要因になっています。
このような業務プロセスを効率化するのが、電子承認です。今回は電子承認の概要や技術的な要件、メリット、注意点について解説します。
目次
電子承認とは?
電子承認とは、電子署名や電子印鑑などの技術を活用した申請・承認のワークフローのことです。電子署名や電子印鑑が登場する前は、紙の申請書を作成して申請者が捺印し、それを承認者の部屋やデスクまで持っていき閲覧を依頼し、承認者が確認して捺印する必要がありました。承認者が不在の場合は出直さなければならず、承認者が複数いる場合はこれらの作業を何度も繰り返すことになります。
従来の承認システムは、生産性向上の大きな妨げとなっていました。電子承認にすると申請から承認までのワークフローを電子的に進められるため、多くの企業では生産性の向上を図ることができるでしょう。
電子承認を導入するためには、業務フローをオンライン化できるかどうか検討するだけでなく、申請や承認が間違いなく申請者本人、承認者本人によって行われたことと、文書が改ざんされていないことを証明しなければなりません。
まず、電子承認のキモとなる本人性および非改ざん性の証明について解説します。
本人性の証明
電子印鑑には単なる印影の画像データのほか、印影をスキャンして作成するもの、印影データに作成者や捺印者の情報と捺印日時などの識別情報を加えたものがあります。本人性を証明しやすいのは3つ目であり、単なる印影データやスキャンタイプでは本人性を証明できません。
電子署名は紙の文書上で行われる署名や捺印を電子化したものであり、印鑑部分の電子化に留まる電子印鑑よりも広い意味を持ちます。有効な電子署名を行うためには、第三者機関である認証事務局による認証が必要です。認証事務局は国の認定を受けて本人性を担保し、それによって電子署名の法的効力が認められます。
本人性を証明するために、承認URLを利用するケースもあります。メールや電子承認システムを介して承認してほしい電子文書を承認者に送付する際、承認専用のユニークなURLを添付する方法です。承認者だけがこのURLを受け取ることが保証されるのであれば、この認証方法は有効です。ただし、第三者がURLを入手するリスクがあります。
非改ざん性証明
本人性に加えて、電子文書が第三者によって改ざんされていないことを証明する必要もあります。例えば電子印鑑の場合、識別情報を印影データに付加することで、申請者本人や承認者本人による捺印であることに加え、いつどの文書に対して申請や承認が行われたかも証明できます。
その際、識別情報の一部である「文書が作成された日時」が非改ざん性証明のポイントになります。これはタイムスタンプと呼ばれ、ある作業が実施された日時を正確に記録することで、その後改ざんが行われていないことを証明できます。改ざんされていれば、タイムスタンプが実際の日時とは異なるはずです。タイムスタンプは時刻認証局(Time Stamping Authority : TSA)が発行し、それを取得・記録することで非改ざん性を担保するものです。
タイムスタンプは、電子印鑑以外にも広く用いられています。電子承認システムにおいても、申請日時を取得・記録することがしばしばあります。
電子承認システムの導入
電子署名や電子印鑑などを活用して、利用者にとって使いやすいワークフローを内製で構築するのは容易ではありません。本人性や非改ざん性の証明には技術的に高いハードルがありますし、システムを開発した後の運用も複雑です。とはいえ、コストが安く機能が少ないシステムでは、セキュリティ上の不安が残ります。
近年、電子署名や電子印鑑、承認のワークフロー、本人性・非改ざん性の証明(セキュリティリスクへの十分な対策)など必要な機能を備えた電子承認システムを導入する企業が増えています。場合によってはカスタマイズが必要ですが、完成済みのシステムを導入するだけなら技術的なハードルは高くありません。
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電子承認を導入するメリット
電子承認には、本人性・非改ざん性の証明以外にもさまざまな効果とメリットがあります。ここでは、メリットを5つにまとめました。
承認までの時間が短縮できる
これまで紙の文書を作成して承認を得るまでには、複数のステップを踏む必要がありました。申請者が作成した文書をプリントアウトして捺印し、承認者に文書を届け、承認者は手が空いた時間に文書を確認して捺印し、申請者に文書を戻して、最終的に書庫や棚の決まった位置に文書を保管する必要がありました。
