- 更新日 : 2024年8月30日
手付放棄による不動産売買契約の解除は可能?条件や通知書の書き方を紹介
不動産売買契約の買主は、売主に対して預けている手付金を放棄することにより、契約を解除できます。ただし、売主が契約の履行に着手した場合や、契約上の手付解除期限を経過した場合には、手付解除が認められなくなるため、注意が必要です。本記事では、不動産売買契約の手付解除についてわかりやすく解説します。
目次
手付放棄による不動産売買契約の解除は可能?
不動産売買契約においては、買主から売主に「手付金」が交付されることがあります。
買主は、手付金を放棄すれば不動産売買契約を解除できます(=手付解除)。ただし、売主が契約の履行に着手した場合や、契約上の手付解除期限を経過した場合には、買主による手付解除は認められません。
手付解除の要件
買主による不動産売買契約の手付解除は、以下の要件をすべて満たす場合に認められます。
①買主が売主に対して解約手付を交付したこと
②買主が手付を放棄すること
③売主が契約の履行に着手していないこと
手付は別段の合意がない限り解約手付に当たると解されています。そのため、手付金の交付が行われている不動産売買契約については、ほとんどのケースで手付解除が認められます。
「契約の履行に着手した」とは
売主が契約の履行に着手した時点以降は、買主による不動産売買契約の手付解除は認められません。
「契約の履行に着手した」とは、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をしたことを意味します(最高裁昭和40年11月24日判決)。
具体的には、以下のような売主の行為が「履行の着手」に当たります。
- 不動産の引渡しおよび移転登記手続きの準備をしたうえで、その旨を買主に対して通知したこと
- 売買を前提として、土地の分筆登記手続きをしたこと
- 目的物である不動産の一部を引渡ししたこと
- 目的物である不動産の引渡しに先立って、所有権移転登記手続きをしたこと
など
手付解除のタイミングが遅れると、売主が契約の履行に着手してしまう可能性があります。手付解除を行うべきかどうかは、早い段階で検討・判断しましょう。
契約上の手付解除期限に要注意
不動産売買契約では、手付解除の期限が設けられることがあります。この場合は原則として、期限経過後の手付解除は認められません。
ただし、売主が宅地建物取引業者であり、買主が宅地建物取引業者でない不動産売買契約については、売主が履行に着手するよりも前に買主の手付解除の期限を到来させる特約は無効です(宅地建物取引業法39条3項)。
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手付金の種類
手付金には、「証約手付」「解約手付」「違約手付」の3種類の性質があると解されています。
大半の手付金は、証約手付と解約手付の性質を併せ持っています。その一方で、契約の定めによって解約手付でなくなったり、違約手付としての性質が追加されたりすることがあります。
証約手付
「証約手付」とは、売買契約の締結を証するものとして交付される手付です。すべての手付金は、証約手付に当たります。
解約手付
「解約手付」とは、売買契約を解除できる効果が付与された手付です。買主は手付の放棄、売主は手付の倍額を現実に提供することにより、それぞれ売買契約を手付解除できます。
売主・買主間において別段の合意をしない限り、手付金は解約手付に当たると解されています。
その一方で、契約で売主・買主が合意をすれば、解約手付としての効力を否定する(=手付解除を認めない)ことができます。ただし、売主が宅地建物取引業者であり、買主が宅地建物取引業者でない売買契約においては、買主の手付解除権を制限する特約は無効です(宅地建物取引業法39条2項・3項)。
違約手付
「違約手付」とは、契約上の債務不履行が発生した際の「損害賠償額の予定」として機能する手付です。買主が債務不履行を起こした場合は、売主に預けている違約手付が没収されます。
手付金は原則として違約手付に当たりませんが、契約の定めによって違約手付とすることができます。
なお、手付金を違約手付とする場合でも、解約手付としての性質が当然に失われるわけではありません。解約手付であると同時に、違約手付とすることも可能です。
手付放棄で売買契約を解除する手続き
買主が手付金を放棄して不動産売買契約を解除する際には、売主に対して手付解除通知書を送付しましょう。前述の要件を満たしていれば、通知書が売主に到達した時点で手付解除の効力が発生し、売買代金を支払う義務が消滅します。
手付解除通知書には、手付を放棄して不動産売買契約を解除する旨を明記しましょう。目的物である不動産の情報を正しく記載することや、手付解除の要件を満たしていることがわかる記載をすることが大切です。
手付解除通知書を作成する際には、以下のテンプレートを参考にしてください。
手付解除通知書の送付に当たっては、配達証明オプションを付した内容証明郵便を利用するのが一般的です。郵便局の配達証明により、手付解除を行った事実と日付を後から証明できます。売主との契約トラブルを予防するため、配達証明付き内容証明郵便を利用しましょう。
手付解除は要件を確認したうえで、配達証明付き内容証明郵便で売主に通知しましょう
不動産売買契約の締結に当たり、買主が売主に対して手付金を預けた場合は、原則として手付解除が認められます。
ただし、売主が契約の履行に着手した場合や、契約によって手付解除が制限されている場合には、手付解除が認められないことがあるので注意が必要です。手付解除の可否については法律的な判断が必要になるので、弁護士の確認を受けることをおすすめします。
買主が不動産売買契約を手付解除する際には、配達証明付き内容証明郵便によって、売主に手付解除通知書を送付するのが一般的です。売主に通知書が配達されると、郵便局から配達証明が返送されます。配達証明は、手付解除を行った事実や日時を証明するための証拠として利用可能です。
不動産売買契約は取引金額が大きいので、手付解除の手続きを適切に行うことの重要性は高いと言えます。民法上の要件を正しく踏まえたうえで、配達証明付き内容証明郵便を利用して万全の形で手付解除を行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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