- 更新日 : 2024年11月7日
解約合意書に印紙は不要?一部解約や変更の場合、必要な場合を解説
解約合意書は契約の消滅を証明する文書であるため、原則として印紙税は不要です。また、解約合意書への印紙の貼付は、金額によって必要な場合があり、印紙を貼る場所や、印紙税の負担者については注意が必要です。ここでは解約合意書に印紙は不要なのかどうか、一部解約や変更の場合、必要な場合を解説します。
目次
解約合意書に印紙は不要?
解約合意書は、既存の契約を終了させる合意内容を書面化したものです。契約の消滅を証明する文書であるため、原則として印紙税は不要とされています。
ただし、以下のような場合は例外的に印紙税が必要になります。
- 契約内容の実質的な変更を伴う場合
- 違約金の支払いが記載されている場合
- 新たな権利義務関係が発生する内容が含まれる場合
一部解約の場合
一部解約の場合、残存する契約部分の金額によって印紙税の要否が決まります。例えば、賃貸借契約の一部を解約する場合、残りの賃料の合計金額に応じた印紙税が必要になることがあります。ただし、一部解約でも契約内容の実質的な変更がなければ、印紙税は不要です
一方、一部解約によって契約内容の重要な事項が変更される場合は、印紙税の課税対象となる可能性があります。重要な事項とは、契約金額や支払方法、契約の内容などが該当します。そのため、一部解約の内容をよく確認し、契約にどのような変更が生じるかを把握することが重要です。
変更の場合
契約内容の変更の種類によって、印紙税の要否が変わります。例えば、賃料の増額や契約期間の延長など、変更に伴う追加金額がある場合は、その金額に応じた印紙税が必要です。一方、契約当事者の住所変更や誤字脱字の訂正など、軽微な変更の場合は、印紙税が不要となることがあります。
変更契約書を作成する際は、変更内容が契約の本質的な部分に影響を与えるかどうかを慎重に検討する必要があります。印紙税の要否判断に迷う場合は、税理士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
合意書と同意書の違い
合意書は当事者間の合意内容を書面化したもので、印紙税が必要な場合があります。一方、同意書は一方的な意思表示の文書であり、原則として印紙税は不要です。
ただし、契約内容の変更を伴う場合は、合意書・同意書ともに印紙税が必要になる可能性があります。例えば、賃貸借契約の条件変更を記載した合意書や、債務の支払い条件の変更に関する同意書などが該当します。文書の性質と内容を慎重に検討し、印紙税の要否を判断することが重要です。
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解約合意書に印紙が必要なケース
解約合意書は原則として印紙税の対象外ですが、以下のような例外的なケースでは印紙税が必要になります。
- 違約金の支払いが記載されている場合
- 契約の消滅だけでなく、新たな権利義務関係が発生する内容が含まれる場合
- 契約内容の実質的な変更を伴う場合
- ただし、単に契約の消滅のみを証明する目的で作成される解約合意書は、原則として印紙税の対象にはなりません。
違約金の支払いが記載されている場合
違約金の支払いが記載された解約合意書には、印紙税が必要です。これは、違約金の支払いが記載された文書が金銭の受取を証明する性質を持つためで、違約金の金額によって必要な印紙税額が変わります。例えば、違約金が10万円以下の場合は200円の収入印紙が必要ですが、100万円を超える場合は1万円の収入印紙が必要です。
ただし、違約金の具体的な金額を記載せず、計算方法のみを記載するなど、違約金の記載方法によっては、印紙税が不要になる可能性があります。
契約の消滅を証明する文書ではない場合
契約の消滅だけでなく、新たな権利義務関係が発生する文書は印紙税が必要です。印紙税法上、契約書とは「契約の成立、更改又は内容の変更若しくは補充の事実を証明する目的で作成される文書」と定義されています。例えば、解約に伴う清算条項や新たな契約条件が記載されている場合が該当します。
一方、契約の消滅の事実のみを証明する目的で作成される文書(解約合意書など)は、課税対象とはなりません。契約内容の実質的な変更を伴う文書は、印紙税が必要になる可能性があるため、慎重な判断が求められます。
参考:No.7117 契約書の意義|国税庁、e-Gov 法令検索 印紙税法
解約合意書に印紙税が必要な場合の金額
解約合意書に印紙税が必要な場合、その金額は契約金額等に応じて決まります。例えば、以下のような金額区分です。
| 契約金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 10万円以下 | 200円 |
| 10万円超50万円以下 | 400円 |
| 50万円超100万円以下 | 1,000円 |
契約内容や金額によって必要な印紙税額が変わるため、個別の事例に応じた判断が求められます。印紙税の負担者や、印紙を貼らなかった場合の対応については、ここで詳しく説明していきます。
印紙税はどちらが負担するか
印紙税の負担者に関する法的規定はありませんが、実務上は契約当事者間の合意によって決定されるのが一般的です。
多くの場合、契約書に「印紙税は甲(または乙)の負担とする」といった文言が記載されます。契約書に明記がない場合は、慣例的に文書を作成する側が負担することが多いですが、トラブル防止のため、契約締結時に印紙税の負担者を契約書に明記しておくことが望ましいでしょう。
印紙を貼らなかった場合はどうなるか
印紙税法では、印紙を貼付しなかった場合、過怠税が課されることが定められています。過怠税額は、納付すべき印紙税額の2倍に相当する金額です。
例えば、本来200円の印紙を貼るべきところを貼らなかった場合、400円の過怠税が課されることになります。なお、印紙の未貼付は契約の有効性には影響を及ぼさず、契約が無効となることはありません。
