- 更新日 : 2024年8月30日
契約書の構成に決まりはある?具体例をもとに書き方や用語を解説
契約書とは、契約の締結を証明する文書のことです。契約書の構成に法的な取り決めはありませんが、基本的には同じような型が用いられます。
本記事では基本的な契約書の構成やルール、よく使われる表現などを解説します。レビューを行う際のポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
基本的な契約書の構成
契約書とは当事者間の合意内容を整理し、契約の締結を証明するための文書のことです。契約書の作り方について、明確なルールが存在するわけではありません。しかし、構成の型はおおむね共通しています。法務担当者として効率的に契約書を確認する、あるいは作成をするためには、基本的な型を知っておくことが重要です。
契約書の基本的な構成は以下のとおりです。
- 契約書の表題
- 契約書の前文
- 契約書の本文
- 契約書の後文
- 契約書の日付
- 契約者の住所・署名
- 契約書の別紙・収入印紙(必要な場合)
各項目について解説します。
契約書の表題
契約書の表題(タイトル)とは、「売買契約書」など、その契約が何に関するものであるかを端的に表現するものです。表題の決め方に関して、法令などで決められたルールはありません。しかし、取引内容がすぐに理解できないようなものは避けましょう。
例えば、「業務委託契約書」「秘密保持契約書」「取引基本契約書」などが、企業間取引で使用されることが多い契約の表題です。
契約書の前文
契約書の前文とは、「〇〇(以下「甲」という)と、■■(以下「乙」という)は、△△について以下のとおり契約を締結する」など、契約当事者や目的などを明らかにするための文言のことです。
契約書の本文
具体的な契約内容が記載されるのが、本文です。本文には一般条項と主要条項が存在します。それぞれの条項に記載される内容は以下のとおりです。
- 一般条項:契約内容にかかわらず、共通して定められることの多い条項
- 主要条項:その契約特有の内容を定めた条項
一般条項には、「解除条項」や「損害賠償条項」などが挙げられます。一方、主要条項は、それぞれの契約書によって内容が異なることを押さえておきましょう。
契約書の後文
後文とは、契約書を締める一文のことです。「上記合意成立の証として、本契約書を2通作成し、甲乙各々署名捺印の上、甲乙相互に各1通を保有する」といった文言を指します。契約書原本の数や、保管する者などについて記載するのが一般的です。
契約書の日付
契約書の日付は、通常は後文の後ろに契約したのがいつであるかがわかるように記載します。契約日は、基本的にはその契約の効力発生日となります。契約に関するトラブルが発生した場合、その契約がいつ締結されたのかが重要になるため、必ず記載しましょう。
契約者の住所・署名
契約者の住所や氏名を記載することで、契約当事者自身の意思によって成立したものであることを示します。日本では実務上、署名だけではなく印鑑も押すケースがほとんどです。
なお、近年増えている電子契約システムを使用した契約締結方式では、署名や記名押印はすべて電子で行います。
別紙・収入印紙(必要な場合)
契約書の別紙とは、通常は情報量が多いような場合に、内容を整理し見やすくするために用いられる書類を指します。別紙は必要な場合のみ作成します。
収入印紙とは、租税や手数料などを徴収するために政府が発行する証票のことです。請負契約書や消費貸借契約書などの一部の契約書は印紙税の対象となるため、印紙を貼る必要があります。
収入印紙について詳しくは、下記記事を参照ください。
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契約書の構成ルール・各部分の名称
ここからは、契約書の構成ルールや各部分の名称を解説します。
契約書の条文「条・項・号」
一般的な契約書で用いられる「条(じょう)」「項(こう)」「号(ごう)」は、「条」を小分けにしたものが「項」であり、「項」を小分けにしたものが「号」にあたります。ただし、「条」で内容の列挙をするような場合は「項」は用いずに飛ばし、「号」を使うこともあります。
「項」と「号」には番号を付けます。「項」と「号」で同じような番号の付け方をしてしまうと違いがわかりにくくなるため、漢数字とアラビア数字で使い分けるなどします。
契約書の第一項に「1」を書かない理由
契約書の第一項には「1」などの番号を書かず、文章から書き始めるケースが多いです。法律は改正される場合があるため、第一項と第二項がある条文が存在する場合に第一項に「1」と記載すると、法改正によって第二項を削除した場合、第一項しかないのに「1」が残ってしまうためです。
第一項に「1」を書かない理由が、明確に示されているわけではありません。しかし、上記のような理由によると考えられます。
ただし、わかりやすくするために、契約書のひな形には第一項から番号を振っているものも少なくありません。
柱書・但書・前段・後段の意味
「柱書(はしらがき)」とは法律条文において、「号」の前に「次の者は〜とする」などと記載されている部分が該当する箇所のことです。つまり、「号」以外の記載の部分のことを指します。
また、「但書(ただしがき)」とは、条文中に「ただし〜」と記載される場合、「ただし」以降の箇所のことです。
さらに、「前段(ぜんだん)」とは、条項の文章が句点で2つに分かれているケースでの前半の文のことを、「後段(こうだん)」は後半の文章のことをそれぞれ指します。
契約書でよく使われる表現
契約書の作成やレビューの際に押さえておきたい、契約書でよく使われる表現には以下のようなものがあります。
- 「又は」と「若しくは」
- 「及び」と「並びに」
