- 更新日 : 2024年12月5日
IT重説とは?メリット・デメリットや流れを解説
IT重説とは、オンラインで不動産取引の重要事項説明を行うことです。対面による説明とは異なり、お客様がわざわざ来店する必要がなくなるほか、説明時のやり取りを録画しておけるなど、さまざまなメリットがあります。
本記事では、IT重説のメリット・デメリットや、実施の流れと注意点などを解説します。
目次
IT重説とは?
IT重説は、パソコンやスマートフォンを利用することによって、オンラインで不動産取引の重要事項説明(重説)を受ける方法です。来店による説明の場合、移動にかかる時間や費用が発生しますが、IT重説ではそのような負担を省けます。また、説明時のお互いのやり取りを録画して残しておくことができる非常に便利な方法です。
オンラインで重要事項説明を実施すること
不動産を取り扱う会社が物件の売買や賃貸をする際には、契約締結までに重要事項説明が必要です。重要事項説明では、お客様に対して、物件の所在地や設備の状況など、重要な事項を説明します。
従来、重要事項説明は宅地建物取引業法第35条において、「宅地建物取引士が対面で行わなければならない」とされていました。
しかし、お客様が物件から遠い場所に住んでいたり、直接会う時間が十分に確保できなかったりするなど、対面による実施が難しい場合もあり課題とされていました。
そこで注目されるようになったのが、オンラインによる重要事項説明です。対面ではなく、ネットワーク環境などのITを活用して実施するもので、IT重説とも呼ばれます。
賃貸契約だけでなく売買契約でもIT重説の本格運用が開始
2017年に宅地建物取引業法が改正され、賃貸契約に関してパソコンやスマートフォンを利用して重要事項を説明する、IT重説が認められました。お客様に対して、内容の説明や質疑応答を行うことができる環境さえ整っていれば、どこに居ても重要事項説明を実施できるようになったのです。
さらに、2021年には、売買契約についてもIT重説が認められました。
このように、現在では、賃貸契約と売買契約の両方で、IT重説が本格運用されています。
IT重説対応物件とは?
ビデオ通話などのIT環境が整っていた場合でも、すべての物件でIT重説が可能というわけではありません。IT重説が可能な物件をIT重説対応物件といいます。
IT重説対応物件の条件として、以下が挙げられます。
- 双方向でやり取りできるIT環境下で行うこと
- 重要事項説明書を事前に送付すること(電子書面でも可能)
- 説明を開始する前に相手方の重要事項説明書の準備とIT環境を確認すること
- 宅地建物取引士証を相手方が視認できたことを画面上で確認すること
なお、1.のIT環境は、図面などの書類や説明の内容について、十分に理解できるよう映像を確認することができ、かつ、お互いの音声を十分に聞き取れる環境であることが求められています。
IT重説を導入するメリットは?
IT重説を導入することで、従来の対面型の説明にはない、さまざまなメリットを享受することができます。
お客様が来店する負担を軽減できる
お客様によっては、対象の物件から離れた場所に住んでいたり、外出が難しかったりする場合があります。
この点、オンラインでの説明であれば、お客様がわざわざ来店する必要はありません。移動にかかる時間や費用が軽減されるため、対面による説明と比べて、お客様の負担を軽減できます。
お客様への重要事項説明の記録を残せる
IT重説の場合、あらかじめお客様の許可を得ることで、ビデオ通話を録画することが可能です。双方のやり取りを記録しておくことで、事後に確認したいことが出てきた場合にすぐに見直すことができ、トラブルが発生した場合には参考にできます。
日程調整が容易
お客様の仕事が忙しく、重要事項説明の時間を確保することが難しい場合もあります。そのような場合でも、IT重説であれば特別な機器は不要であり、パソコンやスマートフォンさえあれば簡単に実施できます。対面による説明と比較して、移動時間の負担もないことから、日程を調整することが容易であるといえるでしょう。
お客様が自宅でリラックスして重説を受けられる
お客様の多くは、不動産の取引に関して専門的な知識のない場合がほとんどでしょう。
説明を受ける際に疑問があっても、緊張のあまり質問できなかったり、説明を十分に聞き取れなかったりする可能性があります。
この点、IT重説であれば、自宅で実施できるため、対面による場合と比較して、リラックスした状態で説明を受けることが可能です。
IT重説を導入するデメリット・注意点は?
