- 作成日 : 2025年3月25日
景品表示法のプレゼント(景品)とは?金額の条件を事例とあわせて解説
景品表示法では、プレゼント(景品)の金額や提供方法に厳格なルールが定められています。本記事では、最新の法令を踏まえた上限金額や事例をわかりやすく解説し、違反を防ぐための注意点を紹介します。
目次
景品表示法とは
景品表示法は消費者庁が所管する法律で、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。消費者が適正な商品選択を行えるよう、「不当な表示」や「過大な景品類の提供」を規制するものです。
企業や事業者が宣伝や広告を行う際、実際よりも著しく優良・有利に見せかける表示や、不当な高額景品の提供による誘引が行われると、消費者に誤解や混乱を与える恐れがあります。不当表示や過大な景品によって、消費者が本来得られるはずの正確な情報を得られなくなり、結果として消費者利益が損なわれる点がリスクです。
そのため、景品表示法では事業者の広告表示・景品提供を一定の範囲内に収めるよう、違反に対しては行政処分などの厳正な対処が行われる仕組みを整備しています。
参考:e-Gov法令検索 不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)
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景品表示法におけるプレゼント(景品)とは
ここでは、景品として提供される「プレゼント」の定義や、その種類について確認していきましょう。
プレゼントの定義
プレゼント(景品)とは、商品やサービスの購入・利用に関連して、事業者が消費者に提供するもの全般を指します。原則として顧客を誘引するため、消費者が商品やサービスを購入・利用する際、事業者が提供する経済上の利益を意味します。たとえば、以下のようなケースが典型例です。
- 商品を購入した人に抽選で当たる懸賞品
- 先着〇名に配布されるノベルティグッズ
- 複数個まとめ買いで無償提供されるおまけ
金銭や金券だけでなく、旅行券や物品、ポイント、クーポンなど、換金性のあるものもすべてプレゼント(景品)として扱われます。消費者が「得をする」と感じるような無償提供物は、ほぼすべて景品表示法の規制対象になり得るといえます。
プレゼントは一般懸賞・共同懸賞・総付景品に分類される
景品表示法においては、プレゼント(景品)を大きく以下の3種類に分類します。
- 一般懸賞:商品やサービスの購入者等を対象に抽選やクイズなどで当選者を決め、当選者に景品を提供する場合
- 共同懸賞: 複数の事業者が共同で実施する懸賞で、購入者等を対象に抽選などで景品を提供する場合
- 総付景品: 商品やサービスの購入者全員または利用者全員、あるいは一定条件を満たした全員に景品を提供する場合
それぞれに異なる上限金額が定められています。違反しないためには、提供するプレゼント(景品)がどの種類に該当するかを正しく見極め、適切な上限金額の範囲内で実施することが重要です。
参考:e-Gov法令検索 不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)
一般懸賞の上限金額
一般懸賞は「クローズド懸賞」とも呼ばれ、商品を購入した人や会員登録をした人が応募できるタイプの懸賞が該当します。
以下で、一般懸賞の定義と、提供できるプレゼント(景品)の上限金額、さらに違反を回避するための事例を説明します。
一般懸賞の定義
商品やサービスの購入、あるいはクイズへの回答や会員登録など、何らかの対価的行為(商品を買う、登録をするなど)を条件として懸賞企画に参加させ、当選者にプレゼント(景品)を提供する場合を「一般懸賞」といいます。以下のようなキャンペーンが典型例です。
- 対象商品を購入して応募すると、抽選で豪華家電が当たる
- キャンペーン期間中に公式サイトへ登録してクイズに答えると、抽選でポイントがもらえる
こうしたケースは、参加者が応募条件を満たさなければ懸賞に参加できないため、景品表示法上では一般懸賞とみなされます。
上限金額
一般懸賞におけるプレゼント(景品)の最高額は、取引価額の20倍までと定められています。取引価額とは、対象となる商品やサービスの価格のことです。上限金額は、取引価額5,000円未満か、5,000円以上かで異なります。
- 取引価額が5,000円未満の場合:取引価格の20倍まで
- 取引価額が5,000円以上の場合:10万円まで
ただし、いずれの場合もプレゼント(景品)の総額の上限は売上予定総額の2%までです。
事例
ある家電メーカーが「対象の電気ケトルを購入すると、抽選でオーブンレンジが当たる」キャンペーンを実施したとします。
電気ケトルの販売価格(取引価額)が6,000円の場合、景品の上限金額は10万円になります。したがって、プレゼント(景品)となるオーブンレンジの販売価格が10万円以内であれば問題ありません。しかし、仮にそれ以上の金額のオープンレンジをプレゼント(景品)とする場合は上限を超えるため、法令違反の可能性があります。
また、景品総額は懸賞にかかる売上予定総額の2%までに抑えなければなりません。
共同懸賞の上限金額
共同懸賞は、複数の事業者が共同で懸賞企画を行う場合を指します。複数の事業者が共同で懸賞企画を行う場合を指します。ここでは、共同懸賞の定義と上限金額、事例について見ていきましょう。
共同懸賞の定義
