- 更新日 : 2025年3月12日
電子契約の当事者型と立会人型の違いは?メリットや選ぶポイントも解説
電子契約では、契約当事者が電子署名を付与する「当事者型」と、第三者である事業者が電子署名を付与する「立会人型」の2種類があります。電子署名は契約書の信頼性に関わる重要な要素だけに、どちらを使えばいいかお悩みの方もいるかもしれません。
今回は当事者型と立会人型の違い、それぞれのメリット・デメリットについて詳しくご紹介します。
目次
電子契約の当事者型と立会人型の違い
電子契約の当事者型は契約当事者間で電子署名を付与し、立会人型は第三者(主にサービス提供事業者)が電子署名を付与するという違いがあります。わかりやすく当事者型と立会人型の違いを表にまとめました。
当事者型 | 立会人型 | |
---|---|---|
法的効力 | 高い | 当事者型より低い |
本人性の担保 | 電子証明書 | メールアドレスなど |
電子証明書の名義 | 当事者全員が電子証明書を取得 | サービス提供者が電子証明書を発行 |
以下で当事者型と立会人型の特徴について詳しく見ていきましょう。
電子契約の当事者型とは
電子契約の当事者型とは、契約当事者双方が直接電子署名を行い、契約を締結する方式です。契約は署名者の間で完結するため、第三者の関与はありません。
当事者が直接電子署名を行うため、なりすましのリスクが低く、本人性の確保という面で高い信頼性があります。
ただ、当事者が電子署名を付する場合、あらかじめ認証局が本人確認を行ったうえで電子証明書を発行してもらわなければなりません。
電子契約の立会人型とは
電子契約の立会人型は契約当事者ではなく、業者などの第三者が電子署名を付与するという仕組みです。
契約当事者が契約内容などに合意し、事業者に署名指示を行うことで電子署名が契約書に付与されます。
主にクラウドタイプの電子契約サービスなどで提供されることが多いタイプです。
契約当事者のICカードなどが不要で電子契約が行えるため、締結スピードが重視される契約などで用いられています。
立会人型が電子署名として認められる理由
立会人型の電子署名が認められる理由は、二要素認証(二段階認証)によって本人確認できる点が大きいからです。
立会人型で電子契約を行う際、メールアドレスやSMS、ワンタイムパスワードなどを利用して複数の方法の認証作業を行います。
それに加えて、利用する電子契約サービス事業者が十分な安全性要件を守り固有性の要件を満たすことで、電子署名として認められます。
電子署名は認証業務により4段階に分けられる
電子署名の方法は、認証業務に基づいて主に以下の4種類に分類されます。
- PDFデータに電子署名を付与する
取り込んだデータ、あるいはPDFファイルとして作成した契約書をアプリケーションで開き、「証明済PDF」で保存します。保存前に署名欄が表示されるので、電子署名を選択し、デジタルIDを設定して署名作業を行います。
- WordやExcelに電子署名する
WordやExcelなどのオフィスソフトで契約書を作った場合、挿入メニューから署名欄を追加します。設定画面が表示されるので、氏名やメールアドレスなどを入力して電子署名を行います。
- 電子契約システムを活用する
電子契約サービスの中には、相手に契約書を送った時点で自動的に電子署名が付与されます。電子証明書を取得していなかったり、取引先の電子化状況が不明であったりする場合でも使用できます。
- メールで電子署名を付与する
メールソフトの署名機能を利用することで、メールで書類を送ったときに「誰が、いつ送ったか」という本人性が担保できます。普段使っているメールソフトで利用できるため、利便性が高いのが特徴ですが、電子署名付きのメールを送るためには、認証局で電子証明書を取得しなければなりません。
電子契約の「当事者型」のメリット・デメリット
電子契約の「当事者型」は契約当事者が自分で電子署名を付与する方式です。電子署名をするためには認証局で手続きを行い、電子証明書を発行してもらう必要があります。
当事者型は本人性が高い方式ですが、そのメリット、デメリットについて見ていきましょう。
当事者型のメリット
当事者型の電子契約の大きなメリットは、署名を行う当事者たちで電子署名をするため法的効力が高く、契約書としての信頼性が高まる点といえます。第三者機関を介さないため、なりすましや改ざんなどのリスクが低く本人性の担保ができるので、複雑な契約、規模の大きい契約にも適しています。
当事者型のデメリット
当事者型のデメリットは、電子証明書が発行されるまで手間とコストがかかる点です。電子証明書は電子署名を本人が行ったことを証明するものです。電子証明書がなければ電子署名しても本人だと判断できず、正当な契約書として認められません。電子証明書は認証局で本人確認をして、数千円の手数料を支払えば獲得できます。
