- 作成日 : 2025年3月3日
写真掲載承諾書とは?効力や書き方・例文(無料テンプレート)
「写真掲載承諾書」は、被写体となった人物からその写真の使用について承諾を得るための文書です。
この承諾書の作成が望ましいケースや記載すべき内容、作成時の注意点などを、企業の広報活動やSNS運用に携わる方々に向けて本記事で解説をします。無料のテンプレートもダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
▼写真掲載承諾書のひな形・例文を無料でダウンロードいただけます。
目次
写真掲載承諾書とは?
写真掲載承諾書とは、写真に写っている人物から、その写真の掲載(SNSやWebサイトへの投稿など)について承諾を得るための文書です。
写真掲載承諾書の作成は法律で義務付けられているわけではありません。しかし、個人の肖像権やプライバシーへの配慮の観点から、書面での合意を取り付けておくことが推奨されます。
後々のトラブルを防ぐためにも、特に写真に写っている方が特定できるような場合には、作成しておいた方がよいでしょう。
写真掲載承諾書はなぜ必要か
写真に掲載について承諾が得られていれば、肖像権侵害を理由に損害賠償請求などを受けるリスクが避けやすくなります。
肖像権は著名な方に限らず、どの個人にも認められているもので「無断で写真を撮らないでください」「撮影した写真を無断で公開しないでください」などと主張できる権利を指しています。
そのため、承諾が得られていないと削除要請を受けることもあり、写真の差し替えや撮り直しが必要になることもあるかもしれません。その結果、事業が円滑に進められなくなるおそれもあります。
写真掲載同意書と写真掲載承諾書との違い
「写真掲載承諾書」ではなく、「写真掲載同意書」という名称で文書が取り交わされることもありますが、これらに実質的な違いはありません。そもそも公的に作成が義務付けられているものでもなく、写真掲載承諾書にも明確な定義はありません。そのため、文中に使われている文言が「同意書」であろうと「承諾書」であろうと、それだけで効力に差が生じることはありません。
重要なのは文書の名称ではなく、その内容です。掲載目的や使用範囲、期間などの条件が明確に示され、撮影された方がそれに対して「問題ありません」「使ってもいいですよ」といった意思表示がなされているかどうかに着目すべきです。
写真掲載承諾書を作成するケース
企業活動においては、広報・マーケティング活動や採用活動など、さまざまな場面で写真を使用する機会があります。その際、写真に写っている方の肖像権やプライバシーへの配慮として事前に承諾を得ることを検討しましょう。
具体的には以下で紹介するようなケースでの作成を検討すべきです。
採用活動で従業員の写真を使用する場合
採用活動において、企業の魅力や職場の雰囲気がよく伝わるよう、次のような形で写真を現役従業員の姿を写真で紹介することがあります。
そこで、写真掲載承諾書を作成しておいて後々もめるリスクを軽減しましょう。
- 採用サイトでの従業員インタビュー記事への写真掲載
- 会社案内パンフレットでの職場風景の紹介
- 新入社員研修の様子を撮影して次年度の採用活動で使用する など
採用活動での写真使用だと掲載媒体も多岐にわたるため、使用範囲や期間を明確にした承諾書を取得することが望ましいでしょう。
マーケティング活動で写真を使用する場合
企業の広報・マーケティング活の場面でも多くの写真を活用します。
- 自社Webサイトでの企業活動紹介
- プレスリリースやニュースリリースでのイベント報告
- SNSでの企業アカウントによる情報発信
- 展示会やセミナーでの活動記録 など
前項同様に、被写体となる方から承諾を得ておき、写真掲載承諾書として形に残しましょう。
商品・サービスのプロモーションで写真を使用する場合
商品やサービスの魅力を伝えるために、実際の使用シーンや利用者の写真を使用することがあります。例えば、次のような形での使用です。
- 商品カタログでの使用イメージ写真
- サービス紹介ページでのユーザーレビュー
- お客様の声としての導入事例の紹介
- SNSでの商品PR投稿 など
この場合も写真が多くの方の目につくことになるため、前もって承諾を得ておくことが重要といえます。
施設や店舗の広報活動で写真を使用する場合
施設や店舗の雰囲気を伝えるため、実際の状況を写真で紹介することがあります。例えば、次のような形で写真を掲載します。
- 店舗Webサイトでの雰囲気の紹介
- 企業案内での施設紹介
- 広告媒体での施設PR など
施設や店舗の写真には、これまでの紹介例とは違い、利用者が意図せず写り込むケースもあるため、要注意です。
写真掲載承諾書のひな形・例文
写真掲載承諾書の作成にあたって、基本的な項目を記載したテンプレートを用意しております。以下のリンクからダウンロードいただけます。企業や組織の実情に合わせて、使用目的や掲載媒体などの項目を適宜カスタマイズして、ご活用ください。
写真掲載承諾書に記載すべき内容や書き方
写真掲載承諾書を作成する際に盛り込んでおきたい情報を一つずつ紹介します。細かな条件などは、写真の活用方法に合わせて調整しましょう。
掲載対象写真
掲載対象となる写真を特定するため、具体的な情報を記載します。
書き方に決まりはありません。ただし、どの写真のことを言及しているのかが第三者でもわかるように記載しましょう。
例えば「撮影日」や「撮影場所」、「写真の内容」、そして「設定した番号」や「ファイル名」などを明記しておくと特定しやすいです。承諾を得たい写真が複数ある時はリストを作成して添付することも検討しましょう。
価格
