- 作成日 : 2024年12月24日
建物使用承諾書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
所有者から無償で建物の使用を認められた場合、その証として所有者に「建物使用承諾書」を作成してもらうことがあります。口頭で使用承諾してもらうことも可能ですが、書面の承諾書があれば安心です。
本記事では、建物使用承諾書について解説します。承諾書のひな形や記載すべき内容、注意点のほか、承諾書と同意書の違いについても紹介します。
目次
建物使用承諾書とは
建物使用承諾書とは、無償で建物の使用を認められた場合、所有者が使用を承諾した証として作成する書面のことです。承諾書に使用期間が記載されていれば、使用期間内に建物の明け渡しを請求されても、承諾書を基に明け渡し請求を拒否することもできます。
ただし、承諾書を作成せず口頭で使用の承諾を得た場合でも、建物の使用は可能です。貸し手にとっては拘束力が生じるため、承諾書の作成には消極的になる人もいるでしょうが、借り手としては使用を確実にするために書面の承諾書があった方が安心です。
賃貸借と使用貸借
建物を有償で借りることを「賃貸借」、無償で借りることを「使用貸借」と呼びます。有償の場合は「賃貸借契約」を締結して、建物の貸借について貸し手と借り手の合意があったことを書面(賃貸借契約書)することが一般的です。使用貸借において、賃貸借契約書の代わりになるのが「建物使用承諾書」です。
建物使用承諾書の代わりに「建物使用契約書」を使うこともあります。承諾書は貸し手の一方的な意思表示であり、契約書は貸し手と借り手の合意があったことを証明するものです。
使用貸借の終了と解除
所有者に建物の使用を認められても、建物はいずれ返却しなければなりません。以下のケースに該当すると、建物の使用貸借は終了します。
- 使用期間を定めた場合、使用期間が終了した
- 使用期間は決まっていないが使用目的などを定めた場合、目的などを達成した
- 借主が死亡した
また、次のケースに該当すると、貸し手または借り手の一方は使用期間の途中で使用貸借を解除することも可能です。
- 使用期間は決まっていないが使用目的などを定めた場合、使用目的を達成するために要する期間が経過したとき、貸し手は解除できる
- 使用期間や使用目的などを定めなかった場合、貸し手はいつでも解除できる
- 借り手はいつでも解除できる
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建物使用承諾書を作成するケース
建物使用承諾書を作成する主なケースは、以下の通りです。
- 貸し手と借り手の間で使用の承諾を明確にするケース
- 営業許可の取得など第三者に対して使用の承諾があることを証明するケース
1つ目のケースは、貸し手と借り手の間で使用の承諾を明確にしたい場合です。口約束では不安が残るため使用の承諾を確実にしたいと借り手が希望する場合だけでなく、将来の使用に備えて使用期間を明確するために貸し手が作成を望む場合も考えられます。
2つ目のケースは、第三者に対して建物の使用承諾があることを証明したい場合です。借りた建物で営業する場合、営業許可などを取得するために建物使用承諾書が必要になることがあるからです。次のケースなどが該当します。
- 深夜における酒類提供飲食店営業の届出
- 酒類販売業免許の申請
- 風俗営業許可の申請 など
なお、親の土地を無償で借り手子どもがマイホームを建てる、経営者の個人名義の建物を会社で使用する場合などでも、必要に応じて建物使用承諾書が利用されます。
建物使用承諾書のひな形
建物使用承諾書は、後述する通り使用期間や使用目的などによって記載すべき内容が違ってきます。記載すべき内容や記載方法がよくわからない場合、建物使用承諾書のひな形を利用するのがおすすめです。
マネーフォワード クラウド契約では、無料でダウンロードできる建物使用承諾書のテンプレートを用意しています。初めて承諾書を作成するときなどに参考にしてみましょう。
建物使用承諾書に記載すべき内容
建物使用承諾書に記載すべき主な内容は、以下の通りです。
