• 作成日 : 2025年3月3日

下請けとは? 元請けや外注との違い、メリットなどをわかりやすく解説

下請けとは、会社が引き受けた業務の一部またはすべてを、さらに別の会社や個人が引き受けることです。下請けを上手く活用することで、コスト削減やリソースの活用などのメリットがあります。

本記事では、下請けを活用する上でのポイントや、契約で気をつけるべき注意点について、また下請けの契約をする上で知っておくべき下請法の要点についても解説します。

下請けとは

「下請け」(したうけ)とは、ある会社や個人が引き受けた仕事を、さらに別の会社や個人が引き受けて行うことを指します。例えば、「自動車メーカーの自動車部品の製造を部品メーカーが引き受ける」「システム開発会社が引き受けたプログラム開発業務の一部を個人のエンジニアが引き受ける」などが該当します。

日本のビジネスシーンでは、大企業よりも中小企業の数が圧倒的に多いという特徴があるため、中小企業が大企業から仕事を受注するというパターンが非常に多いです。

下請けとセットでよく出てくる言葉に「元請け」「外注」がありますが、この2つは下請けとは異なります。下請けとの違いを理解することは大変重要であるため、次章以降で詳しく解説します。

下請けと元請けの違い

「元請け」とは、仕事の依頼主から仕事を受け、下請けに発注する立場を指します。正式名称は「元請業者」「元請負人」です。

下請けとの違いは、誰から仕事を請け負っているかという点にあります。つまり、事業・プロジェクトの実施主体である発注者から直接仕事を請け負っている場合は「元請け」、その仕事のすべてまたは一部を元請けから請け負っている場合は「下請け」となります。

例えば、家電量販店でエアコンを購入し、家に取り付けてもらうといった場合、「元請け」は家電量販店、「下請け」はエアコン取り付け作業をする業者です。

また、元請けは下請けに対して業務に関する指示を出す立場です。元請けは請け負った業務のうち、どの範囲を下請けに依頼するか決定し、下請けに対して具体的な業務内容や方法を指示します。また、品質や納期の管理も元請けが行います。

下請けと外注の違い

「外注」は、企業が自社の業務の一部を外部の業者や個人に委託することを指します。外部に業務を委託する点で下請けと似ていますが、「業務の指示者は誰か」という点で異なります。

下請けの場合、業務の指示者は元請け業者です。例えば、建設現場などでは、元請け業者の指示にしたがって下請け業者が作業をします。したがって、元請け業者は下請け業者の管理とともに、業務を完成させる責任を負います。

一方、外注の場合は、発注者から依頼を受けた後、業務そのものは外注先の判断で行う形態です。業務についておおまかな指示は発注者から受けるものの、作業自体は外注先のやり方で進める点で下請けと異なります。

また、外注は発注者側企業にとって、人件費を抑えられる点や高度なスキルをもつ人材に仕事を依頼できるなどの点がメリットです。

下請けを活用するメリット

下請けを活用することで、さまざまなメリットが生じます。ここでは、主なものとして以下の3つのメリットについて解説します。

下請け会社のリソースを効果的に活用できる

下請けにより、下請け会社のリソースを効果的に活用でき、自社の業務に集中できる環境づくりにつながります。

下請け業者に依頼した業務については、下請け業者の人員、設備で行われます。その分、自社のリソースを自社が行うべき業務に集中させることができる点は大きなメリットです。

また、専門性の高い下請け業者のリソースを活用することで、質の高い仕事ができます。

自社のコストを削減できる可能性がある

下請けを活用することで、人件費や設備費、製作費などのコスト削減につながりやすいのもメリットです。必要な時のみ下請けに業務を発注すれば、その期間・その仕事量分だけの人件費を負担すれば済むため、コストを節約できます。

また、下請けの対象となる会社が複数あると、下請け同士が競合して価格競争が発生します。実際、下請けを専門にしている業者の中には、低コストをセールスポイントとしている業者も多く存在します。

