- 作成日 : 2023年12月1日
道路交通法とは?事業者が知っておきたい規制や改正をわかりやすく解説
道路交通法とは、交通ルール等をまとめた法律のことです。無秩序に道路を使用すると人を死傷させてしまうこともありますので、法律で共通のルールを設けているのです。
従業員による運転が事故に繋がることもありますので、道路交通法については企業においても遵守されなければなりません。近年の改正内容も踏まえて今一度内容を理解しておきましょう。
目次
道路交通法とは
「道路交通法(「道交法」とも呼ばれる)」は、道路の安全確保、円滑な交通を実現するためのルールです。同法の第1条に目的が明記されています。
(目的)この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。
具体的には、歩行者が通行する方法、自動車が道路を交通する際の方法、自動車の運転手が負うべき義務、自動車等の運転免許に関すること、そして違反したときの罰則などが規定されています。
道路交通法の対象
道路交通法が適用される道路とは、「公道」のことです。つまり、国道や県道、市道、高速道路、専用自動車道、一般自動車道なども同法が適用されます。
「私道」と呼ばれる道路については原則として適用対象外です。個人や民間企業などが所有している敷地内の道路は同法の適用を受けず、基本的にスピード違反やシートベルト未着用などを理由に捕まることはありません。
ただ、私道であっても適用対象である「道路」に該当するケースがあります。例えば、店舗の駐車場については企業などの私有地ですが、不特定多数の人物が自由に出入りすることができるため、「道路」に該当する可能性があります。そのため、このような土地を所有している企業は同法に注意して管理を行う必要があります。
なお、同法はバイクや自転車などの車両、路面電車、歩行者も適用対象です。乗り物だけが対象ということではありません。
道路交通法で定められている主なルール
道路交通法では、細かくさまざまなルールが定められています。自動車の運転免許を取得する際、同法の内容を理解しているかどうかテストを受けることになりますが、それだけで完璧に法律の内容を理解したことにはなりません。免許取得後も継続して内容理解に努めるべきでしょう。
以下では主なルールをピックアップして、概要を説明していきます。
自動車等の交通方法
道路交通法では、自動車等の交通方法について次のようなルールを設けています。
- 最高速度の定め
- 不適切な横断等の禁止
- 正しい追越しの方法
- 踏切の通過方法
- 交差点での運転方法
- 横断歩道における運転方法
- 徐行や一時停止をすべき場所
- 停車や駐車が禁止される場所
- ヘッドライトやウィンカーの使い方
- 自転車における交通方法の特例 など
その他たくさんの交通ルールが設けられていますが、自動車について近年注視されているのは「横断歩道における運転方法」です。平成30年~令和4年までのデータによると、5年間で起こった歩行者との事故のうち約70%が横断中に発生したことがわかっています。さらに、そのうちの約35%が横断歩道で発生しています。
横断歩道は歩行者が優先であり、運転手には横断歩道手前で減速・停止の義務が課されています。にもかかわらず、事故が発生しているのです。
自転車の交通方法
そして、「自転車の交通方法」についても留意しなくてはなりません。道路交通法上、次の5つが重要な原則であるといわれています。
- 原則は車道の通行
(車道を走るのが原則で、自動車同様左側を走らないといけない。歩道も走れるがそれは例外であって、歩行者がいるときは歩行者優先である。) - 交差点では信号と一時停止を守る
- 夜間はライトを点灯する
- 飲酒運転の禁止
- ヘルメットの着用
運転手の義務
道路交通法では、運転手に対して次のようにいくつか義務を課しています。
- 無免許運転の禁止
- 酒気を帯びて運転することの禁止
- 酒気を帯びている者に対する自動車等の提供の禁止
- 酒気帯び運転になるおそれがある者に対する飲酒を勧める行為の禁止
- 過労や病気、薬物の影響を受けて運転を正常にできないおそれがある状態での運転の禁止
- 水たまりがあるときは徐行をするなどして、飛散により他人に迷惑をかけないようにすること
- 親がついていない状態で児童・幼児が歩行しているとき、歩行を妨げないよう一時停止・徐行などをすること
- シートベルトを着用して運転すること
- 幼児については、ベビーシートやチャイルドシートなどに座らせること
他にもさまざまな義務が規定されています。意外に知られていないルールもたくさんありますので、一度目を通しておくと良いでしょう。
さらに、交通事故があったときについては①すぐに運転を止め、②怪我人を救護し、③道路上の危険防止措置を講じること、が運転手の義務とされています。
その上で、警察への通報も法的義務として定められています。仮に追突をされた被害者であったとしても通報は義務です。加害者から「警察には言わないで」と言われたとしても、被害者自身の義務でもあるため、必ず警察に通報をしましょう。
道路における禁止行為や使用許可
道路上での禁止行為として、道路交通法では次のような規定も定めています。
- 信号機のような紛らわしい物を設置してはいけない
- 道路標識が見えなくなるような物を配置してはいけない
- 酒に酔って、交通の妨げになるような程度にフラフラしてはいけない
- 交通の妨げになるような方法で道路に寝そべったり座ったりしてはいけない
- 走行中に自動車の中から物を投げてはいけない
また、道路上で何か活動をするときは同法の内容に抵触してしまうケースがありますが、使用方法によっては事前に許可を得ることで違法性がなくなることもあります。
