- 更新日 : 2025年3月10日
契約締結日とは?契約書にいつの日付を記載すればいいか解説
契約書には日付を記載する欄があり、署名又は記名押印と同じタイミングで、記入します。この欄にはいつの日付を記載すればよいのでしょうか。また、契約が成立した日付はいつになるのでしょうか。
今回は、契約書の日付に関する基礎知識について解説します。
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目次
契約書にはいつの日付を記載する?
契約書の日付欄には、いつの日付を記載すればよいのでしょうか。契約書に署名又は記名押印をした日付でしょうか。それとも、契約書の内容に両者が合意した日付でしょうか。そもそも、契約はいつの時点で成立するのでしょうか。
契約書の日付で重要な契約締結日とは?
契約締結日とは、文字どおり契約が成立した日のことです。民法第522条では、契約の成立に関して以下のように定められています。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
引用:民法|e-GOV法令検索
つまり、一部の契約(保証契約など)を除き、契約は当事者の意思が合致した場合に成立し、書面(契約書)がなくても成立するということです。しかし、それではいつ相手方が契約の内容に承諾したのかがわかりません。そこで、契約締結日を決めておく必要があります。
契約締結日は以下のいずれかを選択し、両者で取り決めをしておくのが一般的です。
- 契約期間の初日
- 最後に署名又は記名押印をする人が署名又は記名押印した日
- 最初に署名又は記名押印をする人が署名又は記名押印した日
- 基本的な契約条件に双方が合意した日
- すべての当事者の契約に関する社内承認が完了した日
例えば、1.を選択し、契約開始日が令和4年4月1日だったとしましょう。この場合、契約書に署名又は記名押印した日が令和4年3月31日であっても、令和4年4月2日であっても、契約締結日は令和4年4月1日となります。2.を選択して、最後に手続きをする人が令和4年4月1日に署名をした場合、相手方が前日の令和4年3月31日に署名をしたとしても、契約締結日は令和4年4月1日となります。
契約締結日と署名又は記名押印日は違う?
契約書の「署名日」や「記名押印日」は署名又は記名押印した日付であり、契約締結日と異なる場合があります。例えば、契約期間を令和4年4月1日と取り決めていた場合でも、一方当事者が令和4年3月31日に署名又は記名押印した場合は、当該当事者の署名又は記名押印日も令和4年3月31日となります。逆に、一方当事者が郵送した契約書が令和4年4月2日に相手方のもとに届いて、その日に相手方が署名又は記名押印した場合、相手方の署名又は記名押印日は令和4年4月2日となります。
契約期間が決まっている場合は、「この契約は令和4年4月1日から有効とする」と契約の効力発生日を明記することで、契約の効力発生日と契約締結日や署名日・記名押印日が異なっていたとしても対応できます。
前述のとおり、契約締結日にはさまざまな考え方がありますが、最後に署名又は記名押印をする人が署名又は記名押印した日で契約が成立したと考えるのが一般的です。後のトラブルを防ぐためにも、契約締結日に両者が同じ日に記入するのがベターです。自社で署名・押印した後で郵送して、相手方が署名・捺印をする場合は、あらかじめ「4月1日に署名・捺印をお願いします」と依頼しておくとスムーズです。
契約書の日付についてよくある疑問
契約締結日や契約書への署名・記名押印日については、ご理解いただけたかと思います。ここからは、皆さんがよく悩まれる契約書の日付に関する疑問について、Q&A形式でお答えします。迷った時は、ぜひ参考にしてください。
契約書の日付が空欄だった場合は無効になる?
契約書の日付は、「その契約がいつ成立したか」を証明する証拠になり得ます。前述のとおり、契約は相手方が申込みを承諾した時点で成立するので、日付が記載されていてもいなくても、さらにいえば契約書がなくても成立します。
しかし、日付を空欄のままにすると、契約当事者間で「いつ契約が成立したか」が問題となり、トラブルになるおそれがあります。空欄の契約書に先に署名・記名押印する場合は相手方に日付を指定した上で日付の記入を依頼して、空欄のまま放置しないようにしましょう。
「吉日」は契約書に使用できる?