優れたコストパフォーマンスを発揮する下請け業者を選べば、同じ業務を他の業者に発注するよりも低コストで済む可能性があるのです。

自社で 対応していない仕事も受けられる

発注者からの依頼内容によっては、自社では対応できない業務が含まれている可能性があります。その部分だけに対応できないがために、発注者からの依頼を断ってしまえば、収益を得られる機会の損失となります。

その点、自社に不足しているリソースがあっても、下請けの活用によって補てんすることで、自社だけでは対応できない仕事も受けられるようになります。

下請けを活用するデメリット

下請けの活用は、メリットがある一方で、デメリットと感じられる側面もあります。ここでは、主なデメリットとして以下の3つについて解説します。

中間マージンが発生する

下請け会社に業務を発注する場合、中間マージンが発生し費用に上乗せされる点に注意しなければなりません。なぜなら、下請け業者が必要とする事務手数料など、実際の業務にかかるコストとは別の費用が上乗せされる可能性があるためです。自社で業務を行えば、自社の事務職員が事務処理を行えば済むところを、下請けに発注すれば、下請け業者の事務職員分の手数料が上乗せされるということです。

下請けを活用する際は、コスト削減のつもりが結果的に高額になっていたということのないように気をつけましょう。

下請け会社の選定や品質管理が難しい

技術レベルの高い下請け会社の選定や、品質管理が難しい点にも注意が必要です。下請けを専門にしている業者は数多くありますが、その中から求める品質の仕事をしてくれる会社かどうかを見極めることは難しいでしょう。

また、一度高品質だったからといって、次に発注した際に同じ従業員が担当してくれるとは限らないのも難しいところです。元請けは品質管理の責任も負うため、下請け会社選びを誤ると品質にばらつきが生じる危険性があります。

自社のノウハウが流出するリスクがある

下請けを活用した場合、自社のノウハウが下請け会社を通して流出するおそれがあります。なぜなら、下請けでは元請け会社が「このように作業してほしい」と業務の指示を出すからです。指示を出す過程において、自社(元請け)独自のノウハウが下請けに伝わり、外部に流出する危険性があります。

したがって、下請けを活用する際は、自社の重要なノウハウが流出しないよう情報管理を徹底することが大切です。下請け会社との間で秘密保持契約を結ぶなどして対応しましょう。

下請法とは

「下請法」は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といい、下請け業者の利益保護を目的とした法律です。1956年、独占禁止法を補完する法律として制定されました。

下請法における「下請」は、規模の大きい会社が規模の小さい会社や個人に業務を委託することを指します。この場合、下請け会社は発注側の会社よりも弱い立場になりがちです。そこで、優越的な地位にある発注側の会社によって下請け会社が不利益を被ることのないよう、法律で保護するために制定されたのが下請法なのです。

また、下請法では仕事を発注する側を「親事業者」、下請け側を「下請事業者」と呼びます。どのような業者が下請事業者に該当するかは、下請法第2条第8項に規定されています。同規定によると、下請事業者に該当するか決定づけるのは、親事業者の資本金や親事業者との取引内容です。

例えば、下請事業者に該当するのは以下の場合です。

  • 個人または資本金3億円以下の法人で、資本金3億円超えの親事業者から製造委託等を受ける事業者
  • 個人または資本金1000万円以下の法人で、資本金1000万円超え3億円以下の親事業者から製造委託等を受ける事業者

製造委託等の事業を請け負う場合、資本金3億円を超える個人または法人は該当しません。

また、情報成果物の作成委託や役務提供委託を請ける事業者の場合は、以下の条件を満たすと下請事業者となります。

  • 個人または資本金5000万円以下の法人で、資本金5000万円超えの親事業者から情報成果物の作成委託または役務提供委託を受ける事業
  • 個人または資本金1000万円以下の法人で、資本金1000万円超え5000万円以下の親事業者から情報成果物の作成委託または役務提供委託を受ける事業者

つまり、ソフトウェアなどのプログラム設計やデザインといった情報成果物の作成などを提供する事業者の場合、資本金5000万円を超える個人または法人は下請事業者に該当しないことになります。

