- 更新日 : 2023年3月23日
契約における「解除」と「解約」の違いを解説
契約関係を解消することを表現する際に、「解除」を用いる時もあれば、「解約」を用いる時もありますが、一般的に解約と解除は法的な用語として意味に違いがあります。この記事では、解除と解約の違いについて解説します。
解約と解除の違い
解除と解約は、いずれも契約関係を解消するという点では共通する法令用語です。しかし、その法的効力については意味が異なります。
「解除」は一般に契約締結時にまで遡って契約関係が解消されることを指し、これに対して将来に向かってのみ契約関係が解消されることを解約といいます。両者の違いは、たとえば契約関係を解消した場合に解消するまでの間でやり取りしたものを返還する必要があるか否かという形で表れます。
以下で、解除と解約について個別に整理していきましょう。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ45選
業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い45個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
実際の契約に合わせてカスタマイズしていただきながら、ご利用くださいませ。
【弁護士監修】チェックリスト付き 改正下請法 1から簡単解説ガイド
下請法の改正内容を基礎からわかりやすく解説した「改正下請法 1から簡単解説ガイド」をご用意しました。
本資料では、2025年改正の背景や主要ポイントを、弁護士監修のもと図解や具体例を交えて解説しています。さらに、委託事業者・受託事業者それぞれのチェックリストを収録しており、実務対応の抜け漏れを防ぐことができます。
2026年1月の施行に向けて、社内説明や取引先対応の準備に役立つ情報がギュッと詰まった1冊です。
【弁護士監修】法務担当者向け!よく使う法令11選
法務担当者がよく参照する法令・法律をまとめた資料を無料で提供しています。
法令・法律の概要だけではなく、実務の中で参照するケースや違反・ペナルティ、過去事例を調べる方法が一目でわかるようになっています。
自社の利益を守るための16項目 契約書レビューのチェックポイント
契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
契約書のレビューを行う企業法務担当者や中小企業経営者の方にもご活用いただけます。
契約の解除とは
契約の解除とは、契約が有効に成立した後、契約の当事者の一方が解除権を有する場合に相手方に対する意思表示によって契約関係を解消することをいいます(民法540条)。この場合の法的効力のポイントは、原則として、はじめから契約がなかったことになるため、契約関係を解消する時点までにやり取りしたものを返還しなければならない(原状回復が必要)という点です(民法620条、民法545条)。
原状回復をする場合において、金銭の返還をする場合には利息を付さなければなりません(民法545条2項)。また、金銭以外の契約の目的物から経済的な利益が生じていた場合も返還しなければならないので、注意が必要です(民法545条3項)。
賃貸借契約における解除
上記では、契約の解除における法的効力のポイントは、原則として、はじめから契約がなかったことになることであるといいました。もっとも、賃貸借契約における契約の解除については、はじめから契約がなかったことになるのではなく、将来に向かってのみ効力を生じます(民法620条)。賃貸借契約のような継続的な契約の場合には、契約に基づく相互の債務の履行が長期間にわたるため、過去に遡って返還・清算を行うことは現実的ではないからです。
賃貸借契約が解除される例として、賃料が滞納された場合や貸主に無断で借主が第三者に賃借物を貸した(転貸借)場合が考えられます。
なお、賃貸借契約の詳細については、以下の記事を参照ください。
契約解除の方式とは
契約の解除は、相手方に対する意思表示によってします(民法540条1項)。この意思表示は、口頭で相手方に伝えることでも可能です。しかし、後になって相手方が「契約は解除されていない」などと主張するなどトラブルとなる可能性があります。そのため、証拠として残すために書面で行うこと少なくありません。
書面で行う場合に最低限記載すべき事項は、以下のとおりです。
- 契約当事者の特定
- 契約内容の特定
- 契約締結日
- 解除理由
- 催告が必要であれば催告期間を明示し、期間終了後ただちに契約解除をする旨
