• 作成日 : 2025年1月30日

歯科同意書とは?効力や書き方・例文をひな形つきで解説

歯科同意書とは、歯科施術を受ける患者が、その施術に同意を表明する文書です。特にリスクの高い歯科施術を行う際には、患者に歯科同意書の提出を求めましょう。本記事では、歯科同意書の書き方やレビュー時のポイントなどを文言の具体例を示しながら解説します。

歯科同意書とは?

歯科同意書(しかどういしょ)とは、歯科施術を受けることや、関連する注意事項などについて同意を表明する文書です。歯科施術を受ける患者が、歯科医師または歯科医院に対して提出します。

歯科同意書は必要か?

歯科医師には、患者に対して施術の内容を十分に説明し、患者の同意を得る責任があると解されています(=インフォームド・コンセント)。歯科同意書の提出を受けていれば、歯科医師が適切にインフォームド・コンセントを実施したことの証明になります。

従って全ての歯科施術について歯科同意書を提出してもらうことが望ましいといえます。しかし現実的には、歯科医師(歯科医院)側で割くことのできる時間などとの兼ね合いから、リスクの高い歯科施術に限定して歯科同意書を取得する例がよく見られます。

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歯科同意書の提出を受けるべきケース

患者に健康上の悪影響を及ぼすリスクが高いと思われる歯科施術を行う際には、必ず歯科同意書の提出を求めましょう。これに対して、それほどリスクが高くないと思われる歯科施術については、歯科同意書の提出を省略することも考えられます。

どの範囲の施術について歯科同意書の提出を求めるかは、治療のリスクなどを総合的に考慮したうえで、個別にご判断ください。

歯科同意書のひな形・例文

歯科同意書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に歯科同意書を作成する際の参考としてください。

※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。

※ひな形の文例および本記事で紹介する文例は、歯科医師が患者に対して実施すべきインフォームド・コンセントなどの内容を網羅するものではありません。実際に患者に対して行うべき説明などの内容は、歯科医師の責任において個別にご検討ください。

歯科同意書に記載すべき内容や書き方

歯科同意書には、主に以下の事項を記載します。

  • 歯科施術を受けることに関する同意
  • 主治医の指示に従うことに関する同意
  • 診療の中止や変更に関する同意
  • 歯科治療費用の内訳に関する確認
  • 免責事項に関する同意
  • 個人情報の利用目的に関する同意

歯科施術を受けることに関する同意

(例)

私は、以下の内容を十分に理解し、疑問点については質問し、説明を受け納得したうえで、下記の歯科施術を受けることに同意します。

歯科施術を受けることについて、患者が同意する旨を明記します。

主治医の指示に従うことに関する同意

(例)

<同意事項>

1 歯科施術の過程においては、主治医の指示に従います。主治医の指示に従わない場合には、施術の内容や期間が変更される場合があることを了承します。

歯科施術の実施中や、施術間の過ごし方などについて、患者が主治医の指示に従うべき旨を明記します。主治医の指示に従わないときは、施術の内容や期間が変更されることがある旨も念のため記載しておきましょう。

診療の中止や変更に関する同意

(例)

<同意事項>

2 下記に該当する症状や事情がある場合、歯科施術を受けられないことがあることを了承します。また、歯科施術の過程において、下記に該当する症状や事情が発見された場合は、施術を中止することがあることを了承します。

  • 成長発育過程、外傷などによる歯牙移動困難
  • ヘルペス
  • 口内炎
  • その他、歯科施術の実施を不可能または困難にさせる症状または事情

3 歯科治療の予約について、やむを得ない事情により変更していただく場合があります。

歯科施術のスケジュールは、患者の健康状態や歯科医院側の都合によって変更すべきケースも想定されます。また、患者が予定されていた歯科施術に適合しないことがわかり、施術内容の変更または施術の中止がやむを得ないこともあります。

歯科施術に関する変更や中止があり得る旨を患者に理解してもらうため、歯科同意書にその旨を明記しておきましょう。

歯科治療費用の内訳に関する確認

(例)

<同意事項>

4 歯科治療費用には、以下の費用が含まれるものとします。なお、【矯正治療費用、ホワイトニング費用、装置紛失時の器具代など】は含まれません。

  • ○○費

実施予定の歯科施術に関して、歯科治療費用に含まれる費用と含まれない費用を明示します。具体的な費目を列挙すると、費用に関する認識の齟齬が生じにくくなります。

免責事項に関する同意

(例)

<同意事項>

5 歯科施術の効用、効果は絶対的ではなく、個人ごとに違いがあること、および施術後に副作用が発生することもあることを了承します。施術中または施術後において、貴院の責に帰すことができない事由によって発生した損害について、貴院は責任を負わないことに同意します。

