- 更新日 : 2024年8月30日
借地契約期間満了前の借主の更新請求書とは?ひな形をもとに書き方を解説
借地契約期間満了前の借主の更新請求書とは、文字通り、借地契約を更新するため、借主から貸主へ送付する請求書のことです。
借地権には法律上いくつかの区分がありますが、中には借主からの請求により更新を行えるものが存在します。本記事では、借地権の基礎的なポイントから、具体例を交えた請求書の書き方について解説します。
目次
借地契約期間満了前の借主の更新請求とは
借地契約期間満了前の借主の更新請求とは、文字通り借地契約期間が満了する前に、借主(賃借人)が貸主(貸借人)に対して借地契約の更新請求を行うことです。
前提として、借地権にはいくつかの大まかな分類があります。その中で、更新請求を行う対象となるのは、1992年7月以前に締結された旧法に基づく借地契約と、1992年8月以降に締結された借地借家法に基づく普通借地契約に関するものとなります。ここでは、借地契約の概要について簡単にご説明いたします。
借地契約の種類
まず借地権には、「借地法」と1992年に施行された「借地借家法」によるものがあります。旧借地法については、1992年7月31日までに結ばれた借地契約が対象となり、1992年8月1日以降に土地を借りる契約を結んだ場合は「借地借家法」が適用されます。
旧法(借地法)について
旧借地法では、借主の保護に重点が置かれていました。土地の所有者が契約更新を拒絶するには、正当な事由が必要とされています。
その他のポイントとして、建物の種類によって存続期間が定められています。非堅固な建物(木造の建物など)の契約期間として必須とされていたのは、期間の定めがない場合は30年以上、期間の定めがある場合は20年以上でした(更新後の期間は20年)。
また、堅固な建物(鉄筋コンクリートなど)については、期間の定めがない場合は60年間、期間の定めがある場合は30年以上の契約期間が下限として定められており、それぞれ非常に長い期間、借主は土地を借りることができました。
新法(借地借家法)について
1992年8月以降の借地契約に適用される「借地借家法」では、4つの借地権が定められています。普通借地権、一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用定期借地権の4つで、それぞれ最低限必須とされる契約期間が異なります。
普通借地権は、「旧借地法」と同じように契約の更新が可能な借地権です。初回の契約時の契約期間は最低でも30年以上と定められています。ただし、更新する際の契約期間は20年以上の契約期間です(2回目以降の更新の際は10年以上の契約期間)。また、旧法と同様に、土地の所有者が更新を拒絶するには正当な事由が必要です。
その他の借地権である、「一般定期借地権」「事業用定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」は、名称から想像できる通り、それぞれ契約更新をしない旨を特約として定める借地権のことです。利用の目的や契約期間等に細かな違いはありますが、ここでは普通借地権との違いだけ押さえておきましょう。
借地契約の更新請求とその拒絶について
前述の通り、旧法に基づく借地権及び普通借地権では、建物がある場合に限り、借主が更新を申し出ることで借地契約を更新できます。一方、貸主に正当な事由があれば、この更新の申し出を拒むことが可能です。
更新の拒絶が正当化される事由については、双方の土地使用を必要とする事情や借地契約に関する従前の経過、立退料の申出等により判断されます。
借地契約期間満了前の借主の更新請求書を作成するケース
借地契約期間満了前に更新請求書を作成するケースとしては、旧法に基づく借地権または普通借地権に関する契約について、引き続き利用を希望する場合です。
後述しますが、借地契約については仮に期間満了前に更新請求をしていなかったとしても、土地の使用が継続していれば、その契約が更新されたものとしてみなされます。
ただし、貸主に正当な事由が認められれば、契約の更新を拒絶される可能性もゼロではありません。満了前に更新請求書を作成するケースは事情によって異なりますが、共通して言えることは、住宅や商業施設などを契約期間満了後も変わらずに利用できるように手配をしておけば、将来の見通しを立てることができるという点です。
また、更新請求等を口頭のやりとりで行った場合、後日、請求の事実についての争いが起こることがありえます。そのため、請求を行ったという事実について、必ず書面を送付し記録を残すようにしましょう。
借地契約の更新について
旧法の借地権及び普通借地権に関する契約の更新方法は、主に三つ挙げられます。
