• 作成日 : 2024年12月27日

表見代理と無権代理を分かりやすく解説!具体例や成立要件を解説

「無権代理」は代理権がない者による代理行為のことで、そのうち代理権があるかのように見せかけてする行為を「表見代理」と呼んでいます。それぞれ法律上、どのような場合に成立するのか、具体例とともにここで分かりやすく解説していきます。

無権代理とは

無権代理とは、「代理権を持っていないにも関わらず、他人の代理人として振る舞って法律行為をすること」を意味します。勝手に「私は○○さんの代理人として、この不動産の売買契約を締結します」などと言って契約書にサインをした場合には無権代理に該当します。

また、「一応他人から代理権は与えられているものの、認められた権限を越えて代理行為をすること」も無権代理に当たります。そのため、ある不動産の賃貸借契約締結に関わる権限しか与えられていないのに、勝手に売却する行為も無権代理に該当します。

無権代理があった場合に関しては、次のように民法でルールが定められており、原則として無効となります。

代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

引用:e-Gov法令検索 民法第103条第1項

ただし、条文にもあるように代理行為に関わる本人が「その代理行為を認める」と後で認めたなら、あえて無効にする必要もありませんので効力を生じます。

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表見代理とは

表見代理とは、「無権代理ではあるものの、代理権が存在しているかのように見える外観があるため法律上の効果を認める場合の代理行為」を意味します。

第三者から見て代理権があるように見えただけで常に本人に効力が帰属するわけではなく、表見代理として効力が生じるケースは限定的です。民法上は次の3つに分類されています。

  1. 代理権を与えた旨を示したことで成立する表見代理(民法第109条第1項)
  2. 与えた権限を越えてした行為に成立する表見代理(民法第110条)
  3. 代理権が消滅した後に成立する表見代理(民法第112条第1項)

表見代理という仕組みは、「確かにあなたは代理権を持っていそうだ」と信じてもおかしくない状況下で、無権代理行為の相手方となってしまった者を法的に保護するのが目的です。例外なく無権代理を無効としてしまうと法律行為の相手方が不当に損失を被る可能性もありますので、せめて当該人物に落ち度がないと思われる一定の場合には、効果を本人に帰属させて利益を守ろうとしているのです。

表見代理の具体例

表見代理には3つの分類があると説明しました。具体的なイメージがつかめるよう、それぞれの具体例を以下に示します。

代理権を与えた旨を示した例

Aさん(本人)が、Bさんに「私の土地を売却する代理人です」という内容の委任状を渡したとしましょう。しかし、実際にはAさんは代理権をBさんに与えていません。

この場合Bさんによる行為は無権代理となるのですが、委任状を見せられて交渉の申し入れを受けたCさんは、Bが正当な代理人と信じても無理はないでしょう。

そのまま売買契約を締結してしまった場合、これを無権代理として無効にしてしまうとCさんに酷な結果となってしまいます。そこでこのケースでは表見代理を認め、Aさんに契約の効果が帰属するルールになっています。

ただし、もしCさんが「本当はBさんに代理権はない」と知っていた場合や、少しの注意を払えばその事実を認識できたのであれば表見代理は成立しません。

代理行為が与えられた権限を越えている例

Aさん(本人)が、Bさんに「私の土地Xを賃貸物件として運用する権限」を与えていたとしましょう。しかし、Bさんがその権限の範囲を超えてCさんと土地Xの売買契約を締結してしまいました。

これは無権代理に当たる行為ですが、Aさんが本来の権限を行使するために必要な実印などを渡していた場合であれば、Cさんは「BさんはAさんから実印なども受け取っているし、本当に代理権を持っているのだろう」と信じても無理はありません。

あるいは、それ以前に何度もAさんと不動産の売買契約を交わしており今回だけ代理人のその権限がなかった場合なども無権代理であることを見抜くのは難しいでしょう。

そこでこのケースにも表見代理が認められることとなっています。もちろん、Cさんが無権代理であることを知っていたり、過失により知らなかったりした場合には成立しません。

