• 作成日 : 2025年4月8日

個人情報保護法に違反した場合の罰則は?企業や従業員個人へのペナルティを解説

個人情報保護法とは、個人情報の取り扱いについて定めた法律です。違反があった際の罰則規定も定められており、近年の改正により罰則内容が強化されました。

本記事では、個人情報保護法違反があった時の罰則規定について解説します。罰則が科されるケースや、企業や従業員に対するペナルティなどについて、具体例を交えながら解説しますので、ぜひ参考にしてください。

個人情報保護法とは

個人情報保護法とは、個人情報の取り扱いに関するルールを定めた法律です。個人情報を取得、利用、第三者提供する際のルールや、違反した際の罰則が詳しく定められています。

法律違反による行為が原因で情報漏えいなどが発生すると、罰則を科されるだけでなく、企業の社会的信用を損なう恐れがあります。

このような事態を防ぐためにも、規制内容を正確に理解した上で、個人情報を適切に取り扱うことが重要です。

個人情報保護法の目的

個人情報保護法では、「個人の有用性に配慮しつつ、個人の権利・利益を保護すること」を目的として定めています。

ここでいう個人情報の有用性とは、適正かつ効果的に活用することで、社会の発展や国民生活の向上に寄与することを意味します。そのため、この法律は単に個人情報を保護するだけでなく、適切な利活用を促進することも重要な目的としています。

個人情報保護法が制定された背景には、さまざまな分野での個人情報利用の急速な拡大があります。個人情報を有効に利活用しつつも、個人に不利益をもたらさないための枠組みを設ける必要があり、個人情報保護法が定められました。

個人情報保護法の改正内容

個人情報保護法は、施行から三度改正が行われており、直近では2022年4月に改正されました。

具体的な改正ポイントとしては、以下の4つが挙げられます。

個人の権利が拡充

従来は書面請求が原則であった個人情報開示に、電磁的方法が追加されたり、本人が個人情報の利用停止や削除請求を行えるケースが拡大されたりしました。

事業者の責務の強化

情報漏えい時の報告や通知の義務化、公表事項に安全管理措置内容が追加、不適正利用の禁止が明確化といった形で事業者の責務が強化されました。

外国事業者への提供に関する規定変更

外国の企業に個人情報を提供する際は、提供先の国名、提供国の個人情報保護制度、提供先企業が講じる措置を、本人に情報提供することが義務付けられました。

仮名加工情報や個人関連情報の導入

仮名加工情報や個人関連情報が導入されました。

仮名加工情報は、他の情報と照合しなければ特定の個人を識別できないように加工された情報です。例えば、氏名を削除した顧客名簿などが該当します。

個人関連情報は、個人情報、匿名加工情報、仮名加工情報のいずれにも該当しない情報です。例えば、個人の購入履歴や位置情報などが該当します。

個人情報保護法違反となる事例

企業では、個人情報保護法違反が原因でさまざまなトラブルが発生することがあります。

ここからは、具体的な違反事例を5つ紹介します。

不正アクセスによる個人情報流出

例えば、通販サイトがサイバー攻撃を受け、大量の顧客情報が流出した事例があります。攻撃者はセキュリティの脆弱性を突き、顧客の氏名・住所・クレジットカード情報を不正に取得し、顧客のクレジットカードが不正利用される被害が相次ぐといったケースが挙げられます。

このような事態は、企業側が適切なセキュリティ対策を講じておらず、サーバーの脆弱性が長期間放置されていたことなどが原因となることがあります。

結果として、企業は個人情報保護委員会から指導を受けるだけでなく、信用を失ったことで売上が激減し、企業の経営に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。

