• 作成日 : 2025年3月24日

企業向け同意書の書き方とは?テンプレートを基に例文や書き方を解説

同意書とは、取引や契約における同意の意思表示を形に残すための書類です。口頭でのやり取りにはリスクも伴いますので、ビジネスの重要なシーンで“同意を得る”または“同意をする”ときは、同意書を作成するようにしましょう。そのために知っておきたい書き方のポイントについて、当記事ではひな形や具体例を用いて解説します。

同意書の法的効力とは?

同意書は「当事者間の合意内容を明確に示すための文書」です。

適切に作成された同意書には法的拘束力が生じますが、その内容が法令や公序良俗に反しないことが前提となります。

なお、口頭での合意も法的に有効ではありますが、企業がビジネスの一環で同意の意思表示をする・受け取るのであれば、文書にしておくべきです。
同意書を作成することで、後日にトラブルが起きて「何に同意したか」を証明する必要が出てきた際でも、同意内容や時期を客観的に明示できます。

同意書の消滅時効

法的に認められる権利であっても、一定期間が経過することにより消滅することがあります。このルールを消滅時効といい、同意書の記載内容に基づいて発生した権利も、長期間行使しなければ消滅してしまいますので、注意しましょう。

権利の性質によって適用される消滅時効の期間は異なりますが、一般的な債権については次の規定が適用されます。

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

引用:e-Gov法令検索 民法第166条第1項

つまり、基本的には権利の行使が可能となり、その事実を知った時点から「5年」以内に行使しないと、権利は消滅してしまいます。あるいは、権利が行使できる状態になっているにもかかわらず、それを認識しないまま「10年」が経過してしまっても同様です。

なお、この5年と10年という期間は、いずれか早い方が適用されます。

ただし、消滅時効が適用されるのは同意書に基づいて発生した権利であって、同意書という文書そのものに消滅時効の概念が当てはまるわけではありません。同意書を作成してから5年が経過したからといって、同意書自体が無効になるわけではないということです。

同意書と承諾書、誓約書との違い

同意書と似た言葉に「承諾書」や「誓約書」があります。

「同意」「承諾」「誓約」の日本語としてニュアンスの違いは、以下の通りです。

  • 同意:提案や条件に対して了承する
  • 承諾:申込みや申請に対して受け入れる
  • 誓約:自らが特定の行為をする(または行わない)ことを約束する

ただ、法的効力という観点では区別する必要はありません。実際のビジネスシーンでこれらの使い分けは厳密ではなく、社内慣行や業界慣習によって変わることもあるためです。そのため、文書の名称よりも、合意内容が明確に記載されているかに着目するようにしましょう。

ビジネスで同意書が必要なケースとは?

ビジネスにおいて、同意書が必要となるケースはさまざまです。実際に作成するかは各社の判断によりますが、具体例として次のようなケースを挙げることができます。

  • 個人情報を特定の目的で顧客から取得するとき
  • 取得した個人情報を第三者へ提供するとき
  • 未成年者との契約締結にあたって親権者の同意を得るとき
  • 取引条件を変更するとき
  • イベント開催にあたって、参加者から免責についての同意を得るとき
  • 危険を伴う業務に従事してもらうとき
  • 従業員による発明や著作物について権利譲渡を求めるとき
  • 従業員が企業の機密情報を取り扱うとき
  • 就業規則を変更するとき など

トラブルが想定されるようなケース、あるいはトラブルになったときの損害が大きいと予想されるケースでは、同意書などの形で相手方の意思表示を残しておくことが大事です。

企業向け同意書のひな形・テンプレート

同意書をスムーズに作成するためには、ひな形(テンプレート)を利用するのが効果的です。契約書を1から作る必要がなくなり、契約手続きをスムーズに進められるでしょう。

ひな形はそのまま使うのではなく、内容を確認して案件ごとにカスタマイズしましょう。内容を簡単に変更できる、ワード形式のひな形を選ぶのがおすすめです。

マネーフォワード クラウドでは、同意書のひな形・テンプレートを無料でダウンロードいただけます。適宜加筆修正して活用してください。

企業向けの同意書に記載すべき内容

企業が同意書を用意するときは、以下の項目を盛り込むことを意識しましょう。

  • 同意の内容
  • 権利や個人情報の取り扱い
  • 免責事項
  • 署名欄などの基本的な要素

また、同意書では当事者の特定も重要ですので、署名欄などの記載箇所も設けておくべきです。具体的な記載内容は同意書の作成目的に合わせて調整する必要がありますが、まずは一般的な書き方を押さえましょう。

同意の内容

「同意の内容」は同意書の核心部分です。ここでは、何に対して同意するのかを明確に記載しましょう。

例文:貴社が〇〇において〇〇を行うことに同意します。

具体的な行為や条件もあれば、その内容も明記することが重要です。例えば、「貴社が当社の○○をマーケティング目的で使用すること」のように、具体的な内容を記載します。

権利や個人情報の取り扱い

権利の取り扱いや個人情報の利用に関する同意は、法的トラブルを防ぐうえで大事な要素です。

例文1:貴社が〇〇を行うにあたり取得した対象について、貴社に対し、肖像権、パブリシティー権、著作権、著作者人格権、特許権その他の権利を行使しません。

例文2:私が貴社に対し提供する個人情報は、貴社のプライバシーポリシーに定める利用目的に従って利用されることに同意します。

必要に応じて、権利の不行使や個人情報の利用目的を明確に記載します。「自社にとってどのように記載すると有利か」「自社が不利にならないようにするにはどう記載すべきか」という視点も大事ですが、著作権法や個人情報保護法など関連する法令との適合性も意識しなければなりません。

