- 更新日 : 2025年12月2日
電子契約の同意書や事前承諾書が必要な書類は?作り方やひな形を紹介
電子契約の導入により、多くのビジネス契約書が電子的に締結できるようになりました。ただし下請事業者や消費者保護の観点から、一部の契約では電子化に関する事前承諾が法的に求められています。
本記事では、電子契約における同意書・承諾書の作成方法や実務で使えるひな形、注意点まで詳しく解説します。
目次
電子契約の同意書や事前承諾書が必要な書類
DX推進の流れもあり、多くのビジネスシーンで電子契約が可能になりつつあります。ただしそういった中でも下請事業者や消費者保護の観点から、一部の契約では電子化に関する事前承諾が必要です。
以下に、電子契約が可能ではあるものの事前承諾書が必要な書類を紹介します。
建設工事の請負契約書
建設工事の請負契約では、2001年4月の建設業法改正により電子契約が可能となりました。ただし、電子契約を実施するためには契約相手方から事前承諾を得ることが必要不可欠です。
この承諾には、電磁的措置の具体的な方法や種類、内容について技術的基準を満たさなければなりません。さらに、契約書データの改ざんを防止するための適切な措置を講じることも求められています。
下請会社に対する受発注書面
下請法では、電子的方法による書面交付には下請事業者からの事前承諾が必須です。また、承諾を得る際には、電子的方法の具体的な種類としてメールやWebシステムなどの利用方法を明示する必要があります。
不動産売買や賃貸借契約に関する契約書
2022年5月の宅建業法改正により、事前の承諾・同意を条件に不動産取引の電子契約が可能になりました。電子化の対象となる書類には、媒介契約書、重要事項説明書、賃貸借契約書、売買契約書などが含まれます。
貸金業法に関する契約書
金銭消費貸借契約書は、電子化しての契約締結が可能です。民法587条の2により、電磁的記録による契約は書面とみなされ、法的な効力を持ちます。ただし事前の承諾がなければ電子契約はできません。
投資信託契約約款
投資信託契約約款の電子化は可能ですが、金融商品取引業者は電子契約で投資信託契約を締結する前に、投資信託約款について、また電子化について相手方からの事前承諾が必要です。
旅行契約の説明書面
旅行契約の説明書面は、旅行業法に基づき、取引条件説明書面の電磁的交付が認められています。ウェブサイト上に取引条件説明書面を掲示し、旅行者がその内容を了承した旨のアイコンをクリックするなどの方法で承諾を得なければなりません。
労働条件通知書面
2019年4月より、労働基準法施行規則の改正によって労働条件通知書面の電子化が可能になりました。従業員が電子化を希望している場合に限り認められ、紙面でプリントアウトできること、また従業員が確認できる形式で受け渡すことも電子化の条件になっています。
派遣労働者への就業条件明示書面
就業条件明示書も労働条件通知書面同様、当該派遣労働者の合意・希望が得られた場合に限り、PDFデータやメール、SNSなどでの交付が認められています。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
「送信料0円」の電子契約が選ばれる理由
多くの電子契約サービスは送信料がかりますが、近年では「送信料0円」の電子契約サービスへの乗り換え・新規導入が多くなっています。
送信料0円の電子契約サービス導入のメリット・デメリットをまとめていますので、ぜひご活用ください。
導入で失敗したくない人必見!電子契約はじめ方ガイド
電子契約のキホンからサービス導入の流れまで、図解やシミュレーションを使いながらわかりやすく解説しています。
社内向けに導入効果を説明する方法や、取引先向けの案内文など、実務で参考になる情報もギュッと詰まった1冊です。
電子契約サービス比較マニュアル
日本には多数の電子署名・電子契約サービスがありますが、各サービスを比較する中で「ここだけは事前に確認しておくべき」と考えるポイントを5つまとめました。
電子署名・電子契約サービスが、そのポイントを満たしているかどうかを確認するのに、ぜひお役立ていただければ幸いです。
電子契約導入後のよくある悩み3選
電子契約サービスの導入後に発生しがちな、3つの「新しい課題」をまとめた資料です。
電子契約の導入を検討中の方はもちろん、電子契約を導入した後に課題を感じている方にもご活用いただけます。
電子契約の同意書や事前承諾書を作成する方法
電子契約を行うにあたっての同意書や事前承諾書に、法的に定められた書式はありません。ただし、トラブルを防ぐためのいくつかのポイントを抑えておく必要があります。
対象となる案件名を明示したうえで、電子交付の種類や方式、根拠法令などを記載しましょう。また作成日と承諾を得た日付欄も必要です。署名欄は、双方の欄を設けます。
そのほかにも特記事項があれば、明記しておきましょう。
電子契約の同意書や事前承諾書のひな形・テンプレート
電子契約の同意書や事前承諾書のひな型を、官公庁が公開しています。盛り込むべき事項がわからないなどの不安があれば、契約内容にあわせてカスタマイズしたうえで積極的に活用することをおすすめします。
重要事項説明書の電磁気的方法による交付の同意書
国道交通省が提供している、説明の相手方向けのWord形式の同意書テンプレートです。電子化の根拠となる法令などが記載されています。
参考:国土交通省 同意書ひな形(説明の相手方向け)(wordファイル)
