• 作成日 : 2025年3月31日

下請けいじめとは?禁止行為や対応方法・罰則について解説

下請けいじめとは、発注企業が不利な取引条件を押し付け、受注側に不利益を与える行為のことです。受注側からすると取引を打ち切られたくないと泣き寝入りしているケースも考えられます。

本記事では、下請けいじめの概要や下請けいじめに該当する行為などについて解説します。また、下請けいじめにあった場合の対応方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

下請けいじめとは

下請いじめとは、優位な地位にある親事業者(発注企業)がその立場を利用して、下請事業者(受注企業)に不当な要求をする行為のことです。ここでは、下請けいじめの概要について解説します。

下請法により親事業者の禁止行為が規定されている

下請けいじめとは、親事業者(業務の発注側)が優位な立場を利用して下請事業者に不当な要求をする行為のことです。詳しくは後述しますが、下請法に違反して公正取引委員会から勧告を受けた場合、違反した企業の名前や下請いじめの内容が公表されるため、注意しましょう。

下請けいじめに該当する禁止行為

下請法4条で定められている禁止行為11項目について解説します。

受領拒否

受領拒否とは、発注した商品を納品時に受け取らない行為を指します。在庫が余っていることを理由に注文品を受け取らないといったような行為が該当します。

下請代金の支払遅延

下請代金の支払遅延とは、物品受領後やサービス提供後の定められた日(60日以内)までに下請代金の支払いを実行しないことを指します。下請法では、支払期日を受領日から60日以内と定めています。次のような理由は、支払延期の正当な理由にはならないため注意しましょう。

  • 検品が完了していない
  • 下請側の請求書提出が遅れている

下請代金の減額

下請代金の減額とは、発注時に決めた代金を発注側が一方的に減額することです。

  • セールへの協力を促され、下請代金から一定割合が減額された
  • サポート業務を委託したが、問い合わせ件数が少なかったため減額した

返品

受け取った成果物を返品することです。たとえば、親事業者において取引先からのキャンセルが発生したために返品する行為などが当てはまります。

買いたたき

下請代金の設定が一般的な市場価格から大幅に低い金額にされることです。

購入・利用強制

購入・利用強制とは、自社製品を含む指定する商品やサービスの利用を強制することです。

報復措置

下請会社が下請けいじめを通報したことに対しての報復行為として、取引の縮小や中止などを行うことを指します。

有償支給原材料等の対価の早期決済

親事業者から下請事業者に対して有償で支給された原材料や部品に対して、下請代金と相殺したり、支払期日より以前に決済を求めたりする行為のことです。

割引困難な手形の交付

割引困難な手形の交付とは、下請代金の支払において一般的な金融機関では下請代金の期日までに割引(現金化)が難しい手形で支払うことです。

不当な経済上の利益の提供要請

下請事業者に対し、親事業者のために金銭や役務などの経済的利益の提供を求めることです。

たとえば、決算対策として協賛金の提供を求めて銀行口座にお金を振り込ませたり、当該委託契約に含まれない作業をさせたりする行為などが該当します。

不当な給付内容の変更及び不当なやり直し

下請事業者に不当な給付内容の変更や不当なやり直しをさせることで下請事業者の利益を不当に害する行為のことです。

下請取引に該当するかの判断基準

下請法では、下請取引を次の2つの側面で定めています。

  • 取引の内容
  • 発注する側と受注する側の資本金

それぞれ詳しく見ていきましょう。

下請法の規制対象となる取引

下請法の対象となる取引内容は、次の4つです。

  • 製造委託
  • 修理委託
  • 情報成果物作成委託
  • 役務提供委託

情報成果物作成委託とはコンテンツやソフトウェアの作成などを委託することで、役務提供委託とはビルメンテナンスや配送などサービスの提供を請け負っている事業者がそれらの行為を委託することです。

