- 更新日 : 2025年12月2日
電子契約と紙の契約は併用できる?片方の会社が未導入の場合の注意点
契約時に電子署名を用いて電子契約サービスを導入する企業も増えています。しかし、取引先が電子契約を導入していない場合は、紙の契約と併用できるのでしょうか?
本記事では、電子契約と紙の契約が併用できるのか、併用する場合の注意点などを解説します。
目次
電子契約と紙の契約は併用できる?
そもそも日本の法律では、法で定められた契約を除いて、契約締結の際に書面の交付が必要ではありません。契約自体は、申込と承諾という意思表示の合致で成立するとされています。
たとえば、友人同士で金銭の貸し借りを行った場合、契約書にサインをしていなくても貸す/返すという口約束さえしていれば、契約は成立するということです。
そのため、契約する方法が電子契約であろうが紙であろうが契約は可能で、電子契約と紙の併用もできます。
実際、法的には問題がないというよりは、会社の社内規定がどうなっているかのほうが大きく影響しているといえるでしょう。自社の電子署名に対しての社内規定やルールを整備している会社もあるかと思いますが、相手方からの電子署名を禁止するような規定の作成予定がない場合があります。
つまり、自社が電子署名できる/できない場合でも、相手が電子署名はできない/できることについて禁止していないケースが多いため、通常、電子署名による契約は問題なく進められます。
なお、電子契約については以下の記事でくわしく解説しています。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
「送信料0円」の電子契約が選ばれる理由
多くの電子契約サービスは送信料がかりますが、近年では「送信料0円」の電子契約サービスへの乗り換え・新規導入が多くなっています。
送信料0円の電子契約サービス導入のメリット・デメリットをまとめていますので、ぜひご活用ください。
導入で失敗したくない人必見!電子契約はじめ方ガイド
電子契約のキホンからサービス導入の流れまで、図解やシミュレーションを使いながらわかりやすく解説しています。
社内向けに導入効果を説明する方法や、取引先向けの案内文など、実務で参考になる情報もギュッと詰まった1冊です。
電子契約サービス比較マニュアル
日本には多数の電子署名・電子契約サービスがありますが、各サービスを比較する中で「ここだけは事前に確認しておくべき」と考えるポイントを5つまとめました。
電子署名・電子契約サービスが、そのポイントを満たしているかどうかを確認するのに、ぜひお役立ていただければ幸いです。
電子契約導入後のよくある悩み3選
電子契約サービスの導入後に発生しがちな、3つの「新しい課題」をまとめた資料です。
電子契約の導入を検討中の方はもちろん、電子契約を導入した後に課題を感じている方にもご活用いただけます。
電子契約と紙の契約を併用する場合の締結方法
電子契約と紙の契約を併用する場合の締結方法について解説します。具体的な流れは、次のとおりです。
- 紙の書面と電子書面を作成する
- 電子署名を施した契約書をPDFで送る
それぞれ詳しく見ていきましょう。
紙の書面と電子書面を作成する
電子契約と紙の契約を併用する場合は、それぞれの会社の慣習に従って契約書を用意する必要があります。一方の会社が電子契約を導入していない場合、紙の書面と電子書面の両方を作成します。
電子契約を導入していない側が契約書を作成する場合、まず、紙の契約書を作成してから、そこに署名・捺印を行って、相手方へ送付して電子署名してもらう流れが一般的です。
なお、電子契約を導入していない側の会社は、紙の契約書を原本として保管します。
電子署名を施した契約書をPDFで送る
電子契約を導入している側では、電子契約を導入していない側から送付された紙の契約書を受け取った後、紙の契約書を電子データに変換(電子契約PDF)し、電子署名を施します。その後、相手方に契約書をPDFで送付してください。
