- 作成日 : 2024年5月30日
無料のPDFソフトで電子印鑑は作れる?作り方や押す方法、リスクも解説
電子印鑑とは、紙の印鑑をデジタルデータ化したものです。電子印鑑の活用はビジネスのデジタル化に伴い拡大しているので、作成方法や使い方、リスクについてきちんと把握しておきましょう。
この記事では、電子印鑑をPDFソフトで作成・押印する方法、無料の電子印鑑のリスク、会社での導入時の注意点など、様々な内容を解説します。これから電子印鑑を導入する方も、すでに利用中の方も、ぜひ参考にしてください。
目次
電子印鑑とは
近年、ビジネスシーンにおいてデジタル化が急速に進んでおり、契約書や請求書などの書類も電子化されるケースが増えてきました。それに伴い、従来の紙の書類に押印していた印鑑も、電子的な印鑑、いわゆる「電子印鑑」の利用が広がっています。
電子印鑑とは、デジタルデータとして作成された印鑑を指します。紙の書類に押印するのではなく、PDFなどの電子ファイルに押印することができます。電子印鑑を利用することで、印刷や郵送の手間を省き、業務の効率化を図ることができるのです。
請求書をPDFで送る場合、印鑑は必要?
電子請求書の利用が増えるにつれ、「電子請求書に印鑑は必要なのか?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。結論からいうと、請求書をPDFで送付する場合、必ずしも印鑑は必要ありません。なぜなら、紙でもメールでも、請求書に押印がなくとも法的には問題ないためです。
ただ、実際にビジネスでは、メールで送る請求書にも押印を求められるケースがよくあります。例えば、取引先が押印された請求書でないと受理しないと決めている場合などです。押印があれば、その請求書が取引の証拠書類としてより信頼性が高まるからです。
また、押印がない書類は、誰でも簡単に作れてしまうので、その会社が本当に発行した請求書なのかを客観的に証明するためにも、取引先から押印を求められることがあります。請求書に押印が必要かどうかは、事前に取引先に確認しておきましょう。
電子署名や電子サインとの違い
電子印鑑、電子署名、電子サインは、すべてデジタル環境で使われる承認や同意を示すための手段ですが、それぞれには特徴があります。
電子印鑑は、デジタル化された印鑑のことで、PDFやWordなどの電子文書に直接押すことができます。本人性の確認や改ざん防止の機能を持たないため、法的効力は認められていません。
電子サインは、電子的な形での署名のことで、タブレットやスマートフォンの画面上で直接署名を行うことができます。電子サインは、手書きの署名と同じように、署名者の同意を示すために使用されます。電子サインも同様に、必ずしも法的効力を保持しているわけではありません。
電子署名はデジタルデータに対する署名のことです。電子文書の成立の真正を推定させる法的効力があり、本人確認と改ざん防止の機能を持ちます。電子署名は、公開鍵暗号技術を用いて生成され、署名者の秘密鍵によってデータに付加されます。
したがって、法的効力が必要な書類のやり取りには、電子署名を使うのが最も適しています。一方、社内文書など、電子署名の法的効力を及ぼす必要がない書面については、電子サインや電子印鑑を使うのも一つの選択肢です。
無料のPDFで電子印鑑は作れる?
PDFソフトウェアのAdobe Acrobat Readerを使用して、電子印鑑を作成、編集することができます。以下に具体的な手順を紹介します。
PDFの電子印鑑機能で作成する方法
Adobe Acrobat Readerを使用して電子印鑑を作る方法は以下の通りです。
- Adobe Acrobat Readerを開く
- 「ツール」タブから「署名」セクションを選択
- 「印鑑」または「署名」ボタンをクリックし、「デジタルIDを作成」を選択
- 必要情報(名前、メールアドレスなど)を入力し、印影をアップロード
- 印鑑を保存して使用
PDFで電子印鑑を編集する
Adobe Acrobat Readerでは、作成した電子印鑑の編集も可能です。印鑑の色や形状を変更したり、署名の位置を調整したりすることができます。ただし、電子印鑑の編集は、印鑑の信頼性や法的効力に影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。電子印鑑の編集方法は、以下になります。
- PDF文書を開く
- 編集したい印鑑を選択
- 右クリックして「プロパティ」を選択し、色やサイズを変更
- 変更を保存し、文書を閉じる
PDF以外に電子印鑑を無料で作成する方法
PDFは電子印鑑を作成するのに適したフォーマットですが、PDF以外にも無料で電子印鑑を作る方法があります。ここでは、Excel(エクセル)を使った方法と、実際の印鑑をスキャンする方法を紹介します。
Excel(エクセル)で電子印鑑を作成する
Microsoft Excelは一般的に表計算ソフトとして知られていますが、シンプルなグラフィックツールとしても使用できます。Excelを使用して無料でデジタル印鑑を作成する手順を詳しく説明します。
- Excelを開き、新しいシートを作成します。
- [挿入]タブから[図形]を選択し、円形の図形を描きます。
- 図形を選択した状態で、[図形の書式設定]を開きます。
- [図形の塗りつぶし]から[画像]を選択し、印鑑の画像を挿入します。
これで、Excelで電子印鑑を作成することができます。
実際の印影をスキャンする
