• 作成日 : 2025年3月3日

出演承諾書とは?ひな形をもとに書き方、例文を紹介(テンプレート付)

「出演承諾書」は、映像や写真の撮影、イベントへの出演などにおいて出演者から承諾を得たことを表す文書です。出演者の権利を保護するとともに、トラブルなく円滑に素材を利用するために重要な役割を果たします。

出演承諾書の書き方や作成時の注意点を事業者の方向けに解説しておりますので、ぜひ実務に活かしていただければと思います。

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出演承諾書とは?

出演承諾書(しゅつえんしょうだくしょ)は、写真撮影や動画制作、イベントなどへの出演、そして出演内容のデータなどの使用について承諾をするための文書です。

企業の広報活動やプロモーション、各種資料の制作などの場面で、出演者の権利を適切に取り扱うとともにトラブルなく円滑に素材を活用する目的で作成されます。

出演者自身が「○○について承諾します」という意思表示をするための文書であり、形式的には出演者が作成名義人となります。

ただし、出演者個人が自発的に作成しないといけない文書ではありませんし、これがないことによるリスクは出演をしてもらう企業側にもあります。

そこで必要事項(承諾内容など)を記載した書類を企業が準備し、出演者にサインをしてもらう形で作成作業を進めることになるのが一般的な流れです。

出演承諾書の法的効力

出演承諾書の法的効力は、主に以下の要素によって判断されます。

出演承諾書の法的効力
  • 出演者の意思が明確に示されていること
  • 承諾の対象となる撮影内容や使用方法が具体的に特定されていること
  • 出演者が承諾内容を理解したうえで署名または記名押印をしていること

なお、承諾書の内容が一方的に企業(制作者)側に有利な場合や、出演者に不当な権利制限を課す場合だと、その効力が制限される恐れもあります。

出演に関する承諾書と同意書の違い

使用する文書の表題が「承諾書」でも「同意書」でも、実質において法的な意義や役割に差はありません。

いずれにしろ、出演や出演内容の使用を認める意思表示を記したものであれば、同様に扱うことができます。

企業によって「出演承諾書」「出演同意書」のどちらの名称を採用するかは異なりますが、これは主に組織内での慣行や好みによる選択であり、重要なのは文書の名称ではなく、その内容です。

出演承諾をもらう必要があるケース

企業活動において、人物の映像や写真を使用する機会は数多くあります。そのとき「出演承諾書を取得しないといけない」という法的なルールが適用されるわけではないものの、リスク回避のためにも取得しておいた方がよいというケースがあります。

プロモーション活動に伴う出演

テレビCMやWeb広告、カタログを使ったプロモーション活動において人物が登場するケースもあります。このときはエキストラなどであっても出演者との口約束だけで済まさず、出演に関わるルール・制約などをまとめた出演承諾書を用意し、サインしてもらうことも検討すべきです。

想定される使用媒体や使用期間、公表される地域なども明示し、十分な説明を行ったうえで承諾を得ることが大事です。

ただ、モデルやタレントのようなプロに依頼するときは報酬も発生しますし、契約書として文書を交わすことになるでしょう。

企業HPにおける出演

企業の公式HPへ掲載する写真や動画に、従業員などの人物を載せるときは、出演承諾書を得ておきましょう。

社員インタビューや採用ページでの社員紹介、お客さまの声など特定の個人が識別できる形で掲載するなら、例え出演者が従業員であっても承諾を得ておいた方がよいでしょう。

一方で、社内で事前に包括的な同意を得ている場合やオフィス内の業務風景として背景に写り込む程度であれば、個別に承諾を得る必要性は低くなります。

イベントやセミナーへの登壇

企業が主催するイベントやセミナーに講師を招くときは、出演に関する契約、あるいは出演承諾書などの形で「出演をします」という意思表示を形に残しましょう。

また、そのイベントの様子をライブ配信したり、録画したりしてSNSなどにアップロードする予定があるのなら、登壇者以外の参加者からも出演承諾のサインをもらっておくべきです。

ほとんど見えないレベルで小さく写り込む程度であればトラブルになるリスクは小さいですが、顔がはっきりと写り込み個人が特定できる場合には特に出演承諾書を用意しておいた方がよいでしょう。

教材制作に伴う出演

社内研修用の教材や一般向けの教育コンテンツを制作する際も、出演者から承諾を得ておきましょう。教材が社内向けの資料であっても、勝手に従業員などを撮影して素材として使うべきではありません。

どのような目的で使用するのか、どの範囲で公開するのかなど条件を明確にしたうえで、出演承諾書にサインしてもらいましょう。

出演承諾書のひな形・テンプレート

出演承諾書の基本的な項目や文言をまとめたテンプレートを用意しました。このテンプレートを使えば効率的に出演承諾書を準備することができるでしょう。ただしこの内容はあらゆるシーンに適応したものではありませんので、各社の撮影目的や撮影内容などに応じたカスタマイズは必要です。

出演承諾書の書き方や例文

出演承諾書の作成にあたって押さえておきたい、主要な項目ごとに書き方のポイントを解説していきます。

撮影に関する基本的な情報

何を何のために撮影するのか、撮影内容および目的を具体的に記載しましょう。

“〇〇株式会社が実施する企業PR動画の撮影”

“〇〇製品のプロモーション写真の撮影”