上記の流れをとることで、紙の書面、電子書面の併用が可能になります。
電子契約と紙の契約を併用した場合の保管方法
電子契約と紙の契約を併用した場合の保管方法について解説します。
まず、電子契約を導入していない側は、紙の契約書を原本として保管します。一方の電子契約を利用している側は、原本のコピーを取り、それをスキャンもしくはデジタル化してPDFフォーマットの電子データとして保管しましょう。
契約書の信頼性を保持するためには、電子契約の際に合意締結証明書を用意することをおすすめします。合意締結証明書とは、電子契約が成立した日時や署名者の情報が記載された文書のことです。
この証明書を提供することで、契約書にいつ誰が署名したかを確認できます。さらに、紙の契約書としてもその信頼性を保持するうえでも役立ちます。
電子契約と紙の契約を併用する場合の注意点
電子契約と紙の契約を併用する場合の注意点を紹介します。主な注意点は、次の5点です。
- 取引先に電子契約の仕組みを理解してもらう
- いつ署名したか明確にしておく
- メールアドレスを共有する
- 与える負担が少ないことを説明しておく
- 後文の違いについて説明しておく
取引先に電子契約の仕組みを理解してもらう
紙の契約と電子契約を併用する場合には、紙の契約をする側に電子契約の仕組みについて理解してもらう必要があります。
たとえば、次のような項目について理解を深めてもらえるように説明をしましょう。
- 電子契約についての基本的知識
- 実務上の取り扱い方法
- 片方だけが電子署名を行う場合の法的有効性
- セキュリティ面について
なによりも、電子契約は電子データに電子署名とタイムスタンプを付与することで、書面契約と同等の法的効力を持つことを理解してもらいましょう。
いつ署名したか明確にしておく
片方だけが電子契約を導入している場合、「紙の契約書を印刷した際に、電子署名が正しく表示されない」「いつ誰が契約書に署名したのかがわからない」といった問題が発生することがあります。
この問題を解決するためには、前述した合意締結証明書が有効です。電子契約が成立した日時や署名者の情報が記載された文書であるため、誰がいつ契約に署名したかを確認できるようになります。
メールアドレスを共有する
契約書をPDFで送信する際などのことを踏まえて、互いの連絡先(メールアドレス)を共有しておきましょう。互いにあて先を登録しておくことで、迷惑メールフォルダやゴミ箱に間違って入ることを防げます。
送った/届いていない、といったようなことにならないためにも、互いの連絡先を交換し、登録しておくことが重要です。
与える負担が少ないことを説明しておく
電子契約を導入していない側からすると、電子契約に抵抗を見せる場合もあるでしょう。こちらも電子契約サービスを導入しなくてはいけないのか、作業が増えるのではないか、など心配になるケースも考えられます。
電子契約と紙の契約の併用でも、大きな手間や費用的な負担がないことをあらかじめ伝えておくといいでしょう。
後文の違いについて説明しておく
電子契約における契約書と書面の契約書では、後文(こうぶん)の言い回しが異なります。電子契約書を先に作成して相手方へ共有する場合は、事前の説明が必要です。
後文とは、契約書の締めとして末尾に記載する文章のことです。契約締結の日時や手段、保存方法について書かれています。
たとえば、紙の契約書では「本書」「書面」などの文言が用いられますが、電子契約ではメールでデータファイルのやり取りをするため「本電子ファイル」「電磁的記録」といった記載になります。
また、紙の契約書では、契約者の人数に応じた枚数を作成し、原本の存在証明として後文に明記するのが一般的です。一方の電子契約では、同一データを互いにやり取りするため、作成枚数を後文に明記する必要はありません。
契約がスムーズに行えるように、紙と電子契約における相違点は、しっかりと共有しておきましょう。
取引先と異なる電子契約サービスを使用している場合はどうする?
