• 更新日 : 2025年7月29日

AIを使った契約書作成とは?リーガルチェックのリスクやChatGPTでの作成例も解説

AIの性能向上や利用の広がりに伴い、AIを使った契約書作成やリーガルチェックを検討する方が増えています。この記事では契約書作成にAIを活用しても問題ないかや、AIを活用した契約書の具体例および作成方法、AI活用の問題点を紹介します。

AIを活用し契約書作成の手間を軽減したいと考える方は、ぜひ参考にしてください。

契約書作成にAIを使っても問題ない?

契約書作成にAIを使っても問題はありません。実際に、AIを活用した契約書作成システムや法務システムは、さまざまな企業が提供しています。契約書作成にAIを活用する主なメリットには、以下の3つが挙げられます。

  • 契約書作成の手間の軽減
  • 人的ミスの軽減
  • 法的リスクの軽減

    契約書をAIが作成することで、スタッフの手間が軽減できます。契約書作成に必要な業務量が削減されるため、人件費削減にもつながるでしょう。

    契約書の作成をAIがすれば、数字や文言の間違いといった人的ミスを削減できます。AIの機能を活用することで、契約業務の知識やスキルが少ないスタッフでもスムーズに業務を進められるだけでなく、業務の質を一定水準に保てます。

    契約書は、契約内容に関する法律を十分に確認したうえで作成しなければなりません。しかし法律は頻繁に改正されるケースもあるため、場合によっては確認漏れが発生する恐れもあります。AIを活用することで、法律の改正にしっかりと対応した契約書作成ができるでしょう。

    契約書作成にAIを活用する具体例

    契約書作成にAIを活用する主な具体例としては、以下の3つが挙げられます。

    • AIによる契約書の自動作成
    • AIによる契約書のレビュー(リーガルチェック)
    • AIによる契約書の管理

      ここでは、それぞれの業務内容とAIの活用で変わることをそれぞれ解説します。

      AIによる契約書の自動作成

      AIを活用すれば、契約書の自動作成ができます。契約はそもそも、口約束でも成立します。しかし取引の内容を双方で確認し明記することで後のトラブルに対応できるため、ほとんどの契約で契約書を作成するのが通例です。

      トラブルに有効な契約書を作成するには、専門的な法律の知識やスキルを持つスタッフが、ミスがないよう注意を払って業務にあたる必要があります。そのため、場合によっては限られたスタッフのみが作成をすることになり、業務が属人化するかもしれません。

      AIを活用すると、最新の法律に対応した契約書を自動生成できます。これにより誰でも契約書作成ができるようになり、スタッフの負担削減や属人化の防止が期待されます。また担当者に関わらず、均一化された書式で一定の品質を保った契約書の作成を実現できるでしょう。

      AIによる契約書レビュー(リーガルチェック)

      AIは、契約書レビュー(リーガルチェック)も可能です。契約を締結すると、内容について法的責任を負います。そのため締結前に契約書の内容を十分に確認しないと、自社にとって不利な契約を結ぶことになるかもしれません。そのような事態が起きることを防ぐために、契約前に契約書のレビューを実施するのです。

      契約書レビューにAIを活用すれば、条文や文言等のミスを自動でチェックできます。また内容が間違っていたときは、具体的な修正案の提示を受けることも可能です。

      AIレビューでは自動でチェックが進められるため、専門的な知識を有しないスタッフでも業務を遂行できるようになります。そのほか、チェック漏れといった人的ミスも防止できるでしょう。

      AIによる契約書の管理

      AIは、契約書の管理にも活用できます。契約締結後の契約書はきちんと保管および管理をし、いつでも確認できる状態にしておかなければなりません。

      AIのシステムを活用し契約書を一元管理すれば、検索性が向上し担当者以外のスタッフにも広く共有できるようになります。また、解約期限や契約終了日を通知する機能を持ったシステムを活用すれば、対応漏れといったミスも軽減できるでしょう。

      生成AI(ChatGPT)で契約書を作成できる?

