- 更新日 : 2023年8月1日
責任分界点とは?言葉の定義や業務における役割などを解説
事業者と消費者があるサービスを利用するにあたり、物理的な接続がある場合や通信上の接続がある場合、責任範囲が問題となることがあります。損害賠償請求において責任の有無は非常に重要なポイントであり、トラブルを避けるために「責任分界点」というものを設けることがあります。当記事ではこの責任分界点について解説します。
目次
責任分界点とは?意味や役割
責任分界点(せきにんぶんかいてん、英語ではboundary of responsibility)とは、事業者と消費者など、複数の主体間で設備の接続や貸与が行われるときの各々が責任を負う範囲を分けた境界を意味します。
通信網、電力網など相互に接続されたものを利用する場合、「どこから自分たちで管理をしないといけないのか」が外観からは明らかになりません。そこで責任分界点を当事者間で定義し、何か事故があったときのそれぞれの責任範囲について明らかにする必要があります。責任範囲が不明瞭である場合、事故により一方が損害を被ったときの対処で困ってしまいます。
例えば損害賠償請求の場面で「あなたたちのサービスを利用していて損害が生じたからその分の金銭を支払いなさい」という消費者側の請求に対し、「あなた方が適切に管理すべき箇所で事故が起こったのだから自己責任です」と事業者側が拒むこともあるかもしれません。
どこから自己責任になるのかが明確に切り分けられていないと、双方の意見が対立したまま訴訟に発展するリスクが高まります。一方で責任分界点を定めておけば、少なくとも自己責任の範囲について争う必要はなくなります。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ45選
業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い45個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
実際の契約に合わせてカスタマイズしていただきながら、ご利用くださいませ。
【弁護士監修】チェックリスト付き 改正下請法 1から簡単解説ガイド
下請法の改正内容を基礎からわかりやすく解説した「改正下請法 1から簡単解説ガイド」をご用意しました。
本資料では、2025年改正の背景や主要ポイントを、弁護士監修のもと図解や具体例を交えて解説しています。さらに、委託事業者・受託事業者それぞれのチェックリストを収録しており、実務対応の抜け漏れを防ぐことができます。
2026年1月の施行に向けて、社内説明や取引先対応の準備に役立つ情報がギュッと詰まった1冊です。
【弁護士監修】法務担当者向け!よく使う法令11選
法務担当者がよく参照する法令・法律をまとめた資料を無料で提供しています。
法令・法律の概要だけではなく、実務の中で参照するケースや違反・ペナルティ、過去事例を調べる方法が一目でわかるようになっています。
自社の利益を守るための16項目 契約書レビューのチェックポイント
契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
契約書のレビューを行う企業法務担当者や中小企業経営者の方にもご活用いただけます。
クラウドサービスにおける責任分界点とは?
クラウドサービスでも責任分界点の定義付けは重要です。クラウドサービスを提供する事業者とユーザーがそれぞれどこまでを責任範囲とするのか、事前に定めておく必要があります。責任分界点を定めた場合、自己の責任範囲を超えた領域で問題が起こっても基本的に損害を賠償する必要はありません。それと同時に、相手方が責任を負う領域を自由に扱うこともできなくなります。
クラウドサービスにもSaaSやPaaSなどがあり、それぞれに扱える領域が異なりますが、機能面のみならず責任問題についても考慮してサービス利用を検討することが大事です。権限が広くなる分、責任を負う範囲も広くなるのが通常です。
共同責任モデルに基づいて責任範囲を分ける
クラウドサービスの責任範囲については、「共同責任モデル」の考え方に基づいて区分されます。多くの場合、下図のように領域が区分されます。

基本的には、ユーザー側でカスタマイズができるかどうか・管理ができるかどうかにより境界が定まります。次項でクラウドサービスの利用形態別に説明していきます。
IaaSの責任分界点
IaaSは“Infrastructure as a Service”の略称です。日本では「アイアース」あるいは「イアース」と読みます。
すべてを自社運用するオンプレミスだと、物理インフラからすべてユーザー側の責任範囲となります。しかしIaaSの場合は物理インフラとシステムの境界が責任分界点となり、物理インフラについてはクラウド事業者の責任範囲となります。セキュリティ上の問題もクラウド事業者に一部委ねることができます。
しかしながら、IaaSの場合はユーザー側の管理範囲も広く、OSやミドルウェアなど、上の層に関してはユーザー側の責任範囲です。そこで、OSに対するセキュリティパッチの適用やネットワークのアクセス制御、アクセス権限の管理などはユーザー側で行う必要があります。
