• 作成日 : 2025年8月19日

中小企業のためのリーガルチェックガイド|費用から無料相談、社内でのやり方まで解説

中小企業の経営において、リーガルチェックは事業の成長を守るための重要なリスクマネジメントです。「法律は難しくてよく分からない」「費用がかかりそう」といった理由で、後回しにされがちですが、法的な問題を未然に防ぐことは、安定した企業経営に不可欠です。

この記事では、中小企業の経営者や担当者の方々に向けて、リーガルチェックの重要性から具体的なやり方、費用相場、無料相談の活用法まで分かりやすく解説します。本記事を読めば、リーガルチェックの全体像を理解し、自社に最適な方法を見つけるための一歩を踏み出せるはずです。

中小企業でリーガルチェックが重要な理由とは

リーガルチェックとは、企業の事業活動に関わる契約書やWebサイトの表示、各種規程などが、法律に違反していないか、自社に不利益な点はないかなどを法的な観点から検証する作業です。「法務レビュー」や「契約書審査」などと言い換えられることもあります。

法務部のような専門部署を持つことが難しい中小企業にとって、リーガルチェックは事業の安定と成長を支える生命線とも言えます。ここでは、中小企業にこそリーガルチェックが不可欠な理由を3つの側面から解説します。

理由1. 深刻な経営ダメージの回避

法的な不備が原因で生じるトラブルは、契約トラブルが数百万円~数千万円に及ぶ損害賠償に発展した例もあり、注意が必要です。特に、体力のある大企業と異なり、中小企業にとって一件の訴訟が経営に与える打撃は計り知れません。契約内容の不利な点や、法律に違反する項目を事前に発見し修正することで、こうした致命的な経営リスクを未然に回避できます。

理由2. 社会的信用の維持・向上

顧客や取引先とのトラブル、労働問題、ウェブサイトでの不適切な表示などは、企業の社会的信用を大きく損ないます。一度失った信用を回復するのは容易ではありません。リーガルチェックを徹底し、法令を遵守する姿勢を明確にすることは、クリーンな企業イメージを構築し、取引先や顧客からの信頼を獲得することにつながります。

理由3. 取引における交渉力の確保

取引先から提示された契約書を十分に確認しないまま締結してしまうと、自社に一方的に不利な条件を飲まされる恐れがあります。リーガルチェックを通じて問題点を洗い出し、対等な立場で交渉するための材料を揃えることができます。これにより、不利益な取引を防ぎ、自社の正当な権利と利益を守ることが可能になります。

中小企業がリーガルチェックを行うべきタイミング

リーガルチェックは、日常の事業活動の様々な場面で必要となります。特に、以下のようなタイミングでは必ず実施するようにしましょう。

  • 取引先と契約を結ぶとき
    業務委託契約、売買契約、秘密保持契約など
  • 新しいサービスや事業を始めるとき
    ビジネスモデルの適法性、許認可の要否など
  • ウェブサイトを公開・リニューアルするとき
    利用規約、プライバシーポリシー、特定商取引法に基づく表示など
  • 従業員を雇用するとき
    雇用契約書、就業規則の作成・変更など
  • 広告やキャンペーンを実施するとき
    景品表示法、薬機法への抵触がないか

中小企業のリーガルチェックの対象範囲

リーガルチェックの対象は、契約書だけではありません。企業活動に伴う様々なものがチェック対象となり、契約書以外の項目にも法的な視点を持つことが健全な経営につながります。

  • Webサイト関連
    利用規約、プライバシーポリシー、特定商取引法に基づく表示、広告表示
  • 人事・労務関連
    就業規則、雇用契約書、36協定
  • 新規事業関連
    ビジネスモデルの適法性チェック
  • 情報発信関連
    プレスリリース、SNSの投稿・運用ポリシー
  • その他
    株主総会議事録、社内規程など

中小企業のリーガルチェックの具体的なやり方

ここでは、リーガルチェックの基本的なやり方を4つのステップに分けて解説します。

ステップ1. 対象と目的の明確化

まず、何をチェックしてほしいのかを明確にします。例えば、「取引先から提示されたこの業務委託契約書について、不利な点がないか確認したい」「新サービスのウェブサイトの利用規約を作成してほしい」など、対象物とチェックの目的を具体的に整理します。論点が不明確だと、期待した回答が得られない可能性があります。

ステップ2. 依頼先の選定

次に、誰がやるのか、つまり依頼先を決めます。弁護士、オンラインサービス、あるいは社内の法務担当者など、選択肢はいくつかあります。それぞれのメリット・デメリットと費用感を比較し、自社の状況や案件の重要性に応じて最適な依頼先を選びます。

ステップ3. 資料の準備と依頼

依頼先が決まったら、必要な資料を準備して正式に依頼します。契約書はもちろん、その取引の背景や自社が懸念している点などをまとめたメモを添付すると、より的確なレビューが期待できます。この段階で、費用や納期についてもしっかりと確認しておきましょう。

ステップ4. フィードバックの確認と修正

専門家から修正案やコメントといったフィードバックが返ってきます。その内容を十分に理解し、疑問点があれば再度質問しましょう。指摘された箇所を取引先と交渉したり、社内で修正作業を行ったりして、最終的な形に仕上げていきます。専門家に相談する際は、提案内容が自社の実態に適しているかどうか、自ら確認・検討することが重要です。

