- 作成日 : 2025年3月3日
保護者の承諾書、同意書とは?違いや書き方、例文を紹介(テンプレート付)
保護者の承諾書・同意書は、未成年者の法律行為や活動に対して保護者が承認を与える時に作成する文書です。未成年者との取引だと、企業としても契約が取り消しになるなどのリスクがありますので、前もって親権者などから承諾・同意を得ておくようにしましょう。この時に作成する文書について、書き方や注意点を解説しています。
目次
保護者の承諾書、保護者の同意書とは?
保護者による承諾書・同意書とは、「未成年者が行うさまざまな活動・契約について、その法定代理人である保護者が承認を与えることを示す文書」を意味します。
民法では、未成年者が法律行為を行う際には原則として法定代理人の同意が必要と定められており、この要件を満たすために書面を作成することがあります。
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
保護者の承諾書・同意書は子どもが何歳まで必要?
原則として、法律上定義されている未成年者の年齢である「18歳未満」までは保護者による承諾書・同意書が必要となります。
2022年の民法改正を経て成人となる年齢が20歳から18歳へ引き下げられています。そのため高校生であったとしても18歳になる誕生日を迎えた時点から、法的には保護者による承諾書や同意書を得る必要はなくなります。
承諾書と同意書の違いや法的効力とは
「承諾書」と「同意書」に実質的な違いはありません。
うえに示した民法の条文では“同意”という文言が使用されていますので、その意味では「同意書」とした方が文書の意義は伝わりやすいかもしれません。しかし、重要なのは未成年者のする行為を親権者などの法定代理人が認めるかどうかであって、使用する言葉ではありません。
保護者の承諾書・同意書が必要なケース
実務において保護者の承諾書・同意書が必要となる・用意しておいた方がよいケースは多岐にわたります。以下ではいくつか例を取り上げて紹介していますので、参考にしてみてください。
未成年者が法律行為を行う時
18歳に満たない方が法律行為を行う時は、民法の条文でも示した通り、保護者の同意を得る必要があります。
契約締結も法律行為の一種ですので、例えば未成年者のアルバイトを雇う時は承諾書や同意書を作成して保護者にサインしてもらうようにしましょう。また、その際は一般的な雇用手続きと同じように、具体的な労働条件(勤務時間、業務内容、賃金等)も明示します。
宿泊を伴うイベントに参加する時
修学旅行や合宿など宿泊を伴うイベントに未成年者が参加するなら、当該イベントを主宰する企業の方は保護者からの承諾も得ておきましょう。
イベントの詳細情報として日程や宿泊先、移動手段、行程、連絡体制、そして参加費用なども提示しておき、後から「そんなことをするとは聞いていなかった」などと主張されることのないよう備えます。
怪我の可能性があるイベント時
スポーツイベントやアウトドア活動など、怪我のリスクを伴うイベントでも要注意です。保護者同伴で参加する場合であれば注意書き程度でも問題ありませんが、子どもを預かってイベントを開催するのであれば、以下の事項を伝えたうえで承諾書などを作成しておくことが望ましいでしょう。
- 想定されるリスクの説明
- 事故発生時の対応手順
- 保険の加入状況
- 応急処置に対する実施の承諾 など
また、必要に応じて参加者の健康状態や既往症についても確認し、ハードな活動内容であれば参加制限を設けることも検討すべきです。
医療行為を行う時
一般的な企業が関与する例はあまりないと思われますが、医療行為を行う場面でも保護者からの承諾が重要です。例えば予防接種の実施、手術や検査の実施、入院の決定などは、未成年者本人の同意のみならず保護者にも内容をチェックしてもらいましょう。
以上のケースで共通する重要なポイントは、承諾・同意の対象となる事項に関して具体的かつ明確な説明を行うという点です。そして承諾書・同意書にサインをしてもらう保護者への説明はもちろんですが、未成年者本人への丁寧な説明も忘れないようにしましょう。
保護者の承諾書・同意書のひな形・テンプレート
承諾書や同意書は未成年者の行う活動に応じて内容を考える必要がありますが、最低でも「○○(未成年者)が○○(活動内容)をすることについて承諾(または同意)します。」といった意思表示は明記する必要があります。
以下に2パターンを用意しましたので、それぞれ確認し、作成時の参考にしていただければと思います。
保護者の承諾書・同意書の書き方や例文
保護者の承諾書・同意書は、対象となる活動に応じて適切な内容を記載する必要があります。どのような事項を盛り込むべきか、どのように表現すべきか、例文も用いて解説していきます。
承諾・同意の対象となる事柄の明示
記載箇所に決まりはありませんが、当該文書が何を目的としているのかをはっきりさせるためにも、冒頭部分で「承諾・同意をする旨」を明確にしておきましょう。そして何に対して承諾・同意をするのかも明らかにします。
