- 更新日 : 2025年9月5日
工事承諾書とは?ひな形を基に書き方や例文、注意点を解説
工事承諾書とは、工事を実施する土地の所有者が、施工を行うことについて同意を表明するため、事業者に対して交付する書面です。施工予定の土地を注文者以外の者が所有している場合は、その所有者から工事承諾書を取得しましょう。本記事では、工事承諾書の書き方やレビュー時のポイントなどを文言の具体例を示しながら解説します。
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目次
工事承諾書とは?
工事承諾書(こうじしょうだくしょ)とは、所有している土地上で行われる工事を承諾する文書です。土地の所有者が、その土地において工事を行う施工業者(請負人)に対して交付します。
工事承諾書の交付を受けるメリット
土地の所有者から工事承諾書の交付を受けることにより、施工業者は適法に工事ができるようになります。
言い換えれば、土地の所有者が工事を承諾していない状態では、請負人が勝手に工事を行うことは違法です。契約書など別の文書によって所有者の承諾を得ている場合を除き、工事承諾書の交付を受けることは必須といえます。
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工事承諾書の交付を受けるべきケース
施工業者が工事承諾書の交付を受けるべきなのは、工事を行う予定の土地を注文者以外の者が所有している場合です。
後述するように、注文者との間では建設工事請負契約書を締結する必要があります。施工予定地を注文者が所有している場合は、建設工事請負契約書の締結によって所有者の承諾を得たことになるので、別途工事承諾書の交付を受ける必要はありません。
これに対して、注文者と施行予定地の所有者が別人である場合は、注文者との間で建設工事請負契約書を締結しても、所有者の承諾を得たことにはなりません。この場合は、注文者との契約とは別に、施工予定地の所有者から工事承諾書を提出してもらう必要があります。
工事承諾書のひな形
工事承諾書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に工事承諾書を作成する際の参考としてください。
※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。
工事承諾書に記載すべき内容や例文
工事承諾書には、主に以下の事項を記載します。
- 工事を承諾する旨
- 土地の表示
- 工事内容
工事を承諾する旨
(例)
私は、私が所有する下記の土地について、貴社が下記工事を行うことを承諾します。
所有地上で工事を実施することについて、所有者が承諾する旨を明記します。所有地の所在や工事内容については、後に続く項目で記載します。
土地の表示
(例)
1 土地の表示
所在:○○
地番:○○
地目:○○
地積:○○㎡
工事を実施する土地を特定する情報を記載します。不動産登記簿の内容に合わせて、所在・地番・地目・地積の4項目を記載するのが一般的です。
工事内容
(例)
2 工事内容
○○
施工する工事の内容を具体的に記載します。
「住宅の修理」「敷地の補修」「水道管の敷設」「通路の設置」など、実際に行う工事の内容を記載します。また、工事を行う土地の範囲についても、別紙を添付するなどして明示することが望ましいでしょう。
工事承諾書の交付を受ける際の注意点
施工業者が土地所有者から工事承諾書の交付を受ける際には、特に以下の各点に注意しましょう。
- 工事に関する情報を明確に記載
- 作成者に署名と押印を求める
- 注文者との間では、建設業法所定の事項を記載した契約書等の作成が必要
工事に関する情報を明確に記載すべき
工事承諾書には、工事に関する情報を明確に記載することが大切です。
工事がどこの土地(+どこの部分)で行われるのか、どのような内容の工事が行われるのかなどを具体的に記載しましょう。工事に関する情報が曖昧だと、土地所有者との間でトラブルが生じるリスクが高まるため、注意が必要です。
作成者に署名と押印を求めるべき
工事承諾書には、作成する土地所有者に署名と押印をしてもらいましょう。
土地所有者の署名、または土地所有者の印章による押印がなされていれば、工事承諾書が真正に成立したことが推定されます(民事訴訟法第228条第4項)。
後に土地所有者が偽造や改ざんを主張してきても、その合理的な根拠が示されない限り、工事承諾書は有効なものとして取り扱われます。
なお、署名と押印はどちらか一方でも、工事承諾書が真正に成立したことを推定させる効果が生じます。しかし、署名と押印の両方があればより安心なため、特段の事情がない限りは両方を依頼しましょう。
注文者との間では、建設業法所定の事項を記載した契約書等の作成が必要
建設工事の請負契約を締結する当事者は、契約に関する下記の事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければなりません(建設業法第19条第1項)。
また、建設工事の請負契約の内容を変更する場合も同様です(同条第2項)。
③工事着手の時期および工事完成の時期
