- 更新日 : 2024年8月30日
賃貸借契約の更新拒絶通知とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
賃貸借契約の更新拒絶通知書とは、賃貸借物件のオーナーが貸借人に送る更新拒絶の案内です。契約更新を避けたいときに送付します。更新拒絶通知書の項目の具体例や書き方、押さえておくべきポイント、通知できる条件についてまとめました。
また、貸借人が更新拒絶通知書を受け取ったときの対応も紹介します。
目次
賃貸借契約の更新拒絶通知とは
建物賃貸借契約の更新拒絶通知とは、賃貸物件のオーナーが何らかの事情で契約更新を拒絶しなくてはいけないときに、貸借人に更新拒絶の旨を通知することです。
本来、普通借家契約では、貸借人が更新の意思を表示すれば契約期間満了後も当該物件を貸借できます。しかし、正当な事由があり、オーナーが契約期間が満了する1年~6ヶ月以内に更新拒絶通知を通告した場合には、貸借人は契約更新を要求できません。
ただし、賃貸借契約が定期借家契約の場合は元々更新が設定されていないため、契約が終了する6ヶ月前までにオーナーが「終了通知」を貸借人に通告することで、契約期間を終了させられます。
賃貸借契約の更新拒絶通知が認められるケース
普通借家契約では、通常は貸借人が契約期間満了後も貸借の意思を示すときには、契約が更新されます。しかし、正当な事由がある場合には、オーナーが賃貸借契約の更新拒絶通知書を送付し、更新を拒否することが可能です。
正当な事由として認められること
建物賃貸借契約の更新拒絶通知が認められる状況はケースバイケースのため、オーナーにとっては正当な理由であっても、正当性が認められないと判断されることもあります。一般的には、次のいずれかに該当するときは正当な事由として認められる傾向にあります。
- オーナー自身が物件を使用する
- 貸借人に問題行為がある
- 建物が老朽化している
- オーナーが代替不動産を提供する
正当な事由として認められやすい具体例
オーナー自身が物件を使用する場合は、正当な事由と判断されることが一般的です。例えば、居住用のマンションを購入したものの転勤が決まり、転勤期間中だけ賃貸物件として活用していたときなどが挙げられます。
貸借人に問題行為があるときも、更新拒絶は認められやすくなるでしょう。例えば、オーナーの許可を得ずにリフォームをしたときなどが該当します。また、家賃を滞納して債務不履行があるときは賃借人側から信頼関係を破壊するに至らない特段の事情を主張しない限り、賃貸借契約の解除が可能になるため、オーナーが更新拒絶を通知書で主張しなくても更新の拒否が可能です。
建物が老朽化しているときも契約更新を拒絶できますが、「見た目が悪い」「大がかりなリフォームをしたい」といった理由では認められないこともあるため注意が必要です。現行の耐震基準を満たさない場合や、耐用年数を大幅に超えた木造住宅などの場合なら認められやすくなりますが、それ以外のケースでは立ち退き料の支払いが必要になることもあります。
上記のいずれにも該当しない場合には、オーナーが代替不動産を準備することで、契約更新を拒絶できるかもしれません。しかし、立ち退き料を要求されることや、貸借人が代替不動産を気に入らず、更新拒否ができない可能性もあります。
賃貸借契約の更新拒絶通知書のひな形
賃貸借契約の更新拒絶通知書には、対象となる物件の情報や本来の契約期間満了日、通告する日時などを過不足なく記載することが必要です。抜け漏れのない有効な更新拒絶通知書を作成するためにも、ひな形を用いましょう。
以下から、弁護士監修の賃貸借契約の更新拒絶通知書のひな形を無料でダウンロードしていただけます。ぜひご利用ください。
賃貸借契約の更新拒絶通知書に記載すべき内容
賃貸借契約の更新拒絶通知書には、以下の内容を記載します。
- 契約満了時以後は賃貸借契約の更新をしないこと
- 契約満了時に物件を明け渡してほしいこと
- 更新拒絶の理由
- 物件情報(所在地、家屋番号、構造、床面積、階数など)
- 更新拒絶通知書を送付した日時