代理行為が権限消滅後に行われる例

Aさん(本人)が、Bさんに「私の土地Xを売却する権限」を与えていたとしましょう。しかし、その権限には期限の定めがあり、BさんがCさんと売買契約を締結した時点では代理権は消滅していました。

これは無権代理に当たる行為ですが、Bさんが過去に受け取った委任状を提示していたとすれば、Cさんが「委任状もあるし、Bさんは正当な代理人だろう」と信じても無理はありません。

そしてCさんが代理権の消滅という事実を認識できなかったのなら表見代理が成立して、その契約の効力は本人であるAさんに帰属します。

表見代理の成立要件

上記3つの表見代理がどのような場合に成立するのか、法律上の要件に沿ってそれぞれ次のように整理できます。

①代理権を与えた旨を示したことで成立する表見代理

1:本人が、第三者に対して「他人に代理権を授与した旨」を示していたこと

2:無権代理人による法律行為が、「本人により示された代理権の範囲内」であること

3:第三者が、代理権が存在していないことに関して「善意無過失」であること

※善意とは、知らなかったことを意味する。

※無過失とは、不注意がなかったことを意味する。

②与えた権限を越えてした行為に成立する表見代理

1:代理人に、ある一定範囲内の「代理権が存在している」こと

2:代理人による法律行為が、「代理権の範囲を超えている」こと

3:第三者に、代理人にその行為に関する権限があると「信じるべき正当な理由」があること

※信じるべき正当な理由があると認められるには、善意・無過失であることが求められる。例えば本人の実印を持っていた場合、これまで何度も同様の取引を交わした経験がある場合など。

③代理権が消滅したあとに成立する表見代理

1:代理行為のときに、「代理人の権限が消滅」していたこと

2:かつて代理人が有していた「代理権の範囲で代理行為がなされた」こと

3:代理権の消滅につき相手方が「善意・無過失」であること

いずれのパターンにしろ、無権代理人による行為の態様のみで表見代理の成立が決まるものではありません。第三者側が権限について知らなかったことや、知らなかったことについて過失がなかったことも求められています。

善意無過失の相手方が取れる対応は?

もし、代理人として振る舞っていた人物が代理権を持っていなかったときは、以下の方法により対処しましょう。

表見代理を主張する

上記の通り、無権代理人と契約を交わしてしまったとしても、民法の規定に従い表見代理が成立するのなら、その旨主張して本人に責任を果たすよう求めることができます。

当然、うえで示した要件は満たさないといけませんが、①②③いずれかのパターンに該当するときは本人に対し契約した通りに履行するよう請求ができます。

無権代理人に履行または損害賠償を請求する

表見代理が成立しないケースもあります。その場合でも、無権代理人に対して「契約した内容に沿った履行」または「損害賠償」の請求をすることができます。

民法でも次の通り無権代理人の責任が規定されています。

他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

引用:e-Gov法令検索 民法第117条第1項

ただし代理行為が原因で大きな損失が生じた場合には訴訟トラブルにまで発展する可能性も大きいため、請求をするときは前もって弁護士に相談することをおすすめします。

無権代理・表見代理でトラブルにならないよう契約業務に注意しよう

無権代理が原因で揉めたとき、表見代理の主張や無権代理人への請求により問題が解決できることもありますが、スムーズにいくとは限りません。また、解決に向けての対応が余計な負担となってしまいます。

逆に、自社が誤った対応をしてしまい無権代理・表見代理の問題を起こしてしまう危険性もゼロではありません。そのため契約業務は何度も取引実績のある他社相手であっても、慎重かつ丁寧に取り組む必要があります。また担当者の意識問題だけでなく、契約締結までのプロセスが電子的に記録・可視化できる電子契約システムを導入するなど無権代理のリスクを低減する仕組みを取り入れるのも有効な手段です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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