従業員による個人情報の不正持ち出し

次に、金融機関の従業員が業務上アクセス可能な顧客の口座情報や融資履歴を無断で持ち出し、不正に利用した事例を紹介します。

従業員が顧客情報をUSBメモリにコピーして闇市場で売却し、顧客が不審な金融商品の勧誘を受けるといったケースが挙げられます。

このような行為があると、従業員は懲戒解雇や法的措置の対象となり、企業も内部統制の不備を指摘されることになります。

顧客企業に対する個人情報の不正販売

マーケティング会社の従業員が、顧客情報を不正に販売するといった事例も想定されます。

例えば、営業担当者が、顧客の個人情報や購買履歴を他社のマーケティング業者に提供し、違法に利益を得ていたというケースです。

顧客が知らない企業から営業連絡を受けるなどして不正が発覚し、クレームにつながることがあります。

このような行為が明るみに出ると、企業は法的責任を問われるだけでなく、社会的信用を大きく損なうことになります。さらに、被害にあった顧客や取引先企業から損害賠償請求を受け、多額の賠償金を支払う事態になる恐れもあります。

利用目的外での個人情報の使用

利用目的外で個人情報を使用するケースも個人情報保護法違反となります。例えば、保険会社が契約者の情報を無断でマーケティング目的に利用していたといったケースです。

本来、契約手続のために取得した氏名・年齢・健康状態などのデータを、本人の同意なくマーケティング目的で分析し、ターゲット広告の配信に活用していたケースが挙げられます。

このような行為が行われると、利用目的を知らされていない契約者が広告を受け取り、クレームや契約解除につながることがあります。

また、新規契約の獲得も困難になるリスクもあります。

個人情報の不適切な管理

最後に、個人情報の不適切な管理についてです。例えば、人材紹介会社において、応募者の履歴書データが適切に管理されていなかったといったケースです。社内サーバーにアクセス制限がなく、従業員が自由に個人情報にアクセスできる状態になっていたケースや、紙の履歴書が適切に管理されず外部に流出したケースなどが挙げられます。

このようなことがあると、SNSで情報漏えいの事態が拡散されるなどして、企業の信用が大きく低下する可能性があります。また、行政から指導を受け、厳格な情報管理体制の導入を余儀なくされることもあります。

個人情報保護法違反の罰則一覧

個人情報保護法に違反すると、罰則を受けることがあります。

また、従業員が違反を犯した場合は、その従業員だけでなく企業も罰則の対象となる可能性があります。

ここからは、具体的な罰則内容を行為別に解説します。

個人情報保護委員会の命令に違反した場合の罰則

個人情報保護法違反があった場合、個人情報保護委員会から改善命令を受けることがあります。

この命令に従わなかった場合、違反行為をした従業員には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。また、企業に対しても1億円以下の罰金が科される可能性があります。

従業員が個人情報データベースを不正に利用した場合の罰則

従業員または元従業員が、個人情報データベース等を不正な利益を得る目的で第三者に提供したり、盗用したりした場合も罰則が科されることがあります。例えば、自身が利益を得るために、業務上の顧客情報を外部に売却するケースなどが挙げられます。この場合、不正利用した従業員に対しては1年以下の懲役または50万円以下の罰金、企業に対しては1億円以下の罰金が科されることがあります。

個人情報保護法違反の罰則以外のデメリット

個人情報保護法違反が発覚した場合、罰則を科される以外にも社会的・経済的なダメージを受けることがあります。

ここからは、具体的なデメリットを解説します。

企業の社会的信用を失う

個人情報保護法違反があると、企業の社会的信用を失墜させる可能性があります。

特に、メディアやSNSに取り上げられてしまうと、顧客や取引先から不信感を抱かれて、顧客離れや取引停止などが発生することがあります。

また、企業のブランドイメージの低下にもつながり、株価や業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

訴訟や損害賠償請求のリスクがある

個人情報保護違反があった場合、訴訟や損害賠償に発展することがあります。

例えば、個人情報の管理が不適切であったために外部へ情報漏えいし、顧客や取引先から訴えられたり、損害賠償を請求されたりするケースが挙げられます。

また、漏えい件数が多い場合や、要配慮個人情報が含まれていた場合などは、より高額な賠償額を求められることがあり、企業にとって大きな経済的負担となる可能性があります。