      契約書の作成は、生成AI(ChatGPT)でも可能です。ChatGPTとは、「GPT」と呼ばれる言語モデルを使用した対話型のAIサービスです。

      ChatGPTで契約書を作成するには、適切なプロンプト(指示や質問)を入力しなければなりません。プロンプトが適正でないと、契約書がうまく作成されないケースもあります。ここでは、プロンプトの具体例と生成例を解説します。

      契約書の作成に必要なプロンプト

      契約書作成の作成に必要な主なプロンプトは、以下のとおりです。

      項目詳細
      目的ChatGPTに支持する内容

      「業務委託契約書を作成してください」など

      条件契約書に条件を付ける場合に記載
      報酬・支払方法報酬:○○万○○円

      支払方法:銀行振込など

      支払期限:毎月末など

      業務の範囲契約する業務の範囲
      納期や契約期間○○年○月○日など

      プロンプトの具体例と契約書の生成例

      先述したプロンプトを参考に、具体例を当てはめてみましょう。

      項目詳細
      目的業務委託契約書を作成してください
      条件
      報酬・支払方法報酬:10万円

      支払方法:指定した口座への振込

      支払期限:納品月の翌月末

      業務の範囲オウンドメディアに掲載する記事作成
      納期や契約期間2024年10月1日~2024年11月30日

      上記のプロンプトでAI生成される契約書の一例は、以下のとおりです。

      AI生成される契約書の一例

      AIが作成した契約書を実際に使用するには、必ず先述した契約書レビューを実施してください。とはいえ、生成AIを使用することで、誰でも比較的簡単に契約書の下地を作成できるようになるでしょう。

      AIによる契約書レビュー(リーガルチェック)のリスク

      AIによる契約書レビューは、非弁行為にあたるのではといわれることがあります。非弁行為とは弁護士資格を保有していない者が、弁護士のみが実行できると定められた法律事件に関する法律事務または周旋を行うことです。

      これまで曖昧にされていたAIによる契約書レビューが非弁行為にあたるかについて、法務省が2023年5月にガイドラインを作成しました。ガイドラインによると、以下の3つの条件をすべて満たした場合は、非弁行為に該当するとされます。

      • 報酬を得る目的がある
      • 権利関係に関する争い(事件性)がある事案である
      • 法律の専門知識に基づいて法律的見解を述べる法律事務にあたること

        法務省によりAI活用のガイドラインが制定されたことで、契約書におけるAIの活用が大きく進む可能性もあります。しかし、AIのみで契約書のチェックをするには、セキュリティ面や対応の柔軟性に課題が残ることは覚えておきましょう。

        参考:e-GOV 弁護士法

        参考:法務省 AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について 

        契約書におけるAI活用の課題点

        最後に、契約書の作成やレビューにAIを活用する課題を4つ解説します。ここまで述べてきたとおり、AIを契約書の作成やレビューに活用するとさまざまなメリットがある一方で、いくつかの課題もあります。

        契約書の作成やレビューに不備があると、自社に不利な条件での契約内容になったり、損害を被ったりするかもしれません。ここで解説する課題を踏まえたうえで、不明点などがあるときは弁護士といった専門家に相談しましょう。

        情報漏洩の可能性がある

        課題の1つ目は、情報漏洩の可能性がある点です。AIで契約書の作成やレビューをするには、契約内容や企業情報などをシステム上に入力しなければなりません。場合によっては、入力した内容が外部に漏れる可能性もあります。

        AIを契約書の作成やレビューに活用する際は、十分にセキュリティ対策がとられたシステムを使用することが肝心です。また、流出の可能性をできるだけ抑えたい内容の場合はAIへの入力を行わず、スタッフによる契約書作成も選択肢となります。

        必ずしもAIの情報が正しいとはいえない

        課題の2つ目は、必ずしもAIの情報が正しいとはいえない点です。AIは学習データとプロンプトに基づき契約書を作成するため、情報が間違っている場合もあります。そのため、完成した契約書を実際に使用する前に、専門的な知識を持つスタッフが確認することが肝心です。

        AIの使用は下地の作成やダブルチェック、アイデアの創出などへの活用に止めたほうがよいでしょう。

        柔軟な対応が難しい

        課題の3つ目は、柔軟な対応が難しい点です。契約書は、相手方との関係やこれまでの実績、ビジネスの特徴などを考慮したうえで作成されます。

        しかしAI生成では、これらの情報を組み入れられません。より実態に即した契約内容にしたい、新しい分野における契約書を作成したいというときは、AI生成では対応できない可能性があります。

        責任者が曖昧になる

        課題の4つ目は、責任者が曖昧になる点です。契約書の作成やレビューをAIのみに頼ってしまうと、トラブルが発生したときに責任者がわからなくなる恐れがあります。

        AIを活用して契約書の作成やレビューをする際も、法的な知識やスキルを持ったスタッフを責任者として配置する必要があるでしょう。契約書を使用する前に、責任者の最終チェックを受ける体制とすれば、トラブルが起きたときもスムーズに対応できます。