また、こちらが電子証明書を有していても、取引先が電子証明書を導入していなければ当事者型の電子契約は締結できない点にも注意が必要です。
電子契約の「立会人型」のメリット・デメリット
電子契約の「立会人型」は、電子契約システムやサービスを提供する事業者が電子署名を行い、契約書の正当性を担保する方式です。電子証明書がなくても電子契約が利用できることから普及しつつありますが、どのようなメリット・デメリットがあるか見ていきましょう。
立会人型のメリット
立会人型の電子契約は、当事者型よりも手軽でコストがかからないというメリットがあります。電子契約システムやサービスを利用するだけで電子署名が付与されるので、社内の担当者の電子証明書がなくても契約締結できます。
また、認証用のメールアドレスがあれば契約ができるので、取引先がシステム導入や電子証明書を取得する必要がなく、仕事相手へ負担をかけずに電子契約が利用できます。
立会人型のデメリット
立会人型の電子契約には比較的手軽で利用しやすいという一方で、当事者型よりも法的効力が低く企業間などの大きな契約には向かないというデメリットがあります。
メールアドレスの認証で利用できるため、認証局で本人確認をする当事者型の電子契約よりも信頼性や本人性といった面で劣ります。また、利用する電子契約サービスがきちんと要件を満たしている必要があり、万が一悪質な業者を使用してしまった場合、正式な書類として認められないというリスクもあります。
電子契約の立会人型に電子署名法は適用される?
電子契約の立会人型にも電子署名法は適用されます。令和2年に総務省・法務省・経済産業省が連名で発表した『利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A 』では、
- 利用者とサービス提供事業者の間で行われるプロセス
- 1における利用者の行為を受けてサービス提供事業者内部で行われるプロセス
のいずれにおいても十分な水準の固有性が満たされているのであれば、電子署名として認められるといった旨が記載されています。
参考:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A
電子契約システムがきちんとセキュリティ面などで対策を講じている、という条件はあるものの現時点では立会人型でも電子署名法は問題なく適用されます。
電子契約の当事者型と立会人型を選ぶ基準やポイントは?
電子契約の当事者型と立会人型は、契約内容やリスクに応じて使い分ける必要があります。それぞれの特性を理解し、契約の重要性やそれに対するコストを考慮して選択しましょう。
当事者型を選ぶべきケース
当事者型の電子契約は、契約当事者自身が直接署名を行うため、法的効力が高く、重要な契約に向いています。特に、以下のようなケースで選ばれることが多いです。
- 信頼関係が十分に構築されていない段階での契約
- 法的リスクが高い取引や法的に強い効力を求める場合
立会人型を選ぶべきケース
立会人型は、第三者である事業者が電子署名を行うため、手軽に利用できるのが特徴です。以下のような日常的な取引や規模の小さい契約に適しています。
- 売買契約など、日常的な取引
- 複数の取引先と頻繁に契約を締結する場合
- 消費者や外国企業との契約で、簡便さが重視される場合
当事者型と立会人型のハイブリッド型という選択肢も
当事者型と立会人型どちらを選ぶか迷った場合、ハイブリッド型を導入する選択肢もあります。ハイブリッド型は電子契約サービスが提供している方式で、例えば自社は当事者型、相手先は立会人型で契約することも可能です。
取引先の状況や契約内容の重要度に合わせて、当事者型・立会人型・ハイブリッド型を使い分けてもよいでしょう。
当事者型と立会人型の違いを知って契約内容ごとに使い分けましょう
当事者型と立会人型には、「電子署名を誰が付与するか」という違いがあることがわかりました。契約当事者が電子署名を付与する当事者型は信頼性が高い一方、電子証明書の取得や更新にコストと手間がかかります。立会人型は電子契約サービスが電子署名を行い、書類としての正当性を担保してくれるので手軽ではあるものの、法的効力は当事者型にはおよびません。
それぞれメリットとデメリットがあるので、取引内容や取引先の事情に合わせて契約の都度適した方法を選びましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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