• 作成日 : 2025年3月25日

二重価格表示とは?8週間ルールや不当表示の事例を解説

二重価格表示とは、販売価格のほかに通常価格を記載する表示方法です。二重価格表示自体は問題ありませんが、表示方法によっては消費者に誤認を与え、景品表示法に違反する不当表示にあたる場合もあります。

本記事では、二重価格表示の概要や景品表示法により不当表示に該当するケース・事例、違反した場合のペナルティについても解説します。

二重価格表示とは

二重価格表示とは、商品やサービスの価格を2つ表示する手法です。それ自体は適法ですが、実態と合わない価格を表示している場合、消費者に誤認を与える不当表示として、景品表示法に違反する可能性があります。

ここでは、二重価格表示の意味や。景品表示法での取り扱い、8週間ルールについて解説します。

二重価格表示とは販売価格と比較対照価格を併記すること

二重価格表示は、販売価格と比較対照価格を併記することです。実際に販売している価格よりも高い価格を「通常価格」として記載することで、販売価格の安さをアピールします。

たとえば「通常価格1万円のところ本日限り8,000円」と表示している場合「1万円」が比較対照価格で、「8,000円」が販売価格です。通常価格より2,000円も安いとアピールし、購入を促す目的があります。

景品表示法で不当表示を定めている

二重価格表示は、実態と合っている限りは適法です。セールで実際の通常価格より値下げして販売することはよくあることですが、通常価格はもともと実態がないにもかかわらず二重価格表示で販売することは、不当表示として景品表示法違反となります。

景品表示法では商品やサービスの品質や価格について、消費者を誤認させるような表示を「不当表示」として禁止しており、次のような表示は不当表示に該当する可能性があります。

  • 同一ではない商品の価格を比較対照価格に用いる
  • 比較対照価格に用いる価格が実際と異なる、あるいは曖昧な表示にする

ただし、同一の商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対照価格とする場合には、不当表示にはあたりません。

これは、実際に一定期間にわたってその価格で販売されていた事実を必要とするということです。

8週間ルールとは

「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とは、過去8週間のうち、半分以上の期間でその価格が適用されていた場合を指します。「最近」はセール開始日の直前8週間を指し、「相当期間」とは、8週間の半分以上の期間、すなわち4週間以上ということです。

これは「8週間ルール」と呼ばれ、この事実がある限り、「通常価格」として表示が可能です。この基準を満たしていなければ、消費者に誤解を与えるものとして、不当表示とされる可能性があります。

参考:e-GOV法令検索 景品表示法
参考:消費者庁 二重価格表示

過去の販売価格を比較対照価格とする場合

過去の販売価格を比較対象価格とする場合、前項で説明した8週間ルールが適用されます。

そのため、過去8週間のうち、半分以上の期間でその価格が適用されていたという事実がなければ、不当表示となる可能性があります。

不当表示の事例

過去の販売価格を比較対照価格とした二重価格表示で不当表示とされた事例に、株式会社ジャパネットたかたに対する課徴金納付命令があげられます。

同社が発行した会員カタログで、エアコンの「2万円値引き」という表示がありましたが、実際には通常価格での販売が確認できなかったという事例です。

過去に値引きの実態がないにもかかわらず、値引きがあったかのように消費者を誤認させる表示であると判断され、課徴金納付が命じられました。

将来の販売価格を比較対照価格とする場合

将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示も、不当表示に該当する可能性があります。

不当表示に該当するおそれがあるケース

将来の販売価格が景品表示法に違反するケースは「今だけお試し価格500円、△月△日以降は1,000円になります」というように、セール期間が終了したあとの販売価格を表示して、現在の価格を有利に見せる事例があげられます。

このような表示をした場合、セール期間が終了したあとに、将来の販売価格として表示した価格で販売しなければ、消費者を誤認させたものとして不当表示にあたる可能性が高いでしょう。

実際に販売された場合でも、それが短い期間であれば不当表示になるおそれがあります。

不当表示の事例

将来価格についての二重価格表示が問題となった事例として、テレビショッピング番組における表示に対して措置命令・課徴金納付命令が出されたケースがあげられます。

番組内では、商品について次のような二重価格表示をしました。

  • 明日以降:〇〇円
  • 本日価格:△△円

「明日以降」と称する価額〇〇円が放送日後に適用される通常の販売価格であり、番組での販売価格△△円が、通常の販売価格と比較して安いかのように表示したというケースです。

実際には、「明日以降」の価格である〇〇円で販売された期間は、放送日後2〜3日間のみでした。販売実績も実質的なものとはいえず、価格表示は不当表示に該当すると判断され、行政処分が科せられています。

