- 作成日 : 2022年6月17日
未成年の定義とは?2022年4月からの民法改正についても解説!
2022年4月、「未成年」の年齢が引き下げられました。この法改正は、成年に達するかどうかの境目にいる若い方のみならず、企業関係者など多くの方に関係するものです。
そのため、「未成年」の定義などを整理して、理解しておきましょう。また、「未成年の年齢が変わることで法的にどのような影響があるのか」といったことも解説します。
目次
成年・未成年の定義
成年および未成年の定義については、民法第4条に規定が置かれています。
第四条 年齢十八歳をもって、成年とする。
引用:民法|e-Gov法令検索
すでに改正法は施行されており、現在は「18歳から成年になる」というルールが適用されています。
成年の年齢の見直しは、約140年ぶりです。明治時代から「成年になるのは20歳」とされてきましたが、2022年4月1日からは「18歳以上が成年」となりました。
ただし、2022年4月1日時点で19歳または20歳になっていた方が、遡って「18歳時点で成年になっていた」という扱いになるわけではありません。改正法が施行される日に18歳の方、19歳の方の全員が同時に新成人となります。
なお、2022年4月1日以降に誕生日を迎えて18歳になる方は、その誕生日をもって成年となります。
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2022年の民法改正による変更点
2022年の民法改正では、「成年になる年齢の引き下げ」が最も大きな変更といえますが、これに伴っていくつかの変更が行われました。
例えば、「婚姻できる年齢」の変更です。
婚姻が可能になる「年齢が成年に達する年齢」に統一され、女性も男性も同じ18歳に設定されました。これまで女性は16歳が婚姻開始年齢でしたが、2歳引き上げられたのです。
成年に達していることを要件とするために「20歳」との規定を設けていた各種法令も、いくつか変更されました。例えば国籍法における帰化の要件や、社会福祉法における社会福祉主事資格、旅券法における10年用一般旅券の取得などです。いずれも要件が20歳から18歳に変わり、年齢制限によるハードルが下がりました。
一方、国民年金法における国民年金の被保険者資格や、児童福祉法における児童自立生活援助事業の対象になる者の年齢、道路交通法における大型・中型免許等などは「20歳」という規定が設けられていますが、これらは18歳に変わることなく20歳のまま維持されることになりました。成年になったからといって、すべての年齢制限の対象外になるとは限らないのです。
このように、民法上の成年の定義が変更されたことに伴って年齢要件が変わるケースと、20歳のまま維持されるケースがあるので注意が必要です。これまで「20歳」を基準としていたルールのすべてが変更されるわけではありません。
なぜ18歳まで成年年齢が引き下げられたのか
18歳や19歳の方の自己決定権を尊重し、社会参加を促進するという世界の潮流を受けて、成年年齢が引き下げられることになりました。また、改正には選挙制度も大きく関わっています。
2007年5月に成立した国民投票法は、憲法改正国民投票の投票権年齢を18歳以上とし、附則において18歳以上が選挙権を有するようになることを要請していました。2009年には、法制審議会で、「国民投票年齢が18歳と定められたことに伴い、選挙年齢が18歳に引き下げられることになるのであれば」、「民法の成年年齢を18歳に引き下げるのが適当である」との答申がありました。そして2015年に公職選挙法が改正され、成年年齢に先んじて選挙権年齢が18歳に引き下げられました。
このような経緯で民法が改正され、成年年齢が18歳に引き下げられたのです。
新たに成年になった当人への影響
成年に達すると「親の同意を得ずに契約できるようになる」「未成年者取消権が行使できなくなる」といった変化が生じますが、「お酒やたばこの年齢制限は20歳のまま」です。
新たに成年となる方が、知っておくべき事柄について見ていきましょう。
親の同意を得ずに契約できるようになる
民法第5条第1項および同条第2項には、以下の規定が設けられています。
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
引用:民法|e-Gov法令検索
未成年者の行為能力に関する規定です。
簡単にいえば、「未成年の方が契約を締結するには基本的に法定代理人の同意が必要」ということです。この場合の法定代理人は、原則として親権者です(親権者がいない、あるいは親権者が管理権を持たない場合は未成年後見人)。