例えば次のような書き方です。
イベントや活動の内容、あるいは契約の内容についても特定できるような情報を記載すべきです。期間や場所、責任者、費用、支払方法などの情報を記載することが望ましいですが、情報量が多い時は文章で説明するより「下記のプログラム」などと表記して、別のスペースにリスト形式や表形式で情報を整理しておいた方が見やすくなります。
子どもや生徒に関する情報
承諾書や同意書は保護者に作成してもらう(サインしてもらう)ものですが、参加や契約の当事者となるのは未成年者本人です。そこで子どもや生徒に関する情報の記入欄も設け、特定できるようにしておきましょう。
例えば次のような記入欄です。
参加する者の氏名(フリガナ) | (保護者の記入欄) |
生年月日 | (保護者の記入欄) |
所属(学校名・学年) | (保護者の記入欄) |
健康状態や注意事項 ※アレルギーや持病、服用中の薬の有無など、必要な場合。 | (保護者の記入欄) |
保護者の情報
保護者は承諾書・同意書の作成名義人となるため氏名や住所の記載が欠かせません。未成年者との続柄など関係性についても記載する欄を設けておくとよいでしょう。
加えて、いつでも連絡が取れる緊急連絡先についても記載してもらうべきです。すぐに電話がつながらない可能性もありますので、イベント等の内容に応じて2つほど緊急連絡先を記載してもらうことも検討しましょう。
リスクや安全対策に関する記載
活動内容に応じて以下のような事項も記載します。
- 予想されるリスクの説明
- 安全管理の体制
- 事故発生時の対応方針
- 保険の適用範囲
- 中止・変更となる条件
- 安全対策上準備してもらいたい物 など
免責事項
企業の方が承諾書・同意書を準備するうえで特に注意したいのが「免責事項」です。
記載した通りに常に責任を免れるとは限りませんが、合理的な範囲に絞って適切に免責事項を記載しておけば万が一のトラブルへの備えとなります。後になって保護者から賠償金の支払いを求められた時でも免責事項を定めておくことで損失を最小限に抑えられるかもしれません。
この時に押さえておきたいポイントは以下の内容です。
- 免責の範囲を具体的に示すこと
- 過度に広範な免責条項は無効となる可能性があること
- 不可抗力による事態への対応について示すこと
そこで例えば次のように記載する例が挙げられます。
“参加者が以下の事項に該当する場合、当社は責任を負わないものとします。
1 指示に従わずに生じた損害
2 参加者の故意または重大な過失による損害
3 事前の申告のない健康上の理由により生じた損害
4 天災地変その他の不可抗力により生じた損害“
もし「物の損壊や怪我などが起こる可能性が高い」、あるいは「もし事故が起こった時には大きな怪我・損失が出る」と思われる時は、弁護士に作成作業をサポートしてもらうことをおすすめします。
保護者の承諾書・同意書の保管期間、保管方法
保護者から取得した承諾書・同意書の保管期間やその方法について、法令上の定めはありません。
ただ、契約締結に関わる文書であるため契約書に準じて保管することが推奨されます。あるいは、未成年者が「成人してから5年間」を目安とする方法も考えられます。これは、民法上、取消権が行使できる期間は以下のように定められているためです。
(取消権の期間の制限)
第百二十六条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
未成年者の法律行為に関して“追認をすることができる時”とは、成年に達した日を指しています。そこから5年間が経過すると、保護者からの同意を証明できなくても取消権の消滅を主張できるようになるのです。
保護者の承諾書・同意書の電子化は可能?
未成年者の法律行為に対する法定代理人の同意の仕方については、法令上指定はありません。そのため紙でやり取りをする義務はありませんし、電子的に作成した承諾書・同意書を使っても無効になるわけではありません。
むしろ電子化することで業務の効率が上がりますし、印刷代や郵送代などのコスト、保管スペースの問題などの解決も期待できます。ただし重大な契約を締結する場面であれば電子署名やタイムスタンプを施すべきですので、これらの技術的要件をクリアした電子契約システム導入を検討しましょう。
未成年者との取引では保護者からの同意を得てから始めよう
保護者による承諾書・同意書を取り交わすことは、未成年者の権利や安全を守るだけでなく、企業側にとってもメリットのある行為です。反対に、親権者などの法定代理人が未成年者の行為に対して同意をしていないと、せっかく成立した契約もなかったことにされてしまう危険性があります。
そのため未成年者本人とのやり取りのみで取引を始めるのではなく、保護者との間で承諾書や同意書などの文書を取り交わしておくべきです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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