電子受発注に係る下請事業者の承諾書
中小企業庁による「下請取引適正化推進講習会テキスト」には、下請法3条書面電子化の事前承諾書の例が掲載されています。下請事業者の承諾書は原則としてこのテンプレートに従うと安全でしょう。151ページで確認できます。
電子契約の同意書や事前承諾書を作成するときの注意点
電子契約に同意書や事前承諾書を作成する際には、以下の点を押さえておきましょう。
- 電子化の対象書類を記載する
- 相手にとっての電子化のメリットを伝える
電子化の対象書類を記載する
電子化の対象となる書類は、業法や関連法令に基づいて正確に特定する必要があります。電子化する書類の根拠法令や条文番号を明記することが、認識の相違によるトラブルなどの防止につながります。
相手にとっての電子化のメリットを伝える
電子契約であれば時間や場所を問わず契約締結が可能である、紙の保管が不要であることなど、電子化によるメリットを相手方に説明しましょう。
理解が得られれば、承諾を得やすくなることが期待できます。
電子契約の合意締結証明書とは
電子契約における契約成立を客観的に証明するための文書が、合意締結証明書です。
電子契約は、その性質上システム障害やログイントラブルといったリスクを完全に防ぐことはできません。合意締結証明書があれば、万が一システム上で契約内容を確認できなくなった場合でも、契約締結の事実を証明できます。
なお、この証明書の名称はサービス提供会社によって異なる場合がありますが、役割に変わりはありません。さらに、電子契約サービスが終了した場合でもこの証明書が契約の証明手段になります。
電子契約における事前承諾の対応と関連データ
マネーフォワード クラウドが2025年5月に実施した調査(電子契約業務経験者1,563名対象)によると、電子契約システムで便益を感じられるポイントとして「費用削減」(35.6%)と「工数削減」(34.4%)が最も多く挙げられました。一方で、電子契約を円滑に進めるには、本記事で解説した事前承諾書が必要な契約において、取引先の理解を得ることが重要です。
電子化のメリット説明で承諾取得を円滑に
事前承諾書の取得にあたっては、相手方にとっての電子化のメリットを明確に伝えることが効果的です。調査では「契約締結までのリードタイム短縮」が19.9%、「契約書の印刷・製本など手作業の省略」が21.6%で工数削減の重要項目として挙げられており、電子契約により時間や場所を問わず契約締結が可能になること、紙の保管が不要になることを説明することで、建設業や不動産業、下請取引などの法定で承諾が必要な契約においても、取引先の理解と承諾を得やすくなります。
電子契約は事前承諾が必要なケースもある点に注意
電子契約の導入は、ビジネスの効率化に大きく貢献しますが、相手方の事前承諾や同意が必要なケースもあります。また、関連法令の改正も多く、電子契約の導入に消極的な事業者も少なからず存在するのも事実です。
そのため法令で定められた要件を満たすのはもちろん、相手方の理解を得ながら、段階的に電子化を進めていくことが望ましいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
電子契約の無権代理とは?メール認証のリスクや対策を解説
電子契約の普及に伴い、無権代理のリスクが注目されています。特に、メール認証による契約では、相手が実際に契約権限を持っているか確認が難しく、不正契約やなりすましが発生する可能性があります。担当者としては、これらのリスクを正しく理解し、適切な対…
詳しくみる不動産業界におすすめの電子契約サービスは?導入メリットやデメリットも解説
不動産取引は電子契約が可能であり、電子契約サービスの導入によりオンライン上で契約を完結できるようになります。契約締結の時間を短縮し、業務を効率化できるのがメリットです。 本記事では、不動産業者におすすめの電子契約サービスを紹介するとともに、…
詳しくみる取締役会議事録に電子署名は必要?やり方や法的規制、注意点を解説
電子化された取締役会議事録には、電子署名が必要です。要件を満たして有効な電子署名を行う方法には主に2種類あります。法務省により定められた電子証明書を取得する方法とクラウド電子契約サービスを活用する方法です。 本記事では、取締役会議事録を電子…
詳しくみる電子署名と電子証明書(デジタル証明書)の違いは?e-Taxでの取得方法も解説
電子署名と電子証明書は、本人確認と改ざん検知を担う仕組みであり、法的にも効力が認められています。 本記事では電子署名と電子証明書それぞれの役割や仕組みの違いを整理し、e‑Taxでの署名用電子証明書の取得手順をわかりやすく解説します。 電子署…
詳しくみる金融機関の電子契約サービスとは?対象の融資取引や手数料、利用までの流れを解説
金融機関の中には、電子契約サービスを提供している企業もあります。主な金融機関としては、三井住友銀行やみずほ銀行、横浜銀行などです。 本記事では、金融機関が提供する電子契約サービスについて解説します。あわせて、金融機関の電子契約サービスで対象…
詳しくみるAIの契約書レビューは弁護士法72条違反?グレーゾーンと非弁行為のリスクを解説
近年、企業の法務部門や法律事務所で、AI技術を活用した契約書レビューサービスの導入が進んでいます。これらのサービスは、契約書に潜むリスクの洗い出しや修正案の提示などを自動で行い、業務効率を大幅に向上させる可能性を秘めています。一方で、「AI…
詳しくみる