一つ目が、今回のテーマでもある借主からの更新請求による更新です。原則として、契約期間が満了し、かつ借りている土地に建物がある場合、借主が契約の更新を請求すれば、従前の契約と同じ条件で契約を更新したものとみなされます。
二つ目が、合意更新と呼ばれるもので、借主と貸主の双方が合意して進める更新の手続きです。この場合は、協議した上で更新料や更新後の地代を定めます(更新料については契約書であらかじめ定めていることもあります)。
三つ目が、法定更新と呼ばれる更新方法です。契約の更新を事前に行わずに契約が満了してしまった場合、借りた土地に建物があり借主がそれらの使用を継続していて、かつ貸主が正当な事由により異議を申し出ない場合は、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます。これが法定更新と呼ばれるものです。
借地契約期間満了前の借主の更新請求書のひな形
旧法による借地契約及び普通借地契約については、期間満了前に更新請求を行うことで、従前と同一の内容で契約更新が可能であることをお伝えしました。
ここでは、実際に借主に申し出る際の、請求更新書のひな形をご紹介いたします。
リンク先でダウンロードできる請求書を元に、実際の契約状況に合わせた内容に書き換えるなど、適宜修正を行い実務に利用していただければ幸いです。
更新請求書に記載すべき内容
ここでは、借地契約の更新請求書に必要な項目について説明します。更新請求書では、現在締結されている借地契約の内容を確認した上で、実態に即した内容を記載しましょう。
項目ごとに、基本的な事項について説明しますので、個別のケースに沿って作成してください。なお、特に従前の契約内容から変更を希望しない場合は、従前の条件と同様の条件で賃貸借契約を更新したい旨を明記します。
従前の契約の満了日
更新請求の際には、以下の例のように、従前の借地契約の満了日について正確に記載します。
「前記賃貸借契約は来たる令和〇年〇月末日をもって満了となります」
双方に認識齟齬が起こらないように、締結済みの借地契約を確認しましょう。
借地上の建物の有無
前述の通り、更新請求により借地契約の更新を行う場合は、借地上に建物が存在していることが必須条件となります。請求書では、以下の文言のように、この点を明確にしておきましょう。
所在地
借地の所在地を正確に記載します。テンプレートでは「所在」「番地」に分けておりますので、それぞれ以下のように記載します。
所在 〇〇県〇〇市○町○丁目地番 〇番〇
地目
地目というのは、現状・使用目的などによる土地の分類名のことで、法律に基づき登記されています。この点、例えば借地期間が長ければ途中で土地の用途などが変わってしまうとトラブルになることもあるため、再確認の意味も含めて従前の契約書を確認して記載しましょう。記載する際は、上記の所在地情報に連ねる形で問題ありません。
地積
地積とは土地の面積のことです。こちらも、双方の認識に誤りがないよう、従前の契約書に基づいて正確に記載します。記載する場合は、テンプレートを参考に地目の下に連ねる形でも問題ありません。
借地契約更新の際の注意点
借地契約の更新請求書を作成する際のポイントについては、上記で説明した通りです。ここでは、更新を行う際の一般的な注意点について説明いたします。
借地契約の更新を行う際には、「更新料」の支払いが発生することが一般的です。更新料の相場は地域によって異なりますが、借地権の価格(土地の市場価格に借地割合を乗じて求めた価格)の3%から10%程度が目安と言われています。
現行の法律である借地借家法では、借主から貸主に対して、更新時に更新料を支払う義務はありません。しかし、実際には慣習から更新料が支払われるケースが一般的と言われています。
前述の通り、請求更新であっても(ハードルは高いものの)貸主に正当な事由があれば更新を拒むことは可能です。更新拒絶等のトラブルを避ける意味でも、支払うことには一定の意味があると言えます。
なお、従前の契約書に更新料の支払いについて定められている場合や、過去に支払ったことがある場合などは、借主に支払いの義務が生じます。
借地権の概要を理解して、正しい更新請求を実施しよう
今回は、借地契約の概要を説明した上で、更新請求のポイントをみてきました。一見シンプルなように見えますが、気をつけなければトラブルとなる可能性もゼロではありません。今回の記事を参考にしながら、借地契約の期間満了前に必要事項を確認し、スムーズに契約を更新していただければ幸いです。
また、業務等で不動産関連の知識が必要になる方であれば、借地に関する最新情報や詳細情報等を関係する省庁のHPなどでチェックするように心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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