- 更新日 : 2025年3月5日
宅地建物取引業法(宅建業法)とは?改正内容や注意点などをわかりやすく解説
宅地建物取引業法とは、不動産取引を規制して不正行為を防止し、購入者の利益の保護を目的とした法律です。免許の取得の義務化や不動産広告の規制、報酬に関する規制などが記載されています。
本記事では、企業の法務担当者の方に向けて、宅地建物取引業法の概要や考え方、規制内容、事業者が注意するべきポイントをわかりやすく解説します。
目次
宅地建物取引業法(宅建業法)とは
宅地建物取引業法は、宅地や建物の取引に関する法律です。正式名称は「宅地建物取引業法」ですが、略称として「宅建業法」と呼ばれています。
宅地建物取引業法は、広告や重要事項の隠蔽、契約内容の不明瞭化、価格操作や詐欺的な取引など、不動産業者による不正行為を防止し、購入者の利益を守ることを目的としています。
宅地建物取引業法(宅建業法)の対象
宅地建物取引業法第2条第2項では、適用対象となる宅建業者について定義されています。具体的には、宅地または建物の売買や交換、代理業務、媒介業務を「業として」実施する者が規制の対象です。
例えば、土地や建物の売買契約の媒介を業とする不動産仲介業者や、賃貸物件の紹介業務を行う委託業者が該当します。
また、契約更新の事務や家賃の徴収業務のみを行う事業者については、宅建業法適用対象外とされています。
宅地建物取引業法(宅建業法)の規制内容
宅地建物取引業法は、以下のような内容が規定されています。
- 免許制度
- 不動産広告の規制
- 報酬額の上限
- 宅地建物取引士の設置義務
免許制度
宅地建物取引業を営むには、国土交通大臣または都道府県知事の免許を取得する必要があります。これは、不動産取引における消費者保護を目的とし、免許制を通じて適正な業者管理を行うための制度です。
- 国土交通大臣の免許
複数の都道府県にまたがる事業を行う場合に必要 - 都道府県知事の免許
1つの都道府県内でのみ事業を行う場合に必要
また、宅建業者が営業保証金を供託することで、消費者が損害を受けた場合に一定の補償を受けられる仕組みが整備されています。
不動産広告
不動産広告においては、建物の所在地や規模、性能など、事実と著しく異なる表示をしたり、過度に有利であることをアピールしたりする表示が禁止されています。誇大広告を規制するための規定です。
宅建業者が行う不動産広告には、誤解を招く表現や誇大広告が禁止されています。
報酬額の上限
宅建業者が受け取れる報酬額(仲介手数料)には、上限が定められています。この規定により、宅建業者が不当に高額な報酬を請求することを防ぎ、消費者の利益を守る仕組みとなっています。
売買代金 | 報酬額の上限 |
---|---|
売買代金の200万円以下の金額 | 売買代金×5.5% |
売買代金が200万円超400万円以下の金額 | 売買代金×4.4% |
売買代金が400万円超の金額 | 売買代金×3.3% |
参考:国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額
宅地建物取引士の設置義務
宅建業者は、事務所ごとに5人に1人以上の割合で宅地建物取引士(宅建士)を設置する義務があります。宅建士は、不動産取引の専門家として、重要事項説明(35条書面)の交付と説明、契約書(37条書面)への記名押印などを担当します。取引の相手方である買主や借主に対して、対象物件の権利関係や法的制限、取引条件などの重要事項を適切に説明しなければなりません。
2022年5月の宅建業法の改正内容
宅地建物取引業法は、2022年5月に改正されました。背景には、デジタル化の進歩やニーズの多様化への対応が挙げられます。また、取引の効率化と透明性の向上を目的としています。
具体的な改正内容として、書面の押印が廃止され、電磁的方法を用いた書面交付が認められました。これにより、従来の紙媒体に加え、USBメモリや電子メール、Webサイトからのダウンロードなど、さまざまな方法で重要な書類の授受ができるようになっています。
宅建業者が特に注意すべきポイント
最後に、宅地建物取引業に関して宅建業者が特に注意すべきポイントを解説します。
宅地建物取引業法第48条では、代表者や役員であっても、宅建業に従事する者は「従業者証明書」を携帯する必要があると規定されています。
また、宅地建物取引業法第34条の2により、身内同士の不動産売買であっても媒介契約書の交付が必要です。
さらに、役員の変更があった場合には、変更があった日から30日以内の変更届の提出が求められます。
そのほか、消費税率が変更された場合、報酬額表の変更が義務付けられています。
このように、宅地建物取引業法においてはさまざまな規制があるため、事業者は違反しないように深く理解しておきましょう。
宅地建物取引業法の内容をしっかりと理解しましょう
宅地建物取引業法とは、不動産業者が不正な取引をしないようにするため、不動産購入者の利益を保護することを目的とした法律です。
免許の申請や広告の規制など、不動産の取引業に関する内容が定められています。
事業者が宅建業を行う際には、従業者証明書の携帯や、役員変更の際には変更届出書の提出などを行ってください。
宅地建物取引業法を理解して、ミスのないスムーズな取引を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
著作者人格権とは?含まれる権利や契約時の注意点を紹介
著作者人格権とは、楽曲や絵画、プログラムなど、ある作品を作った方に認められる権利です。取引に際して、お金を払って譲り受けた成果物でも著作者人格権を無視できることにはなりません。 実務においても注視する必要があるこの著作者人格権とはいったいど…
詳しくみるグレーゾーン解消制度とは?申請すべきタイミングや方法など解説
「グレーゾーン解消制度」とは、事業者が新たな事業活動を行う際に、当局に対して規制の適用の有無をあらかじめ確認できる制度です。規制の適用範囲を明確化し、事業者が安心して事業活動を実施できるように後押しすることを目的としています。本記事ではグレ…
詳しくみる民法555条とは?売買契約の成立要件や効果についてわかりやすく解説
民法555条とは、売買契約が成立する要件を定める条文です。売主がある商品やサービスの所有権を買主に移転することを約束し、買主が売主に代金を支払うことを約束すると売買契約が成立します。民法555条の成立要件や得られる効果、書面作成の必要性につ…
詳しくみる著作物とは?法的な定義や具体例、事業者が注意すべき点を解説
著作物とは思想または感情を表現したもので、著作権法で保護されています。法に定められている方法で利用する場合は、事前に著作権者の許可を得なければなりません。 今回は、著作物として保護される要件や種類、具体例などを解説します。保護の内容や事業者…
詳しくみる電子契約の法的有効性を関連する法律と合わせて解説
電子契約を導入するにあたって気になるのは、その法的効力でしょう。本当に電子契約で契約は成立するのでしょうか。 そこで、今回は関連する法律を見ながら電子契約の法的効力について考えてみます。また、電子契約ができないケースについても解説します。 …
詳しくみる相続土地国庫帰属法とは?対象者や要件、申請方法を解説
相続土地国庫帰属法とは、相続により取得した土地の所有権を国庫に移転させることを認める法律です。相続を放棄することなく、土地の所有や管理責任を国に移せるのがメリットです。今回は、相続土地国庫帰属法の概要や対象者と土地の要件、申請手順、必要書類…
詳しくみる