- 作成日 : 2024年2月1日
訴訟対応とは?具体的な業務内容や進め方、注意点を解説
企業の法務担当者の仕事の一つである訴訟対応とは、いったいどのような業務なのでしょうか。
この記事では訴訟対応の業務内容や訴訟の流れ、訴訟対応業務を行う上で法務担当者に求められることを紹介します。新しく法務担当者になられた方、法務部配属を目指されている方はぜひ参考にされてください。
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訴訟対応とはどんな業務?
訴訟対応とはその名の通り、訴訟に関わって発生する一連の手続きや業務に対応することです。企業ではさまざまなトラブルが発生するリスクを抱えています。企業同士の紛争、顧客とのトラブル、契約に関連するトラブル、あるいは労使トラブルや労災事故、交通事故まで非常に多岐にわたります。話し合いや示談で折り合いがつかなければ、裁判で争うほかありません。その際に弁護士と連携をして解決を目指すのが訴訟対応という仕事です。
裁判の手続き自体は弁護士が行ってくれます。訴訟対応担当者は弁護士の選任や委任、訴訟に必要な書類・資料の作成(弁護士からのヒアリング対応や関係者に対するヒアリングの手配など)や証拠の収集、裁判の方針の策定、経営者への報告や判断のアシスト、判決にもとづいた債権回収や強制執行の申し立てなど裁判後の対応などが主な業務となります。
訴訟対応が発生するケース
訴訟対応業務が発生するケースとしては、主に以下の2つが挙げられます。
自社が他社を訴訟する場合
まずは自社が裁判を起こすケースです。例えば、自社の権利を侵害された、他者の行為によって損害が発生した、危害が加えられたなどの事態が発生し、その主張に相手方が納得していない場合、話し合いや示談で解決できない場合、自社が原告となり、相手を被告として裁判所に訴えを起こします。訴訟の準備から裁判の終了まで、訴訟対応担当者が主となって関連する手続きや業務を遂行します。
自社が他社から訴訟を起こされる場合
逆に他の企業や個人から訴訟されて裁判が起こされた場合の対応も行います。相手側が権利を侵害された、他者の行為によって損害が発生した、危害が加えられたといった主張をしていて、その内容に自社として納得できない場合は、被告として裁判で争うことになります。
自社が訴訟する場合の具体的な業務の流れ
ここからは訴訟対応担当者が対応することになる裁判の流れについて説明します。まずは自社が訴訟を起こすケースについて見ていきましょう。
①訴えを提起する
裁判を起こすためには訴状と呼ばれる書類と証拠を裁判所に提出しなければなりません。訴状には原告(訴える者)と被告(訴えられる者)の名称や住所、連絡先、自社の言い分を記載します。訴状が裁判所に受理されれば被告側にも訴状が届き、初回の口頭弁論期日の日程が通知されます。
②口頭弁論
まずは口頭弁論が行われます。裁判期日に原告と被告が裁判所に出廷してそれぞれの言い分を主張します。
口頭弁論は裁判官が判決を出す材料を収集する場であり、複数回行われます。原告と被告の見解に相当な相違があって争点を整理する必要があると判断された場合、事前に争点整理が行われることもあります。
③証人尋問・当事者尋問
次に当事者が相手や証人、あるいは裁判官が当事者や証人に尋問を行う当事者尋問、証人尋問が行われます。両当事者の主張の間に食い違いがある場合、当事者や証人に尋問を行いながら事実関係を立証していきます。
④判決・和解
裁判官が口頭弁論や証人尋問で心証を固めたら裁判は終結となり、判決の言い渡しです。なお、裁判期間中に和解が成立した場合はその時点で裁判は終了し、判決の代わりに和解調書が作成されます。判決書も和解調書も法的拘束力があり、両当事者はこれに従わなければなりません。
⑤控訴・上告