「X月吉日」と書かれた手紙を見かけることがあります。「吉日」は縁起がよい日という意味で、結婚式の招待状や店舗の新装開店の案内状などは、日付を「X月X日」ではなく「X月吉日」とします。イベント・催し物の通知やあいさつ状なども、同様に「X月吉日」とすることがあります。
契約が成立して新しい取引が始まるのは、確かにおめでたいことです。今後良好な関係を築きたい、両者の繁栄を祈りたいという気持ちで「X月吉日」にしたいと思われるかもしれません。しかし、契約書においては、やはり「いつ契約が成立したか」が重要です。具体的な日付が特定できない「X月吉日」は避けましょう。
過去の日付(バックデート)は契約書に使用できる?
バックデートとは、実際に署名又は記名押印した日よりも前の日付を契約締結日として契約書に記入することです。例えば、契約書に署名又は記名押印する日が令和4年4月10日であるにも関わらず、実際に取引が開始された日付が令和4年4月1日であったために、契約書にも契約締結日を令和4年4月1日と記載するようなケースです。
通常、取引が開始したタイミングに契約締結が遅れてしまう場合には契約を遡及適用する条項を契約書に加えて、契約を締結します。「契約締結日に関わらず、X年X月X日より遡及的に契約を有効とする」「契約締結日に関わらず、有効期限はX年X月X日より1年間とする」と記載することで、過去に遡って契約が有効になります。例えば、「本契約は、令和4年4月1日に遡って適用する」と記載した場合、契約書の契約締結日が令和4年4月10日であったとしても、契約は令和4年4月1日から有効になります。
また、契約の遡及効を適用せず、署名又は記名押印する日が令和4年4月10日であるにも関わらず、契約書に令和4年4月1日と記載すると、契約書上契約締結日は令和4年4月1日になります。当事者間での基本的な契約条件に双方が合意した日やすべての関係者当事者の契約に関する社内承認が完了した日が令和4年4月1日であれば契約書に令和4年4月1日と記載することはおかしなことではないともいえますが、実際に当事者間での基本的な契約条件に双方が合意した日やすべての関係者当事者の契約に関する社内承認が完了した日、取引が始まった日と契約書上の契約締結日が異なる場合、その契約書上の契約締結日には契約は成立していないということになり、契約書の内容が誤っているということにもなります。そのため、極力バックデートは使わないようにしましょう。
未来の日付は契約書に使用できる?
逆に、取引が始まる前に契約書を交わすケースもあるでしょう。例えば、令和4年3月15日に契約を締結し、実際の取引は令和4年4月1日から始まる場合、契約書に「本契約書は令和4年4月1日から適用する」「契約締結日に関わらず、有効期限は令和4年4月1日より1年間とする」と記載すると、契約の効力は令和4年4月1日から発生します。
契約書の日付は手書きでないとだめ?
契約書の日付は、手書きでも印字でも問題ありません。あらかじめ、契約書の日付欄に締結日を印刷しておくこともできます。むしろそのほうが、契約書を複数枚作成する場合に日付を揃えることができる、記入漏れを防ぐことができるというメリットがあります。
契約書の日付を改ざんした場合はどうなる?
相手方が署名又は記名押印した契約書の日付を勝手に改ざんした場合は、「有印私文書変造」という犯罪に該当することがあります。
2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
引用:刑法|e-GOV法令検索
相手方と話を合わせて契約書の日付を改ざんした場合は、「通謀虚偽表示」となる可能性もあります。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
引用:民法|e-GOV法令検索
民法では通謀虚偽表示を行った場合、それに基づく法律行為(契約など)は無効としています。
日付を改ざんするようなことは絶対にやめましょう。
契約時には日付にも注意しましょう
契約書において、日付は非常に重要な意味を持ちます。間違った日付を記入してしまったり、契約書に必要な記載が漏れていたりすると、後に重大なトラブルに発展しかねません。あらかじめ取引先と「いつ契約を締結するか」をすり合わせた上で契約締結日を決め、必要に応じて契約開始日や有効期間を契約書に明記しましょう。
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よくある質問
契約書にはいつの日付を記載すればよいですか?
一般的に、最後に署名又は記名押印をする人が署名又は記名押印する日を記載します。詳しくはこちらをご覧ください。
契約締結日と署名又は記名押印日の違いについて教えてください。
契約締結日は当事者間で契約を締結する日で、署名又は記名押印日は契約書に署名又は記名押印する日です。したがって、契約締結日と署名又は記名押印日が異なることもあり得ます。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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