- 更新日 : 2025年12月2日
電子契約でクーリングオフ書面を交付できる?特定商取引法の改正内容も解説
製品の販売などで電子契約を交わす際、クーリングオフ書面も電子上で交付できるか気になる方もいるでしょう。結論からいうと、2022年6月の特定商取引法改正により、電磁的記録によるクーリングオフ書面の交付が可能になりました。
本記事では、クーリングオフの基本情報と特定商取引法の改正内容、電子契約におけるクーリングオフ書面交付のルールや注意点について解説します。
目次
そもそもクーリングオフとは?
クーリングオフとは、一定の条件下で締結された契約を、期間内であれば消費者が無条件で解約できる制度です。例えば、事業者からの不当な勧誘や消費者が冷静さを欠いた状態で結ばれた契約などを、消費者が再考した末の自己判断で取り消すことができます。
クーリングオフ制度の概要
クーリングオフ制度は、消費者が冷静な判断を下せない状況下で締結された契約を、一定期間内であれば無条件で解除できるという、特定商取引法に基づいた制度です。
具体的には、訪問販売や電話勧誘販売、連鎖販売取引(マルチ商法)、特定継続的役務提供などが対象となります。
クーリングオフは消費者保護を目的とした制度で、勧誘時に不適切な対応や説明不足があった場合、契約後でも期間内であれば解約が可能です。また、解約に伴う損害賠償や違約金の負担は一切ありません。
クーリングオフ制度の対象となる取引
クーリングオフ制度はすべての取引で利用できるわけではなく、以下のような特定の取引に限って適用されます。
- 訪問販売
キャッチセールス、アポイントセールスなど
- 電話勧誘販売
電話勧誘による取引
- 特定継続的役務提供
エステティックや結婚相手紹介サービスなどの継続的契約
- 訪問購入
業者が消費者の自宅に訪れて私物などを買い取る取引
- 連鎖販売取引
マルチ商法など
- 業務提供誘引販売取引
内職商法、モニター商法など
クーリングオフの権利は、法律で定められた期間内に行使しなければ無効となります。
期限は、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入が8日間、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引が20日間です。
また、上記以外に金融商品や宅地建物の一部契約でもクーリングオフの適用となる場合もあります。
特定商取引法によるクーリングオフ書面の交付義務
特定商取引法に基づき、事業者は消費者に対してクーリングオフが可能な取引であることを明確に伝え、クーリングオフに関する書面を交付する義務があります。この書面は契約締結時に交付され、クーリングオフの起算日は消費者が書面を受け取った日からです。
なお、クーリングオフ書面が正確な内容で交付されていない場合、消費者は通常定められた期限を超えていてもクーリングオフを行使できる可能性があるため、事業者は適切な対応をしなければなりません。
特定商取引法改正で電磁的記録によるクーリングオフが可能に
2022年の特定商取引法改正により、書面の代わりに電磁的記録でクーリングオフに関する通知をすることが可能となりました。電磁的記録の例は以下の通りです。
- 電子メール
- USBメモリなどの記録媒体
- 事業者が自社のWebサイトに設けたクーリングオフ専用フォーム
- FAX
ただし、電磁的記録を用いる場合でも、形式や内容については法律を守らなければなりません。
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電子契約でクーリングオフ書面を交付した時点で効力が発生
クーリングオフ書面の交付が電子的に行われた場合、クーリングオフの効力は電磁的記録が消費者に交付された時点で発生します。
契約が成立したとしても、消費者が適切にクーリングオフを行った場合は、事業者はそれに応じなければならず、クーリングオフが適用されれば消費者の支払義務は発生しません。
また、事業者が「クーリングオフできない」と拒否したり、クーリングオフを希望する消費者に対して脅すようなことがあったりした場合は、起算日から期限を過ぎてもクーリングオフが可能です。
電子契約でクーリングオフ書面を交付するためのルール
電子契約でクーリングオフ書面を交付する際は、消費者がわかりやすいようにクーリングオフの期限や条件を書面に記載しなければなりません。書面を理解しやすくし、消費者に不利益が生じないようにすることがポイントです。
クーリングオフの期限がわかる状態であること