歯科施術の性質上、効用や効果に個人差が生じることは避けられません。全く効果が得られないこともありますし、施術後に副作用が発生することもあります。そうなったとしても、歯科医師や歯科医院に責任があるとは限りません。

患者に上記のような歯科施術の性質を理解してもらうため、歯科同意書に免責事項を記載しておきましょう。

個人情報の利用目的に関する同意

(例)

<同意事項>

6 私が貴院に対し提供する個人情報は、歯科施術を実施する目的のために必要な範囲内に限って利用されることに同意します。

個人情報保護法の規定を踏まえて、個人情報の利用目的を明記しておきましょう(同法第17条第1項、第21条第2項)。歯科同意書においては、「歯科施術を実施する目的」などのように利用目的を記載します。

歯科同意書の提出を受ける際の注意点

歯科医師(歯科医院)が患者から歯科同意書の提出を受ける際には、以下の点に注意しましょう。

  • 免責事項を記載しても、歯科医院側が完全に免責されるわけではない
  • 同意書の内容は、患者に対して丁寧に説明する
  • 患者に署名と押印を求める

免責事項を記載しても、歯科医院側が完全に免責されるわけではない

歯科同意書において「歯科医師(歯科医院)は一切責任を負わない」などの旨を記載しても、歯科医師(歯科医院)側に故意または過失がある場合は、施術ミスの責任を免れることは困難です。

施術ミスによる損害賠償責任は、数百万円以上の高額に及ぶケースもあります。いうまでもなく、十分に慎重を期して施術を行いましょう。

同意書の内容は、患者に対して丁寧に説明する

歯科同意書の内容は、患者に対して丁寧に説明する必要があります。施術に当たっての注意事項を患者に理解してもらうことは、歯科医師の責任であるインフォームド・コンセントの一環です。

歯科同意書の内容を読み合わせたうえで、患者からの質問を受け付けるなどして、施術に関する認識の共有を図りましょう。

患者に署名と押印を求める

歯科同意書には、患者に署名と押印をしてもらいましょう。

患者の署名や、患者の印章による押印がなされていれば、歯科同意書が真正に成立したことが推定されます(民事訴訟法第228条第4項)。将来的に患者との間でトラブルが発生した場合には、有効な歯科同意書の存在が歯科医師(歯科医院)側にとって有利に働きます。

署名と押印は、どちらか一方でも推定効が生じます。署名と押印を両方行ってもらうことが望ましいですが、患者の負担を軽減するために署名のみとすることも考えられます。

歯科同意書の保管年数や保管方法

歯科医院における診療録は、5年間保存することが義務付けられています(歯科医師法第23条第2項)。歯科同意書についても、診療録と併せて、少なくとも5年間は保存しておきましょう。また、患者との間でトラブルが発生する可能性を想定すると、破棄する必要がない限りはさらに長期間にわたって保存しておくことが望ましいです。

歯科同意書の保存に当たっては、紛失や個人情報の流出などを防止する必要があります。

紙で提出を受けた歯科同意書は、施錠できるキャビネットなどに保管したうえで、鍵を厳重に管理するなどして不正な持ち出しができないようにしましょう。

電子データで交付を受けた歯科同意書は、アクセス権とパスワードを適切に設定して閲覧できる人の範囲を最小限に絞り、紛失や流出のリスクを防ぎましょう。

歯科同意書の電子化は可能?

歯科同意書は、電子データで提出してもらうこともできます。

歯科同意書の電子データには、電子署名を付与してもらうことが望ましいです。電子署名のパスワードなどが適正に管理されており、本人だけが行うことができる場合は、歯科同意書のデータが真正に成立したことが推定されます(電子署名法第3条)。

電子署名は、医療機関用に特化されたITシステムや、電子契約サービスなどを利用すると付与することができます。

紙の歯科同意書をスキャンして電子化する方法もありますが、その場合は原本を保存しておきましょう。

歯科同意書はインフォームド・コンセントの証明|内容は個別に検討しましょう

歯科医師は患者に対して、歯科施術の内容を十分に説明し、患者の同意を得る「インフォームド・コンセント」の責務を負っています。インフォームド・コンセントを適切に実践したことを証明できるように、特にリスクの高い施術については、患者に歯科同意書を提出してもらいましょう。

歯科同意書の内容は、施術の内容や性質などに応じて個別に検討する必要があります。歯科医師として行うべきインフォームド・コンセントの内容を、歯科同意書へ適切に反映しましょう。


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