PaaSの責任分界点
PaaSは“Platform as a Service”の略称です。日本では「パース」と読みます。
IaaSよりユーザー側のできることは狭まりますが、逆にいうとシステム開発に必要な環境を自社で用意する必要がなくなるという利点が得られます。
責任分界点もIaaSと異なります。OSやミドルウェアなどはクラウド事業者から提供を受けますので、これらの領域と自社で開発するアプリケーションの間が責任分界点となります。当然のことながら自社で開発するアプリケーションは自社で管理しなければならず、その部分につきクラウド事業者の責任範囲と主張することはできません。
SaaSの責任分界点
SaaSは“Software as a Service”の略称です。日本では「サース」と読むことが多いです。
SaaSは事業者ではない個人にも比較的馴染みのあるクラウドサービスです。インターネット経由でアプリケーションを利用することができ、ユーザー自身がアプリケーションを開発する必要もありません。通信環境さえ整えれば、便利な機能も活用することができます。
例えばGメール、Microsoft365のWordやExcelなどもSaaSの1種です。他にもさまざまなサービスがSaaSとして世間一般に広く利用されています。これらSaaSの場合、ユーザー側はアプリケーションの提供を受けて利用をしているだけです。クラウド事業者の設定した利用上の制限に従い、その範囲内で操作を行います。
そこで、インフラからアプリケーションまでクラウド事業者の責任範囲となります。一方でアカウント管理についてもユーザーの方で行う必要があります。IaaS、PaaSよりもユーザーのできることは狭くなりますが、その分責任範囲も狭くなります。
その他インフラにおける責任分界点
クラウドサービスを例に重点的な説明をしましたが、その他インフラにおいても責任分界点の考え方は重要です。
例えば電力会社と契約を交わす際、どの電気設備の維持管理を自分でしないといけないのかを考える必要があります。通常、自家用電気設備については利用者側で維持管理しないといけません。責任分界点の設定は、電柱から引き込むのか、地中配電としているのかの違いによっても異なります。水道事業においても同様に責任分界点が設定されます。どの管まで水道局に責任があるのかが、漏水があったときの修理費の負担にも直接影響してきます。
また、個人情報保護法上の責任分界点が問題となることもあります。どの時点で個人データの第三者提供があったといえるのかが明確でない場合、責任問題をめぐってトラブル起こる可能性があるからです。このように、電力網や水道網といった物理的な確認ができるもの以外にも責任分界点の概念は用いられています。
責任分界点はリスクを可視化する役割を担う
責任分界点は、契約当事者が損害賠償責任等を負う範囲を明確化するものであり、リスクの有無をわかりやすく示す役割を担っています。契約で「責任分界点は〇〇」などと明記されていなくても責任範囲が明らかになるケースはあります。一方、どこから責任を負うのかが不明瞭なケースもあり、その場合には責任分界点を明らかにしておくことが望ましいといえます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
民法566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)とは?
民法566条は、民法改正により新設された契約不適合責任について定めた規定です。目的物が契約とは異なる種類や品質だった場合、買主はその事実を認識したときから原則として1年以内に売主へ…
詳しくみる民法第522条とは?口約束の有効性や契約成立タイミングをわかりやすく解説
民法第522条は契約の成立に関して基本的なルールを定めた条文です。事業者の方もそうでない方も、日常的に契約を交わしていますので、同条の内容を一度チェックしておくとよいでしょう。 当…
詳しくみるコンプライアンスリスクとは?具体的な要因や対応方法を解説
近年、企業のコンプライアンス違反などが相次ぎ、人々の企業に対する視線がより一層厳しくなってきています。企業においては「コンプライアンスリスク」を正しく認識した上でコンプライアンスを…
詳しくみる労働法とは?概要や事業者が気をつけるべき点をわかりやすく解説
労働法とは、労働基準法や労働組合法、男女雇用機会均等法などの働くことに関する法律の総称です。労働者を保護し、労働者の権利を守るために定められています。 働法にはどのような種類がある…
詳しくみる特定商取引法とは?概要や実務上の注意点をわかりやすく紹介
「特定商取引法」では特定の取引に適用されるルールを定め、クーリングオフ制度などにより消費者保護を図っています。 そこで通信販売や訪問販売など、同法で定められた特定の営業方法を行って…
詳しくみる法律行為とは?定義や種類、事業者が注意すべき点などをわかりやすく解説
「法律行為」は、意思表示を通じて法的な効果を生じさせることを目的とした行為のことです。法律行為は、「契約・単独行為・合同行為」の3つにわけられます。本記事では、法律行為の基本的な定…
詳しくみる