- 物件名
使用貸借する建物の住所と物件名(マンションやアパートの名前など)
- 使用目的
使用貸借する建物の使用目的(◯◯の販売店舗、〇〇の事務所など)
- 使用承諾期間
使用賃貸の開始日と終了日(2024年◯月◯日から〇〇〇〇年◯月◯日まで)
使用目的や使用承諾期間については借り手と貸し手が話し合って決めますが、最終的には貸し手の意思によって決定します。契約書には当事者間の合意内容が記載されますが、承諾書に記載されるのは、「一定要件の範囲内(または要件を定めず)において、無償で建物の使用を承諾する」という貸し手の意思のみです。
また、使用目的や使用承諾期間を記載しないという選択肢もあります。借り手がいつ建物を返却してもいいなら問題はありませんが、使用賃貸した建物を使って一定期間業務する予定なら、使用承諾期間の記載が必要です。使用目的を果たす前に建物の返却を求められたときに困るためです。
建物使用承諾書は、貸し手が署名などをして2部作成し、1部を借り手に交付しもう1部は貸し手が保管します。
建物使用承諾書を作成する際の注意点
建物使用承諾書を作成するときの主な注意点は、以下の3つです。
- 使用貸借する物件名や使用目的、使用承諾期間を正確に記載する
- 一定期間、建物の使用が必要な場合は使用目的や使用承諾期間を記載する
- 必要に応じて条件などを追記する
1つ目の注意点は、使用貸借する物件名や使用目的、使用承諾期間などを正確に記載することです。たとえば、建物の一部のみを貸す場合、「〇〇号室」や「〇〇号室のリビングなど共有部分」などと具体的に使用できる範囲を記載しましょう。
また、営業許可などを取得するために承諾書を作成する場合、申請が通るように使用目的を正しく記載しなければなりません。
2つ目の注意点は、一定期間の使用が必要な場合は使用承諾期間を記載してもらうことです。使用承諾期間と使用目的の両方を定めなかった場合、貸し手はいつでも使用貸借を解除できるからです。事業開始後すぐに解除されると初期投資が無駄になる可能性もあります。
3つ目の注意点は、必要に応じて条件などを追記することです。たとえば、以下の条件などを記載することによって、建物の使用開始後のトラブル防止に役立ちます。
- 建物の利用に関する禁止事項
- 建物を壊したり、汚したりしたときの修繕義務
- 建物使用に関する約束事に違反した場合の違約金 など
承諾書と同意書の違い
承諾書と同意書は同じような意味で使用されることもありますが、以下の通り少し意味合いが異なります。
- 承諾書:依頼などに対して引き受ける人の「引き受け意思」を示す書類
- 同意書:相手の依頼や意見などに対して「賛成の意思」を示す書類
なお同意書が使われるのは、以下のようなケースです。
- 提供した個人情報の利用に関する同意書(個人情報保護法第20条など)
- 未成年の子どもが契約するときの親などの同意書(民法第5条)
上記の同意書は法律上定められたもので、法的効力を持ちます。承諾書についても民法第593条から第600条に定める法的効果があり、その効果は承諾書に署名した貸し手だけでなく借り手にも及びます。
建物使用承諾書で貸し手が使用期限を設定した場合、借り手は使用期限を過ぎれば建物を返却しなければなりません。また、禁止事項の遵守を前提に建物の使用を認められている場合、禁止事項を遵守する義務を負います。
トラブル防止のために建物使用承諾書を活用しよう
建物を無償で借りるときは、所有者(貸し手)に建物使用承諾書を作成してもらうとよいでしょう。承諾書は、貸し手から無償で建物の使用を認められたことの証であり、法的効力を持つ重要な書類です。
建物使用開始後のトラブルを防止するために、貸し手と借り手が事前によく話し合って建物の使用方法・目的や使用期間を決め書面にすることが効果的です。借り手は承諾してもらった条件を守って建物を有効に使わせてもらいましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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