なお、契約解除通知書の詳細については、以下の記事を参照ください。
契約の解約とは
一方、契約の解約とは、一般的に契約の効果を将来に向かって消滅させることをいいます。
民法上の契約で解約される典型例として、賃貸借契約、委任契約、組合契約などが挙げられます。以下では賃貸借契約における解約を整理します。
賃貸借契約における解約
契約期間の定めのない賃貸借契約の場合はいつでも解約でき、一定期間が経過すると契約関係が解消されます(民法617条)。申入れから契約関係の解消までの期間は、土地の場合には1年、建物の場合には3ヶ月、動産及び貸席の場合には1日とされています。
契約期間の定めのある場合は、原則契約期間中の解約はできません。ただし、解約権留保特約が付されていれば、民法617条に準ずる形で、申入れから一定期間経過すると契約関係を解約することができます(民法618条)。
建物所有を目的とする土地の賃貸借と建物の賃貸借
賃貸借契約における解約は、①建物所有を目的とする土地の賃貸借と②建物の賃貸借の場合に大きく修正されます。
①の場合、契約期間は通常30年となります(借地借家法3条)。したがって、契約期間の定めのない賃貸借契約がありません。②の場合、貸主による解約の申入れから契約関係の解消までの期間は、6ヶ月とされています(借地借家法27条)。
借主が解約の申入れをする場合、解約通知書には、最低限、以下の項目を記載します。
- 物件情報
- 契約者情報
- 提出日
- 解約日
- 退去理由
- 転居先
- 返金分の振込口座
なお、不動産賃貸借契約における解約通知書(退去届)については、以下の記事を参照ください。
契約の解消では解除と解約の違いに注意
解除と解約の大きな違いは、その法的効力が、はじめからなかったものとして契約関係を解消するものなのか、将来に向かって契約関係を解消するものなのかという点にあります。
また、建物所有を目的とする土地の賃貸借と建物の賃貸借の場合には民法だけでなく借地借家法も関係しますので、状況を整理した上で法令の理解に努めましょう。
よくある質問
解約と解除の違いは?
一般的に解約が将来的な契約関係の解消であるのに対し、解除は初めから契約関係がなかったものとして解消されます。詳しくはこちらをご覧ください。
契約解除の方式は?
契約の解除は、相手方に対する意思表示によってします。法律上、意思表示は口頭で行うことも可能ですが、トラブル回避のために書面で行うことが少なくありません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
- # 法令・法律用語
民法644条の善管注意義務とは?違反した場合や判例、改正点などわかりやすく解説
民法644条の善管注意義務は、委任契約の受任者に課せられた義務です。委任契約以外にも民法644条が準用されています。また2020年民法改正後、従来の文言のまま規定が残っているため、…
詳しくみる - # 法令・法律用語
労務提供とは?労働者と交わす契約の種類や労務の内容、労働契約違反について解説
従業員を雇うことで、会社は賃金を支払う代わりに、事業のために必要な業務を従業員に行ってもらうことができます。雇われている会社のために従業員が働くことを「労務提供」といいます。当記事…
詳しくみる - # 法令・法律用語
表見代理と無権代理を分かりやすく解説!具体例や成立要件を解説
「無権代理」は代理権がない者による代理行為のことで、そのうち代理権があるかのように見せかけてする行為を「表見代理」と呼んでいます。それぞれ法律上、どのような場合に成立するのか、具体…
詳しくみる - # 法令・法律用語
定型約款とは?民法改正のポイントをわかりやすく解説
令和2年4月1日に施行された改正民法により、初めて「定型約款」が法律上の制度となりました。今回は、定型約款の定義や具体例、定型約款と定型取引の違いについて解説します。また、これまで…
詳しくみる - # 法令・法律用語
下請法の違反事例は?公正取引委員会による調査や罰則について解説
下請法とは、立場や資本力が優位な発注者による資本力の小さい受注者に対する不正な取引を防止する法律です。下請法は、取引内容と資本金の規模を判断基準として適用されます。 本記事では、下…
詳しくみる - # 法令・法律用語
民法における契約の解除とは?解約との違いや改正による変更点もわかりやすく解説
民法上の契約の解除とは、法的要件を満たした場合、一度成立した契約の効力を一方的に消滅できる制度です。2020年の民法改正により規定がより明文化され、契約解除は取引実務に即した運用へ…
詳しくみる