印紙の貼付を忘れた場合は、速やかに印紙を購入して契約書に貼付し、管轄の税務署に「印紙税過怠税免除申請書」を提出することで、過怠税の免除を申請できます。ただし、免除の可否は個々の事情により判断されるため、契約書作成時には確実に印紙を貼付することが重要です。
解約合意書の印紙の貼り方、消印の押し方
印紙は契約書の左上部分に貼付するのが一般的です。ただし、法律上厳密な貼付位置の規定はないため、契約当事者間で合意が取れていれば、他の場所に貼付しても問題ありません。複数枚の印紙を貼る場合は、重ならないように並べて貼ってください。
契約当事者が署名・押印した後、印紙の中央に消印を押します。消印は、印紙の上下にまたがるように押印し、印紙の半分以上を覆うようにしましょう。
また、解約合意書に消印が必要な場合は、印紙の中央部分に、印紙の半分以上にかかるように押印します。複数の契約当事者がいる場合は、それぞれが消印を押します。

消印は印紙税納付の証明となるため、必ず押印が必要です。消印が不適切だと印紙税の納付が認められない可能性があるので、正しい方法で押印することが重要です。
解約合意書に割印は必要か
解約合意書への割印は、法律上の必須要件ではありませんが、契約書の改ざん防止において重要です。割印は、契約書の各ページが一体であることを証明し、ページの差し替えや追加を防止する役割があります。特に、複数ページにわたる解約合意書や、契約内容が複雑な場合には、できる限り、割印を押してください。
なお、割印の代替手段として契約当事者が各ページに署名する方法も存在します。この署名による代替が認められるかは、契約の性質や当事者間の合意内容によって判断されますので、事前に確認が必要です。
ここでは、割印に使用する印鑑の種類と、署名による代替方法の具体的な要件について解説します。
印鑑の種類
契約書の割印には、認印や企業の角印など、複数の種類の印鑑が使用可能です。認印は個人の銀行届出印や会社の役職印が該当し、企業の角印は会社名と代表者名が刻印された法人の公印を指します。実印は市区町村に登録された個人の印鑑であり、最も高い法的証明力を持ちますが、割印での使用は必須ではありません。
実務では、契約の重要度に応じて使用する印鑑を選択するのが一般的です。重要な契約では実印を、日常的な契約では認印や角印を使用することが多くなっています。
なお、将来的なトラブル防止の観点から、可能な限り実印の使用が推奨されます。特に、契約金額が高額な場合や、契約期間が長期にわたる場合は、実印の使用を検討すべきです。
署名でも問題ない?
割印の代わりに署名を行うことも可能です。ただし、署名の真正性を担保するため、以下の点に注意が必要です。
- 署名者の本人確認を行う
- 署名の使用について事前に当事者間で合意する
- 署名のみでは印鑑に比べて偽造のリスクが高いことを理解する
特に重要な契約の場合は、署名ではなく割印を行うことが望ましいでしょう。トラブル防止のため、署名の使用ルールを事前に取り決めておくことが大切です。
解約合意書への割印の押し方
ここでは、契約書に割印を押すやり方と注意点について説明します。
割印は複数部作成された契約書の同一性を証明し、各当事者の合意を示す効果があります。押印は、契約書の各部を適度な幅でずらし、重なった部分に印鑑を押します。

割印として認められる方法
割印として一般的に有効とされる方法は、以下の通りです。
- 契約書の複数部を適度にずらして重ね、その重なった部分に印鑑を押印する。
- 契約書の上部をずらして重ね、全ての契約書に印影がまたがるように押印する。
- 複数の契約当事者が全員で割印を行い、文書の同一性を確実に証明する。
- 印影が鮮明で、各ページの重なり部分に十分な大きさで押印する。
- 契約書をホチキスなどでしっかりと綴じた上で押印する。
割印として認められない方法
割印は法的に必要なものではありませんが、以下の方法では、割印としての効力が認められないおそれがあります。
- 印影の重なりが不十分で、各ページにまたがっていない押印
- ページ番号が記載されていない契約書への押印
- ホチキスなどで綴じられていない状態での押印
- かすれや薄すぎる印影での押印
- 一部の契約当事者のみによる押印
- 契約書の端だけに押印され、十分な重なりがない場合
正しい割印により、契約書の信頼性と法的効力が高まるため、ここで説明した適切な方法で押印してください。
解約合意書の無料ひな形・テンプレート
契約解約時のトラブルを防ぎ、円滑な解約手続きを進めるためには、適切な解約合意書の作成が重要です。マネーフォワードでは、法務の専門家が監修した解約合意書の無料テンプレートを提供しています。基本的な記載事項を網羅し、必要に応じて条項を追加・修正できる形式となっていますので、ぜひご活用ください。
また以下の記事で、解約合意書や賃貸借契約解約のポイントを解説しているのでご参照ください。
電子契約なら解約合意書の印紙は不要に
近年、電子契約サービスの普及が進み、解約合意書も電子契約を利用することで印紙の貼付が不要です。電子契約が印紙税法の課税対象から除外されているため、コスト削減や業務の効率化を実現できます。
ただし、電子契約の法的効力を確保するためには、以下の点に注意が必要です。
- 電子署名法に基づいた適切な電子署名を行うこと
- 改ざん防止のための十分なセキュリティ対策を講じること
- 長期保存に適したデータ形式を選ぶこと
電子契約の導入は、解約合意書の作成業務においても大きなメリットをもたらします。自社の実情に合わせた導入を前向きにご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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