- 作成日 : 2024年2月19日
相続土地国庫帰属法とは?対象者や要件、申請方法を解説
相続土地国庫帰属法とは、相続により取得した土地の所有権を国庫に移転させることを認める法律です。相続を放棄することなく、土地の所有や管理責任を国に移せるのがメリットです。今回は、相続土地国庫帰属法の概要や対象者と土地の要件、申請手順、必要書類などを解説します。相続した土地の管理に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
目次
相続土地国庫帰属法とは
相続土地国庫帰属法(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)とは、相続した土地を手放し、所有権や管理責任を国に移転させることを認める法律です。
相続した土地が遠方にあって管理が難しかったり、そもそも不要な土地を相続せざるをえなかったりする場合もあるでしょう。相続を放棄するという方法もありますが、これまではほかの資産も含めて全ての相続を放棄しなければなりませんでした。
土地利用のニーズが低下している昨今、不要な土地を相続した後、登記せずに土地を放置するケースが増加傾向にあります。その結果、所有者不明土地が発生しているのが問題視されています。
そこで始まったのが、相続土地国庫帰属制度です。申請後、法務局による審査に通過することで、相続した土地の所有権と管理責任を国に移転させられます。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ30選
業務委託契約書など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
導入で失敗したくない人必見!電子契約はじめ方ガイド
電子契約のキホンからサービス導入の流れまで、図解やシミュレーションを使いながらわかりやすく解説しています。
社内向けに導入効果を説明する方法や、取引先向けの案内文など、実務で参考になる情報もギュッと詰まった1冊です。
紙も!電子も!契約書の一元管理マニュアル
本ガイドでは、契約書を一元管理する方法を、①紙の契約書のみ、②電子契約のみ、③紙・電子の両方の3つのパターンに分けて解説しています。
これから契約書管理の体制を構築する方だけでなく、既存の管理体制の整備を考えている方にもおすすめの資料です。
自社の利益を守るための16項目!契約書レビューのチェックポイント
法務担当者や経営者が契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
弁護士監修で安心してご利用いただけます。
法務担当者向け!Chat GPTの活用アイデア・プロンプトまとめ
法務担当者がchat GPTで使えるプロンプトのアイデアをまとめた資料を無料で提供しています。
chat GPT以外の生成AIでも活用できるので、普段利用する生成AIに入力してご活用ください。
申請の対象者は?
相続土地国庫帰属制度の対象者は、相続等により土地の所有権の全部、または一部を取得した者です。土地を複数人で相続した場合も、共有者の全員が共同して申請する場合は承認申請が可能です。
また、制度が始まったタイミングより前に相続した土地であっても、条件を満たせば申請できます。
なお、法人や生前贈与で土地を取得した相続人、土地を購入して自ら取得した場合などは、申請の対象外です。
参考:e-Gov法令検索 令和三年法律第二十五号 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律
国庫に帰属させられる土地の要件
相続で取得した場合、すべての土地の所有権を移転させられるわけではありません。基本的に、管理や処分に時間や費用がかかる土地については、国庫に帰属させられないと考えておきましょう。
具体的に、以下のいずれかに当てはまる土地は、申請自体が認められていません。
- 建物が存在する土地
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 他人による使用が予定される土地
- 土壌汚染されている土地
- 境界が明らかではない土地や、土地の所有権について争いが起こっている土地
また、以下のいずれかに該当する場合は、申請しても承認されません。
- 勾配や崖によって、管理に多くの費用や労力がかかる土地
- 土地の管理や処分を阻害する工作物や車両、樹木などが地上に存在する土地
- 除去しなければならないものや、処分できないものが地下に存在する土地
- 隣接する土地の所有者やその他の者との争訟が必要な土地
- そのほか、管理や処分に多くの費用や労力がかかる土地
申請にかかる費用は?