IT重説には多くのメリットがありますが、オンラインでの実施による注意点もあります。
ネットワーク環境やビデオ通話ツールの準備が必要
IT重説はオンラインで実施されるため、ネットワーク環境が双方で整っていることが前提となります。
また、ビデオ通話ツールも必要です。ビデオ通話ツールとは、オンラインで映像と音声のやり取りができるソフトやアプリです。ビデオ通話ツールにはさまざまな種類がありますが、選ぶ際には、画面上で写真や文字をはっきりと確認できるかどうかが重要なポイントになります。また、ITに慣れていないお客様でも操作しやすいツールを選ぶと良いでしょう。
お客様が説明内容を理解しているか確認する必要がある
パソコンやスマートフォンを通してコミュニケーションする場合、対面と比較して表情や雰囲気を感じ取りにくく、お客様の理解の度合いがわかりにくいことがあります。
不慣れな環境で、お客様が質問しにくいことも想定されるため、不明な点がないか確認をするなど、適宜話しかけるようにしましょう。
通信環境が悪いと説明がスムーズに進まなくなる
ネットワークを通じてやり取りをするため、接続が安定していなかったり、通信速度が遅かったりすると、映像が乱れてしまい、IT重説が円滑に進まない場合があります。
まずは、不動産会社側はもちろんのこと、お客様のネットワーク環境も事前に確認しておくことが重要です。IT重説の最中に通信環境が悪くなったら、電波の入りやすい場所に移動したり、無線の場合には通信を有線に変更したりするなどの対処が必要です。事前にどういった対処法があるかも確認しておきましょう。
問題の解消を試みても改善しない場合には、IT重説を中止しなければなりません。
IT重説の方法・流れは?
IT重説では、従来の対面による方法・流れとは異なる点がいくつかあります。
以下では、IT重説の具体的なやり方について解説していきます。
お客様にIT重説の同意書を記載してもらう
重要事項の説明にあたって、お客様は対面による方法とIT重説のいずれかを選択することが可能です。後々、トラブルとならないように、お客様の意向は同意書など、記録に残る方法によって行うことが望ましいでしょう。
接続テストを実施する
お客様から、IT重説を実施してほしいとの希望があった場合には、お客様のIT環境が十分なものであるかを事前に確認する必要があります。
例えば、お客様がビデオ通話ツールなどのソフトウェアに対応可能であるか、カメラは十分な解像度を有しているか、マイクは双方の音声の内容を判別できる性能であるかなどを確認します。
必要書類を送付する
IT重説は、お客様の手元に重要事項説明書と添付書類がある状態で行わなければなりません。お客様が事前に内容を確認できるように、IT重説の実施までに余裕をもって送っておきましょう。
また、資料に番号を付しておくなど、お客様がわかりやすいよう工夫をすることで、円滑にIT重説を進められます。
IT重説を実施する
IT重説の実施時には、必ずお客様が宅地建物取引士証を視認できたことを確認します。例えば、宅地建物取引士証に記載された氏名を読み上げてもらうなどの方法によって確認することが可能です。
また、重要事項の説明を行う際には、宅地建物取引士がどこを説明しているのか、わかりやすいように画面共有しながら行うのが望ましいといえます。
なお、IT重説の途中で、映像や音声にトラブルが発生した場合には、これらを解消した上で再開する必要があります。
お客様から必要書類を返送してもらう
重要事項の説明が終わったら、お客様から質問を受けます。疑問点をすべて解消した上で内容を確認してもらい、必要な書類を返送してもらいます。
郵送もしくはオンラインで返送された書類を確認して、問題がなければ完了です。
IT重説に関する同意書のひな形・テンプレート
以下のページより、IT重説に関する同意書のひな形・テンプレートをダウンロードできます。同意書を作成する際にご活用ください。
IT重説を導入して重要事項説明を円滑に
IT重説は、パソコンやスマートフォンの画面を利用して、対面と同じように不動産の重要事項説明を受けられる方法です。お客様が来店する負担を軽減できるほか、録画しておくことで重要事項説明の記録を残しておけるなど、さまざまなメリットがあります。
利用するビデオ通話ツールには、多くの種類があります。ITに慣れていないお客様でも操作しやすいツールを選ぶことで、円滑にIT重説を進められるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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