- 作成日 : 2025年3月25日
民法94条2項とは?第三者の範囲や類推適用についてわかりやすく解説
民法94条2項は、1項で無効になる虚偽の意思表示を善意の第三者に対抗できないとする規定です。虚偽の外観を信じて取引をした第三者を保護することが目的です。裁判所では民法94条1項の「通謀」がなかったとしても、民法94条2項を類推適用し、広く認める傾向にあります。
本記事では、民法94条の意味や2項が適用されるケース、類推適用の判例について解説します。
目次
民法94条2項とは
民法94条では、次の条文が定められています。
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
引用:e-Gov法令検索 民法
虚偽の意思表示とは、本人が相手方と通じて、虚偽の意思表示をすることです。
ここでは、民法94条の内容や目的について解説します。
民法94条の概要
民法94条は、虚偽の意思表示が無効になることを定めた規定です。1項では、相手方と通じて行った虚偽の意思表示は、当事者間では無効であるという原則を規定しています。
2項は、虚偽表示の無効を善意の第三者には対抗できないとする規定です。そのため、94条1項の意思表示は、当事者間では無効ですが、善意の第三者との関係では有効であるとみなされます。
民法第94条の目的は、相手方と通じた虚偽の意思表示は原則として無効としながら、虚偽の外観を信頼した善意の第三者を保護することにあります。
虚偽の意思表示の無効について規定する
民法94条1項は虚偽の意思表示は無効になるという規定です。虚偽表示は、真意ではない意思表示と、相手方との通謀により成立します。
たとえば、売主と買主が真意では売買するつもりがないのに、お互いに相談をして土地の売買契約を装う行為が、虚偽表示に該当します。支払いを滞納し、土地が強制執行されそうになったとき、それを免れるために所有権を移転するといった状況が考えられるでしょう。
このような契約は本人の有効な内心的効果意思を欠き、民法94条1項により無効です。不動産の所有権は移転せず、登記名義を移していた場合でも効力は発生しません。売主は買主に対し、契約の無効を主張して、土地の所有名義を戻すように主張できます。
参考:e-Gov法令検索 民法
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ45選
業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い45個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
実際の契約に合わせてカスタマイズしていただきながら、ご利用くださいませ。
【弁護士監修】チェックリスト付き 改正下請法 1から簡単解説ガイド
下請法の改正内容を基礎からわかりやすく解説した「改正下請法 1から簡単解説ガイド」をご用意しました。
本資料では、2025年改正の背景や主要ポイントを、弁護士監修のもと図解や具体例を交えて解説しています。さらに、委託事業者・受託事業者それぞれのチェックリストを収録しており、実務対応の抜け漏れを防ぐことができます。
2026年1月の施行に向けて、社内説明や取引先対応の準備に役立つ情報がギュッと詰まった1冊です。
【弁護士監修】法務担当者向け!よく使う法令11選
法務担当者がよく参照する法令・法律をまとめた資料を無料で提供しています。
法令・法律の概要だけではなく、実務の中で参照するケースや違反・ペナルティ、過去事例を調べる方法が一目でわかるようになっています。
自社の利益を守るための16項目 契約書レビューのチェックポイント
契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
契約書のレビューを行う企業法務担当者や中小企業経営者の方にもご活用いただけます。
民法94条2項が適用されるケース
民法94条1項は、通謀して虚偽の意思表示をした当事者間に適用されます。不動産売買の例でいえば、売主と買主です。
民法94条2項が適用されるのは、虚偽の外観を信頼した第三者です。不動産売買の例でいえば、売買契約で移転した登記名義を信頼し、買主から不動産を譲り受けた者が該当します。
2項では意思表示の無効を善意の第三者に対抗できないため、第三者との関係では売買契約が有効になり、第三者は不動産を取得できます。不動産売買の売主は無効を第三者に主張できません。
民法94条2項における「善意の第三者」とは
民法94条2項は、意思表示の無効を善意の第三者に主張できないことを規定しています。
ここでは、「善意の第三者」の意味や範囲について解説します。
「善意の第三者」の定義
民法94条2項に規定する「善意の第三者」の「善意」とは、虚偽の意思表示について知らなかったことです。一般的に使われる「善意」とは意味が異なります。また、「第三者」とは、虚偽表示をした当事者およびその包括承継人以外で、虚偽表示の外形を信頼し、新たに法律上の利害関係を持つに至った者を指します。
不動産売買の例でいえば、建物の登記が虚偽の売買契約で行われたことを知らず、その有効性を信じて取引した者が該当します。
「善意の第三者」の範囲
「善意の第三者」の代表例は、仮装の売買契約で移転した不動産や債権の仮装譲受人から、さらに譲り受けた者です。
仮装譲受人から抵当権を取得した者や、さらに転抵当権を受けた者も94条2項で保護されます。また、虚偽表示の目的物を差し押さえた債権者も第三者にあたるとするのが判例です。
一方、次のような者は民法94条2項の第三者にはあたりません。
- 仮装譲受人の単なる一般債権者
- 先順位抵当権が仮装放棄され、順位上昇を信じた後順位抵当権者