- 貸借人の住所・氏名
- オーナーの住所・氏名
賃貸借契約の更新拒絶通知書では、まず契約満了後には賃貸借契約を更新しない旨を明記します。「契約満了時以降の賃貸借契約更新を行わないことといたしました」など、誤解を得ないシンプルな書き方が望ましいでしょう。
また、契約満了後に物件を明け渡してほしい旨も、同様にシンプルで誤解を招かない文章で記載します。「契約期間満了後は、遅滞なく本件建物を明け渡し戴きますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます」などの文章が適切です。
更新拒絶理由についても、シンプルに記載してください。「家族が転勤により戻ってくることになり、本件建物を使用する必要が生じた」など、正当な事由と判断される事柄を記載します。正当な事由がない場合は、立ち退き料や代替不動産についての情報も記載しましょう。
賃貸借契約の更新拒絶通知を行う際の注意点
賃貸借契約の更新拒絶通知を行う際には、次の点に注意してください。
- 契約が満了する1年~6ヶ月前に通知する
- 内容証明郵便で送付する
- 正当な事由と判断できるか吟味する
賃貸借契約の更新拒絶通知書は、普通借家契約が満了する1年~6ヶ月前に通告しなくてはいけません。正しい時期に通知するように計画的に進めていきましょう。
また、正しい時期に送付したことを証明するためにも、内容証明郵便を利用します。内容証明郵便なら、文書の内容と誰から誰に送付したものかを証明することが可能です。従来は対応している郵便局でのみ内容証明郵便を送付できましたが、インターネットを使った電子内容証明(e内容証明)なら場所を問わず24時間いつでも利用できます。
正当な事由を更新拒絶通知書に記載することも大切です。正当性を欠くと思われる場合は、立ち退き料や代替不動産などの提示も検討してみましょう。
事業者が賃貸借契約の更新拒絶通知を受け取った場合の対処法
賃貸物件を普通借家契約で借りている場合、オーナーから賃貸借契約の更新拒絶通知書が届くことがあるかもしれません。更新手続きをせずに退去しようと考えていた場合なら、特に問題はないでしょう。しかし、更新する予定の場合は、住居や事務所などを新たに探す必要が生じます。まずは更新拒絶の事由が正当性のあるものなのか確認してみてください。
事由の正当性を判断できないときは、立ち退き関連の交渉を専門としている弁護士に相談してみましょう。正当性が認められないと判断される場合は、その旨をオーナーに伝えると、そのまま更新できる可能性があります。
一方、正当性が認められる場合も、オーナーと話し合うほうがよいでしょう。立ち退くための引っ越し代や新しい物件を契約する費用、迷惑料などを請求できるケースもあります。
オーナーとの交渉がうまく成立しない場合には民事裁判に発展することもありますが、裁判となると時間がかかり、費用もかさむ可能性があるため、和解の方向で話を進めることも検討してみましょう。立ち退き関連案件の実績豊富な弁護士なら、両者が折り合えるポイントに着地できるようにサポートしてもらえます。
更新拒絶通知書の書き方や受け取り時の対応を確認しておこう
賃貸物件として活用している物件に自分で居住する必要が生じたときなどは、貸借人に「賃貸借契約の更新拒絶通知書」を送付し、契約満了後は更新しない旨を通告できます。賃貸借契約の更新拒絶通知書は契約満了の1年~6ヶ月前に通知する必要があるため、正しいタイミングで内容証明郵便を使って送付するようにしましょう。
また、賃貸借している物件について、オーナーから更新拒絶通知書が送付されるケースもあります。更新を予定している場合は、正当な事由による請求なのかチェックしてみてください。立ち退き関連の案件を専門としている弁護士に相談するなら、よりスムーズにオーナーと交渉できるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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