資本金による親事業者・下請事業者の区分

下請法では、取引内容に応じて、親事業者の資本金の規模と下請会社の資本金の規模が定められています。

親事業者下請事業者委託内容
資本金3億円超資本金3億円以下製造委託、修理委託、コンピュータプログラム作成の委託運送サービス、倉庫での物品保管サービス、情報処理サービスの委託
資本金1千万円超~3億円以下資本金1千万円以
資本金5千万円超資本金5千万円以下コンピュータプログラムを除く情報成果物の作成の委託運送・情報処理・倉庫保管を除くサービスの委託
資本金1千万円超~5千万円以下資本金1千万円以下

注意したいのが、超・以下という言葉です。3億円超では3億円は含まれません。いっぽう、3億円以下では3億円が含まれます。資本金額と委託内容の組み合わせにおいて、どこに属するのか正確に理解しておきましょう。

下請けいじめにあった場合の対応方法

下請けいじめにあった場合の対応方法について解説します。

親事業者との交渉

対応方法の1つめとして、親事業者との交渉が挙げられます。悪意はなく、下請法の知識不足で、下請けいじめをしている可能性もあるでしょう。

まずは、担当者間や上長レベルで交渉を行い、下請けいじめを受けていることを伝えてください。そのうえで、行為の是正や契約内容の見直しを求めるとよいでしょう。

指摘によって親事業者が違法行為と認識することで、下請けいじめがなくなる可能性もあります。

裁判外紛争解決手続(ADR)の利用

裁判外紛争解決手続(ADR)の利用も有効です。ADRとは、専門機関が間に入って裁判とは別の形で法的紛争の解決を図る手続きのことです。

ADRには、トラブルの内容ごとにさまざまな種類がありますが、下請けいじめに対しては中小企業庁の「下請かけこみ寺」を利用できます。下請かけこみ寺では、親事業者との間に調停人(弁護士など)が入って、話し合いで解決(和解)を目指す手続きのことです。

訴訟とは異なり非公開で行われるほか、無料で利用できる点がメリットです。

利用する場合は、まずは下請かけこみ寺へ連絡し弁護士などに相談したうえで、手続きを申し立てます。

公正取引委員会への通報

前述した方法で解決できない場合は、公正取引委員会への通報を検討してください。公正取引委員会では下請けいじめの有無を調査し、違反事実があれば親事業者に対して指導や勧告を行います。

通報する際は、各地域の公正取引員会事務所に相談するか、インターネット上の窓口を通して相談することも可能です。

損害賠償請求

下請代金の減額を受けたり、代金の支払いが行われていなかったりして損害が発生している場合には、損害賠償請求を行いましょう。未払い代金については、民事訴訟だけでなく裁判所の支払督促で請求することも可能です。

下請けいじめにあった場合の相談先

下請けいじめにあった場合の相談先について解説します。公的な相談先や民間の相談先は、次の通りです。

下請法に違反した場合の取り締まり

下請法に違反した場合の取り締まりについても理解しておきましょう。通報された親事業者は、公正取引委員会による次のような調査を受けることになります。

  • 取引内容の報告
  • 立ち入り検査

調査の結果、下請法の違反が認められた場合、公正取引委員会などから勧告や指導などの措置を受けます。なお、勧告を受けた場合、公正取引委員会のホームページ上で企業名が公開されるため、社会的ダメージにつながることは理解しておきましょう。

また、次のような行為があった場合には、50万円の罰金が科される可能性があるため注意しましょう。

  • 取引内容を報告しない
  • 虚偽の報告をする
  • 立ち入り検査を拒否する、妨げる

下請法の内容をしっかりと理解しておこう

下請けいじめとは、発注側が優位な立場を利用して受注側へ不当な要求をする行為です。下請法によって禁止行為が定められているため、その内容をしっかりと理解しておきましょう。

もし下請けいじめに遭っている場合には、まずは親事業者と交渉してみてください。それでも解決しない場合には、裁判外紛争解決手続(ADR)の利用や公正取引委員会への通報を検討しましょう。


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