        電子契約でAIを活用するプロセス

        従来、契約書の作成やチェック、文書の管理の多くは人の手に委ねられてきました。しかし、電子契約の導入が進む現場では、AI技術の活用も広がりつつあり、契約業務の効率化・品質向上が実現されています。

        以下では、契約業務においてAIがどのように活用されているのか、プロセスの一例を紹介します。

        草案を自動生成してPDF化

        契約書作成の最初のステップでは、「AIによる草案の自動生成」が有効です。契約の目的や条件、報酬、期間などの必要な情報を入力することで、最新の法令や業界標準に準拠した契約書の草案を迅速に生成できます。

        専門的な知識がなくても一定水準の契約書を短時間で準備できるほか、担当者ごとの品質のばらつきや業務の属人化も防げます。

        利用しているAIにPDF出力機能がない場合でも、内容をコピー&ペーストして文書ファイルを作成すれば、簡単にPDF化できます。対応後は電子契約システムへアップロードするだけです。

        電子契約書の全文を自動チェック

        契約書の草案ができてから、あるいは相手方から契約書(案)を受領してからのプロセスにおいては、AIを使って「電子契約書のリーガルチェック」が可能です。

        PDFファイルなどとして作成された契約書をAIシステムにアップロードすることで、AIが全文を解析し、誤字脱字から法的なリスクまでさまざまな視点から評価を行うことができます。

        使用するAIの性能によって精度には差が生じますが、人が直接確認する場合と比べて処理スピードは圧倒的に速くなります。最終的な精査を人が担う前提であっても、ボリュームのある契約書に対する一次的なチェック工程においては、AIの活用は有効です。今後AI技術がさらに進展すれば、AIに任せられる領域も一層広がっていくと考えられます。

        作成済みの契約書の自動入力

        契約締結後の契約書管理プロセスにおいても、AIの活用が有効です。例えば「契約情報の入力・データ化」の作業は、AIによって自動化が可能となっています。

        PDFや画像形式の契約書をOCR(光学文字認識)機能で読み取ることで、契約締結日・契約期間・取引金額・当事者名などの主要項目を自動で抽出。管理台帳や契約管理システムに反映させることも技術的に可能です。

        こうしたAI機能が電子契約サービスに実装されていれば、手作業による入力ミスや情報の抜け漏れを防止でき、契約書管理の精度と効率が向上します。

        電子契約でAIを活用する注意点

        AIを契約業務に取り入れる際には、既に触れた4つの課題に加え、以下にも注意が必要です。

        AIによる解析・修正は署名前に行うかコピーを用いる

        AIを活用して電子契約書の内容を解析または修正する場合は、必ず署名前の段階で作業を行うようにしましょう。もしくは原本のコピーを用いる方法が推奨されます。

        電子契約は、署名が完了した時点で内容が確定し、改ざん防止措置が適用されます。そのため、署名後にAIを使って内容を自動修正または変更する行為は、改ざんとみなされる可能性があり、結果として修正後の契約書の証拠能力が失われるおそれがあります。

        AIによる解析結果は100%の正確性が保証されているわけではないため、原本を残しつつ、修正や編集を行う運用が望ましいといえます。

        AI処理におけるデータの保存範囲や権限を確認する

        電子契約でAIを利用する際は、契約データの保存範囲やアクセス権限にも注意が必要です。

        特に機密性の高い情報を含む場合には、AI処理後におけるデータの保持期間、保存場所、アクセス権限の範囲について、AIプロバイダーの仕様を事前に確認しておくことが望まれます。一般的に、第三者が学習データなどへ直接アクセスできるようなシステムにはなっていませんが、処理された情報が他ユーザーのAI利用に影響を及ぼすリスクはゼロではありません。

        また、AIプロバイダー側はシステム内部の詳細を開示していないため、情報漏えいリスクをゼロにしたい場合は、重要な情報をプロンプトに含めないなどの運用上の工夫が必要です。

        課題や注意点を押さえ、契約書作成やレビューにAIを活用しよう

        AIを契約書の作成やレビューに活用する企業が増えています。AIを利用することで、契約書作成の手間や人的ミス、法的リスクの軽減が期待できるでしょう。

        一方で、契約書の作成やレビューにAIを使用すると情報漏洩や責任者が曖昧になる、間違った情報で作成される恐れがあるといった課題があります。契約書においてAIを上手に活用するには、最終チェックを実施する責任者を配置することが重要です。

        契約書の内容に不備や間違いがあると、自社にとって不利な契約となったり、損害を被ったりするかもしれません。AIが作成した契約内容に不明点や不安があるときは、弁護士といった専門家に事前に相談すると安心です。


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