- 更新日 : 2025年9月9日
欠陥工事の補修請求は可能?請求できるケースの具体例や請求方法を解説
欠陥工事の補修請求は、建物の品質に問題がある場合に請求可能です。本記事では、請求が可能な具体例や補修請求の方法を解説し、施工完了時に確認すべきポイントや請求手順、相場や時効についても詳しく説明します。
目次
欠陥工事の補修請求を行えるケース
欠陥工事による住宅の不具合は、住まいの安全性や快適性を損なう重大な問題です。ここでは、欠陥工事とは何か、具体的な欠陥住宅の例、そしてそのような住宅に対する責任追及の方法について詳しく解説します。欠陥工事が発覚した場合に、どのようなケースで補修請求が可能かを理解し、適切な対応をとるための参考にしてください。
欠陥工事とは
欠陥住宅とは、建物の安全性が欠けている住宅のことを指します。これは本来の安全性を確保するために必要な性能が不足している状態であり、基礎や土台、柱、床といった構造部分に関連しています。
欠陥住宅が発生する原因としては、施工の不備や設計ミスが一般的です。例えば、基礎のひび割れや壁の亀裂、床の傾き、雨漏りなどがあります。欠陥住宅の明確な定義は存在しませんが、壁紙のはがれなどの問題が直接的な安全性に影響しない場合は、欠陥住宅には該当しないこともあるため注意が必要です。
欠陥住宅の具体例
建物の欠陥には、以下のようなものがあります。
- 構造耐力の不足
建築設計や施工管理の不備により、建物全体の構造強度が不足する事態も起こりえます。特に地震時の安全性に大きく影響し、修復が困難なケースも多いため、極めて重大な欠陥といえます。 - 床の傾き
地盤の不均等な沈下や構造設計の誤りにより、床面が傾斜してしまうケースもあります。これは居住者の安全を脅かす深刻な問題であり、早急な対応が求められます。 - 壁や床、土間のひび割れ
建物の基礎部分や主要構造材に問題がある場合、壁や床、土間などに亀裂が生じることもあります。これは地盤の不安定さや施工の不備が原因となることも多く、建物の安全性に直接関わる重大な欠陥です。 - 雨漏り
屋根材の劣化や施工ミスにより、雨水が建物内部に侵入する現象が起こることもあります。天井や壁に染みが現れたり、室内に水滴が落ちたりする症状として現れます。 - 電気や水道のトラブル
電気系統や給排水設備の施工不良により、漏電や水漏れなどの問題が発生することもあります。これらは火災や水害のリスクを高めるため、迅速な修繕が必要です。
これらの問題は、居住者の生命や財産に直接関わる重要な事項であり、専門家による適切な調査と対策が不可欠です。
欠陥住宅に対する責任追及
建築物に不具合が発見された場合、工事を担当した業者に対して「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」を問えます。これは、完成した建物に欠陥が存在する場合に、施工業者が負うべき責任です。施工業者に過失がない場合でも、発注者は欠陥の修理やそれに起因する損害の補償を求めることが可能です。
さらに、施工業者に意図的な行為や不注意が認められる場合は、「債務不履行責任」を追及し契約の解除や損害賠償を請求する選択肢もあります。加えて、建物の設計を担当した者に対しても責任を追及できる可能性があります。このように、建築物の欠陥に関しては、複数の関係者に対して法的な対応をとることが可能です。
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施工完了時に確認すべきポイント
一般的なチェックポイントは、以下のとおりです。
| ドアの確認 |
|
|---|---|
| 壁、窓、収納 |
|
| 照明器具 |
|
| 屋外 |
|
| 室内 |
|
| 天井裏 |
|
契約時に受け取った図面と建物をしっかり比較し、施工ミスや取り付け忘れがないかを確認しましょう。
欠陥工事の補修請求を行う手順
欠陥工事の補修請求を行う手順は、以下のとおりです。
任意交渉
初めに、施工不良による損害を通知し、直接交渉を行います。この段階で欠陥の補修と損害賠償について話し合いますが、補修が急務の場合は賠償交渉を後回しにすることも考えられます。交渉がまとまれば示談が成立し、賠償金の支払いを待つ状態です。ただし、譲歩する際には最低ラインを設定しておくべきであり、専門家である建築士に依頼して欠陥の調査を行い、確固たる証拠を得ることが重要です。