撮影内容の概要に加え、次のような詳細情報も載せておくことが望ましいです。

  • 撮影日時・場所
  • 制作物の種類(動画・写真など)
  • 想定される収録時間 など

使用媒体や使用期間に関する事項

撮影した素材の使用方法として、例えば掲載する媒体や掲載期間を明記します。

“本撮影により制作された映像および写真(以下「本コンテンツ」という)について、以下の媒体での使用を承諾します。
1 当社Webサイト
2 当社公式SNSアカウント
3 製品カタログ、販促物
4 展示会、イベントでの放映“

使用期間に関しては、「当社の事業目的の範囲内」などと包括的な記載方法も考えられますが、「撮影日から2年間」などと具体的な期限を設定しておくと、使用期間をめぐって揉める危険性は下げることができるでしょう。

禁止事項

「制作者側の利用の自由度確保」と「出演者の権利保護」のバランスを考慮しながら、出演者に対する禁止事項も設けます。

禁止事項を多く定めるほど企業にとって有利な出演承諾書となりますが、その分出演者側から承諾が得るのが難しくなります。承諾を得られるとしても、一方的に不利な条件を押し付けることによる企業イメージの悪化も考慮すべきでしょう。

例として、次のような条文が挙げられます。

“私は、本動画に関わる次の事項について同意します。
1 私は、本動画等について、貴社が広告、SNS、Webサイトに使用、利用、改変、翻案することについて同意します。
2 私は、本動画等について、貴社に対し、肖像権、パブリシティ権、著作権、著作者人格権を行使しません。
3 私は、本動画等を貴社が利用するにあたり、事前の通知なしに説明文の加筆・修正等がなされる場合があることに同意します。”

次のような例も考えられますが、記載したからといってあらゆる条件下で有効であるとは限りません。効力を確実なものとするには禁止事項を合理的な範囲内に留める必要があります。

“私は、本動画等の使用方法等に関し、貴社に対しクレームや損害賠償請求等を行いません。”

出演者情報

出演承諾書の作成名義人となる出演者を特定できるよう、次のように基本情報を記載する欄を設けます。

  • 氏名(フリガナ)
  • 住所
  • 連絡先(電話番号・メールアドレス)
  • 署名・捺印欄

なお、未成年者(18歳未満)の出演を想定している場合は保護者(親権者などの法定代理人)が同意したことを示す欄も設けておきましょう。

出演承諾書を作成する際の注意点

撮影や収録を円滑に進め、後のトラブルを防ぐためには、権利関係や報酬への言及やその内容に注意する必要があります。

権利関係への言及

肖像権や著作権などをめぐって法的なトラブルが起こる危険性があります。
そこで、出演承諾書において「権利の不行使特約」について言及することも検討しましょう。例えば録画した素材の使用に関しての差止請求や損害賠償請求などを行わないとする規定です。

また、著作権法に抵触しないよう配慮すること(二次利用に関する取り決めなど)、個人情報を取り扱うことにもなるため個人情報保護法に配慮すること(第三者提供や管理方法に関する取り決めなど)なども念頭に置いておきましょう。

出演内容によっては報酬・謝礼も設定する

プロのタレントやモデルに出演してもらう場合は、報酬・謝礼の設定も必要になるでしょう。金額のやり取りが生まれるときは「出演料の金額」や「支払方法」「支払時期」「交通費等の実費精算の有無」「追加報酬の発生条件」などについてもはっきりしておかないと揉める危険性が高まるため、要注意です。

相手方がフリーランスであっても、出演の承諾・契約締結にあたってはフリーランス・事業者間取引適正化法などに則り以下の事項を明示する必要があります。

  • 自社(業務委託事業者)および出演者(特定受託事業者)の名称
  • 委託をした日付
  • 給付・役務の内容、提供期日、提供場所
  • 報酬の額と支払期日
    ※現金以外で支払う場合は支払方法の明示も必要。
  • 検査完了日(検査を行う場合)

出演承諾書の保管期間、保管方法

出演承諾書の保管期間や保管の方法に法令上の指定はありません。すぐに破棄をしても違法ではありませんが、それではせっかく作成した意味が薄れてしまいます。そこで「いつまで出演者と揉めるリスクがあるか」という観点から保管期間を考えましょう。

有効期間が定めてあるのならその期間中は保管するようにし、期間への言及がないときでも一般的な債権の消滅時効期間である5年を一つの目安とすることができます。

出演承諾書の電子化は可能?

出演承諾書を電子文書として作成しても法的に無効とはなりません。また、いったん紙で作成した承諾書でもスキャンして電子化することが可能です。

ただし電子署名ができるなど安全に電子文書を運用するための環境が整っていることが望ましいため、電子契約サービスなどのツールを活用することもご検討ください。電子化することで長期的な保管でもスペースを気にする必要がなくなりますし、どこからでも必要な情報にアクセスすることが可能となります。

後で揉めないよう出演承諾書を交わしておこう

出演承諾書は、企業の広報活動やコンテンツ制作において、出演者の権利保護と制作側の円滑な素材利用を両立させるうえで重要な役割を担う存在です。テンプレートをダウンロードし、細かな部分を調整して活用いただければと思います。

なお、出演承諾書の作成に関連して、著作権法や肖像権に関するルール・判例の動向にも注目しておくとより安心です。文化庁経済産業省などのWebサイトをチェックするのもよいですし、顧問弁護士などの専門家を活用するとさらにリスクを下げられるでしょう。


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