- 更新日 : 2024年8月30日
無断増改築工事の停止請求とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
無断増改築工事の停止請求書とは、賃貸物件の増改築を無断で行う賃借人に対して、賃貸人が当該増改築の停止を求める書面です。
本記事では、無断増改築工事の停止請求書の書き方やレビュー時のポイントを、記載事項の具体例を示しながら解説します。
目次
無断増改築工事の停止請求とは
無断増改築工事の停止請求書とは、賃貸物件の賃貸人が賃借人に対して、無断での増改築を停止するよう求める書面です。
賃貸借の目的とされている建物につき、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに増改築を行うことは、原則として賃貸借契約違反に当たります。賃貸人は賃借人に対して、無断での増改築を停止するよう請求可能です。
また、土地のみを賃貸している場合でも、賃借人が借地上の建物の増改築を行う際には、賃貸人の承諾を得る必要がある旨を借地契約において定めることがあります。この場合も、賃貸人は賃借人に対して、無断での増改築を停止するよう請求できます。
これらのケースでは、賃貸人が賃借人に対し、内容証明郵便で無断増改築工事の停止請求書を送付するのが一般的です。
無断増改築工事の停止請求書を送付するケース
事業者が無断増改築工事の停止請求書を送付するケースとしては、以下の例が挙げられます。
- 他人(他社)に貸している建物が、自社に無断で増改築されていることを知った場合
- 他人(他社)に貸している土地の上に建っている建物が、自社に無断で増改築されていることを知った場合
なお、いずれも無断増改築が賃貸借契約に当たることが条件となります。特約によって増改築に関する賃貸人の承諾が不要とされている場合には、無断増改築工事の停止請求は認められないのでご注意ください。
無断増改築工事の停止請求書のひな形
無断増改築工事の停止請求書のテンプレートは、以下のページからダウンロードできます。実際に無断増改築工事の停止請求書を作成する際の参考としてください。
※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。
無断増改築工事の停止請求書に記載すべき内容
無断増改築工事の停止請求書には、主に以下の事項を記載します。
- 表題(「無断増改築工事の停止請求書」)
- 宛先
- 無断増改築の内容(対象物件、箇所など)
- 契約違反の根拠規定(賃貸借契約の条文)
- 無断増改築工事の停止を請求する旨
- 無断増改築工事が停止されないときは、賃貸借契約を解除する旨
無断増改築工事の停止請求書の例文は、下記のとおりです。
無断増改築工事の停止請求書
○○県○○市○○1丁目○―〇号
○○ 殿
当社は貴殿に対し、○○県○○市○○1丁目○―〇号の建物(以下「本件建物」)を令和✕年〇月△日より賃貸しておりますが、このたび貴殿が当社に無断で本件建物のキッチンの改築工事に着手していることが判明しました。
当社と貴殿の間の建物賃貸借契約書(以下「本件賃貸借契約」)第〇条に記載の通り、賃貸人である当社の承諾なく、本件建物の増築または改築を行うことは禁止されております。
従いまして、本書面が到達次第、直ちに上記改築工事を停止し、本件建物を原状に復することを請求いたします。
なお、上記工事の停止および本件建物の原状回復が行われないときは、当社は本件建物賃貸借契約を解除しますので、あらかじめご了承ください。
令和〇年×月×日
○○県○○市✕✕丁目✕✕
株式会社✕✕
代表取締役 △△ △△ 印
無断増改築工事の停止請求書を作成する際の注意点
無断増改築工事の停止請求書を作成する際には、賃借人の行為が契約違反に当たる旨を明確に示すことが大切です。無断増改築工事の内容と、賃貸人の承諾がない無断増改築を禁止する賃貸借契約の条項を端的に示し、契約違反の事実を明確化しましょう。
また、無断増改築工事の停止を請求した事実と日時を証明するため、内容証明郵便で発送することをおすすめします。内容証明郵便による無断増改築工事の停止請求書は、後に賃貸借契約の解除などに関してトラブルが発生した際に、証拠として用いることができます。
無断増改築を発見したら、速やかに停止を請求しましょう
他人(他社)に貸している賃貸物件が、賃借人によって無断で増改築されているのを発見したら、速やかに内容証明郵便で無断増改築工事の停止請求書を送付しましょう。無断増改築工事の停止と原状回復が行われないようであれば、賃貸借契約を解除した上で損害賠償請求を行うことも検討すべきです。
不動産の賃貸借契約については、賃貸人・賃借人間でトラブルが発生することがよくあります。賃貸借契約の内容を締結前にきちんとレビューすることに加え、賃貸借期間中における不動産の利用状況も定期的にチェックし、賃借人による無断転貸・無断増改築・用法違反などが行われていないかを確認しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
商品売買代金請求書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
商品売買代金請求書とは、売買契約において、買主が期日までに代金を支払わない場合に、買主に対して送付する書類です。この記事では、商品売買代金請求書とは何かについて基本的な知識を説明するほか、ひな形をもとに記載すべき条項や作成のポイントを解説し…
詳しくみる弁護士からの内容証明郵便や通知への回答書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
弁護士から内容証明郵便や通知が届いた際には、それに対して回答をする必要があります。この記事では弁護士への回答書の作成を求められている方向けに、ひな形をもとに書き方や盛り込むべき内容についてご説明します。注意点や期限を過ぎた場合、あるいは無視…
詳しくみる個別契約書の保管期間は何年?法律上の根拠と効率的な保管方法
企業間の取引において、継続的な取引を行う際にはまず「基本契約書」を締結し、個々の具体的な発注内容については「個別契約書」で取り決める、というケースが多く見られます。日々の業務で発生する注文書や注文請書なども、この個別契約書の一種と捉えること…
詳しくみる和解書とは?作成の注意点や合意書との違いを解説
「和解とは何か」と聞かれたら、「トラブルが解決すること」と答える方が多いでしょう。それでは、和解書とはどのような書類なのでしょうか。和解書がなければ、和解したはずのトラブルがさらに大きなトラブルに発展することもあるほど、大切な書類です。 こ…
詳しくみる使用賃借契約書とは?参考用のテンプレート付き!
「使用貸借」という言葉は聞いたことがあっても、普通の契約との違いや使用される場面まではわからない方が多いのではないでしょうか。 ここでは使用貸借契約について、不動産・マンションなどにおける契約書のテンプレート見本や、親子間とそれ以外での契約…
詳しくみる契約書の訂正にスペースがない!二重線・訂正印、再作成など訂正方法まとめ
契約書の誤りを見つけた時、訂正印を利用するなどして修正する方法が考えられます。しかし訂正印を押すスペースがないケースもあるでしょう。そのような時には改めて契約書を作成するなど状況に応じた対応が必要です。 当記事で契約書を訂正する方法をまとめ…
詳しくみる