実際の印鑑の印影をスキャンし、その画像データを電子印鑑として利用する方法もあります。実際の印鑑をデジタル化するためのステップは以下の通りです。
- 高解像度でスキャン:スキャナーを使用して印鑑をデジタル化します。ここでは、300dpi以上の解像度でスキャンすることが推奨されます。これにより、印鑑の細部まで鮮明に捉えることができます。
- 画像の調整:スキャンした画像は、画像編集ソフトウェアを使用して調整します。このステップでは、不要な影やノイズを除去し、印影をクリアに整えます。
- 保存形式の選択:最後に、保存形式を選択します。印鑑の背景を透明にする必要がある場合は、PNG形式が一般的に選ばれます。
これらのステップを踏むことで、実際の印鑑をデジタル化し、電子印鑑として利用することが可能になります。ただし、デジタル化した印鑑の取り扱いには十分注意が必要です。第三者に悪用されないよう、安全な場所に保管しましょう。
PDFに電子印鑑を押す方法(Adobe Acrobat Reader)
PDF文書に電子印鑑を押す方法として、Adobe Acrobat Readerを例に説明します。
1.電子印鑑を準備する
まずは、使用する電子印鑑の画像ファイルを準備します。通常はPNGやJPEG形式で透過性があるものを用意することが理想的です。
2.対象のPDFファイルを開く
Adobe Acrobat Readerを起動し、電子印鑑を押したいPDFファイルを開きます。
3.電子印鑑を押す位置を選択
PDF文書内で印鑑を押す位置をクリックします。位置を選択したら、右クリックして[署名]を選択します。
4.電子印鑑を選択
電子印鑑を選択します。まだ電子印鑑を作成していない場合は、[新しい署名]を選択して電子印鑑を作成します。
5.PDFに電子印鑑を押す
最後に、[署名を適用]をクリックして印鑑を押します。これで、PDF文書に電子印鑑が押されます。
エクスポートと共有
印鑑を押したPDFファイルは、「ファイル」メニューから「名前を付けて保存」を選ぶか、「送信」オプションでメール添付などで他者に共有できます。
会社で無料の電子印鑑を利用するリスク
無料で作成できる電子印鑑は、手軽に利用できる反面、いくつかのリスクが存在します。特に会社で使用する場合は、慎重に検討する必要があります。
リスク1:セキュリティの問題
無料の電子印鑑作成ツールの中には、セキュリティ面で脆弱なものが存在します。例えば、作成した電子印鑑のデータがツールの提供者のサーバーに保存される場合、不正アクセスによってデータが流出するリスクがあります。
また、無料ツールでは、二要素認証など、セキュリティ面での機能が十分でない場合もあります。会社の重要な書類に使用する電子印鑑が流出すれば、なりすましや不正利用の危険性があります。
リスク2:法的効力の問題
先述の通り、無料の電子印鑑は、それだけでは電子文書の成立の真正を推定させる法的効力を持ちません。電子署名と組み合わせない限り、法的に有効な印鑑にはなりません。
会社での利用を想定した場合、契約書や重要書類に法的効力のない電子印鑑を使用すると、トラブルに巻き込まれる可能性があります。
リスク3:印影の変更や複製が容易
無料の電子印鑑は、誰でも簡単に作成、変更、複製ができてしまいます。悪意のある第三者が、会社の電子印鑑を不正に複製し、悪用するリスクがあります。
また、社内での電子印鑑の管理体制が不十分だと、社員が無断で電子印鑑を変更したり、不正に使用したりするリスクもあります。
以上のようなリスクを考慮すると、会社で電子印鑑を利用する場合は、無料ツールではなく、セキュリティと法的効力が担保された有料の電子印鑑サービスを使用することをおすすめします。
法的効力のある電子印鑑の条件
電子印鑑を導入する目的の一つに、契約書や重要書類のデジタル化があります。しかし、単に電子印鑑を押すだけでは、法的効力は発生しません。ここでは、法的効力のある電子印鑑の条件について解説します。
電子署名との組み合わせ
電子印鑑に法的効力を持たせるためには、電子署名との組み合わせが不可欠です。電子署名とは、電子文書の作成者の本人性を確認し、文書の改ざんを防止する技術です。
電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)では、以下の要件を満たす電子署名は、手書きの署名や押印と同等の法的効力を持つと定められています。
- 電子署名が本人によって行われたことを確認できること
- 電子署名後に電子文書が改ざんされていないこと
つまり、電子印鑑に上記の要件を満たす電子署名を組み合わせることで、法的効力のある電子印鑑になるのです。
認定認証事業者の電子証明書の利用
法的効力のある電子署名を行うには、認定認証事業者が発行する電子証明書を利用する必要があります。電子証明書とは、電子署名を行う者の身元を証明する電子的な証明書です。
電子契約サービスの利用
電子印鑑に電子署名を組み合わせ、認定認証事業者の電子証明書を利用するためには、電子契約サービスを利用するのが便利です。電子契約サービスとは、電子署名や電子証明書の機能を提供するクラウドサービスのことです。
電子契約サービスを利用すれば、電子印鑑と電子署名を組み合わせた法的効力のある電子契約を、簡単に行うことができます。また、これらのサービスは、高度なセキュリティ機能を備えているため、安心して利用できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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