申請には、土地一筆あたり14,000円の手数料がかかります。
一筆(いっぴつ)とは、登記上の土地の個数を表す単位です。一筆ごとに地番が与えられます。
申請時に、手数料分の収入印紙を貼って納付しましょう。
なお、申請を取り下げた場合や承認が通らなかった場合も、手数料は返還されないため注意してください。
法務局に承認された後は、さらに10年分の土地管理費相当額を納付する必要があります。負担額は、一筆あたり20万円が基本です。金額は、土地の性質に応じて算出されます。
申請の手順
相続土地国庫帰属制度における、申請から土地を引き渡すための手順は以下のとおりです。
- 必要資料を準備する
- 法務局に相談する
- 申請書類を作成する
- 書類を提出し、手数料を納付する
- 承認後、土地管理費相当額を納付する
申請のためには多くの書類を準備する必要があるため、余裕を持って準備しましょう。
以下では、申請時に必要な書類について紹介します。
法務局への相談時に必要な書類
法務局に相談する際は、事前に以下の書類を準備しましょう。
- 相続土地国庫帰属相談票
- 相談したい土地の状況について(チェックシート)
- 土地の状況等が分かる資料や写真(登記事項証明書や地積測量図、土地の写真など)
「相続土地国庫帰属相談票」と「相談したい土地の状況について(チェックシート)」については、法務省のホームページよりダウンロードできます。
参考:法務省 令和5年2月22日から相続土地国庫帰属制度の相談対応を開始します
申請に必要な書類
申請時に必要な書類は以下のとおりです。
- 承認申請書
- 土地の位置や範囲を明らかにする図面
- 土地と隣接する土地との境界点を明らかにする写真
- 土地の形状を明らかにする写真
- 申請者の印鑑証明書
- その他、提出を求められた書類
また、以下の書類は任意で準備しましょう。
- 固定資産税評価額証明書
- 承認申請土地の境界等に関する資料
- 現地案内図(土地までの行き方が難しい場合)
申請先は、土地の所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局です。窓口に持参する方法と、郵送で提出する方法があります。
相続登記の申請義務化について
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されます。正当な理由なく、不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わなかった場合は、10万円以下の過料が発生するため注意が必要です。
2024年4月1日以前に取得した土地であっても、相続登記を行わなければなりません。
3年間の猶予期間が設けられていますが、早めに登記申請を行いましょう。
相続した土地を手放す際は相続土地国庫帰属制度を利用しよう
相続した土地の管理に困っている方や、不要な土地を相続した場合は、相続土地国庫帰属制度を利用しましょう。申請して法務局から承認された場合は、土地の所有権や管理責任を国庫に移転させられます。
相続土地国庫帰属制度を利用する際は、対象者や土地の要件を確認する必要があります。また、申請にあたって複数の書類を準備しなければならないため、早めに準備を進めることが大切です。制度を利用したい場合は、まずは法務局に相談しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
下請法違反に該当する行為や罰則は?事例集・チェックシートも紹介
下請法は、下請事業者が不利益を被ることなく公正な取引が行われることを目的として定められた法律です。取り締まりの対象となる取引を限定し、「買いたたき」や「下請代金の減額」などの禁止事項を定めます。 下請事業者と契約を結び、業務を発注する際は、…
詳しくみるサルベージ条項とは?消費者契約法の改正についても解説
消費者と事業者の契約では、情報量や交渉力に格差があり、消費者が不利な契約を結ぶことがあります。これを防ぐのが「消費者契約法」です。この法律は不当な勧誘による契約の取消しや、消費者に不利な条項を無効にするなど、消費者の利益を守ります。 特に、…
詳しくみる意匠法改正まとめ – 2020年施行と2021年施行を解説!
意匠法は、知的財産権の1つである意匠権を保護するための法律です。時代に合わせて変化を続けており、最新の改正意匠法は2019年に公布され、2020年と2021年に施行されました。 今回は意匠および意匠権を含めて、意匠法の概要についてご説明しま…
詳しくみる信義則(信義誠実の原則)とは?定義や具体例、民法の判例について解説
信義則とは「信義誠実の原則」のことで、お互いに相手の信頼を裏切らないように行動しましょう、というルールです。用語自体、難しいという印象を抱くかもしれませんが、ビジネスを行う上、あるいは日常生活を送る上では信義則の考え方は非常に重要となります…
詳しくみる労働法とは?概要や事業者が気をつけるべき点をわかりやすく解説
労働法とは、労働基準法や労働組合法、男女雇用機会均等法などの働くことに関する法律の総称です。労働者を保護し、労働者の権利を守るために定められています。 働法にはどのような種類があるのか、また、使用者や労働者は何に注意すべきかまとめました。労…
詳しくみる下請法におけるキャンセルは合意があれば可能?
下請取引は多くの産業で不可欠ですが、親事業者と下請事業者の間には力関係の不均衡が存在しがちです。この不均衡が悪用され、下請事業者が不利益を被ることを防ぐのが下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」)です。 特に発注後のキャンセルは下請事業者…
詳しくみる