「道路上で工事をする」「広告などの工作物を設置する」「露店などを出す」「イベントを開催する」など、企業の方はどのようなときにどのような手続きで道路の使用許可がもらえるのか、把握しておきましょう。
違反行為をした者に対する罰則
道路交通法に違反すると、行政上の責任追及として反則金の支払いや免許停止を命じられたり、刑事上の責任追及として刑事罰を科されたりすることがあります。
行政上の責任 |
|
---|---|
刑事上の責任 |
|
事業者が気をつけるべきポイント
事業者の方は、社用車で道路交通法違反を犯さないようにすること、通勤時に従業員が道路交通法違反を犯さないようにすることへの対策を講じることが重要です。
特に社用車を従業員に運転させるときは注意しましょう。社用車に社名やロゴなどを記載している場合、会社の看板を背負って街中を走っているようなものです。事故が起こらなかったとしても、道路交通法違反やマナーの悪い運転を従業員がしていると、企業のイメージダウンにつながってしまいます。
また、従業員個人が起こした事故であっても、企業に対して被害者が責任追及を行う可能性があります。この責任追及は社用車に限らず、従業員のマイカーを使用していた場合でも起こり得ます。
そこで営業等に自動車を使っている企業は、従業員にしっかりと指導し、事故を起こさないことはもちろん道路交通法の遵守を徹底させるべきです。
そして、同法違反を誘発させるような働き方を強いてはいけません。時間的な余裕、体力的な余裕がなくなってくると違反行為は起こりやすくなります。働き方に余裕がない場合は業務体制から見直しを行う必要があるでしょう。
2023年に施行された改正法のポイント
道路交通法は改正を重ねていますので、古い知識のまま放置するのではなく、法改正にアンテナを張って新しい情報を仕入れるようにしましょう。
2023年にも改正法が施行されています。改正法のポイントは、次の通りです。
- 運転手がいない状態での自動運転については都道府県公安委員会の許可が必要になった。この許可を受けた者は、遠隔で監視する体制を整備しないといけない。
- 電動キックボードについてのルール整備
- 運転免許は不要(16歳未満は禁止)
- 車道の左端に寄って運転する
- 飲酒運転の禁止
- 2人乗りの禁止
- 自動配膳ロボットについてのルール整備
- 自動配膳ロボットの使用者には、都道府県公安委員会への届出と届出番号の表示義務が課された。
- 右側通行
- 歩道・路側帯を通行
- 歩行者優先
- 自転車を運転するときはヘルメットの着用が努力義務となった。
道路交通法の遵守は全社的に徹底させよう
従業員の道路交通法違反によって企業が損失を被る可能性があります。何より死傷者を生む危険性があるため、社用車を利用する場合やマイカー出勤を認める場合は、全社的に道路交通法への遵守を徹底させるべきです。
また、自動運転の自動車やロボットなどが活用される事例も増えてきましたが、このときも同法の規制内容に留意し、企業活動に違法性が伴わないよう注意しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
権利の主体とは?権利能力の範囲や事業者が知っておきたい点を解説
権利の主体とは、法的に権利能力を有する者のことです。権利能力があるのは人(自然人)と法人であり、契約の当事者となって権利を取得することや、義務を負うことができます。 本記事では権利の主体について概要を説明するとともに、権利能力がある者と認め…
詳しくみる監督者責任とは?監督義務者の責任と意味をわかりやすく解説
故意または過失によって他人に損害を与えた場合は、賠償責任を負うことがあります。賠償責任は行為を行った本人が負うのが原則ですが、直接危害を加えていない方に「監督者責任(監督義務者の責任)」が問われるケースもあります。 特に、小さな子どもや高齢…
詳しくみる企業法務とは?法務担当が勉強すべき法律や社会人に役立つ資格・検定
企業法務とは、企業が関与するすべての法律的な業務を担当する部門のことです。企業法務の担当者はあらゆる法的な事柄に対応するため、多くの法律に関する知識を身につける必要があります。 今回は企業法務で習得しておきたい法律について解説し、法務担当に…
詳しくみる契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違いや期間、免責条件などをわかりやすく解説
2020年4月施行の民法改正により、従来「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものが大きく変わりました。条文上は、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものである時」という表現に変わり、民法上の位置づけも大きく変更さ…
詳しくみるステマ規制とは?対象となる行為の具体例や事業者の注意点、違反リスクを解説
ステマ規制とは「PRであることを隠してする広告への規制」を意味します。景品表示法で規制されている不当表示に新たにステマが加わりましたので、事業者は注意しなくてはなりません。 具体的にどのような行為がステマ規制に引っかかるのか、注意点や違反リ…
詳しくみる著作者人格権とは?含まれる権利や契約時の注意点を紹介
著作者人格権とは、楽曲や絵画、プログラムなど、ある作品を作った方に認められる権利です。取引に際して、お金を払って譲り受けた成果物でも著作者人格権を無視できることにはなりません。 実務においても注視する必要があるこの著作者人格権とはいったいど…
詳しくみる