- 作成日 : 2024年4月12日
優越的地位の濫用とは?規制内容や事業者の注意点をわかりやすく解説
優越的地位の濫用とは、地位を利用して取引相手に不当に不利益を与える行為のことです。独占禁止法では、優越的な地位を利用した不公正な取引として禁止されています。具体的にはどのような行為が該当するのか、例を挙げてまとめました。
また、事業者が注意すべき事柄についても、わかりやすく解説します。
優越的地位の濫用とは
優越的地位の濫用とは、取引上優越的な地位にある側が、地位を利用して相手側に不当に不利益を与える行為のことです。たとえば、自己の取引上の立場が相手に優越していることを利用し、自社の営業担当者に支払う報奨金を納入業者に要請するケースなどが該当します。
独占禁止法により、一方的に有利な立場を利用した行為は不公正な取引の一つとして禁止しています。独占禁止法については、以下をご覧ください。
法的な定義
取引上の地位が相手方に優越している事業者が、取引の相手方に対して、地位を利用して不当に不利益を与えることを「優越的地位の濫用」といいます。次の3つの条件すべてを満たした行為を指します。
- 相手に対して優越的地位にあること
- 正常な商習慣に照らして不当であること
- 濫用行為であること
優越的地位の濫用は、取引相手の自由かつ自主的な判断を阻害し、相手の不利な立場をより一層不利にする行為です。公正な競争を阻害する恐れがあるため、独占禁止法により規制されています。
対象となる取引
優越的地位の濫用は、独占禁止法で規制されている行為です。独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進するために定められた法律のため、すべての商取引が対象となります。
すべての商取引において公正かつ自由な競争が実現していれば、事業者は自主的かつ自由に活動できるようになり、市場メカニズムが正しく機能するでしょう。
また、事業者が安く優れた商品を提供しようとすることで、消費者はニーズに合った商品を選べるようになり、消費者の利益も確保できると考えられます。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ45選
業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い45個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
実際の契約に合わせてカスタマイズしていただきながら、ご利用くださいませ。
【弁護士監修】チェックリスト付き 改正下請法 1から簡単解説ガイド
下請法の改正内容を基礎からわかりやすく解説した「改正下請法 1から簡単解説ガイド」をご用意しました。
本資料では、2025年改正の背景や主要ポイントを、弁護士監修のもと図解や具体例を交えて解説しています。さらに、委託事業者・受託事業者それぞれのチェックリストを収録しており、実務対応の抜け漏れを防ぐことができます。
2026年1月の施行に向けて、社内説明や取引先対応の準備に役立つ情報がギュッと詰まった1冊です。
【弁護士監修】法務担当者向け!よく使う法令11選
法務担当者がよく参照する法令・法律をまとめた資料を無料で提供しています。
法令・法律の概要だけではなく、実務の中で参照するケースや違反・ペナルティ、過去事例を調べる方法が一目でわかるようになっています。
自社の利益を守るための16項目 契約書レビューのチェックポイント
契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
契約書のレビューを行う企業法務担当者や中小企業経営者の方にもご活用いただけます。
優越的地位の濫用として規制されている行為
A社との取引がB社にとって経営上大きな影響を与えているときは、A社には優越的地位があると考えられます。このような状況下でA社が次の種類の行為をするときは、優越的地位の濫用になることがあります。
| 優先的地位の濫用となる行為の種類 | 行為の例 |
|---|---|
| 購入・利用強制 | 購入や利用を強制する |
| 協賛金などの負担の要請 | 合理的な金額を超えて協賛金などの負担を要請する |
| 従業員などの派遣の要請 | 相手に不利益を与える状況で従業員の派遣を要請する |
| そのほかの経済的利益の提供の要請 | 発注内容に含まれていない業務を無償で提供するように要請する |
| 受領拒否 | 契約した商品のすべてあるいは一部の受領を拒む |
| 返品 | 正当な理由なく汚損した商品や売れ残りの商品を返品する |
