- 作成日 : 2024年12月3日
契約書はどちらが作成すべき?決め方や契約への影響、押印の順番を解説
契約書を初めて作成するときなど、どちらが作成するのか迷うことがあるのではないでしょうか。法令に定めがある場合を除き、作成者に決まりはありません。両者の合意で、どちらが作成するかを決めることができます。
本記事では、契約書をどちらが作成するか交渉する方法や費用負担、契約書が有利か不利かを見極める方法などを解説します。
目次
契約書はどちらが作成すべき?
契約書は当事者のどちらが作成するかの一般的な決まりはなく、どちらが作成しても問題ありません。両者の同意により、作成者を決定します。
契約書を作成する側が主導権を握りやすい
契約書をどちらが作成するかについては、相手側に作成してもらうことで手間を省けるというメリットがあります。しかし、契約書は作成した側の意向が入りやすく、相手側が作成した場合は相手側に有利な条項になりやすいのが特徴です。
また、契約書を作成した側は、作成後の交渉や文面の修正などでも主導権を握りやすく、契約を優位に進めやすくなるでしょう。
そのため、作成は面倒ではあっても、自社で作成した方が有利といえます。
海外企業と契約するケース
海外企業と契約する場合、契約書をどの国で作成したかにより、印紙税の扱いが異なります。相手企業が自国で作成した場合は、日本における印紙税は不要です。
ただし、海外の企業が契約書を作成しても、作成の場所が日本国内である場合は印紙税の納付義務が発生します。海外企業との契約で印紙税が高額になる場合は、その点も含めてどちらが作成するかを検討するとよいでしょう。
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契約書の作成にかかる費用はどちらが負担する?
契約書の作成には、製本にかかる費用や印紙税がかかります。契約金額が大きい場合は印紙税も高額になり、どちらが負担するかが重要な問題になるでしょう。
民法上、契約に関する費用は、原則として契約当事者がそれぞれ等分することになっています。そのため、契約書の作成費用も、各自が負担することになります。
ただし、企業間取引における契約書はどちらか一方の当事者が作成することが一般的です。その際に必要な費用も、作成する側が負担することが多いでしょう。
前に説明したように、契約書は作成した側が有利になる傾向にあります。そのため、契約書作成にかかる費用は、契約交渉の主導権を握るコストと考えることもできるでしょう。
なお、印紙税の場合は契約書の作成者が負担するという法律の規定があります。詳しくは、あとの項目で解説します。
契約書の作成者が義務づけられている契約書もある
一般的に、契約書の作成者に決まりがないことは前述しましたが、次のように法令によって契約書の作成者が義務付けられている契約書もあります。
- 下請法第3条
- 建設業法第19条
下請法では、親会社に対して、下請業者に交付する書面の作成と保存を義務付けています。建設業法でも、契約書の書面作成は「建設工事の請負契約の当事者」(受発注の当事者)が行うと規定しています。
これらの契約書は、法律に沿って、義務を負うものが作成しなければなりません。
契約書をどちらが作成するか決める方法
契約書の作成は、その取り引きに慣れている方が行うケースが多いでしょう。契約書の作成に慣れていない、もしくは諸費用の負担を抑えたいといった場合は、相手側に作成を依頼するという選択肢があります。
ただし、相手側が作成する場合、買い手側にとって有利な条件が記載される可能性があるのは前述のとおりです。修正を求めることはできますが、すべての要望が通るとは限りません。修正案を受け入れてもらう場合にも、最初に作成した契約書案がベースになるため、作成した側の意向が反映されやすいでしょう。
リスクを回避したい場合は、自社で作成できるよう交渉が必要です。
契約書をどちらも作成したい場合はどうする?
契約書を当事者双方とも作成したいという意向を持つ場合は、契約書作成に慣れている方を優先させるとよいでしょう。作成者側が契約の優位に立つためには、質の高い契約書を作成し、さらに交渉を優位に進める能力が必要です。作成に不慣れで質が低い契約書を作成した場合、契約に慣れていないことを看過され、かえって立場が悪くなる可能性があります。
取引に関する経験などに明らかな差がない場合や、専門家に依頼して確かな契約書を作成できる場合は、自社で作成することを交渉してみるとよいでしょう。
契約書が有利か不利か見極める方法
相手側が契約書を作成した場合、その契約書が自社に有利か不利かを見極めるには、契約内容のチェックが必要です。
チェックすべき内容をみていきましょう。
権利義務が明確になっているか
契約書の基本的なチェックポイントは、権利義務の内容です。たとえば、商品の売買契約であれば、売主側には代金を請求する権利と商品を引き渡す義務が発生し、買主側には商品の引渡しを求める権利と代金を支払う義務が生じます。
誰にどのような権利・義務があるのかが明確に記載されており、第三者が読んでもわかりやすく、解釈に相違が生じない内容になっているかの確認が必要です。
また、金額の定めや権利義務の発生時期、発生条件が間違いなく記載されているかもチェックしましょう。
必要な条項が含まれているか
契約書には、一般条項は契約の種類に関係なく、多くの契約に規定されている標準的な条項があります。主に、次のような項目です。
- 契約期間
- 支払条件
- 契約解除の要件
- 損害賠償
- 秘密保持
- 管轄裁判所の合意
これらの条項は契約の後半にまとめて規定されることが多く、「一般条項」「雑則」などのタイトルで記載されています。
一般条項は、トラブルが発生した場合に備えて定められるものです。問題が起きたときに不利な立場にならないよう、漏れがないかを確認しておきましょう。
特に損害賠償や解除などの項目は自社にとって一方的に不利な条項になっている可能性もあるため、詳細なチェックが必要です。
一方的に不利な条項かどうかがわかりにくいケースもあるため、専門家に診てもらうなどの対応も必要です。
契約書はどちらが先に押印サインをするか
契約書の押印やサインについて、どちらが先にするのかという決まりはありません。
紙の契約書の場合、契約締結をスムーズに行うという観点では、次の順番で行うとよいでしょう。
- 契約書の見本をメール等で送り、確認してもらう
- 内容について問題なければ契約書の作成者が先に押印・サインをして相手方に送る
- 相手方が押印・サインして1通だけ送り返す
契約書を送る際は、自社の宛名を書いた返信用封筒を同封しておくとよいでしょう。
契約書の収入印紙の費用はどちらが負担するか
契約書の収入印紙の費用は、原則として契約当事者双方が平等に負担します。印紙税法第3条で、印紙税を納める義務がある者は「課税文書の作成者」と定められていますが、ここでの作成者は契約当事者の双方を指すためです。
ただし、どちらが負担するかを話し合いで決めても構いません。契約書2通を作成してそれぞれ1通ずつ保管する場合、2通とも収入印紙が必要になるため、一般的には各自が1通ずつ印紙代を負担しています。
収入印紙代の負担については、トラブルを避けるためにも、事前に決めておきましょう。
なお、電子契約で契約書を作成する場合、印紙税はかからず、収入印紙の貼付は不要です。印紙税法では課税文書の作成について「用紙への記載によるもの」と定義しており、電子契約における電子データの送信・交付は「課税文書の作成」に該当しないためです。
契約書の作成は合意で決めることも可能
契約書は、法令で決められている場合を除き、どちらが作成しても問題ありません。取引に慣れていない場合は相手側に作成を依頼するケースもありますが、自社に有利な契約書を作成するためには、自社側で作成できるよう、交渉してみるとよいでしょう。
相手側が作成する場合は、自社に不利にならないよう、法的観点からのチェックが必要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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