- 更新日 : 2025年2月14日
消費貸借契約とは?法的な役割や具体的な書き方をひな形つきで解説
消費貸借契約とは、借りたものを消耗・消費することを前提に、ものの貸し借りをするための契約です。一般的にはお金の貸し借りを目的として交わされる契約ですが、借りたお札や硬貨そのものを返すのではなくそれと同等の金額を返還する約束を意味する点で物品の賃貸借契約とは異なるものとされています。
当記事ではこの消費貸借契約についての詳しい説明と、契約書の書き方について、ひな形を参考にしながら解説しています。
目次
消費貸借契約とは?
消費貸借契約とは「あるものを相手方から受け取り、それと種類・品質・数量などが同等のものをもって返還する契約」と説明できます。
民法にて、次のように規定が置かれています。
(消費貸借)
第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
授受・返還を行う目的物に制限はありませんが、金銭を目的物とした金銭消費貸借契約がよく交わされています。金銭消費貸借の詳細については下記記事もご参照ください。
法的な役割・目的
物の貸し借りをするだけなら「使用貸借契約」や「賃貸借契約」などの契約類型もあります。しかし、これらは借りた物をそのまま返すための契約です。
- 使用貸借契約:無償で物の貸し借りを行う契約。借主は、受け取った物品をそのまま返還する。
- 賃貸借契約:賃料の支払いを条件に物の貸し借りを行う契約。借主は、引き渡しを受けた物をそのまま返還する。
お金の貸し借りについては、借りた側が借りたお金を使うことを前提に貸し借りをするものです。借りた側がお金を使ってしまうと使った貨幣そのものは別の人の手へと渡り、貨幣そのものを貸した側に返還することはできなくなってしまいます。
そこで「同じものでなくても同じ品質や数量などであればよい」とする契約類型が必要なのです。消費貸借契約は、消費してしまうタイプのものの貸し借りを実現する役割を担っている、ということができるでしょう。
消費貸借契約の種類
消費貸借契約にもいくつか種類があり、例えば目的物で分類することもできますし、契約締結の方法で分類することもできます。例えば金銭が目的物となるときは「金銭消費貸借契約」と呼ばれ、契約書の表題としてもよくこの名称が使われています。
一般的に契約の種類としては、目的物の引き渡しが効力発生の条件となる「要物契約」のパターンと、当事者間の合意をもって効力が発生する「諾成契約」のパターンがあります。原則的には、消費貸借はうえの条文にもあるように要物契約です。しかしながら「書面の作成」があれば諾成契約として成立させることも民法では認められています。
契約が成立すると一方が勝手に解除することは認められないのが原則ですが、この書面による契約では「ものを受け取るまで借主からの解除ができる」などと規定されています。
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事業者が消費貸借契約を締結する主なケース
事業者が消費貸借契約を締結する主なケースとしては、大きく下記の2つが挙げられます。
- お金の貸し借りをしたいとき
- すでにある債務を整頓したいとき
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
お金の貸し借りをしたいとき
消費貸借契約の多くはお金の貸し借りをしたい場面で締結されています。これは一般個人であっても事業者であっても変わりはありません。個人の方が生活のために金融機関からお金を借りることもあれば、事業者が運転資金のため・設備投資のために金融機関からお金を借りることもあります。
すでにある債務を整頓したいとき
民法では「準消費貸借」というものも定義されています。
(準消費貸借)
第五百八十八条 金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。
これは「金銭やその他の物について給付すべき義務」を負っている債務者がいることを前提とします。そして、その給付すべきものを目的物とする消費貸借契約を改めて締結するのです。
例えば、ある売買契約に基づいて代金の支払いをすべき債務者がいたとしましょう。同じ当事者間で継続的に大量の売買契約を締結していると、代金の支払いがどれに対するものなのかがわかりにくくなってしまいます。
そこでこれまでの未払い代金を一本化し、「借金をしていたことにする」ための消費貸借契約を交わすのです。このときの契約が準消費貸借となります。
複雑化する債務を整頓したい、支払義務の一部が時効消滅してしまうことを避けたい、といった場面で締結されることがあります。
【Word形式】汎用的な消費貸借契約書のテンプレート/ひな形
