- 作成日 : 2025年3月3日
車両使用誓約書とは?書き方や例文を紹介(テンプレート付)
「車両使用誓約書」は、企業が従業員に車両の使用を認める際のルールや責任範囲を明文化するための文書です。
企業の法的リスクにも関わる問題のため、具体的にどのような場面で作成を検討すべきか、また、どのような内容を記載しておくべきか、といった点を押さえておくことが重要です。
本記事ではひな形とともに詳しく解説します。
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目次
車両使用誓約書とは?
車両使用誓約書(しゃりょうしようせいやくしょ)とは、「企業が従業員などに車両を貸し出す際に作成する文書」のことです。
業務用車両の適正な使用と安全運転の担保のため、使用ルールや事故発生時の責任範囲を明確化する文書として役立てられています。
「作成しないといけない」とする法律上のルールはありませんが、企業と従業員双方のリスク管理に重要な機能を果たす存在のため、状況に応じて作成することを検討すべきでしょう。
車両使用誓約書を交わさないとどうなる?
誓約書を交わさない場合、次のリスクが大きくなってしまいます。
- 事故が発生してしまったとき、責任の所在が曖昧になる危険性
- 整備不良の放置により車両の安全性が下がる
- 従業員による私的利用
- 従業員による違反行為があったときでも、懲戒処分の根拠が弱くなってしまう
逆に車両使用誓約書を交わしておけばルールが明確化され、車両利用に関わるトラブルを回避しやすくなります。
車両使用誓約書を交わすケース
車両使用誓約書は従業員が社用車を利用する際などに作成することがありますが、その具体例を見ていきましょう。
日常業務で継続的に社用車を使用する場合
営業担当者や配送担当者など日常的に車両を使用する従業員がいるのなら、車両の使用に関して問題が発生する可能性も高くなるため、誓約書を交わしましょう。
これにより業務遂行中の安全運転や適切な車両管理の徹底を図ります。
一方で、使用頻度が低く、リスクも限定的と思われる場合、誓約書の必要性は相対的に低くなります。ただし、その場合であっても、基本的な使用ルールを周知しておくことは重要です。
イベントなどで一時的に社用車を使用する場合
イベントや臨時の業務で社用車を使用する際も、それが長距離移動を伴うものであったり多数の従業員が車両を使用したりするなど、特にリスクが高いと判断される状況では誓約書の作成が推奨されます。
しかし、社内の短時間のイベントや、経験豊富な従業員が使用する場合など、リスクが低いと判断される場合は、口頭での注意喚起で十分な場合もあります。
マイカー通勤を認める場合
従業員のマイカー通勤を認める企業だと、公共交通機関のみを認めた場合と比べて事故に遭うリスクが高くなってしまいます。
そこで「車両使用誓約書」、あるいは「マイカー通勤誓約書」などの形で文書を交わしておくことも検討します。
これにより通勤時の安全意識を高めてもらうこと、また、通勤時の事故に関する責任問題についても曖昧さを減らすことができるでしょう。
車両使用誓約書のひな形・テンプレート
車両使用誓約書の基本的なテンプレートを用意しましたので、ダウンロードしてご利用ください。
一般的な項目には言及した内容となっているため、各社の車両利用の実態に合わせてカスタマイズしていただければと思います。
車両使用誓約書の書き方や例文
車両使用誓約書に最低限記載しておくべき項目とその書き方などを、例文とともに紹介します。
使用する車両の情報
車両を特定するための情報、車種・ナンバー・名義を明記し、誰がどの車両を使用しているのかを確実に管理できるようにしましょう。社用車の使用であれば、名義の欄は法人名を記載することになります。
また、複数台の車両を使用する可能性があるなら、別途リストを添付するなどの対応も検討しましょう。
禁止事項
禁止事項を明記することは、車両使用に関する責任問題への対処や、使用者に安全運転を促すうえで効果的です。例えば、次のような事項を列挙します。
“貴社に指定された業務以外の目的での使用はしません。”