下請事業者についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

下請法の改正で「下請け」が「受託事業者」に名称変更

2025年1月、下請法の改正について政府の有識者会議が開かれ、「下請け」という名称を「中小受託事業者」という呼び方に変更する方針が固まりました。したがって、これまで「下請け」と呼ばれていた事業者が「中小受託事業者」と呼ばれるようになる可能性があります。

名称変更の背景には、「下請け」という言葉が、発注者側よりも受注者側を下の立場として見ているイメージを与えているという事情がありました。

実際に、金型メーカーの業界団体「日本金型工業会」は、「下請け」という名称の変更を国に訴え続けて16年になります。

同団体は、「下請け」という表現により不公正な取引が助長されてきたと主張します。例えば、金型を作るために必要な材料費に、値上がり分を上乗せすることを発注業者が認めてくれないといったことがあるとのことです。

こうした声を受け、政府の有識者会議では下請法の改正にあたって「下請け」の名称を変更することを議論してきました。新名称候補としては「パートナー」「受注業者」なども挙がりましたが、最終的に「中小受託事業者」に落ち着いたようです。

下請けを効果的に活用するポイント

下請けにはメリット・デメリットの双方がありますが、ポイントを押さえれば効果的な活用が可能です。ここでは、下請けを効果的に活用するポイントとして主なものを3つ解説します。

下請法を遵守する

下請けを活用する際は、必ず下請法を遵守するよう心がけましょう。下請法では、親事業者が行うべき義務を以下のとおり規定しています。

  • 書面の交付義務
  • 書面の作成・保存義務
  • 下請代金の支払期日を定める義務
  • 遅延利息の支払義務

「書面の交付義務」「書面の作成・交付義務」に反すると10万円以下の罰金が科されるおそれがあるため注意しましょう。

また、下請法では11項目の禁止事項を課しています。例えば「注文した物品等の受領を拒むこと」「下請代金を支払期日までに支払わないこと」「下請代金の減額」などが定められています。

禁止事項に該当した場合、違反行為に対する勧告がなされるため、しっかりと禁止事項を確認しておきましょう。

契約書の内容を明確にする

下請けを活用する際は、契約書の内容に誤解が生じないよう明確にすることを心がけましょう。特に、成果物の納期や工事の完了日、報酬額や支払日など、数字が関わる項目はあいまいにせず、明確に規定します。発注側と下請け側で数字に誤解が生じると、トラブルの原因になります。最悪の場合、訴訟につながることもあるので注意してください。

また、上記項目でも述べたように、下請法では「書面の交付義務」「書面の作成・交付義務」「下請代金の支払期日を定める義務」が定められています。これらの義務に違反しないためにも、契約書の内容は明確に定めるようにしましょう。

信頼できる下請け会社を選ぶ

信頼できる下請け会社を選ぶのも、下請けを活用する上での大切なポイントです。コスト削減をしたいからといって、コスト面だけで業者を選ぼうとすると「安かろう悪かろう」という結果になり、かえって時間と労力がかかってしまうこともあります。

したがって、低コストかどうかだけでなく、これまでの業績から高品質の仕事をしてくれるか、秘密保持義務を遵守してくれるか、コミュニケーションを密にとってくれるかといった観点で選びましょう。

また、下請け会社を選ぶ際は、最初から1社に決めるのではなく、複数会社を候補に挙げ、比較検討することをおすすめします。

下請けを上手に活用して効率よく業務を進めよう

下請けは、上手に活用すれば低コストで効率よく高品質の業務を進められるメリットがあります。また、外注と異なり、自社のやり方で指示を出しつつ、下請け会社のリソースを活用できる点もメリットです。

下請けを活用する際は、下請法を遵守することが不可欠です。また、弱い立場になりがちな下請け会社を保護するため、下請法の改正や「下請け」という用語の変更が予定されています。

下請け会社に不利益のないよう配慮しつつ、上手に活用していきましょう。


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