- 更新日 : 2026年1月29日
横領とは?法的な定義や種類、会社側の対策などを解説
横領とは、占有している他人の財産を不法に自分のものとする行為で、刑法上の犯罪です。
- 占有中の財産を勝手に使用すること
- 窃盗や背任と法的に異なる
- 業務上の横領は刑罰が重い
社員が会社の金を流用したら横領であり、業務上の立場で占有していた場合、業務上横領罪が成立し、10年以下の拘禁刑が科されます。
ビジネスにおける「横領」とは、主に会社のお金を不法に取得することで、犯罪行為です。会社側としてはそのような行為が起こらないように対策を講じることが大切です。
そこで当記事ではまず横領の法的な定義や種類を説明し、そのうえで会社の取るべき対策について解説をしていきます。
目次
横領の法的な定義は?
横領とは、他人の財産を自分の手元で管理している立場にある者が、その立場を悪用して財産を自分のものとしてしまう行為です。これは、刑法に定められた犯罪行為です。以下では、法的観点から見た横領の定義を解説します。
横領は「占有している他人の物を不法に領得する行為」
刑法252条では、横領罪は「自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の拘禁刑に処する」と規定されています。ここでいう「占有」とは、実際に手元にある状態や支配下に置かれている状況を指します。「領得」とは、財産を自分または第三者のものとする意思で取得することです。したがって、自分の管理下にある他人の財産を、その信頼関係を裏切って勝手に自分の物にしてしまう行為が横領に該当します。
なお、他人の物を無断で奪い取る場合は「窃盗罪」となり、横領罪とは区別されます。
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横領と混同しやすい言葉の違いは?
「横領」と似た言葉には、「着服」「窃盗」「背任」などがあります。いずれも他人の財産や信頼を損なう行為ですが、法的な意味や成立の条件が異なります。ここでは、それぞれの違いを整理します。
着服は一般用語、横領は法律用語
「着服」は、手元にある他人の財産をこっそり自分のものにしてしまう行為を指す一般的な言葉です。一方、横領は刑法上の犯罪であり、「自己の占有する他人の物を不法に領得すること」と法的に定義されています。つまり、着服行為がすべて横領罪になるとは限らず、占有や不法領得の意思が法律的に認められる必要があります。あくまで「着服」は社会的表現、「横領」は法的評価です。
窃盗は占有していない物を盗む行為
「窃盗」は、自分の占有下にない他人の財物を盗む行為です。刑法では「他人の財物を不法に領得する」点で横領と似ていますが、対象物が行為者の支配下にあるかどうかが大きな違いです。例えば、道に置かれたバッグを拾って持ち去れば横領ですが、人の肩からバッグを奪えば窃盗になります。占有の有無が窃盗と横領の最大の区別点です。
背任は信頼を裏切って損害を与える行為
「背任」は、他人のために事務を処理する立場の人が、自分や第三者の利益のために任務に反する行為をして、本人に損害を与える犯罪です(刑法247条)。財産の奪取が直接的である横領と異なり、背任は職務や責任を利用して間接的に損害を与える点に特徴があります。たとえば、会社役員が不利な取引をわざと行って会社に損害を与えた場合などが該当します。
横領罪の分類は?
一言で「横領」といっても、刑法では次の3つに分けて規定を置いており、それぞれ犯罪として成立する要件、そして刑罰も異なります。
単純横領罪
刑法第252条では次のように横領罪の規定を置いています。後述の2種類との区別のため、こちらは「単純横領罪」と呼ばれます。
(横領)
第二百五十二条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。引用:刑法|e-Gov法令検索
例えば友人から預かった金銭をそのまま奪い去ってしまう、自分のものとして消費してしまう行為は、単純横領罪にあたります。現金ではなく貴金属を預かっていて、これを売却する行為でも単純横領罪は成立します。
そしてこのとき、「5年以下の拘禁刑」という刑罰を科すことが予定されています。
また、自分の財産であったとしても、公的に「保管をしていなさい」と命令されていた財産については自由に処分してはいけません。裁判所や税務署が差押えをするために保管を命じている財産に関してこれを勝手に処分してしまうと単純横領罪が成立します。
業務上横領罪
刑法第253条では「業務上横領罪」が次のように定められています。
(業務上横領)
第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
引用:刑法|e-Gov法令検索
ポイントは「業務上占有していたもの」が目的物である点です。会社が注意すべきはこの業務上横領罪といえます。
例えば経理担当者は会社のお金を日常的に取り扱っており、自由に引き出しや送金を行うことができてしまうケースが多いです。会社のお金を適切に管理せず、自分の懐に入れてしまうと、業務上横領罪が成立してしまいます。会社から特定の目的のために預かったお金を第三者の勝手に渡してしまう行為も業務上横領罪を成立させます。
業務として占有している場合は、そうでない場合に比べてより重い責任を負っています。そこで刑罰も「10年以下の拘禁刑」と単純横領罪に比べて重く設定されています。
遺失物等横領罪
多くの横領罪は、所有者である相手方から頼まれて財産を占有していることが多いです。しかしそのような背景がなくても「遺失物等横領罪」が成立する余地があります。
(遺失物等横領)
第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
引用:刑法|e-Gov法令検索
これはつまり、落とし物を勝手に自分のものにしてしまう行為を意味しています。誰かが乗り捨てた自転車を乗り去る行為なども同様です。
会社においてよくあることではありませんが、社会一般においては比較的件数の多い犯罪といわれています。
横領が発覚した場合の対応フローは?