- 「推定する」と「みなす」
それぞれの意味を確認しましょう。
「又は」と「若しくは」
日常的には、「又は」も「若しくは」はいずれも「or」の意味を表します。
契約書では「桜、タンポポ又は椿」のように、まず「又は」が使われます。そして、それとは別のグループのものが出てきたときには、「桜若しくはタンポポ又はトンボ」となることに注意してください。
つまり大きなグループ(花と虫)と小さなグループ(花グループ内の桜とタンポポ)が存在するケースでは、「又は」では大きなグループ、「若しくは」では小さなグループのものをつなげます。
「及び」と「並びに」
通常は「及び」も「並びに」も、英語でいう「and」の意味を示し、明確な使い分けはしません。しかし契約書においては、「及び」は同一レベルのものを接続する際に、「並びに」は「及び」で接続されたグループとは別グループのものを接続する際に使われることがポイントです。
例えば、「タンポポ及びあじさい並びにトンボ及びバッタ」というように、花グループのタンポポとあじさい、虫グループのトンボとバッタはそれぞれ「及び」でつなげます。そして、花グループと虫グループは「並びに」でつなげます。
「推定する」と「みなす」
「推定する」は反証を許すのに対し、「みなす」は反証を許さない点が両者の違いです。例えば、「春に咲く黄色い花はタンポポと推定する」という記載であれば、春に咲いているのが黄色いチューリップである明確な証拠が存在する場合は、覆る場合があります。
しかし、「春に咲く黄色い花はタンポポとみなす」場合は、たとえ実際にはそれがチューリップであってもタンポポとして取り扱うことを意味します。
契約書をレビューする際のポイント
契約書をレビューする際は、以下のポイントを押さえるように意識しましょう。
- 取引の背景や目的を明確にする
- 5W1Hを意識する
- 契約の内容や手順を詳細に記載する
- リスク分担のルールを定める
- 紛争に備えた条項を盛り込む
- 条文の条ズレがないかを確認する
各ポイントについて解説します。
取引の背景や目的を明確にする
契約書は、取引の背景や目的を明確にした上で作成されていなければなりません。契約書の条文には、取引の内容や手順、適用ルールなどを抜け漏れのないように記載することが求められます。しかし、そもそもの前提認識が曖昧な場合、網羅的に記載することは困難です。
そのため、その取引が行われるに至った背景と、取引によって実現したい目的を十分に理解することが大切です。法務担当者として契約書の審査を依頼された場合は、これらのことを作成者にヒアリングする必要があります。
5W1Hを意識する
契約書をレビューする際は、「5W1H」が意識されているかを確認することが大切です。
「5W1H」のいずれかが抜けていると、誰が権利を持つのかあるいは義務を負うのか、どのような権利義務なのかが曖昧になり、紛争になる可能性があります。回りくどい言い回しになりがちですが、契約書の内容に疑義が生じる余地がないように、「5W1H」を意識した文章になっていることが望ましいです。
契約の内容や手順を詳細に記載する
契約の内容や手順を詳細に記載してあることも、契約書においては重要なポイントといえるでしょう。契約書は、取引の内容や手順がわかるマニュアルのような意味合いも持っているためです。
契約の内容や手順が詳しく記載されていないと、取引担当者が内容を十分に理解できなかったり、誤解が生まれたりするでしょう。その結果、取り決めを行ったルールどおりの運用がなされない可能性はあります。
リスク分担のルールを定める
契約書をレビューする際は、リスク分担のルールが定められているかという視点に立つことも欠かせません。例えば「損害賠償の上限額」や「損害賠償を行うケース」などが該当します。
リスク分担のルールが明確になっていないと、トラブルが発生した際に適切に対処できず、さらに大きな揉めごとに発展するリスクがあります。契約書のレビューに際しては、自社が負っているリスクやその大きさが適切かどうかなどをチェックすることが重要です。
紛争に備えた条項を盛り込む
紛争に備えた条項が盛り込まれているかどうかも、契約書のレビューを行う際に欠かさずにチェックしましょう。リスク分担に関する条項のほかにも、「契約の解除条項」や「守秘義務に関する条項」「合意管轄・準拠法に関する条項」などの条項を盛り込む必要があります。
これらの条項が盛り込まれていない場合、相手方と紛争になった際に自社が不利な状況に陥る可能性があります。紛争に発展した場合を想定し、一般条項が盛り込まれているかを確認しましょう。
条文の条ズレがないかを確認する
契約書に条文のズレがないかどうかも、漏れなく確認してください。契約交渉の過程で頻繁に内容の修正を行うケースでは、条文の削除や追加などで条文がズレてしまうことがあります。
条文があるべき場所になくズレが生じていると、その条文を引用しているほかの条文がある場合に、内容的に意味を成さなくなる可能性があります。正式に契約を締結する前に、必ず全体の内容を確認しましょう。
契約書の構成の基本を知りトラブルを回避しよう
契約書の作り方については明確なルールはありませんが、構成の型はおおむね共通しています。そのため、法務担当者として基本的な型を知っておくことが求められます。また、業務を円滑に進めるために、基本的なルールや各部分の名称を知っておくことも大切です。
契約書をレビューする際は、とくにリスク分担のルールが定められているか、紛争に備えた条項が盛り込まれているかを確認し、トラブルを回避しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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