中小企業のリーガルチェックの費用

ここでは、主な依頼先である「弁護士」「社内担当者」「オンラインサービス」の3つの特徴と、それぞれにかかる費用の目安を解説します。

弁護士に依頼する場合の費用

弁護士への依頼は、最も品質と信頼性が高い方法です。複雑な契約や新規事業に関する相談において、多くの法律事務所が実績を持っています。契約書1通あたりのスポット依頼では5〜10万円程度、顧問契約は企業規模により月額3万円台から10万円以上になるケースが多く、相場は幅があります。

費用はかかりますが、深い知見に基づくアドバイスや、トラブル発生時の代理交渉まで任せられるという大きなメリットがあります。

社内の法務担当者が行う場合の費用

法務担当者や管理部門の担当者など、社内でリーガルチェックを完結させる方法です。最大のメリットは、外部費用がかからないことと、事業への理解が深い担当者が迅速に対応できる点です。

ただし、担当者の知識や経験に品質が左右される点や、専門外の分野には対応しきれないという限界があります。客観的な視点が失われがちになることにも注意が必要です。

AIレビューサービスの費用

近年、AI技術を活用したオンラインのリーガルチェックサービスが台頭しています。例えば、「Legalbook.io」のスタータープランは月額 45ドル(約6,900円、税別・2025年7月時点)。契約書をアップロードすると、数分でリスク箇所や要点を整理したレポートを返してくれます。

同様に 「goHeather」 ではプロプランが月額 29.99ドル(約4,600円、同条件)です。条項ごとに注意ポイントを示してくれるため、一次チェックを素早く終わらせたいときに便利です。

また契約書をクラウドにアップロードする際は、取引先の同意取得や守秘義務条項の確認を忘れずにしましょう。サービス側のデータ保存期間や暗号化方式も事前にチェックしておくと安心です。

中小企業がリーガルチェックを無料で実施する方法と注意点

専門家への依頼には費用がかかるため、無料で済ませたいと考える方も多いでしょう。結論から言うと、限定的な形であれば無料でリーガルチェックを受けることは可能です。

ただし、無料相談は30分〜60分程度の一般的なアドバイスにとどまり、継続案件には別途顧問契約等が必要です。個別の事情を深く踏まえた具体的な修正案の提示や、相手方との交渉まで期待することはできません。

公的機関の無料相談窓口

商工会議所や自治体、法テラスなどでは、弁護士による無料の法律相談会を定期的に開催しています。例えば、東京・浦安・横須賀などの商工会議所では月1回程度、文京区などの自治体でも法律相談を定期開催しています。事業に関する基本的な相談に乗ってもらえるため、問題点の洗い出しのきっかけとして活用できます。ただし、相談時間が限られており、契約書を詳細に読み込んでもらうといった本格的なレビューは難しい場合が多いです。

AI契約書レビューサービスの無料トライアル

多くのオンラインリーガルチェックサービスでは、機能や使い勝手を試せる無料トライアル期間を設けています。AIによる自動レビューを体験できる良い機会です。自社で扱う契約書が、どの程度AIでカバーできるのかを見極めるために利用してみる価値はあります。ただし、あくまで試用であり、継続的な利用には料金が発生します。

中小企業のリーガルチェック依頼先の選び方

自社に最適な依頼先を見つけることは、リーガルチェックの効果を最大化するために不可欠です。以下の3つのポイントを押さえて依頼先を選びましょう。

中小企業のビジネス実態への理解があるか

依頼先を選ぶ上で最も重要なのは、中小企業のビジネスの実情やスピード感を理解しているかどうかです。大企業向けの難解な法律論を述べるだけでなく、限られたリソースの中で何が最善の策なのかを一緒に考えてくれるパートナーが理想です。過去3年間に5件以上の中小企業の相談実績があるか等、実績の目安を確認しましょう。

専門分野が自社の事業と合っているか

弁護士や法律事務所には、それぞれ得意とする専門分野があります。例えば、IT業界であればIT関連法務に強い弁護士、製造業であれば製造物責任法や知的財産に詳しい弁護士、といった具合です。自社の事業領域と依頼先の専門性が一致しているか、ウェブサイトや実績でしっかり確認することが重要です。

コミュニケーションの取りやすさ

専門家への相談では、事前準備や整理された資料の提示が、やり取りを円滑にします。専門用語を分かりやすく説明してくれるか、質問に対して迅速かつ丁寧に回答してくれるか、といった点は事前に確認したいポイントです。

料金体系の明確さ

費用体系が明確であることも大切です。「何にいくらかかるのか」を事前にきちんと提示してくれる、誠実な依頼先を選びましょう。

中小企業こそリーガルチェックで法的リスクを回避しましょう

リーガルチェックは、中小企業が法的なリスクを回避し、持続的な成長を遂げるために不可欠な経営活動です。やり方は、弁護士やAIサービス、社内担当者など様々で、自社の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが求められます。

無料相談なども賢く活用しつつ、重要な局面では適切なコストをかけて専門家の知見を得ることが、結果的に未来の事業を守るための賢明な投資となります。この記事を参考に、ぜひ自社のリーガルチェック体制を見直し、強化する一歩を踏み出してください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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