電子承認フローが定着すれば、いくつかの作業を省略できます。プリントアウトや承認者への提出、文書保管などは電子文書であれば不要です。電子文書の場合は最初から文書を作り直す必要もなく、修正も容易です。
リモートワークや外出先からでもワークフロー対応ができる
オンラインで申請から承認までの作業が完結するため、申請者と承認者が同じオフィスにいなくても問題ありません。リモートワークや外出先の空いた時間など、好きなタイミングで申請・承認が可能です。
紙の文書の場合、承認者が社内にいないと承認を得ることができません。承認者が多忙であっても、電子承認であれば時間や場所を選ばないため、双方の作業がスムーズになるでしょう。
印刷代のコストが削減できる
電子承認であれば文書のプリントアウトは不要なので、印刷代がかかりません。
書類の保管スペースが削減できる
従来の承認方法では、承認後の文書を数年間保管する必要がありました。保管文書は社内のスペースを圧迫し、会社によっては文書保管用の部屋やスペースをわざわざ確保する必要がありました。
電子文書の保管に物理的なスペースは必要ないため、その分オフィスを効率的に活用できます。保管用スペースを社員用スペースに変更したり、解約したりすることができるため、コスト削減や生産性向上を図れます。
内部統制が強化できる
内部統制とは、以下の4つの目的を達成するためのプロセスを指します。
- 業務の有効性と効率性
- 財務報告の信頼性
- 事業活動に関わる法令等の遵守
- 資産の保全
電子承認は業務の有効性と効率性、財務報告の信頼性を高めるものです。前述のとおり、承認業務を効率化しますし、財務活動に関わる各種社内文書の信頼性を担保する効果もあります。
マネーフォワード クラウド契約はワークフローから契約管理まで一元管理できる
マネーフォワード クラウド契約は、バックオフィスに必要なサービスを提供するマネーフォワード クラウドの一つです。契約書の作成から捺印、承認に至るまでのワークフローを電子化するとともに、契約に関わる社内および顧客とのやり取りから契約後の文書管理まで、すべてを一元管理することができます。
契約関連の承認を含めて、電子契約に必要な機能が揃っています。クラウド上で契約の締結と管理を行うため、専用のアプリケーションをダウンロード・インストールする必要はなく、アカウントを作成すればすぐに利用できます。カスタマイズ性にも優れ、ワークフローや電子押印の位置などを自社に合わせて柔軟に変更できます。
Adobe認定の電子証明書を使った電子署名が可能であり、本人性や非改ざん性も担保され、Adobe Readerで文書確認をする際に署名の有効性を確認できます。
契約後の文書管理についても、検索・更新対応の両面からサポートしています。契約内容を容易に検索することができ、閲覧権限を特定のユーザーに付与する機能や、契約後の更新時期を通知する機能もあります。
電子承認システムの導入で業務の効率化を
電子承認システムは、生産性向上を阻害する承認プロセスの煩わしさを軽減するバックオフィスシステムです。電子承認システムの導入によって文書の申請・承認がスムーズになるため、関係者は本来の業務に集中することができます。
電子承認システムを導入すると、承認までの時間を短縮できる、印刷・印紙代などを節約できる、内部統制が強化されるといったメリットを享受できます。バックオフィスの業務効率化を図るなら、電子承認システムの導入を検討することをおすすめします。
よくある質問
電子承認システムとは何ですか?
文書の作成から承認、その後の文書管理までの業務を電子化するシステムで、バックオフィス業務の効率化を図ることができるものです。詳しくはこちらをご覧ください。
電子承認システムを導入するメリットは何ですか?
主なメリットは以下の5つです。(1)承認プロセスの時間短縮、(2)場所を選ぶことなく文書の申請・承認が可能、(3)印紙や印刷代などのコスト削減、(4)書類の保管スペース削減、(5)内部統制の強化。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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