個人情報保護法に違反しないための対策

個人情報保護法違反があると、企業の信用が損なわれ、罰則が科されることがあります。そのため、企業は法律内容を理解し、適切な対策を講じる必要があります。

ここからは、個人情報保護法に違反しないために企業が実施すべき具体的な対策について解説します。

個人情報保護法の内容を理解する

企業が個人情報保護法を遵守するためには、従業員一人ひとりが、法律の内容を正しく理解することが重要です。

正しく理解するためには、個人情報保護委員会が公表するガイドラインを活用するのが効果的です。個人情報の取得、管理、利用、第三者提供の方法が詳しく記載されているため、定期的に確認することで、最新の内容を把握できます。

また、個人情報保護法は3年ごとに見直しが行われ、改正される可能性があります。そのため、最新の改正内容を把握し、適宜対応することが求められます。

社内マニュアルを定期的に見直す

個人情報を適切に取り扱うには、企業ごとのルールや手順を明確に定めた社内マニュアルを整備し、定期的に見直すことが必要です。

個人情報の取り扱い手順が実態に合っていないと、情報漏えいのリスクが高まります。そのため、社内マニュアルは最新の法律や業務フローに合わせて更新することが重要です。

また、マニュアルの見直しだけでなく、従業員がそれを正しく理解し、日常業務で実践できるようにすることも不可欠です。

従業員への教育を徹底する

個人情報保護を徹底するには、従業員一人ひとりが正しい知識を持ち、適切な対応を取れるようにすることが不可欠です。

そのために、企業は従業員向けの教育や研修を定期的に実施する必要があります。

特に、新入社員研修や定期研修の中で、個人情報保護に関する具体的な事例や対処法を学ばせることが有効です。

また、個人情報の取り扱いミスが発生した場合は、その事例を共有し、再発防止策を徹底することも重要です。

個人情報保護法に関する相談はどこにすればいい?

個人情報保護法に関する疑問やトラブルが発生した場合、適切な窓口に相談することが重要です。相談先は、一般の方が利用できるものから、事業者向けのものまでさまざまあります。

ここからは、代表的な相談窓口を紹介します。

個人情報保護法相談ダイヤル

個人情報保護委員会が運営する「個人情報保護法相談ダイヤル」は、個人情報の取り扱いなどに関する相談を受け付けています。

個人情報が不適切に扱われた場合の対応方法や、苦情の申立て手続などについてアドバイスを受けられます。

電話やチャットボットサービスで相談できるため、一般の方でも気軽に利用できます。

認定個人情報保護団体

認定個人情報保護団体とは、個人情報の適正な取り扱いを推進するために、個人情報保護委員会から認定を受けた団体です。

事業者の個人情報の取り扱いに関する苦情や相談を受け付け、事業者に適切な指導を行う役割を担っています。

事業者の苦情受付窓口

事業者が、自社が保有する個人情報に関する苦情を受け付ける窓口を設置していることがあります。

顧客や取引先からの個人情報の開示請求、削除請求などに対応しており、適切な対応を行うことで、顧客との信頼関係を維持し、トラブルを未然に防げます。

苦情受付窓口の連絡先は、事業者の公式サイトやプライバシーポリシーに記載されていることが多いです。

リスクを理解した上で管理体制を整えよう

個人情報を不正利用したり、個人情報保護委員会の命令に違反したりすると、罰金刑などの罰則が科される恐れがあります。

さらに、個人情報保護法に違反すると、罰則を科されるだけでなく、企業のブランドイメージが低下したり、顧客や取引先からの訴訟リスクなどにより社会的・経済的なダメージを受けることも考えられます。

こうしたリスクを回避するためには、従業員一人ひとりが、個人情報保護の基本ルールや違反時の影響を正しく理解し、企業全体で適切な管理体制を整えることが大切です。


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