- 作成日 : 2024年12月24日
境界確定契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
隣接する土地の所有者同士で、土地の境界に関してトラブルになることがあります。紛争を予防するため、土地の売買で境界確定契約書を作成しておくことが重要です。
本記事では境界確定契約書の概要、記載する項目、境界画定の流れや費用を解説します。また、契約書のひな形もダウンロードできるため、ぜひご活用ください。
目次
境界確定契約書とは
境界画定契約書とは、土地が隣接している所有者同士で、土地の境界を明確に設定するための文書です。境界線に関する紛争を事前に防止する役割があり、所有者同士の理解や協力を促します。
不動産売買では、買主に対して、土地の境界を確定したうえで書類を渡さなくてはなりません。境界が確定していないと、隣接地の住人と境界を巡ってトラブルになる恐れがあり、未然に防ぐためにも境界確定契約書を作成しておくことが重要です。
境界確定契約書を作成するケース
境界確定が必要となるシーンについて解説します。
新たに建物を建てる場合
建物を新たに建てる場合、土地の間口・奥行きなどの寸法のデータが必要になります。建物に関しては建築基準法など数多くの制約があり、土地の寸法に関する正確なデータがないと、精密に建物を建築できません。
特に面積が限られている都心部や住宅密集地においては、法令制限のギリギリのサイズで建築することも珍しくありません。限られた土地を有効活用するには、境界確定の測量および契約書の作成が必要です。
土地・建物を売却する場合
土地や建物を売却する場合、買主に対して土地の境界を明確に示すため、売主は隣接する土地との境界を確定しなくてはなりません。境界が不明確な場合、境界を確定させるよう買主から求められます。
売却する物件が比較的新しい場合はすでに境界画定され、測量図も保管されている場合が多いでしょう。しかし築年数が古い物件は、隣接地との境界が確定していないケースも多いです。
境界があいまいな状態で物件を引き渡すと、買主が後で隣接地の住人とトラブルになる恐れがあります。紛争を未然に防ぐには、境界測定の測量を行い、契約書を締結することが必要です。
土地・建物を相続する場合
土地を相続すると、場合によっては相続税の支払いが発生します。相続税の税額を確定・申告するために、土地の境界確定書が必要になります。
登記簿などに記載された面積は、実態とずれていることも。住宅地でも多少のずれはありますが、農地や山林では面積が大きく異なることもあります。
土地の相続税は面積などによって決まるため、境界確定の測量をして、正確な面積を求めることが必要です。
境界確定契約書のひな形
境界確定契約書を最初からすべて作成するのは困難なため、見本を参考にすると効率的に作成できます。また、どのような内容なのかをあらかじめ知っておきたい方もいるでしょう。
このような場合のために、境界確定契約書のひな形を用意しました。電子契約書管理サービス「マネーフォワード クラウド契約」によるテンプレートです。
弁護士が監修した、Wordファイルの境界確定契約書のひな形を無料で提供しています。必要な方は以下のリンクからダウンロードしてご利用ください。
境界確定契約書に記載すべき内容
境界画定契約書には、下記の要素を含まなくてはなりません。
- 土地所有者の氏名、住所、電話番号などの連絡先
- 境界の具体的な内容
- 境界確認の方法
- 確認作業日
- 境界に変更が生じた場合の対処方法
最初に、契約者の氏名や住所といった基本情報を記載します。次に境界の確認内容に関しては、地図や測量図などによって具体的に示すことが必要です。
境界をどのように確認するのか、具体的な方法や、確認作業をした実施日などの詳細も記載します。
境界確定契約書を作成する際の注意点
境界確定契約書を作成するとき、以下の点に注意が必要です。
境界をしっかりと明示する
土地や建物を売却する際、どこまでが所有の範囲なのかを示す「境界明示」は売主の義務です。境界明示をしないと、後でトラブルが発生する恐れがあり、場合によっては損害賠償を求められることもあります。
境界は、測量図や境界標などによって明示できます。いずれも見当たらない場合、再度隣接地の所有者にも立ち会ってもらい、境界を確定させなくてはなりません。
境界確定契約書を作成する際に、すべての境界が明らかになっているか、あいまいな部分が残っていないかを確認しましょう。
隣接地の所有者が多いと時間がかかる
境界を確認する作業は、土地家屋調査士に依頼します。現地確認、測量、境界標の設置など、さまざまな工程があり、一度で完了する作業ではありません。場合によっては、現場で何度か打ち合わせを行う必要があります。
隣接地の所有者が多くなるほど、境界確認の手間が増えていきます。所有者が遠方にいる場合や多忙な場合、なかなか連絡が取れない可能性もあるため注意が必要です。
境界確認が終わらないと境界確定契約書を作成できず、物件の引き渡しもできません。境界確認は期日に余裕をもって行うことが重要です。
境界確定と境界明示の違い
境界確定と似た言葉に「境界明示」もありますが、厳密には両者は異なるため、使い分けが必要です。
境界確定とは
境界確定とは、民有地と民有地の境界(民民境界)、公共用地と民有地の境界(官民境界)を明確にする手続きです。不動産を売却する際に、購入者が境界に関する紛争に巻き込まれることのないよう、境界確定を実施するのが一般的です。
境界確定の手続きは、測量のスペシャリストである土地家屋調査士に依頼しますが、発生する費用は売主が負担します。
境界明示とは