“貴社に指定された業務に関係のない人物を勝手に乗車させたり、当該人物に運転させたりしません。”
“運転中は喫煙しません。”
また、「飲酒運転・酒気帯び運転をしません。」と記載しておくなど、使用者に法令遵守の意識を持ってもらうことも重要です。
報告義務
車両の使用に関して、「どのような場合に・誰に・どのようなタイミングで報告を行う必要があるのか」といったルールも策定しておくとよいです。
“体調不良等のため、正常な運転に懸念がある場合は、その旨を貴社の指定の者に報告いたします。”
“車両に異常を発見したときは速やかに報告いたします。”
“軽微な物損等についても、その都度直ちに貴社の指定の者に報告いたします。”
また、報告先となる「貴社の指定の者」に関して別途社内規定等で明確にしておくなどして、円滑に報告できるよう備えましょう。
事故防止や損害に関わる義務
事故防止、事故発生時の対応や損害賠償に関する取り決めを置くことも検討するとよいです。
“道路交通法、および関係法令、ならびに貴社の就業規則等を誠実に守り、常に安全な運転に努めます。”
“故意または重過失により車両に損害を与えた場合は、貴社の損害を賠償します。”
などの規定が考えられますが、金銭のやり取りが発生する項目についてはトラブルが起こりやすいため、弁護士にも相談しながら内容を考えることをおすすめします。
作成年月日や住所・氏名欄
いつ作成したのか、誰が作成したのかを明確化するための記載欄を設けます。住所の記載と記名押印あるいは署名をしてもらうと安心です。
車両使用誓約書を書くうえでの注意点
車両使用誓約書を準備する際は、これに加えて従業員の運転免許証のコピーを取っておきましょう。
「有効な運転免許を持っていない従業員に運転をさせていた」となれば企業の評価にも悪影響が及びます。また、できれば定期的に安全運転講習を実施したり、日々の運転記録をつけてもらったりしておくとより安全に車両管理ができるでしょう。
従業員に対する求償権についても考慮する
事故発生時の損害賠償については、慎重な検討が必要です。
就業中の事故であれば企業は被害者に対して使用者責任を負うこととなり、求償権を行使して従業員に請求することも可能ですが、全額が請求できるとは限りません。
過去の裁判でも求償を全損害に対する1/4に制限した事例があり、企業と労働者間で公平に分担するという考え方が求められます。
車両使用誓約書で賠償責任について定めてもすべてその通りになるとは限らないため、要注意です。
車両使用誓約書の保管期間・保管方法
車両使用誓約書の保管期間に関する法令上の規定はありません。そのため、保管期間や保管方法についても各社の判断に委ねられます。
ただ、「交通事故が発生したときの損害賠償請求権の消滅時効期間」については考慮しておいた方が安全です。
人身事故の場合は被害者が請求権を行使できるときから5年間、事故があってから20年間が消滅時効期間となります。
車両の使用を続けている期間中の保管はもちろん、事故が発生してしまったときは、念のためより長い期間保管しておくようにしましょう。
車両使用誓約書の電子化は可能?
車両使用誓約書を電子的に作成しても違法ではなく、いったん書面(紙)で作成した車両使用誓約書を電子化してもかまいません。
その際は、文書管理システムを活用することをおすすめします。車両使用誓約書のほか、さまざまな文書の管理が効率的に行え、長期保存にも適しています。参照したいときでもすぐに検索をかけられます。
適切な車両管理でリスクを小さくしよう
車両使用誓約書は、企業と従業員の間で、安全運転と適切な車両管理に関する共通認識を形成するために役立つツールです。単なる形式的な文書と捉えず、その内容については一つひとつ条項を精査して自社に適したものへと作り上げていくべきです。
場合によってはマイカー通勤の適切な管理ができるように備えること、そして法改正や社会情勢の変化に順応していく姿勢も必要になるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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