共同懸賞は、一定の地域や商店街における小売業者やサービス業者が共同してひとつの懸賞を行うケースを指します。
上限金額
共同懸賞でのプレゼント(景品)の上限額は、取引価額に関係なく一律で30万円です。また、景品の総額は懸賞にかかる売上予定総額の3%までと定められています。
事例
複数のテナントが入る商業施設で「10,000円以上のお買い物で応募すると、抽選で高級ホテルの宿泊券が当たる」キャンペーンを実施したとします。
この場合は共同懸賞になるため、宿泊券の金額は30万円までに抑える必要があります。総額は懸賞にかかる売上予定総額の3%以内であれば問題ありません。
参考:消費者庁 景品規制の概要
総付景品の上限金額
総付景品は、応募や抽選とは関係なく、商品やサービスを購入・利用した消費者全員に対して無償提供するプレゼント(景品)を指します。なお、「先着何名」といった形式も総付景品に該当する場合があります。
ここでは送付景品の定義や上限金額、事例を解説します。
総付景品の定義
総付景品とは、商品やサービスの購入や利用をした消費者全員、もしくは一定の条件を満たした全員に一律で提供される景品を指します。抽選やクイズへの応募といった手続きはなく、「購入した人なら誰でももらえる」といったケースが代表的です。
スーパーで「〇〇円以上のお買い物をされた方全員に景品をプレゼント」などと告知される場合が、典型的な総付景品のスタイルといえます。クローズド懸賞と異なり、購入する、入店するなどの条件を満たせば必ず景品がもらえるため、ほぼ全員への確実な提供を前提に設計されるのが特徴です。
上限金額
総付景品には取引価額が1,000円未満の場合と1,000円以上の場合で異なる上限規定が存在し、以下のように定められています。
- 取引価額が1,000円未満の場合:景品の上限金額は200円
- 取引価額が1,000円以上の場合:景品の上限は、取引価額の20%
したがって、1,000円以上であれば商品やサービスの価格が高いほど提供できるプレゼント(景品)の金額も大きくなります。
事例
アパレルブランドが「10,000円以上の購入で全員にオリジナルエコバッグをプレゼント」というキャンペーンを行うとします。
この場合、プレゼント(景品)の上限は「10,000円×20%=2,000円」です。エコバッグが2,000円以内の品であれば問題ありませんが、それ以上になると違反の可能性があります。
参考:消費者庁 景品規制の概要
オープン懸賞は景品表示法の対象になる?
ここまで紹介してきた一般懸賞・共同懸賞はいわゆる「クローズド懸賞」であり、商品購入や会員登録などの対価的行為が参加条件となります。一方、「オープン懸賞」とは、商品購入の有無などを問わず、誰でも応募できる懸賞企画を指します。たとえば、「SNSでフォロー&コメントすれば応募完了」というようなものが該当します。
景品表示法の適用対象となるのは、「取引に付随」して提供されるプレゼント(景品)です。商品やサービスの購入・利用を条件としないオープン懸賞は、原則として景品表示法の対象外であり、クローズド懸賞のようなプレゼント(景品)の上限や総額に規制はありません。
参考:消費者庁 景品規制の概要
景品表示法違反になるプレゼント(景品)
景品表示法では、上限金額超過のほかにも、以下のようなプレゼント(景品)施策が問題視される場合があります。
景品の価値を実際よりも高く見せる表示
景品の実際の価値以上に高額であるかのように表示すると、消費者を誤認させるおそれがあります。例を挙げると、本来の市場価値が3,000円の景品を「5,000円相当の豪華プレゼント」と表記するケースがこれに該当します。
景品の価値を示す際には、客観的な基準に基づいた適切な表記を心がけましょう。
抽選方法や当選者数が不透明な懸賞
懸賞において、当選者数や抽選方法を明確に示さないまま消費者を誘引することは、景品表示法違反につながる可能性があります。「抽選で100名にプレゼント」と謳っていたにもかかわらず、実際には当選者が10名しかいない場合、虚偽の表示とみなされるリスクが否定できません。
懸賞を実施する際には、公正な抽選が行われていることを証明できるよう、当選者数や選定基準を明確にすることが求められます。
実質的に「おとり広告」となるプレゼント(景品)
極端に少ない数量しか用意されていないプレゼント(景品)を大々的に宣伝し、消費者を店舗やウェブサイトに誘導する行為も違反となる場合があります。
「人気ブランドのバッグを無料プレゼント」と告知しながら、実際には1点しか用意されておらず、ほとんどの消費者が受け取れない状況であった場合、不当表示と判断されることになりかねません。
参考:e-Gov法令検索 不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)
景品表示法を正しく理解し、適切なプレゼント施策を実施しよう
景品表示法では、企業が提供する景品に対して厳格な上限金額やルールが定められています。景品は「一般懸賞」「共同懸賞」「総付景品」に分類され、それぞれ異なる上限額が適用されます。
違反すると行政指導や措置命令の対象となるため、適正な運用が求められます。また、提供条件の不明確さや誤解を招く表示も違反となる可能性があるため、消費者庁のガイドラインを遵守し、適切な景品提供を行うことを心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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