- 作成日 : 2024年9月3日
敷金返還請求書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
敷金返還請求書とは、賃貸借契約終了時に、賃借人が貸主に敷金の返還を求めるために作成する書類です。本記事では敷金返還請求に関する説明をするとともに、請求書のひな形を用いて書き方のポイントなどを詳しく解説します。敷金返還の手続きをスムーズに進めるために、ぜひご一読ください。
目次
敷金返還請求書とは
敷金返還請求書とは、賃借人が貸主に対して預けていた敷金の返還を求める際に作成する請求書のことです。
賃貸借契約が終わったあとは、一般的に原状回復費用などを差し引いた残額の敷金が賃借人へ返還されますが、貸主が返還を拒否したり不当に高額な費用を請求したりするケースも存在します。
このような場面で、賃借人が自らの権利を主張するために、敷金返還請求書が作成されます。権利の主張は書面でなくても有効なのですが、書面として残すことで返還請求の事実や金額、振込先などが明確になるため、後々のトラブルを防ぐためにも必要なものと考えておくべきでしょう。
敷金返還請求書を作成するケース
敷金返還請求書を作成するケースとして、主に以下2つの場面が考えられます。
- 貸主から敷金返還に関する連絡がないケース
→ 契約終了後、一定期間が経過しても貸主から敷金返還に関する連絡や手続きの説明がない場合、敷金返還請求書を貸主に送付して返還手続きの開始を促す。 - 貸主から提示された金額に納得できないケース
→ 貸主から提示された敷金の返還金額が、契約内容や原状回復費用などを考慮しても不当に低いと感じる場合、敷金返還請求書を作成して賃借人としての主張やその根拠を伝える。
貸主との間で認識の相違や疑問が生じているときでも、請求書を作成することで認識を共有し、コミュニケーションを円滑にできます。口頭でのやり取りだけだと認識にズレが生じていても気が付きにくいため、このような書面の活用は重要といえるでしょう。
敷金返還請求書のひな形
敷金返還請求書を作成するときは、次のページからダウンロードできるひな形をご活用ください。敷金の金額や当事者情報を調整することで、すぐに請求書を完成させられるでしょう。
敷金返還請求書に記載すべき内容
ひな形の内容を参照しつつ、敷金返還請求書に記載しておきたい基本的な内容を簡単に紹介します。
敷金返還請求書に記載する事項 | |
---|---|
表題 | 敷金の返還を求める書面であることが一目でわかる書き方であればよい。 例:「敷金返還請求書」など。 |
請求の理由・背景 | 双方の認識にズレがないことを確認する意味でも、敷金の請求を行う背景について簡単に記しておく。 例:「当方は、貴殿との間で、〇〇の建物を目的として締結した賃貸借契約を、〇年〇月〇日に終了し、同日建物の明渡しも完了いたしました。しかしながら、本日に至るまで、貴殿からの敷金の返還がございません。」など。 |
請求金額 | 返還を求める敷金の金額を明示する。 例:「賃貸借契約第〇条においては、契約時に貴殿に納めた敷金○○円は、契約終了後速やかに返還されるものとなっております。」など。 |
返還方法 | いつまでに、どうやって返還をしてもらうのかを明示する。 例:「上記金額を、○○銀行○○支店普通○○○の、当方名義の口座まで、本書面到達後ただちにご返還いただきたく」など。 |
作成年月日や当事者双方の住所・氏名 | 具体的な日付、氏名(法人の場合は名称)と住所を明示する。 |
敷金返還請求書を作成する際の注意点
敷金返還請求書を作成するときは、「正確な情報に基づいて作成すること」に注意してください。
そこで契約書の内容を再度確認し、敷金の金額や返還条件、原状回復費用に関する特約などを把握しましょう。また、原状回復費用についても、どこまでが借主負担なのかを明確にし、納得できない費用については貸主に問い合わせるなど、根拠を確認することが大切です。返還金額の計算も慎重に行い、敷金から差し引かれるべき費用を明確にしたうえで、返還されるべき金額を正確に算出しましょう。金額に誤りがあると余計なトラブルが生まれる危険性があります。
余計なトラブルを避けるという意味では「丁寧な文章表現を心がけること」も大切です。感情的な言葉遣いは避け、事実関係を客観的に記載しましょう。丁寧な言葉遣いが円滑なコミュニケーションにつながります。
敷金は本来いつ返還される?
敷金の返還は、一般的に退去後1ヵ月程度を目安に行われます。これは、貸主が退去後の部屋の状態を確認し、原状回復工事が必要な場合はその見積もりや工事を行い、最終的な敷金精算を行うための期間として想定されています。
ただし、敷金の返還時期が契約書に記載されている場合や、退去時の部屋の状態、原状回復工事の内容などによっては時期が前後することもあります。例えば、大きな修繕が必要な場合だと返還までの期間が長くなることも十分に考えられます。
敷金返還請求書の送付方法
敷金返還請求書の送付方法に法的な決まりはなく、基本的には自由です。例えば、郵送、宅配便、FAX、メールなど、さまざまな方法で送付できます。貸主との関係が良好でスムーズな返還が期待できる場合は、メールなどでも問題ないでしょう。
しかし、「請求書の送付があった・なかった」という点で後々トラブルになることを避けるには、内容証明郵便の利用がもっとも確実で推奨される方法です。
内容証明郵便とは、いつ・誰から・誰に・どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明してくれる特別な郵便サービスで、貸主が「請求書を受け取っていない」と主張しても、容易に送付の事実と日付を証明できるようになります。
また、敷金の返還を求めている強い意志を貸主に伝えることもできます。そのため、同じ請求書でも、内容証明郵便により送ることで貸主が返還手続きに取りかかってくれる可能性が高まるのです。
敷金返還請求権の時効
退去後すぐに敷金返還請求書を送る必要はありません。「敷金は返さない」などと明確に意思を示していない限り、まずは一般的な期間(1ヵ月程度)が経過するまで待ってみましょう。
ただ、長く待ちすぎるのも消滅時効の問題があるため、よくありません。
消滅時効とは、一定期間の経過により権利が消滅することをいい、敷金返還請求権に関してもその他一般の権利と同じように消滅時効にかかります。
期間は「5年間」に設定されているため、今から退去する場合はあまり心配する必要もありませんが、過去の賃貸借契約に関する敷金の返還を求めるときは注意してください。
もし時効ギリギリという場合でも、諦めずまずは内容証明郵便により請求をしましょう。これによって一定期間は時効の完成を防ぐことができますので、その間に交渉を進め、支払義務の有無を確定させれば問題ありません。
敷金返還請求書で敷金を回収しよう
敷金の返還が受けられずに困っているときは、そのまま放置せず貸主に敷金返還請求書を送付しましょう。貸主が個人の場合だと忘れている可能性もあり、そうでない場合でも支払いを促すことができます。
請求書の作成方法については、本記事で解説した通り、ひな形を使えばすぐに完成させられるでしょう。
また、送付方法も重要で、特にトラブルが予期される場面や極力トラブルを回避したいときは内容証明郵便の利用を忘れないようにしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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