これまでは、紙の契約書と電子契約書の併用について解説してきました。なかには、互いに電子契約に対応しているものの、取引先と異なる電子契約サービスを使用している場合もあるでしょう。ここでは、そのようなケースの対応策について解説します。
片方で導入している電子契約サービスのみを使用する
それぞれで異なる電子契約サービスを採用している場合、どちらか一方のサービスのみを選択して利用する方法があります。
ただし、この場合はどちらかの企業がそれまで利用していたシステムを変更することになることには注意が必要です。このような事態にならないようにするためにも、電子契約サービスを導入する際はある程度市場シェアのある製品を採用するようにしましょう。
連名で電子署名を施す
連名で電子署名を施す方法もあります。一方の企業が電子契約書を作成して、もう一方がその書類に自社の電子署名を加えて契約を成立させる方法です。
この方法であれば、どちらの企業も既存の電子契約システムをそのまま使用できます。前述したようにサービスの変更が伴わないため、契約もスムーズに進むでしょう。
なお、利用中の電子契約サービスによっては電子署名の追加や閲覧機能に制限がある場合もあるため、事前の確認が必要です。
電子契約導入における課題解決策と関連データ
マネーフォワード クラウドが2025年5月に実施した調査(電子契約システム未導入企業467社対象)によると、契約業務における課題として「契約業務において課題を感じていない」が22.3%であった一方、7割以上の企業が何らかの課題を抱えていることが明らかになりました。課題の上位には「契約書の印刷・製本・郵送の手間」(18.8%)、「契約書の保管・廃棄管理の負担」(17.6%)が挙げられています。
段階的な電子化で業務負担を軽減
本記事で解説した電子契約と紙の契約の併用は、取引先が電子契約を導入していない場合の現実的な解決策となります。電子契約導入済み企業では「費用削減」(35.6%)と「工数削減」(34.4%)が最も高く評価されており、併用形式であっても電子契約側では印刷・製本・郵送といった手作業が削減され、保管スペースも不要になります。取引先への負担が少ないことを適切に説明することで、段階的な電子化を進めることができ、将来的な完全電子化への移行もスムーズになります。
電子契約と紙の契約を併用する際は注意点を理解しておこう
電子契約と紙の契約は併用可能です。ただし、保管方法や注意点を互いに理解したうえで契約を進める必要があります。
また、なかには取引先と異なる電子契約サービスを使用している場合もあるでしょう。その場合は、どちらかのサービスに統一するか、連名で電子署名をすることになります。
いずれの場合でも契約をスムーズに進めるうえでは、互いの認識をすり合わせておくことが重要です。本記事で紹介した注意点を理解して、契約に臨むようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
新築不動産を電子契約で販売する流れは?メリット・デメリットや導入事例も解説
新築不動産販売においても電子契約は可能です。電子化できる契約書には、重要事項説明書や売買契約書などが挙げられます。 本記事では、新築不動産を電子契約で販売する流れや電子契約するメリット・デメリットについて解説します。売買契約において電子契約…
詳しくみる電子契約サービスを乗り換える方法・流れは?注意すべきポイントも解説
電子契約サービスの選択肢が増える中で、より自社に適したサービスへの乗り換えを検討する企業が増えています。電子契約サービスの乗り換えには、適切な手順と注意点の把握が不可欠です。 本記事では、電子契約サービスを乗り換える方法や流れ、注意するべき…
詳しくみる建設業法第19条第3項とは?電子契約を導入するために必要な承諾と書面交付義務を解説
建設業界でも導入が進む電子契約ですが、建設業法第19条第3項では、契約書を電子化する際に特別な定めがあることをご存知でしょうか。この条文は、建設工事の請負契約を書面で交付する原則を定めており、電子化するには相手方からの「承諾」が不可欠です。…
詳しくみる海外での電子契約の普及状況は?法的有効性についても解説!
現在、日本では電子契約が普及しつつあります。海外の企業と取引を行っている日本企業は、その取引に電子契約が使えるのか気になるかもしれません。今回は海外における電子契約の普及状況や、導入することで得られるメリット、電子契約を導入する上で理解して…
詳しくみるクラウド型の契約書管理システムのおすすめは?メリット、デメリットや比較ポイントを解説
契約書管理をクラウド上で行うと、法改正に自動で対応できる、管理コストを抑えられる、リモートアクセスができるなどのメリットがあります。料金体系・操作性・機能・サポート・セキュリティなどを総合的に考慮して、導入するクラウド型の契約書管理システム…
詳しくみる定期建物賃貸借契約は電子契約できる!電子化する条件やメリットを解説
定期建物賃貸借契約は、法改正により電子契約での締結が可能になっています。電子契約システムの導入は、手間やコストの削減につながるなどのメリットがあります。 本記事では、定期建物賃貸借契約の基本と、電子契約が認められた背景について紹介します。ま…
詳しくみる