契約書の作成方法、記載事項について解説していきますが、テンプレート/ひな形があるとイメージもしやすいです。下記URLからダウンロードができますのでぜひ確認してみてください。
なお、消費貸借契約のほとんどは金銭を目的物としたものですので、ここでも金銭消費貸借契約を題材とした汎用的なテンプレートを用意しております。
消費貸借契約書で定めるべき項目
金銭消費貸借契約書のテンプレートを基に、消費貸借契約書で定めておきたい項目を見ていきましょう。
チェックしておきたいのは次の項目です。
- 授受の方法
- 返還の方法
- 遅延損害金
- 期限の利益の喪失
- 連帯保証
- 解除規定
なお、契約書は当事者間の合意を示すための文書ですので「消費貸借の合意」についても記載をしておきます。契約書の前文、あるいは第1条にて、“消費貸借について各当事者が合意しました”といった旨を明記しておきます。
授受の方法
消費貸借契約ではものの受け渡しが行われますので、その「授受の方法」についても契約書に定めておきます。例えば金銭を目的物とするなら次のような記載例が考えられます。
いつ、どのように授受を行うのか、またそのときの手数料についても定めておくとよいです。
返還の方法
消費貸借は使用貸借や賃貸借のように借りたものそれ自体を返却する契約ではありませんが、同等のものの返還を要します。そこでその「返還の方法」についてもルールを定めておくことが大事です。
2 前項の支払いは、貸主が指定する口座に振り込む方法により行うものとする。なお、振込手数料は借主の負担とする。
このように、いつまでにどのような形で返還するのか、わかりやすく定めておきましょう。また金銭消費貸借であれば利息に関する定めも記載しておきましょう
遅延損害金
返還が約束の期限までに履行されない場合に備えて「遅延損害金」に関するルールも定めておきます。
このように定めておくことで借主が義務を履行する実効性が高まります。
期限の利益の喪失
前項と同じく万が一への備えとして「期限の利益の喪失」についての規定も置いておきましょう。なお、遅延損害金は現に返還が遅れてしまっているときの措置ですが、期限の利益の喪失に関しては予防措置としての役割を持ちます。そこで次のような柱書を定め、条件として「急がないと債権の回収ができなくなる」と思われる事項を列挙しておくのです。
例えば破産や民事再生などの債務整理があったとき、差押処分を受けたとき、などを列挙しておきます。
連帯保証
消費貸借は「約束通り返還してくれるだろう」という信頼のもと成立する契約です。とはいえ債務者の経済力・資力に不安が残るケースもあるでしょう。そんなときは「連帯保証」についての規定も置いておきます。
保証人が付いていると、万が一債務者による義務の履行がないとき、保証人が返還請求を受けることになります。
解除規定
契約をやめたくなったときへの備えとして「解除規定」を置くことも検討しましょう。例えば貸主が貸渡しを実行しない場合には借主が解除できる旨、あるいは貸渡しを実行するまでの間なら借主が解除できるとする旨、などを定めます。
ただし解除に伴い一方が損害を被ることもあります。そんなケースに備えて次のような規定も添えておくとよいでしょう。
※解除規定の内容によっては「貸主から借主」と書き換える。
消費貸借契約を締結する際の注意点
どの契約でもそうですが、とりわけ消費貸借契約を締結するときはリスクの大きさについて慎重に評価することが大事です。
使用貸借や賃貸借なら借りたものをそのまま維持すればよいですが、消費貸借ではその物はいったん消費してなくなってしまいます。そこで「約束通りに借りた物と同等の物を準備できるだろうか(借主目線)」「約束通りに貸した物と同等の物を準備してくれるだろうか(貸主目線)」と当事者双方慎重に考える必要があります。
そこで貸主としては返還の方法を厳格に定めること、そして遅延損害金や期限の利益の喪失、連帯保証についてのルールなどを定めて実効性を担保していくよう注意しなくてはなりません。
一方の借主は、各種ルールが厳しすぎないかどうかを要チェックです。特に金銭消費貸借の場合は利息の大きさや連帯保証の有無、遅延損害金の大きさなどに留意してください。
トラブルを想定して消費貸借契約書を作成しよう
消費貸借契約とは、消費や消耗してしまう物の貸し借りをしたい場面で役に立つ契約です。借り入れをするときなど、金銭がやり取りされることが多いですがその他の物であっても有効に成立させられます。
物の貸し借りをめぐってはトラブルも起こりやすいため、紛争防止の観点からは契約書の作成が必須と捉えるべきです。返還方法や、遅延損害金や保証人の定めなど、契約書に置く項目は慎重に検討していきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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