| 支払い遅延 | 契約によって定めた支払い日に正当な理由なく遅れる |
| 減額 | 業績悪化や予算不足などの一方的な理由で決められた対価を減額する |
| そのほかの相手に不利益となる条件など | ・取引の対価を一方的に決定する ・正当な理由なく納品をやり直させる ・高額な取引保証金を一方的に設定し、保証金の預託を請求する |
上記の例に該当しない場合でも、優越的地位を利用した行為は、不当に不公正な取引として禁止されることがあります。
優越的地位の濫用の具体的な事例
ある企業では、納入業者に対して営業本部長の名前で金銭を提供させていました。また、得た金銭は自社の社員旅行の一部として活用していたため、納入業者にとっては何の利益もないことが明らかになっています。
この企業は、同じく営業本部長の名前で、自社の営業担当者への報奨金も提供させていました。毎月の仕入金額に一定率を乗じて納入業者ごとの負担額を決め、不当に回収していたことがわかっています。
また、別の企業では、納入業者と派遣条件について話し合うことなく、従業員の派遣を要請していました。派遣に必要な費用は負担せず、自社の新規開店要員として利用していたようです。
別の企業でも、必要なほとんどすべての費用を負担せずに、特定の納入業者に従業員を派遣させていたことがわかっています。この企業では、創業祭やオープンセールの際に協賛金名目で使途を明確に説明しないで金銭の提供を要求したり、自社商品の購入を強要したりなどの優越的地位の濫用行為も見られていました。
事業者が気をつけるべきこと
優越的地位の濫用は、大手企業が中小企業に対して行うことが多いイメージがありますが、実際のところはそうとは限りません。中小企業同士、中小企業が大手企業に対してなど、事業規模に関わらず、一方的に優越的な地位に立つ状況が存在すればどこでも起こり得ることといえます。
優越的地位の濫用と判断されるときは、排除措置命令が出され、違反行為の差し止めや契約条項の削除などの措置がとられることがあります。また、違反行為にかかる期間における相手方との取引額に対して、算定額(1%)を乗じた金額の課徴金が課されることもあるため注意が必要です。
公正な取引が実施されていないときは公的機関に相談しよう
優越的地位を利用し、一方的に不当な要求を受けたときには、公正取引委員会に相談することが必要です。地域ごとに公正取引委員会の事務所(取引課)が設置されているため、まずは相談してみましょう。
公正取引委員会の調査により違反行為であることが明らかになると、当該企業による確約手続きへと進みます。また、場合によっては排除措置命令や課徴金納付命令などに進むこともあります。相談はオンラインでも可能です。悩んだときは、公正取引委員会に相談してみましょう。
参考:公正取引委員会
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
会社法370条(取締役会の決議の省略)とは?書面決議・みなし決議の要件を解説
会社法370条は、実際に取締役会を開催せずに書面決議が行える旨を定めた規定です。書面決議は「みなし決議」とも呼ばれ、迅速に決議を行える点がメリットです。 一方で法定の要件を満たさな…
詳しくみる契約における「解除」と「解約」の違いを解説
契約関係を解消することを表現する際に、「解除」を用いる時もあれば、「解約」を用いる時もありますが、一般的に解約と解除は法的な用語として意味に違いがあります。この記事では、解除と解約…
詳しくみる民法555条とは?売買契約の成立要件や効果についてわかりやすく解説
民法555条とは、売買契約が成立する要件を定める条文です。売主がある商品やサービスの所有権を買主に移転することを約束し、買主が売主に代金を支払うことを約束すると売買契約が成立します…
詳しくみる景品表示法のプレゼント(景品)とは?金額の条件を事例とあわせて解説
景品表示法では、プレゼント(景品)の金額や提供方法に厳格なルールが定められています。本記事では、最新の法令を踏まえた上限金額や事例をわかりやすく解説し、違反を防ぐための注意点を紹介…
詳しくみる民法における危険負担とは?契約時に確認したい項目も解説
2020年4月に民法の改正法が施行され、売買など、当事者双方が債務を負う双務契約で問題となる「危険負担」のルールが大きく変わりました。 この記事では、売買契約などの双務契約において…
詳しくみる抱き合わせ販売とは?独占禁止法と事例を解説
事業を行う上で、複数の商品を組み合わせる「セット販売」は一般的な販売戦略ですが、その一形態である「抱き合わせ販売」が独占禁止法に抵触し、排除措置命令や課徴金といった経営リスクを招く…
詳しくみる