判決に不服がある場合、判決書の送達から2週間以内であれば控訴が可能です。控訴すれば上級裁判所(訴訟を行ったのが簡易裁判所であれば地方裁判所、地方裁判所に訴訟を行った場合は高等裁判所)で審判を受けることができます。また、控訴して上級裁判所で出た判決にも不服がある場合はその上級裁判所(地方裁判所に上告した場合は高等裁判所、上告したのが高等裁判所である場合は最高裁判所)に上告し、裁判を受けることができます。なお、控訴や上告は裁判所の判断で棄却されることもあります。
他社から訴訟される場合の具体的な業務の流れ
今度は逆に自社が被告として訴えられた場合の裁判の流れについて見ていきましょう。
①訴状が送達される
原告から訴訟を起こされて自社が被告となった場合、相手側が提出した訴状が届き、初回の口頭弁論期日が通知されます。
②答弁書・証拠書類の提出
被告となった場合、相手方の主張に対してこれを認めるかどうかという認否や自社の言い分を記載した答弁書と証拠書類を、指定された期日までに裁判所に提出しなければなりません。
③口頭弁論、尋問、判決、控訴・上告
裁判の流れは基本的に自社が訴訟するケースと同様です。期日になったら裁判所に出廷して口頭弁論を行い、必要に応じて証人尋問や当事者尋問が行われます。その後、判決が出され、判決に納得できない場合は控訴・上告をして上級裁判所の裁判を受けます。
訴訟対応を行う上で法務担当者に求められること
以上で訴訟対応業務の内容や裁判の流れはご理解いただけたかと思います。ここからは訴訟対応担当者に求められる事柄や訴訟対応を進める上で意識すべきポイントについて見ていきましょう。
弁護士と連携を密にする
前述の通り、書類作成や裁判手続きそのものは弁護士が行ってくれますが、訴えを起こすのはあくまで自社となります。しっかりと手続きを進め、自社が望むような判決を得るためには弁護士との連携が必須です。弁護士と共同あるいは分担して作業を行う機会も多いため、しっかりとコミュニケーションをとりながら進めていきましょう。
弁護士、経営者双方に状況をわかりやすく説明できるようにする
訴訟対応担当者はいわば弁護士と会社との橋渡し役となります。弁護士には自社の状況や方針、主張などを伝え、会社側には弁護士の見解やアドバイス、裁判の進捗状況などを伝える必要があります。ここで齟齬が出てくると訴訟が進まない、判断を誤ってしまうといった事態が発生するだけでなく、弁護士や経営者との間でもトラブルが発生するおそれがあります。
双方に正確かつわかりやすく状況を伝えられるようにしましょう。
弁護士からのアドバイスをもとに検討し会社側の判断をアシストする
弁護士は相談をすればさまざまなアドバイスや提案をくれます。しかし、それが必ずしも会社の実情に合っているものとは限りません。そのアドバイスや提案をもとに会社は今後の方針を判断します。
訴訟対応担当者は法的な知識と自社の状況の両方を鑑みて弁護士のアドバイスに従うか他の選択肢をとるかを経営者が判断できるようアシストするスキルも求められます。
訴訟後に検討すべきこと
裁判が終わったら訴訟対応担当者の仕事も終わりではありません。裁判所は判決という形で被告に対して債務の履行(損害賠償の支払や借金の返済など)を命令します。債権の回収をどう行っていくかを検討する、債務がしっかりと履行されているかチェックをするほか、債務が履行されなかった場合の措置(強制執行)についても考えていかなければなりません。
また、今回の紛争を教訓として今後同様の紛争が起こらないよう契約書やマニュアル、業務フローの改善などの再発防止策を検討することも重要な業務です。
訴訟対応の業務の内容や裁判の流れを頭に入れておこう
訴訟対応担当者は弁護士や会社の経営者と連携しながら迅速かつ正確に訴訟を進める必要があります。法律知識はもちろん、高いコミュニケーション能力や調整能力も求められる仕事です。
法務部でも花形といえる仕事で責任は重いですが、それだけに大きなやりがいも感じられます。まずは今回の記事を参考に、訴訟対応業務の内容や裁判の流れを頭に入れておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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