横領が発覚した場合、感情的・場当たり的な対応をしてしまうと、証拠の消失や法的リスクの拡大につながります。ここでは、横領が疑われた段階から最終対応までの流れを解説します。
① 事実関係の確認と証拠保全を最優先で行う
横領の疑いが生じた場合、最初に行うべきは冷静な事実確認です。帳簿、取引履歴、入出金記録、防犯カメラ映像、社内メールなどを確認し、横領の有無や規模を客観的に把握します。この段階では、本人を問い詰めたり、安易に処分を行ったりせず、証拠の保全を最優先にすることが重要です。証拠が不十分なまま対応すると、後に懲戒処分が無効・違法と判断されたり、刑事手続でも立証が困難になったりするおそれがあります。
② 本人への事情聴取と社内調査を慎重に進める
一定の証拠がそろった段階で、対象者に対して事情聴取を行います。この際、複数名で対応し、発言内容は必ず記録に残します。本人が横領を認めた場合には、経緯・金額・期間などを詳細に確認します。一方で、否認された場合でも、感情的にならず、事実と証拠に基づいて調査を継続することが重要です。必要に応じて、弁護士などの専門家を交え、社内調査の適正性を確保します。
③ 懲戒処分・損害回復・刑事対応を検討する
横領が事実と認定された場合、就業規則に基づく懲戒処分(減給、出勤停止、懲戒解雇など)を検討します。同時に、被害額については返還請求や損害賠償請求を行います。金額や悪質性が高い場合には、刑事告訴・被害届の提出も選択肢となります。刑事対応を行うかどうかは、再発防止や社内外への影響も踏まえて慎重に判断する必要があります。
このように、横領発覚時には「事実確認→調査→処分・法的対応」という段階的なフローを踏むことが重要です。適切な手順を踏むことで、法的リスクを抑えつつ、企業としての信頼回復と再発防止につなげることができます。
横領罪の時効は?
罪を犯したとしても、公訴時効期間を経過すれば罪に問うことができなくなってしまいます。横領罪に関しても次のように時効期間が設定されています。
- 単純横領罪 :5年
- 業務上横領罪:7年
- 遺失横領罪 :3年
この期間を経過すると捜査機関の対応ができなくなるため、会社側による刑事告訴も難しくなるといえます。
また、この刑事手続上の時効とは別に、損害賠償請求をするときに関係してくる民事手続上の公訴時効期間も存在します。
「横領の事実と加害者を知ってから3年」「横領が行われてから20年」のいずれか早いタイミングで時効消滅します。被害額の請求をしたい会社側としては、横領罪としての時効より、損害賠償請求権としての時効に注意したほうが良いでしょう。
横領を防止するために事業者はどう対策すべき?
企業における横領は、金銭的な被害だけでなく、信用の失墜や取引先との関係悪化にも直結します。ここでは、事業者が横領を未然に防止するために取るべき対策について解説します。
金銭・物品の管理体制を明確にし、複数人でのチェック体制を整える
最も基本的で有効な対策は、業務の単独処理を避け、必ず複数人でのチェック体制を設けることです。たとえば、現金や帳簿の管理、仕入・支払業務などにおいて、一人の社員に一任してしまうと、不正が発覚しにくくなります。以下のような対策が有効です。
- 現金出納は、出納担当と承認者を分ける
- 物品の在庫は定期的に棚卸しを行う
- 会計処理は経理と監査の2重チェックとする
これにより、「やろうと思ってもできない環境」を構築することが、横領の抑止につながります。
社内ルールや就業規則に不正防止の明文化を行う
企業の就業規則や社内規程において、横領や不正行為に対する厳しい処分方針を明示することも抑止力となります。たとえば、横領が発覚した場合には懲戒解雇とし、刑事告訴も行う旨を明文化し、入社時や定期的に全社員へ周知することが重要です。
また、内部通報制度(いわゆる「ホットライン」)を整備し、匿名でも通報できる体制を作ることで、不正の早期発見にもつながります。
定期的な内部監査・外部監査を行う
定期的な監査は、実際の数字と帳簿との不一致を早期に発見できる重要な手段です。内部監査に加え、公認会計士や第三者機関による外部監査を導入することで、客観的な視点からの確認が可能になります。また、不正が起こりやすい業務を特定し、重点的に監査を行うリスクアプローチ型の監査も効果的です。
横領が起こりにくい環境を整備しよう
横領が絶対に起こらない環境にするのは困難です。役員や従業員などにある程度権限を与えていかないと業務が進められません。
ただ、社内で監視体制を整え、しっかりと教育を行うなどすればその発生確率は下げることができます。そのうえで横領が発生したときのことも想定しておけば、迅速に対応でき、被害を最小限にとどめられるかもしれません。そのため会社側としては、予防と事後対応の両面から対策を講じることが重要といえます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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