つまり、これまでの18歳の方や19歳の方は、未成年であるがゆえに重要な契約を結ぶ際は親の同意を得る必要があったのですが、民法の改正により、18歳以上の方は自分の判断で契約を締結できるようになりました。
親の同意が必要になる行為には、雇用契約の締結や貸金債権の弁済の受領、相続の承認等、負担付の贈与を受けること、契約解除の意思表示を受けることなどがあります。今後18歳の方や19歳の方は、就職などについてもすべて自分の意思で決められますが、契約締結等のリスクも認識しておかなければなりません。
未成年取消権が行使できなくなる
上記の民法第5条第2項には、「未成年者取消権」の定めが置かれています。
本来親等の同意を得て行うべき契約締結に関して同意を得ていない場合は、契約を取り消すことができるという権利です。
未成年者を保護するための規定ですが、民法の改正により、未成年にあたらなくなった18歳・19歳の方は、この権利を行使することができなくなりました。
そのため、悪徳商法等に対する意識を高め、消費者被害などに遭わないよう、より一層注意して契約を結ばなければなりません。
お酒やたばこの年齢制限は20歳のまま
20歳という年齢制限が維持されるものもあると述べました。日常生活との関わりが強い例として、お酒やたばこが挙げられます。また、競馬や競輪、オートレース、モーターボート競走の年齢制限も20歳のままです。
これは健康への悪影響や青少年保護、非行防止などの観点による措置です。このことを理解しないまま、意図せず違法行為を行わないように注意してください。
成年年齢引き下げによる企業への影響
成年年齢の引き下げは、直接的な影響を受ける方以外にも影響が及びます。特に企業関係者は以下の点に注意し、必要に応じてルールやシステムを見直しましょう。
約款や規約の修正が必要になる
場合によっては、約款や規約の修正が必要になるかもしれません。
例えば、成年かどうかの区別を「20歳」という年齢を用いて表現している場合などです。サービス等の申し込みについて、「20歳未満の方は保護者の同意が必要」といった内容を定めている場合は、文言を修正する必要があるでしょう。
もちろん、あえて20歳を基準とするのであれば変える必要はありません。
文言を修正する場合は、この機会に利用規約・Webサイト・パンフレットなどの記載内容をすべて確認しておくとよいでしょう。
一部システムの変更が必要になる
規約等の文言だけでなく、システム上で「20歳」という条件を設定している場合も注意が必要です。
未成年者を除く目的で「20歳」を基準とし、システム上で当該ユーザーを除外するように設定している場合は、それを修正しなければなりません。
そのほか、年齢で利用制限などの区別をしている場合はシステムエラー等が生じないかどうか、チェックしておきましょう。新たに定義された成年の年齢に合わせる場合は、「18歳」を基準にして修正しましょう。
雇用契約における保護者の同意がいらなくなる
雇用契約に関しても、今後は18歳以上の方なら自分の判断で締結することができます。そのため、雇用に関する業務フローも必要に応じて見直しましょう。
例えば、18歳・19歳の方をアルバイトや正社員を雇い入れる際の保護者の同意は不要になります。とはいえ、成年であっても身元が保証されているに越したことはありません。そのため、雇用契約締結にあたって「保護者の同意を必要とする」という運用を続けても構いませんし、「身元保証人の設定を求める」といった運用を検討するのもよいでしょう。
未成年の範囲が変わったことによる影響を理解しておこう
2022年4月1日以降、18歳と19歳の方は未成年ではなく成年となったため、これまで受けていた制限が減りました。どのようなことができるようになり、どのようなリスクが生じるのか、逆にどのような点が変わらないのか、影響の有無とその内容をよく理解しておくことが大切です。
企業側は規約やシステムについて修正が必要かどうかを検討することに加えて、雇用等に関する対応についても検討する必要があるでしょう。
よくある質問
2022年の民法改正のポイントは何ですか?
成年年齢が18歳に引き下げられ、未成年者を対象とした制限および法的保護の範囲が狭まります。詳しくはこちらをご覧ください。
なぜ18歳まで成年年齢が引き下げられたのですか?
18歳・19歳の方の自己決定権を尊重し、社会参加を促進するためです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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