電子契約におけるクーリングオフ書面は、消費者がその期限を正確に認識できる状態で交付されなければなりません。特定商取引法に基づいたクーリングオフの期限は、契約成立後8日以内もしくは20日以内ですが、事業者はこの期限を消費者に明示する義務があります。
さらに、電子契約では、書面や電磁的記録が交付された日が起算日です。このようなクーリングオフの起算日や期限が消費者にとって不明確だと、契約の取消し権利を適切に行使できなくなるため、事業者側はわかりやすく示さなければなりません。
書面を読むことができる状態であること
クーリングオフ書面が電子的に交付される場合、消費者が書面を容易に読める状態であることが求められます。単にファイルを送付するだけでは不十分で、消費者がその書面を視認し、内容を確認できる状態で提供することが重要です。
例えば、特殊なソフトウェアや操作が必要ない、一般的に使用される形式のファイル(PDFなど)で提供することが推奨されます。
電子ファイルを保存できる状態であること
電子ファイル化されたクーリングオフ書面を、消費者が保存できる状態にしておくことも必須です。消費者が書面を適切に保存し、後で確認できる状態でなければ、クーリングオフの権利行使に支障をきたす可能性があります。
電磁的記録による交付の際には、ファイル形式が一般的な保存方法に対応しているか、消費者が自身のデバイスに容易に保存できるかが重要なポイントです。
保存のしやすさや確認のしやすさが確保されているかどうかが、信頼性の高い電子契約の基準となります。
電子契約でクーリングオフ書面を交付する方法
電子契約でクーリングオフ書面を交付する際には、まずは消費者に対して電子契約で書面を交付する旨の承諾を得なければなりません。その際には、電磁的方法の種類・内容の提示、承諾の取得に当たっての説明、承諾の取得に当たっての適合性等の確認、第三者への提供の確認が必要となります。
承諾を得られない場合、電子契約での書面交付はできません。承諾を得たら、「承諾を得たことを証する書面」を交付しなければなりません。これは紙で発行する必要があります。その後、クーリングオフ書面を電子契約で交付します。交付後、事業者は消費者に書面が到達し、閲覧できるかどうかを確認する必要があります。
電子契約でクーリングオフ書面を交付する際の注意点は?
クーリングオフ書面を電子契約で交付する場合は、前章でご紹介したように、必ず消費者からの承諾を得ましょう。承諾を得ないまま、あるいは承諾を得る手続きに不備があったのにもかかわらず一方的に電子契約で書面を交付し手続きを進めた場合は、罰則を受けるおそれもあります。
電子契約システム導入によるクーリングオフ書面交付の効率化・コスト削減効果と関連データ
マネーフォワード クラウドが2025年5月に実施した調査によると、電子契約システム導入により便益を感じる機能として「費用削減」が35.6%、「工数削減」が34.4%を占めました。さらに費用削減に便益を感じる556名に対し、最も重要な項目を尋ねたところ、「郵送費の削減」が20.0%、「印刷費の削減」が19.8%となり、本記事で解説したクーリングオフ書面の電子交付による郵送コスト削減が実務上も重視されています。
クーリングオフ書面の電子交付で郵送費・印刷費と業務時間を同時削減
企業規模別に見ると、2-50名の企業では「郵送費の削減」が23.2%と特に高く、次いで「印刷費の削減」が21.2%となっており、中小企業ほど直接的なコスト削減を重視しています。また工数削減537名では「契約リードタイムの短縮」が19.9%を占め、本記事で解説したオンラインでのクーリングオフ通知による手間と時間の短縮が評価されています。電子契約システムは、特定商取引法の改正により可能となったクーリングオフ書面の電子交付を活用し、消費者保護を確保しながら業務効率化を実現します。
オンラインでクーリングオフの手間と時間を短縮できる
クーリングオフ書面の交付は、これまではがきや書面で行うのが一般的でしたが、2022年の法改正により、メールや専用フォームなどを含む電磁的記録でも行えるようになりました。オンラインでもクーリングオフの通知が可能になったことは、企業にとって郵送にかかる手間とコストを抑えられる点でメリットがあります。
ただ、クーリングオフ書面を電磁的記録で交付するには、消費者の事前の合意が必要です。それ以降の工程も手作業で行うのは大変なので、電子署名システムなどの活用を検討されてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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