境界明示とは、売主が買主に対して土地の範囲を明らかにする行為です。厳密には「必ず正確な境界を買主に提示しなくてはならない」という意味で使われる言葉ではありません。
しかし、売主が正確な境界を認識しているとは限らず、境界標がずれてしまっている場合や、ブロック塀が境を越えてしまっていることも散見されます。将来的に境界を巡るトラブルに発展してしまう恐れがあります。
そのため、不動産の売却においてほとんどのケースでは、確定測量によって境界を確定させなくてはなりません。
境界確定の必要性
境界を確定させなくても、売買契約締結をすることは可能です。買主が「未確定でもよい」と認めれば、未確定のまま売却できます。しかし、以下の理由から、境界画定を完了させることがおすすめです。
境界関係のトラブルが起きやすく売却が難しい
境界が未確定の土地とは、何らかの理由で境界があいまいな状態になっている土地のことです。買主は購入後に隣接地の住人との境界トラブルに巻き込まれるリスクを負います。
トラブルの例をあげると下記のとおりです。
- 境界標が破損していたり移動したりして境界がずれている
- 建物や樹木が越境している
- 所有者がすでになくなっているが、相続人が不明
- 隣接地の住人が境界に関して非協力的で嫌がらせをしてくる
境界を巡る紛争は解決に時間がかかることも多く、境界をあいまいにしておくメリットはありません。「境界が未確定でもよい」と認める買主は実際には少なく、売買契約を締結するには境界確定を求めてくるケースがほとんどでしょう。
ローン審査に通りにくくなる
境界確定していないことのもう1つのデメリットは、金融機関のローン審査に通過しにくくなることです。境界確定をしていないと、不動産を住宅ローンの担保として設定できない恐れもあります。
ほとんどのケースで、買主は住宅ローンを借りることを前提に土地や建物を購入するため、ローン審査にパスできない状態になると、売買取引が成立しないかもしれません。
金融機関側も「境界が確定されていないということは、何らかの問題があるのではないか」と考え、土地の評価を下げるため、十分な額の融資を受けられない可能性もあります。
境界確認の流れ
土地の境界確認は、以下の流れで実施します。
- 依頼者が不動産会社(または土地家屋調査士)へ問い合わせる
- 法務局などで土地・建物に関する資料調査を行う
- 隣接地の所有者にあいさつし、境界確定の経緯や目的の説明をする
- 土地家屋調査士や隣接地の所有者による立ち合いで、境界確定の合意の後に境界杭を設置する
- 図面および境界確認書を作成・押印し、関係者間で取り交わす
依頼者が直接関与するのは、上記のうち1・4・5の部分です。2と3は不動産会社や土地家屋調査士が行います。
境界確定の費用
境界確定の費用は、官民境界か民民境界かで異なります。官民境界とは官有地と民有地の境界、民民境界とは民有地同士の境界のことです。
官民境界
官有地には、国や自治体が所有する道路や水路も含まれます。隣接地が民有地である場合に比べ、官有地の場合は測量規模が大きくなる傾向のため、官民境界の測量費は民民境界の場合よりもやや高くなります。
具体的には、60万円〜80万円が相場です。役所とのやり取りがあったり、役所の担当者に立ち会ってもらったりする必要があるため、手続きも多くなります。
民民境界
民民境界の場合、役所関連の手続きや立ち合いなどは不要であり、規模も小さくなるため、官民境界より費用は安くなる傾向です。30万円〜40万円ほどが相場となっていますが、土地の形状や面積などにより変動する可能性はあります。
費用の内訳は以下のとおりです。
- 事前調査:6万円~10万円
- 測量作業:12万円~14万円
- 書類作成:2万円~5万円
- 官有地境界確定:6万円~10万円
- 民有地境界確定:2万円程度
民民境界の場合、境界確定の費用が官民境界の場合より安いため、全体の費用も安くなります。
境界確定は立会いが必要?
境界の立会いは任意であり、依頼された側が必ず応じる義務はありません。仕事で忙しいなどの理由で立会いを断っても、特に罰則はありません。
しかし、境界確定で立会いをすることには、相手側に以下のようなメリットがあります。
- 土地の利用範囲が明確になる
- 土地関連の紛争を未然に防ぐ
- 土地の測量費用を負担しなくてもよい
これらのメリットを享受できるため、境界確定では立会いに協力してもらうべきですが、それでも応じない方もいます。その場合は以下の方法があります。
- 土地家屋調査士や弁護士など専門家から交渉してもらう
- 筆界特定制度を利用する
- 境界確定訴訟を行う
土地の境界確定に関して、立会いを無理に強制することは望ましくありません。関係がこじれ、嫌がらせに発展してしまう恐れもあります。
立ち会ってもらえない場合、土地のスペシャリストである土地家屋調査士、紛争解決のプロである弁護士などへ相談するのがよいでしょう。
土地や建物の売買では境界確定契約書が必要
境界確定契約書とは、隣接している土地の所有者間で、土地の境界を明確にするための文書です。土地の売主は買主に対し、土地の境界を明示する必要があるため作成します。
境界確定を行わないと、土地がどこからどこまでかがあいまいな状態であるため、後々トラブルに発展する恐れがあります。紛争を未然に防ぐためにも、境界確定は必須です。
土地の境界確定にはさまざまな工程があり、隣接地の所有者が多いなど、時間がかかるケースもあります。期日にゆとりを持って進める必要があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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