免責事項

免責事項はリスク管理の観点から重要な役割を果たす要素です。特に、アクシデントが起こる可能性が高い、クレームが発生する可能性がある、損害が生じるおそれがあるといった場合には、免責事項を慎重に検討しましょう。

例文1:貴社が〇〇を行うにあたり取得した対象については、使用されなかった場合でも、貴社に対し異議を申し立てません。

例文2:貴社が〇〇を行うにあたり取得した対象の使用方法等に関し、クレームや損害賠償請求等を申し立てません。

例文3:貴社に故意又は重過失がある場合を除き、私に関して生じた損害に対し、貴社は責任を負いません。

なお、免責事項として記載した内容が絶対的に保障されるわけではありません。「あらゆる事情に対して一切の責任を負いません」といった、過度に一方的な免責条項だと無効となる可能性があるため、合理的な範囲内で設定します。

署名欄などの基本的な要素

同意書には、同意を行う者と同意を受ける者を特定する情報、そして作成した日付も記載します。本文の内容が適切でも、誰がいつ同意をしたのかはっきりできなければ意味がないからです。

同意書の最後に、同意を行う側の住所と氏名(または名称)の記入欄を設け、そこに署名または記名押印を行います。

企業が同意書を作成するときの注意点

企業が同意書を作成するときは、相手方が同意内容を十分に理解・納得したうえで署名してもらうことが重要です。確かに、同意書には法的な拘束力がありますが、十分な納得がないままでの署名では信頼関係が崩れてしまい、今後の取引に悪影響が及ぶおそれがあります。

作成時には、同意内容が必要十分であることを確認するとともに、相手方に一方的に不利な内容になっていないかもチェックしましょう。そして、それらの内容をしっかりと伝えたうえで同意を受けることが重要です。

同意内容が必要十分なものになっているかを確認

少なくとも、必要な同意の内容が文中に盛り込まれているかどうかは確認しましょう。また、抽象的過ぎて何に対する同意なのかがわかりにくかったり、具体的に特定し過ぎて必要な範囲をカバーできていなかったりするのも問題です。

同意書を作成する目的を意識し、その前提となっている取引内容や法令を鑑みて、得ておく必要のある同意とは何かを考えましょう。
例えば、個人情報の第三者提供に関する同意書であれば、個人情報保護法の内容も踏まえて同意内容を考える必要があります。

一方的に不利な内容になっていないかを確認

自社が過度に不利な状況になるのを防ぐことも重要ですが、相手方に一方的に不利な内容を押し付けることも避けましょう。

一方的な内容だと、相手方が同意しない場合があるため、継続的な関係性を構築できないリスクが生じます。さらに内容が行き過ぎていると、当該条項が無効となる危険性も生じるでしょう。

免責事項が合理的な範囲になければ無効と判断されることもありますので、弁護士の意見も聴きながら、適切な範囲内に収めることが重要といえます。

企業が同意書を交わす流れ

同意書は公的な制度に基づくものでのないため、作成方法や手順も自由です。一般的には、次のような流れになります。

  1. 法令や契約上の要件、リスク管理の観点から、同意書が必要かを検討する
  2. ひな形をもとに、適切な内容の同意書を作成する
  3. 同意を求める内容について相手方に提示し、十分な説明を行う
  4. 必要に応じて相手方と交渉し、内容を修正する
  5. 納得が得られれば、同意書に署名(または記名押印)をしてもらう

自社が同意をする立場にあるときは、提示された内容を精査し、同意することのリスクをよく考えてから署名をしましょう。

同意書の保管年数や保管方法

同意書の保管年数については、破棄することのリスクがなくなる時期を踏まえて決定するとよいでしょう。

同意内容に関わる取引が継続している間は保管しておくべきであり、前提となる取引が終了しても即座に破棄すべきではありません。後日に損害賠償請求などを受ける可能性があるなら、一定期間は残しておきましょう。具体的には、当該請求権の消滅時効を迎えるまで持っておくのがおすすめです。

保管方法にも決まりはないため、施錠可能な場所に置きましょう。

同意書の電子化は可能?

同意書は電子的に作成することもでき、書面で作成した同意書をのちにスキャンなどで電子化することも可能です。電子化しておけば保管スペースに悩む必要はなくなるため、セキュリティ対策が施されたシステム上で保管しておけば安全性も担保されます。

ただし、電子的に作成するときは押印ができませんので、電子署名が可能な電子契約システムを活用しましょう。

同意の意思表示は文書に残すことが大事

取引や契約において合意が得られたことを明確にする同意書は、トラブル防止に役立つ重要なツールとして機能します。当記事で解説した同意書の法的効力や記載すべき内容、作成するときの注意点などを参考に、自社のニーズに合った同意書を作成しましょう。

実務においては、定期的に同意書のひな形を見直すとともに、法改正や社会情勢の変化に対応することも重要になるでしょう。


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