欠陥工事の補修請求テンプレート
補修請求書を作成する際、ひな形があると記載内容に迷うことなく作成できるため便利です。下記のサイトでは、委任事務の状況報告請求書をダウンロードできるため、利用してみてください。
調停申し立て
話し合いで解決しない場合は、簡易裁判所の民事調停を利用します。調停では、第三者の調停委員が中立的な立場で助言や調整を行います。裁判よりも手間や費用が少なく、解決の可能性は当事者同士よりも高いものの、全ての要求が通るわけではありません。裁判(訴訟)よりは手続が簡便なため、手間や時間、費用をさほどかけずに解決を図れるというメリットがあります。
裁判外紛争処理手続(ADR)
裁判に頼らずに問題を解決する方法の一つとして、裁判外紛争処理手続(ADR)の利用があります。これは、民事上のトラブルを中立の第三者が関与して調停やあっせんを行うことで、自主的に解決を図る手続です。この方法に強制力はありませんが、迅速かつ柔軟に解決できる点がメリットです。
主な裁判外紛争処理機関として、建設工事紛争審査会、日本不動産仲裁機構、弁護士会の住宅紛争審査会が挙げられます。特に弁護士会の住宅紛争審査会では、調停やあっせんを申請する前に、弁護士と建築士による無料の住宅専門家相談を利用できるというメリットもあります。
裁判を起こす
示談交渉や調停、裁判外紛争処理手続で解決に至らない場合、最終的な手段として損害賠償請求訴訟を提起します。最終的には、判決によって争いの決着がつけられます。建築紛争に関する訴訟では、建築の専門的知識と法的手続の理解が不可欠です。そのため、個人での対応は困難を伴うことが多く、弁護士などの専門家のサポートが重要です。
補修請求の相場
施工不良による損害賠償請求では、2つのケースが考えられます。「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」と「不法行為責任」です。契約不適合責任の場合、瑕疵の補修費用・仮住まい費用・引越費用・調査費用などの賠償を請求でき、精神的苦痛に対する慰謝料が認められることもあります。
瑕疵により生命・身体・財産が侵害された場合、治療費・休業損害・葬儀費用・慰謝料・損壊した財産の相当額なども請求できる可能性もあります。不法行為責任の場合は、金銭的な損害賠償請求のみ可能ですが、その範囲は契約不適合責任と同様です。いずれの場合も、損害の具体的内容と因果関係を立証することが重要です。
補修請求の時効
建築工事の請負人が負う瑕疵担保責任の除斥期間は、以前の民法では建物引渡しから通常5年、石造やコンクリート造、レンガや金属造の建物は10年でしたが(改正前の民法638条)、2017年の改正により、これらの規定は削除されました。
改正後の民法では、新築住宅の場合では、建物の欠陥を知ったときから1年以内に請負人に通知すれば足り、責任期間については10年です。(民法637条、住宅品質確保促進法94条、95条)。なお、請負契約の特約により、契約不適合(瑕疵担保)期間が1年から5年に制限されていることもありますが、無効である可能性もありますので(住宅品質確保促進法95条)、契約内容の確認が必要です。
弁護士に依頼すべきケース
建築紛争は複雑で専門性が高いため、弁護士の助力が不可欠です。弁護士に依頼することで、損害賠償請求の可能性や適切な対応方法について専門的なアドバイスを受けられます。
また、証拠収集のサポートや、建設業者との交渉を代行してもらえるメリットもあります。さらに、調停や裁判に発展した場合も、弁護士の知識と経験を活かして有利に進められるのがメリットです。建築トラブルでは、早い段階での弁護士への相談をおすすめします。
安心の住まいを取り戻すためにできること
欠陥工事の補修請求は、施工不良がある場合に可能であり、その際には適切な確認と手順が欠かせません。請求を成功させるためには、施工完了時に問題点を確認し、補修請求の手順や補償の範囲を理解しておきましょう。また、請求には時効があるため、早期の対応が必要です。ケースによっては、弁護士に依頼することで、交渉や法的手続を有利に進めることが可能です。適切な手続で建物の品質を確保しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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