④工事を実施しない日または時間帯の定めをするときは、その内容
⑤請負代金の全部または一部の前金払または出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期および方法
⑥設計変更または工事着手の延期もしくは工事の全部もしくは一部の中止の申出があった場合における、以下の事項に関する定め
- 工期の変更
- 請負代金の額の変更または損害の負担、およびそれらの額の算定方法
⑦天災その他不可抗力による工期の変更または損害の負担、およびその額の算定方法に関する定め
⑧価格等の変動または変更に基づく、以下の事項に関する定め
- 工事内容の変更
- 請負代金の額の変更、およびその額の算定方法
⑨工事の実施により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑩注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容および方法に関する定め
⑪注文者が工事の全部または一部の完成を確認するための検査の時期および方法、ならびに引渡しの時期
⑫工事完成後における請負代金の支払の時期および方法
⑬契約不適合責任、または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑭各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
⑮契約に関する紛争の解決方法
上記の建設業法の規定を踏まえて、当事者である注文者との間では、単に工事承諾書を交わすだけでなく、きちんとした契約書を作成しましょう。
なお、当事者双方の承諾があれば、電子署名が付された電子データ(≒電子契約)によって建設工事の請負契約を締結することもできます(同条第3項)。
工事承諾書の保管年数や保管方法
土地所有者から提出を受けた工事承諾書は、万が一トラブルが発生した場合に備えて、きちんと保管しておきましょう。
土地所有者からは、同意していない工事によって損害を被ったことなどを理由に、不法行為に基づく損害賠償を請求される可能性があります。
不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間は、最長で20年間です(民法第724条2号)。そのため工事承諾書は、工事の完了から20年が経過するまでは保管しておくことが望ましいでしょう。
工事承諾書を保管する際には、紛失、改ざん、個人情報の流出などが発生しないように注意しなければなりません。
紙で工事承諾書の提出を受けた場合は、鍵のかかるキャビネットなどに保管しましょう。そのうえで、キャビネットの鍵を厳重に管理し、無関係の人が工事承諾書を閲覧したり、持ち出したりできないようにしておくべきです。
電子データで工事承諾書の提出を受けた場合は、アクセス権とパスワードを適切に設定して、データにアクセスできる人を必要最小限に限定しましょう。
工事承諾書の電子化は可能?
工事承諾書は、電子化することもできます。
ただし、電子データで作成される工事承諾書には、土地所有者本人に署名や押印をしてもらうことができません。本人が作成したものであることを証明できるように、工事承諾書の電子データには電子署名を行ってもらいましょう。
工事承諾書に電子署名を付すメリットと方法
パスワードなどを適正に管理することにより、本人だけが行うことができる電子署名が付された電子データは、真正に成立したものと推定されます(電子署名法第3条)。
もし土地所有者が工事承諾書データの偽造や改ざんを主張してきても、その合理的な根拠が示されない限り、工事承諾書は有効なものとして取り扱われます。
電子署名を行う際には、電子契約サービスを利用するのが便利です。「マネーフォワード クラウド契約」などをご利用ください。
紙の工事承諾書をスキャンして電子化するのはOK?
工事承諾書を電子化する方法としては、紙で提出してもらった工事承諾書をスキャンする方法も考えられます。
ただし、工事承諾書の原本に土地所有者の署名や押印があっても、スキャンした後で原本を破棄してしまうと、スキャンデータについては真正に成立したことが推定されません。土地所有者との間で争いが生じて、スキャンデータの偽造や改ざんなどを主張された場合は、施工業者において真正な成立を立証できなければ、工事承諾書が無効になってしまいます。
このようなトラブルを防ぐため、紙の工事承諾書をスキャンしてデータ保存する場合には、原本を破棄せず保管しておきましょう。
施工予定地を第三者が所有している場合は、工事承諾書を提出してもらいましょう
工事を行う土地を注文者以外の第三者が所有している場合は、所有者に工事承諾書を提出してもらいましょう。
提出を受けた工事承諾書は、将来のトラブルに備えてきちんと保管しておくことが大切です。工事承諾書を電子化したい場合は、「マネーフォワード クラウド契約」などの電子契約サービスをご利用ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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