写真の使用に対して対価が発生する場合は、その金額を明記します。無償の使用であっても、何も記載しないより無償である旨を明記しておく方が、後々のトラブルも避けやすいため、おすすめです。特に金銭の有無に対する認識にずれがあると、もめやすいため要注意です。
また、税込・税抜をはっきりさせること、支払期日や支払方法なども具体化しておくとよりよいでしょう。
掲載期間
写真の使用に期限を設ける場合は、掲載期間を「202X年XX月XX日 ~ 202X年XX月XX日」と明確に示しましょう。
期限を設ける時は、広報などの計画や撮影された方の意向を考慮して決定します。なお、一度期間を定めたとしても継続使用についての承諾が得られれば問題なく掲載を続けられます。しかし、断られるリスクもあるため、企業側としては特段の理由なく掲載期間を定める必要はないでしょう。
相手方から承諾を得るのが難しい場合などに、交渉材料として期限を設けることも考えます。
写真掲載媒体
写真の掲載先となる媒体を特定します。デジタル媒体の場合は掲載サイトのURL、印刷媒体の場合は発行物の名称など、できるだけ具体的な情報を記載しましょう。
将来的な使用可能性がある媒体についてもあらかじめ記載しておくことで追加の承諾手続きを省略することができます。
なお、承諾書を用意するのは企業側ですが、承諾書の作成名義人は被写体となった方になるため、自社ホームページに掲載する場合は「貴社ホームページ」などと掲載媒体を記載します。
掲載内容
写真の使用目的や、どのような文脈で使用されるのかを明確にします。
そこで、「新入社員紹介ページでの使用」「商品PRのため」などと記載するとよいでしょう。具体的に記すことは重要ですが、細分化し過ぎると用途が大きく制限されてしまうため、注意してください。
承諾事項
写真の掲載に関して「上記の内容で貴社が広告を掲載することについて、承諾します。」と意思表示を明確に記し、加えて各種権利関係についても次のような形で整理しておくとよいです。
“私が貴社に対し提供する個人情報は、貴社のプライバシーポリシーに定める利用目的に従って利用されることに同意します。”
ただし、「写真の掲載に係るあらゆる権利を行使しません。」などと広範・曖昧過ぎる制約だと有効に機能しない可能性が高いため、承諾事項も合理的な範囲に留める必要があります。
禁止事項
承諾事項とも関連しますが、特定の行為について念押しで禁じておきたい時は、別途「禁止事項」の欄を設けておくのもよいでしょう。
例えば、「写真の掲載方法などに関し、貴社に対し不当なクレームを行いません。」など、明言するまでもない事柄であっても、明示することで万が一の問題を避けることができます。
作成年月日や承諾者情報の記載欄
承諾書の作成日、および承諾者の特定が欠かせません。相手方に記載してもらえるよう、次のような形で記載欄を設けておきます。
年 月 日
住所:〒 -
氏名: 印
未成年者を対象とする場合は、保護者の署名欄も追加しておくとよいでしょう。
写真掲載承諾書を作成する際の注意点
勝手に撮影して勝手に掲載した、という事実があると企業の評価を落とすことになってしまうでしょう。
そのため、法的に問題がないことを確認しながら撮影方法や写真の利用方法を検討し、写真掲載承諾書を作成していくことが重要です。
また、「サインさえしてもらえればいい」などと安易に考えるべきではありません。承諾があっても不当な権利の制限や違法な内容だと機能せず、未成年者の撮影であれば保護者(親権者など)からの承諾も必要です。
使用目的や範囲の明確化がポイント
写真の使用目的や範囲を明確にすることは、承諾書作成の重要なポイントです。「広報目的での使用」といった曖昧な表現ではなく、具体的な媒体や使用方法を列挙することが望ましいでしょう。
特にSNSでの使用については予期せぬ形で急速に拡散する可能性があることから、その旨を承諾書に明記し、承諾者の理解を得ておくことも検討しましょう。
なお、使用目的や範囲を変更する場合は改めて承諾を得る必要がありますが、当初から想定される使用方法をできるだけ網羅的に記載しておくことで、追加の手続きを省略できる場合があります。
写真掲載承諾書の保管年数や保管方法
写真掲載承諾書の保管期間や保管方法について法令による明確な定めはありませんが、相手方から削除要請など何らかのアクションが起こり得る期間中は保管を続けるべきです。
そこで、少なくとも写真の使用期間中は破棄すべきではありません。また、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は20年間のため、掲載から20年経てば破棄してもトラブルになるリスクは避けられるでしょう。
写真掲載承諾書の電子化は可能?
写真掲載承諾書の電子化は可能です。電子署名法により、一定の要件を満たす電子署名は手書きの署名や押印と同等の効力を有するとされているため、書面ではないというだけで法的なリスクが大きくなることもありません。むしろ、電子化することで長期的に保管する場合でもスペースを圧迫することなく、検索に困ることもなくなるといったメリットが得られます。
ただし、一からシステムを構築しているとコストもかかり過ぎるため、電子化に対応したクラウドサービスなどを活用するとよいでしょう。
肖像権に配慮した写真活用を心がけよう
写真掲載承諾書は、撮影された方の権利に配慮しつつ企業の広報活動や情報発信を円滑に進めるために機能する文書です。承諾書の作成にあたっては、掲載目的や使用範囲を明確にし、撮影される方の意思を十分に尊重することが望まれます。
承諾書の適切な作成・保管に努め、デジタル時代に即した写真の活用を進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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