希望小売価格を比較対照価格とする場合

希望小売価格とは、商品等の製造者であるメーカーが設定する価格です。この希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示についても、不当表示になるケースがあります。

不当表示に該当するおそれがあるケース

希望小売価格は、メーカーのカタログや商品本体への印字などで公表されていれば、小売業者が希望小売価格を二重に価格表示しても問題はありません。

しかし、希望小売価格よりも高い価格を表示することや、希望小売価格が設定されていないにもかかわらず任意の価格を希望小売価格として表示する場合は、不当表示となるおそれがあります。

不当表示の事例

希望小売価格を比較対照価格にして不当表示とされ、消費者庁から措置命令が出された事例があります。

株式会社サンプラザは、供給するパンが実際にはメーカー希望小売価格が設定されていないにもかかわらず、「メーカー希望小売価格より3割引」という表示を行いました。

これは、値引きされているかのように消費者を誤認させる表示であると判断され、景品表示法に違反するものとして措置命令が出されています。

競争事業者の販売価格を比較対照価格とする場合

自社の販売価格が安いことを示すために、競合事業者の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示もあります。このような表示が適法になるためには、同じ商品について直近の販売価格で表示することが必要です。

それ以外の表示をした場合、不当表示になる可能性があります。

不当表示に該当するおそれがあるケース

競合事業者の販売価格が不当表示になるおそれがあるのは、次のようなケースです。

  • 競合事業者の直近の販売価格とはいえない場合
  • 市価を比較対照価格とするとき、相当数の競合事業者の実際の販売価格を正確に調査せずに表示する場合
  • 遠方の競合店の価格を表示する場合

これらに該当する場合は、消費者に誤認を与えるものとして不当表示になる可能性があります。

不当表示の事例

競合事業者の販売価格が不当表示になる可能性がある事例について、いくつかみていきましょう。

スーパーマーケットで「Aマーケットが800円の品 当店では700円」という表示をして販売したケースで、実際にはAマーケットが600円に値下げしていた場合、不当表示になる可能性があるでしょう。

また、東京にある家電量販店が、大阪にある家電量販店の販売価格を比較対照価格にした場合、消費者がすぐに購入できない地域の店舗の販売価格を表示しているものとして、不当表示にあたる可能性があります。

二重価格表示が景品表示法に違反した場合のペナルティ

二重価格表示が不当表示となって景品表示法に違反する場合、次のようなペナルティがあります。

  • 措置命令
  • 課徴金納付命令

それぞれの内容を解説します。

措置命令

二重価格表示が不当表示とみなされた場合、消費者庁は、公正取引委員会・都道府県と連携して調査を開始します。

調査の結果、景品表示法違反と認められれば、事業者に弁明の機会を与えた上で、消費者庁から措置命令が発令され、次のような措置を講じることを命じられます。

  • 一般消費者に対する誤認を排除すること
  • 再発防止策を講じること
  • その違反行為を将来繰り返さないこと

金銭的なペナルティはありませんが、措置命令は消費者庁や都道府県のWebサイトで公表され、報道されることもあります。その結果、消費者からの信頼を失うなど、企業イメージを損なうことになるでしょう。

課徴金納付命令

二重価格表示が景品表示法に違反すると判断された場合、措置命令とともに課徴金納付命令が行われる可能性があります。課徴金の額は、不当表示により得た商品やサービスの売上額に3%を乗じることにより算出されます。

ただし、算出した課徴金額が150万円未満の場合は対象になりません。また、対象行為に該当する事実を自主申告した場合など、減額されるケースもあります。

不当な二重価格表示を回避するための対応策

二重価格表示が不当表示とならないためには、景品表示法のルールを理解し、消費者を誤解させない表示を行うことが必要です。そのためには、商品・サービスの広告について、第三者がチェックする体制を整備しなければなりません。

さらに、次のような体制を整えます。

  • 表示に関わる業務を担当する役員や従業員に景品表示法の理解を浸透させる
  • 景品表示法を遵守するルールを明確にする
  • 広告表示を管理する担当者を定める

その上で、万が一不当表示が発覚した場合は事実関係を確認し、一般消費者に対する誤認排除や、再発防止の対策を行うなどの措置が必要です。

二重価格表示が景品表示法に違反するケースを把握しよう

二重価格表示は販売促進の目的で行われ、セール期間などではよくみられる価格表示方法です。しかし、実態と合わない二重価格表示は、景品表示法に違反する不当表示となるおそれがあります。不当表示と判断された場合、措置命令や課徴金納付命令といったペナルティが科せられ、企業イメージを損なうことになるため注意が必要です。

不当表示を回避するためには、広告のダブルチェックや、担当者が景品表示法について理解を深めるなどの対策が必要になるでしょう。


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