- 債権の仮装譲受人から債権の取立てのために債権を譲り受けた者
民法94条2項の類推適用とは
民法94条2項の趣旨は虚偽の外観を信頼した者を保護することにあり、民法94条1項の直接適用の場合に限らず、類推適用が認められています。
民法94条1項は通謀による虚偽表示の場合を規定していますが、実際に虚偽の外観が発生する事案には、相手方との通謀が存在しないケースも少なくありません。土地売買の例でいえば、売主が買主の承諾なく、売買を仮装した場合があげられます。売主が仮装の土地売買契約書を作成して土地の登記名義を売主に移転した場合は、当事者間に通謀はありません。
判例では、そのような通謀のないケースでもできるだけ民法94条2項を類推適用し、善意(無過失)の第三者を保護しています。
民法94条2項に関連する判例
民法94条2項に関しては、これまで多くの判例が出ています。当事者間に通謀がなくても、虚偽の外観を信頼して取引をした第三者について民法94条2項を類推適用し、保護が図られている傾向があります。
判例の流れをみていきましょう。
自ら虚偽の外観を作出したケース
通謀はないが、売主が自ら虚偽の外観を作り出たことで、民法第94条第2項を類推適用した判例があります。
未登記の建物の所有者Xが、所有権を移転する意思がないのに、建物についてYの承諾を得てY名義の所有権保存登記を経由したときは、Xは善意の第三者に所有権を主張できないとした事例です。
相手方も虚偽の外観を利用している状況が、通謀して虚偽意思表示をした場合と同視できると判断したものです。
他人が作出した外観を了承したケース
その後、裁判所は権利者が虚偽の外観作出に関与したわけではなく、他人が作り出した外観を了承したケースでも民法94条2項を類推適用しています。
未登記建物の所有者が、その建物につき他人の所有名義で登録されていることを知りながら、これを明示または黙示に承認していた場合、その所有者は台帳上の名義人から取得した善意の第三者に対し、権利を主張できないとした事例です。
承認の範囲を超える虚偽の外観が作出されたケース
さらに、判例では権利者が虚偽の外観作出に関わったわけではなく、承認もしていない事案でも、民法94条2項を類推適用しています。
所有者XがYから頼まれて登記済証や印鑑登録証明書をYに交付し、Yはこれを利用してY名義の所有権移転登記をして善意の第三者に不動産を売却したという事案です。類推適用の理由として、Xが安易に重要な書類を渡したことに帰責性があるとしています。
判例は民法94条2項の類推適用を広く認め、取引を信頼した善意の第三者の保護を広げている傾向にあります。ただし、ただ取引の安全だけを尊重するというわけではなく、権利者の外観作出への帰責性を慎重に検討し、権利者の保護と取引の安全を比較衡量しながら結論を出していると考えられます。
民法94条2項の類推適用を理解しよう
民法94条2項は、1項に定める虚偽表示により作り出された外観を信じて新たに取引を行った第三者を保護する規定です。通謀して虚偽表示をした当事者は、善意の第三者に対して契約の無効を主張できません。善意の第三者とは、仮装譲受人から不動産や債権を譲り受けるなど、新たに法律上の利害関係を有するようになった者を指します。
取引の安全を保護するという民法94条2項の趣旨から、1項の要件である通謀がある場合に限らず、それと同視できるような場合には広く類推適用するのが判例の傾向といえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
【2026年下請法改正対応】資本金3億円以上の委託事業者が知っておくべき義務や禁止行為を解説
下請法は、委託事業者と中小受託事業者の取引における公正性を確保するために制定された法律です。違反があれば是正勧告や企業名の公表が行われ、信用失墜のリスクを伴います。本記事では、資本金3億円・5,000万円の基準や禁止行為、改正への対応などを…
詳しくみる権利濫用の禁止とは?濫用にあたる行為や事業者が注意すべき点を紹介
「権利濫用」とは、権利の行使ではあるものの、社会常識や道徳に基づいて判断すると無効にするのが妥当な行為のことをいいます。 企業も法律遵守のもと事業活動を行うべきですが、条文の内容に沿っていれば常に権利の行使が認められるわけではない点に留意し…
詳しくみる特許とは?特許権の出願方法も簡単にわかりやすく解説
特許とは、発明を公開する代わりに、その発明を保護する制度のことです。特許権を得ると、出願から20年間、権利の対象となる発明の実施を独占できます。本記事では、特許や特許権の意味のほか、取得方法や特許侵害にならないようにするポイントなどを解説し…
詳しくみる期限の利益とは?喪失通知書が届いた際の対応も紹介
契約締結にあたり「期限の利益」が与えられることで、債務者は余裕を持って債務の履行に取り組むことができます。しかし民法の規定により、あるいは当事者間の取り決めにより、期限の利益が喪失することもあります。 そもそも期限の利益とは何か、どのような…
詳しくみる破産手続開始原因である「支払不能」が認められるケースとは?
会社や個人が、債務超過や支払不能に陥ったとき、破産をすれば、債務の負担から解放されます。破産手続は、裁判所に申立てて行いますが、破産開始決定されるには、一定の要件を満たしていなければなりません。 本稿では、要件となる破産手続開始原因の1つで…
詳しくみる公益通報者保護法とは?対象者や保護の内容、罰則について解説
公益通報者保護法とは、企業による不正行為などを通報した従業員を保護するために制定されている法律です。企業による不祥事は社会に広く悪影響を及ぼす恐れがあったり、不正行為を従業員が通報したりすることで未然に防げるケースもありますが、通報を行った…
詳しくみる


